比那名居天子(♂)の幻想郷生活   作:てへぺろん

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残業続きで書く時間が限られる中で書き上げた次第です。おのれ残業許すまじ!!


ということでして……


本編どうぞ!




76話 嫌われ者達

 「座ってください……お茶ぐらいなら用意します……おや、要りませんか。ならお言葉に甘えましょう」

 

 「本当に便利ね……第三の目(それ)

 

 「便利ですが要らぬものも見えてしまうのでおすすめはしませんよ」

 

 「それもそうね、欲しいとは思わないわ」

 

 

 さとりは勇儀を連れて書斎へと向かった。中には誰もいないはずの扉を開けるとそこには地上にいるはずの紫の姿がそこにあった。前にもこんなことがあったっけと思い出す……萃香が天子を攫った挙句、地底の嫉妬姫によってもたらされた不幸によって旧都が壊滅的被害を受けた。博麗の巫女である霊夢と例の問題児の保護者らと共にスキマを通じて現れた。本来ならば地上と地底の行き交いは条例によりご法度とされていたのだが特例であった。実際に地底は霊夢達が来たことによって騒ぎは収まったのだから。

 あの時ぐらいだ。しかもあの時はどんちゃん騒ぎで地底では珍しいことではない……旧都があそこまで壊滅するのは珍しいが……ともかく前は勇儀も悠々としていた。しかし今回は気を引き締めなくてはならない。

 

 

 さとりと勇儀の目の前にいる紫は表面上はいつもと変わらない……変わらないからこそ内に秘めたる衝動は大きいものだろう。

 

 

 十中八九あの天邪鬼のことで来たのだろう。さとりは八雲の賢者さんが来ることを見越していたようだしよ……話に聞いたが地上で異変を起こして尚、更に異変を起こそうと考えている。天邪鬼を見逃す気はない様子かよ……わざわざ地底までさとりと交渉しようって判断だろうな。しかし妙だな……

 

 

 勇儀はさとりの隣でくつろぎつつ会話を聞き入っている。やはり勇儀の睨んだ通りに紫は鬼人正邪の身柄を求めてきた。本来は地上の妖怪であり、地底へ入ることは条約に異例していた。一介の妖怪ならば紫は見向きもしなかったであろう。しかし正邪は悪意を持って異変を引き起こし更には次の異変を模索していることを知っている。地底は嫌われ者の巣窟……もし正邪に賛同し地底の総力を挙げて地上に攻め入られでもしたら幻想郷中がパニックに陥ることは間違いない。紫にとっては見過ごすことのできない事態になるであろう。

 地底の者達は地上の連中に好意的な者は少ない。人付き合いが良いヤマメやお燐でも地上に苦手意識が無いわけではないのだから。そして正邪は天邪鬼……地底の者達を利用しようと考えたであろう……そう皆は思うだろう。少し前の正邪ならば……

 

 

 しかしそうなりはしないと勇儀は確信していた。天邪鬼の本質は変わらないにせよ、そこまでの器は正邪にはないし、何よりも今の正邪には静止力が働いている。悪い事を一切しなくなることは正邪には無理な話……妖精に悪戯するなと言うことと同じであるが、それを止めてくれる相手ができた。

 

 

 勇儀はその人物がいるであろう何枚も壁を隔てた先に意識を向ける……

 

 

 「……それで天邪鬼の身柄を私達に引き渡してほしいのですわ。さとり、あなたもあの天邪鬼の扱いは手に余るはず……それにあれを飼っておくなんてしないでしょ?問題しか抱えない天邪鬼を引き取って差し上げると言っているの。悪い話ではないでしょ?」

 

 「それは……」

 

 「それは断る!」

 

 

 紫の注意が勇儀に向く。答えを出したのは今まで一言も話さなかった勇儀、さとりはやれやれと肩をすくめていた。さとりには勇儀の考えがお見通しなので何を考えているかもわかる……正直なところさとりは邪魔してほしくなかったと言う顔をしている。

 

 

 「悪いなさとり、つい答えちまった。でも()()を見た後じゃ私も黙っているわけにはいかねぇ」

 

 

 勇儀の目を見ることなくさとりはそっぽを向いた。「ご自由に」と表現しているように勇儀は解釈した。

 

 

 「私は今、さとりと話していたのだけど……鬼のあなたが何故割り込むのかしら?見学していただけでしょ?」

 

 「鬼が見学だけでここにいるかよ。見ているだけなんて詰まらねぇし鬼の私には我慢ならん。私だって意見を言える立場にいるんだ。だから私の話も聞いてもらうぜ?」

 

 「……何の話かしら?お酒とかの話ならば場違いなので止めてほしいのだけれど」

 

 「ちゃんとした話だよ、鬼人正邪のことについて……あいつの身柄は地底で預かることにしたからあんたには渡せん」

 

 「……それは何故かしら?」

 

 

 どっと空気が変わった気がした……否、気がしたのではない。変わったのだ……見るに紫から妖気が発せられる。静かに問う紫の声が震えているようであった。そんな紫と勇儀の間で視線が交差し鋭さがお互いに増す。

 

 

 お!流石賢者さんだぜ、いい妖気をお持ちだ。私でも身震いしてしまいそうになるな……手合わせしたいものだがまともに受けてくれないのが妥当だな。まぁそれはいいや、今はあの天邪鬼のことに関しての話をするのが先だな。

 

 

 紫の妖気に一歩も引くことのない勇儀は流石鬼の中でも山の四天王と言われる程だ。その横で静かにしているさとりはと言うと……二人の気迫に押されてストレスゲージが急激に上昇し、腹を痛めていた。勇儀を自由にさせた結果がこれだよ……さとりは凄く後悔した。

 

 

 「私があの天邪鬼を気に入ったからさ」

 

 「鬼が……天邪鬼を……?」

 

 

 紫は自分の耳がおかしくなったと疑っているようだった。姑息な手段で勝ち上がり、仲間意識など持たずに使い捨てるような天邪鬼を気に入るなんておかしいことだ。それも星熊勇儀は鬼の中の鬼……卑怯な手段などは屈辱なはず……嫌いなことのはずなのに……紫は何故と思った。信じられなかったし、夢ではないかと思ったぐらいだ。

 

 

 「信じられないって顔しているな?まぁ気に入ったのは確かだが、あいつのやり方は認めちゃいないことを間違えないでくれよ?それにな、天子が信じた天邪鬼だ。鬼人正邪は……だから私も信じてみようかと思っただけだ」

 

 「比那名居天子……彼もここにいるのね」

 

 「ああ、今あいつ(天邪鬼)と一緒にいるさ」

 

 「――ッ!」

 

 

 勇儀の言葉を聞くとより一層妖気が増した。勇儀でも滅多に味わったことのない圧力を感じてしまう。

 

 

 うおぉ!?マジか!!?これほどの妖気を持っているだなんて……やっぱり賢者さんはすげえじゃないか!!

 

 

 勇儀ですら肌にピリピリと感じる妖気を受けているのだが、気分が上昇していく。鬼と言うのはどこまでも争いが好きなようだ。

 

 

 「あの天邪鬼の危険性をわかって言っているのかしら……?!」

 

 「危険性ね、あいつは化けたら大物になれるよ。これからも悪さはするだろうぜ」

 

 「だったら何故庇うの!?」

 

 

 紫がこれほどまで鬼の勇儀が正邪を庇い立てする理由がわからなかった。

 

 

 「でもなれない……いや、なれなくなったと言った方がいいかな。悪さはするが永遠の小悪党……それがあの天邪鬼さ。大物なんてなれないのさ」

 

 「何を……言っているの……?!」

 

 

 もう紫は勇儀の言っていることがハチャメチャに聞こえてくる……そんな紫に対して勇儀は冷静にこう告げる。

 

 

 「あんたは……救われたんだよ。比那名居天子にな」

 

 「……はっ?」

 

 

 今度こそ紫は呆然となる。頭がおかしくなって狂ってしまったのかと疑いすら現れた……勇儀はそんなこと思われても気にも留めずにしっかりと紫の目を見て言い放つ。

 

 

 「不幸な少女を手にかける必要はなくなったってわけさ。結果そうなっただけなのだが、天子は天邪鬼だけじゃなくあんたの手を汚れるのを防いだんだ。感謝しておきな」

 

 「な、なんの……なんのことを言っているのよ……?!」

 

 

 遂には感謝しろと来たものだ。紫自身も自分の頭が狂ったのかと……夢を見ているのではないのかと思う程だったが、そんな時に頃合いを見計らいさとりが二人の間に割り込んだ。

 

 

 「もういい加減にしてください。勇儀さんも口数足らずの言葉では相手が混乱してしまいますよ!」

 

 「どうも説明は苦手でな……」

 

 「はぁ……これだから脳筋は……」

 

 「何か言ったか?」

 

 「何も言っていないので少し静かにしてくれませんか……すみません、勇儀さんは見た目通り身も心も頭までもが筋肉でできているので話が通じなかったと思います。私が代わりに順をおって説明します」

 

 「頭まで筋肉だなんてそんなこと『ちょっと黙っていてください!』……わかったよ」

 

 

 キッと勇儀を睨んで黙らせる。鬼である勇儀を力を使うことなく黙らせることができるのは覚妖怪であるさとりの特権だろう。ソファにもたれかかってだらりとする勇儀から目を離し、紫に向き直る……まだ戸惑っているのか若干の心に乱れがあるのをさとりは()()

 

 

 「あなたが代わりに説明してくれるのね……そっちの方がありがたいわ。話が通じない相手と話すのは疲れるだけですからね。無駄な時間だったわ」

 

 「あ"あ"?」

 

 

 紫の視線と勇儀の視線が再び絡み合いそうになる。苛立ちが積もっていたのか無情な言葉を吐いたことに対して勇儀の眉がピクリと動く。険悪な空気がこの空間から消えることはないのだろうか……

 

 

 ------------------

 

 

 帰りたい……あっ、ここが私の家でした……また胃の調子が!!?

 

 

 さとりは後悔した。勇儀を連れて来るんじゃなかった……自由に話をさせたことを後悔した。目の前では妖怪の賢者である紫と山の四天王の鬼である勇儀との睨み合いが続いていた。言葉を一切交わさずにただお互いの視線を逸らさない……だが、二人から感じられる妖気はさとりでも分かるぐらいに溢れ出している。このままでは地霊殿全体を巻き込んだ戦争が起こってしまうかもしれない……

 

 

 そんなのダメに決まっているじゃないですか!?私の唯一の癒しの場を奪うつもりですか!?もうなんで私だけこんな目に遭わなければならないのですか!?天子さん、絶対にこの借りは返してもらいますからね……いたたた……薬が欲しい……

 

 

 「勇儀さん、これ以上暴れるなら出ていってもらいますよ。それに紫さんも……これでは話が進みません。お気持ちはわかりますが堪えてください」

 

 「……チッ!しゃあねぇな」

 

 「……」

 

 

 腹が痛いのを我慢して冷静に対応する。地霊殿のため、自身のためにも暴れられるわけにはいかないから。

 

 

 「紫さん、勇儀さんが言いたいことは直接見てもらった方がいいかと思います。私は鬼人正邪の記憶を能力で読み取り具現化した世界を天子さんと勇儀さんと共に見ました。そこで鬼人正邪が歩んだ来た人生に同情したわけですよ」

 

 「鬼が天邪鬼に同情ね……」

 

 

 チラリと勇儀を見る目はどこか哀れみを含んでいるようにも見えたが、さとりの能力を知っている紫が己の心情を見せるヘマはしない。先ほどまでと違って。

 

 

 感情が何か膜で覆われているように見えずらい……心を読まれないようにしているようですね。やはり先ほどは余程動揺したと言う訳ですか。無理もないですね、脳筋(勇儀さん)では言っていることがハチャメチャですから……手っ取り早く直接見てもらった方が説明するよりも効果的ですし……紫さんがどう反応するか……少し興味もありますしね。

 

 

 「紫さん、手を出してください」

 

 「……こうかしら」

 

 「ええ、それで構いません。あなたに直接私達が体験したのと同じ鬼人正邪の記憶の具現化を流し込みますので気をしっかりと持ってください」

 

 「……ええ」

 

 「それでは……いきます!」

 

 「――ッ!?」

 

 

 紫の体中に正邪の記憶の具現化が流れ込んでいった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数分後、さとりは紫から手を離しソファに倒れ込む。

 

 

 「おいどうしたんださとり!?」

 

 

 倒れ込んださとりは疲れた様子で息を切らしていた。

 

 

 「少し……疲れただけです……勇儀さん、すみませんが何か飲み物を持ってきてくれませんか?」

 

 「そういうことか……わかった。癪だが賢者さんの分も用意してやる」

 

 「……」

 

 

 問いにも応えずただ空虚を見つめていた紫……その様子に勇儀は応えを待たずに部屋から出て行った。ソファにもたれかかるさとりは能力を使いすぎていて疲労が溜まっていた。

 

 

 流石に……連続しての記憶の具現化は体に応えますね……お燐にマッサージしてもらわないと……

 

 

 ふぅっとため息が出る。未だ反応のない紫はさとりなど目にもくれない……そっと心を読んでみようかとしたが変わらず膜が張ったようにモザイクがかかって読み取ることができなかった。

 

 

 残念ですね、紫さんにも少しの同情が生まれたのかと思いましたが……妖怪の賢者は伊達ではないと言う事ですね。動揺があれば先ほどのように読み取ることが出来たのですがね……動揺すらありませんか。嫌われ者にかける情けはないと……悲しいですね。

 

 

 さとりは寂しそうにまたため息が出てしまった。そんな時だった……

 

 

 「古明地さとり……比那名居天子はまだここにいるのね?」

 

 「え?ええ……この部屋を出て右に真っすぐ行った先に……」

 

 

 視線が扉の方へと向き道筋を示した後に紫がいた場所に視線を戻すとそこには誰もいなかった。

 

 

 あれ?紫さん……

 

 

 「おーい!持って来たぜ……ってさとりだけかよ?」

 

 「ええ、紫さんはたった今出ていきましたよ」

 

 「なんだよ、折角持って来てやったのによ」

 

 

 持って来たって……それは……

 

 

 さとりが見つめる勇儀の手元に握られていたのは……

 

 

 「お酒じゃないですか!!!」

 

 

 酒瓶を手にした勇儀にさとりの怒号が響いた……

 

 

 ------------------

 

 

 すぅーすぅー

 

 

 寝息が聞こえる。ベッドの上に寝かされた正邪は泣き疲れてしまって寝てしまった。傍には天子がベッドに腰かけて正邪を見守るように座っていた。正邪の手を握りしめて……

 

 

 かわいい寝顔だね。正邪も女の子だし当然だけれど……色々と溜まっていた様子ね。嫌われるのが好きな天邪鬼でも生きているんだから一人は嫌よね。ずっと寂しかったんだろう……でもこれからは私が傍に居て上げるから心配しないでね……正邪。

 

 

 「うぅん……てんしぃ……そばにいろよぉ……むにゃむにゃ……」

 

 「ああ、傍にいるさ」

 

 

 正邪の手に力が入る。天子も優しく手を握り返し手の温もりがより一層温かく感じていた時に妖気を感じ取った。つい先ほどまでそこにいなかったがこの妖気は知っている……急に現れたのはスキマを使ったのだろう。もうここまでくれば誰だかわかるだろう……天子は振り返りそっと声をかけた。

 

 

 「紫さん」

 

 

 そこには天子と正邪を眺める紫の姿があった。

 

 

 紫さんに居場所を突き止められてしまったか……早いね。流石紫さんを出し抜くことなんて出来なかったわけか……もうこれ以上さとりさんや地底の皆に迷惑をかけるわけにはいかないか……

 

 

 「紫さん、悪いが正邪が起きるまで待ってくれないか?紫さんの気持ちはわかるが、寝ている相手を無理に連れていくわけにはいかないだろ?それに正邪と約束したんだ……傍にいると。だから正邪を連れていくならば私も共について行く……構わないな?……紫さん?」

 

 

 天子の己の意思を紫に突き付けた。きっと正邪を連れて行くつもりなのだろうと天子はふんでいたのだが、どうも様子がおかしい。天子を見つめているだけで瞬き一つもしない……正邪にも目もくれていなかった。

 

 

 ど、どうしたのかしら……?こう見つめられると恥ずかしい……あの~紫さん聞いてます?

 

 

 天子は手を握っているのでベッドの上から動くことができない。どうしたのかと紫の視線に我慢しているとようやく紫の口が動いた。

 

 

 「比那名居天子……あなたは……」

 

 「?紫さん?」

 

 「……いえ、なんでもないわ。それよりも天邪鬼の具合は大丈夫なのかしら?」

 

 「えっ?あ、ああ……問題ない。泣き疲れて寝ているだけだからな」

 

 「……そう」

 

 

 正邪のこと気にかけてくれるの?紫さん優しい!流石紫さんマイフレンド!べ、べつにあなたのことなんて気にしてないんだからね!とか言ってくれたら最高なんだけれど……それはないか。けど、どうしたんだろう紫さんから漂って来る気配が柔らかくなったようなそんな気がする。

 

 

 「……全部見たわ。天邪鬼の過去も……」

 

 「それって!?」

 

 「さとりが教えてくれたわ。悲しいものね、天邪鬼なのに要らぬ優しさを持ち合わせてしまいには誰よりも天邪鬼であることを望んだにも関わらず、己に苦しみ結局は精神を病んでしまうなんて……愚かね」

 

 

 紫の言葉には棘があった。見下し罵倒するかのように……これには天子も表情がムッとなる。

 

 

 「愚か者……そいつにはお似合いの言葉よ。中途半端な天邪鬼、人間にも天邪鬼にもなれなかった可哀想な生き物……」

 

 「紫さん!!」

 

 

 天子も流石に言い過ぎだと思い声を荒げる……

 

 

 「けれど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「幻想郷は全てを受け入れるのよ。それはそれは残酷な話ですわ

 

 

 その言葉をゲーム聞いた時、幻想郷が楽しいだけじゃないことを表すには相応しい言葉だと私は思った。

 

 

 本当にすべてを受け入れるわけでは無い。受け入れられるのは法に則ってやって来たもの、あるいは害を成さないものだけであり、不法に入って来たもの、入り込みながら幻想郷に従わないものは排斥される。自由であれど無法ではない、常に意識しなければならない普遍的な視点……

 

 

 この言葉に秘められた意味……それは読み取る者によって少しずつ変わっていく。状況が違えば別の意味合いで私はその言葉を受け入れていただろう……そして私はこう解釈した。

 

 

 「……正邪を……受け入れてくれるのか?」

 

 

 天邪鬼が幻想郷に害為す存在……ルールを破り混乱を招く者。だけどそんな存在の正邪を受け入れてくれるのかと天子は期待を込めて紫に聞いた。

 

 

 「勘違いしないで、()()()だけどあなたを敵に回すと天界の連中にも睨まれることになるのよ。月や地底の連中でも手がいっぱいなのに、たかが小物に大それたことなんてしたくないだけよ」

 

 

 背を向け、目も合わせずに吐き捨てるように伝える。『()()()』という部分が強調されたが歓喜した天子には気にならなかった。

 

 

 「ありがとうございます紫さん!この御恩は一生忘れない!!」

 

 「勘違いしないでって言ったでしょ……指名手配は無くしたりしないわ。その内に誰かに狩られるでしょうし、放っておいて問題ないだけよ。報酬目当ての小物と小物同士で遊んでなさいな」

 

 

 紫はこの場から去ろうとスキマを開く。そしてふっと振り返り……

 

 

 「あなたは天界に帰りなさい。天邪鬼の面倒はここの連中がやってくれるみたいだから……それと、あなたの秘書が酒に溺れていたわよ」

 

 「えっ?それって衣玖のこと……」

 

 

 言いきる前に紫の姿がスキマに飲まれて消えてしまった。天子はいなくなった紫にもう一度……

 

 

 「ありがとう……紫さん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……ありがとう……か……」

 

 

 地上のどこかの崖の上で呟く……感謝の気持ちを伝えるにはこれ以上のものは無い言葉であった。

 

 

 「天邪鬼に覚妖怪……地底は嫌われ者に好かれる場所なのかしらね」

 

 

 地底……嫌われ者達が集う場所。喧嘩が起り気性が荒い妖怪なんてざらにいるし、暴力的で誤って殺してしまうこともあるぐらいだ。その中で天邪鬼は生きていくことになる……けれど……天人は違う。

 

 

 「比那名居天子……あなたは地底に居てはいけない存在よ。あなたは嫌われ者ではないのだから……あなたにはあなたの居場所がある……そうでしょう?」

 

 

 紫はどこかに問いかけるようにそう呟いていた。

 

 

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