比那名居天子(♂)の幻想郷生活   作:てへぺろん

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今回は残酷な描写ありますのでご注意ください。


それでも問題ないという方は……


本編どうぞ!




東方地霊殿 終息後編
7話 半人前との出会い


 とてつもなく長い階段を登った先に、塀に囲まれたものすごく広大な屋敷があった。その屋敷では綺麗な花が舞い、とても美しい中庭が広がっていた。その所々で白いフワフワとしたものが浮かんでいる。

 

 

 この場所は白玉楼といい冥界にある。白いフワフワしている物体は幽霊でこの白玉楼でゆったりと存在している。そんな白玉楼に人の姿があった。

 

 

 「妖夢~!ご飯なくなっちゃった!」

 

 「幽々子様!また勝手に食べちゃったんですか!?」

 

 

 【西行寺幽々子

 ピンク髪に水色と白を基調とした着物に、幽霊を思い起こさせる三角の帽子を被っている。白玉楼に古くから住んでいる亡霊である。幽霊を統率できる力を持っており、冥界に住む幽霊たちの管理を行っている。

 

 

 【魂魄妖夢

 白髪をボブカットにした髪の先に黒いリボンを付けている。白いシャツに緑色のベスト、下半身は短めの動きやすいスカートを履き、胸元には黒い蝶ネクタイを結んでいる半人半霊の女の子。西行寺幽々子に仕えており、白玉楼の庭師でもある。

 

 

 テーブルの上が寂しい状況だ。先ほどまで多くの料理が並んでいたのに既に嵐が過ぎ去った後のように何もなかった。それもそのはずだ。嵐がテーブルを蹂躙した後に一人の元へ戻って行った……西行寺幽々子の口の中へ……

 嵐というのは、実際に嵐が蹂躙したのではなく、幽々子が料理を食らう姿がそう見えることから表している。常人ならば捉えることすらできない高速の手際によって口に運ばれる料理たちは何も理解できずに食べられていった。しかし、一人だけは違った。妖夢だけは幽々子が料理を一人で全て平らげてしまったことを理解していた。幽々子に付き従い、白玉楼の料理、掃除、身の回りのお世話全般、剣の指南役及び庭師をやっている妖夢にとっては造作もないことであった。妖夢以外に食事をする者など幽々子だけであったが……

 

 

 幽々子は妖夢が席を離れた隙に全部料理を食べてしまったのがバレてしまい、開き直るかと思いきや料理を更にご所望のご様子である。

 

 

 「ご~は~ん~!」

 

 「一人で全部食べたからおかわりはダメです!」

 

 「妖夢のケチ!貧乳!」

 

 「なんで私がそんなこと言われないといけないんですか!?それと貧乳ではありません!決して!!」

 

 

 幽々子の責任であるが、妖夢がいくら言っても聞かないので白玉楼では毎度お馴染みの光景である。

 ここには幽霊達がいるが、基本は幽々子と妖夢の二人だけで、幼い頃より幽々子に仕えていたために、幽々子と妖夢は主と従者の関係ではなく家族のような間柄なのである。

 

 

 「もう……これが最後ですからね。わかりましたか?」

 

 「は~い♪」

 

 「(最後って言うのこれで何度目だろう……)」

 

 

 お馴染みの光景と化していたために最後と言うのは一度出ない事など妖夢も覚えている。しかし、どうしても甘やかしてしまう……

 

 

 「ごはんごはん~♪」

 

 

 幽々子のご飯を楽しみにする顔を見るとどうしても甘やかしてしまうのだ。

 

 

 「(全く幽々子様ったら……)」

 

 

 妖夢が料理のおかわりを持って来ようとした時に思い出した。

 

 

 「そう言えば買い置きがもうなくなってました」

 

 「ええー!!」

 

 

 幽々子の叫びが白玉楼に響いた……

 

 

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 白玉楼から出かけて数分後、私は人里へ買い出しに来ていた。幽々子様が駄々をこねてしまって「今すぐおかわり貰えないと死んじゃうー!」って言ったために急遽人里にやってきました。幽々子様亡霊なのに死んじゃうって……ともかく私は人里で一通りの買い物を済ませてこれから白玉楼へ帰ろうとしていた時でした。

 

 

 「天子のあんちゃんが新聞に載っていたぞ」

 

 「読んだ読んだ。なんでも鬼を倒したんだってな?」

 

 「載っていた写真の天子さんもカッコよかったけど、やっぱり生が一番ね」

 

 「天人ってみんなカッコいいのかな?私の彼と交換してくれないかしら♪」

 

 

 周りの人々が何やら話をしている。新聞というのはおそらく天狗が発行している、それも烏天狗の彼女、射命丸文の【文々。新聞】の事だろう。あれにはよくお世話になっている。掃除の時や料理をするときによく使うので便利だ。内容は一応目に通すけれど、ろくでもない事ばかりだ。この前なんて私が辻斬りなんて書かれていた……全くもって遺憾です。私のどこに辻斬り要素があると!私はただ斬って確かめただけでしたのに……!

 人々が先ほどから話をしている中で天子と呼んでいた。それと天人とは一体……?あ、こんなことで気が散っていてはダメだ。早く帰らないと幽々子様が機嫌を悪くする……幽々子様自身のせいですけど……

 

 

 妖夢は急いで白玉楼に向かって飛び去るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私が人里から離れた森の上空を飛んでいる時でした。

 

 

 バキッ!

 

 

 何かが砕かれる大きな音がした。不意にその方向に視線を向けたが木々が生い茂っていて見えなかった。私は音の正体が気になったが、幽々子様が待っているので無視して帰ろうとしたが……

 

 

 バキッ!ベキッ!

 

 

 また音がした。今度は2回も……上空まで届く大きな音が聞こえたのだ。私は気になってしまった。好奇心といったところだろうか、私はその好奇心を抑えられず森に向けて降下していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それが彼との出会いでもあった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 音に惹かれてしまった私は森へ降り立った。先ほどから時々音がなる。大きな音から小さな音まで聞こえてくる。音の発生源は何だろうかと森の中を歩いていた。音が歩くたびによく聞こえるようになっていく。

 一歩、また一歩と歩いていく……近づいている。私は音の正体を知りたくて近づいていった。

 

 

 草むらの向こうから音がする。何かが砕かれる音、何かを千切るような音が……私の体から汗が流れる。しかし、私は好奇心に負けてしまっていた。そのせいでここで引き返せばよかったものを……私は見たいと思ってしまった。

 草むらから顔を覗かせて見てしまった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 妖怪共が己より小さい妖怪をいたぶりながら命を削っていく姿を……

 

 

 幻想郷では妖怪同士が争うことなど珍しいことはない。喧嘩、縄張り争い、それかちっぽけな理由で戦うことだってある。例えそれが人間であってもここは幻想郷なので食うか食われるかの弱肉強食の世界でそれは仕方がない事だった。だが違った。

 目の前の光景は命を(もてあそ)び、苦しむ姿を楽しんでいるかに見えた。妖怪は恐怖される存在だが、妖夢にとっても目の前の光景は異常だった。小さな妖怪の手足はしなびたように骨が砕かれ、目は引き抜かれ、歯は一本ずつ力づくで引っこ抜かれたようだった。周りには他にも妖怪が居たが、既に事切れていた姿だった。

 

 

 大きな体に大きな爪と牙を持ち合わせた牛のような顔が特徴的なのが、小さな妖怪をいたぶっている奴らの親玉だろう。子分共と思われる10匹ほどの妖怪で一人の小妖怪の命を削っていた。

 

 

 「おいおい!ボスが聞いているんだぜ!?そろそろ吐いた方が楽になるぜ?」

 

 「だ……から……しらないと……いっているだ……ろう……

 

 

 小妖怪が妖怪共に恐怖して声も小さくなり、歯がないためうまく喋れていない。そんな回答に不服だったのか子分の一人が小妖怪をいたぶる。

 

 

 「この!嘘つくんじゃねぇ!俺たちの仲間をやったのはお前だろ!!」

 

 

 鞭のようにしなった腕で小妖怪の顔を打つ。打たれるたびにその箇所が赤く染まり血が飛び散る。苦しそうな声が小妖怪から漏れる。

 しかし、それを止める者がいる。子分共の親玉だった。

 

 

 「よい、こいつでもないようだ。仲間をやった奴は別にいる」

 

 

 親玉はそう言うと小妖怪に近づいて無言で顔を踏みつぶした。

 

 

 バキッ!

 

 

 妖夢が聞いた音の正体はこれだった。何度も同じ音を聞いたのでこの光景がここで繰り返されていたのだろうとわかってしまう。妖夢の体に悪寒が走る。

 

 

 ……後悔している。私だって幻想郷に生きている身だ。こういう光景があることなど頭の中ではわかっていた。しかし、こんな凄惨な光景を望んで見ることもないし、せいぜい餌にされる人間の最後を見たぐらいだ。餌にされた人間はただ妖怪のための食料になったに過ぎない……だが、妖夢が見ているのは尋問に近い……否、拷問に近いものだった。見ていていい気分じゃない……早く離れたいと思った。

 

 

 しかし、私は耳に入れてしまった。妖怪共の会話の内容を……

 

 

 「ボス、どうしやす?」

 

 「仲間を殺した犯人の特徴とかわかってないんですか?」

 

 

 子分が親玉に問う。帰って来た答えが……

 

 

 「こいつらは武器を持っていた。そして、俺様が駆け付けた時にはまだ息があった奴がいた。そいつから聞いたんだが……息を引き取る前に一言だけ言った。そいつは変わった()を持っていたらしい」

 

 

 ()という言葉に自然と体が反応してしまった。

 妖夢が持っているのは刀だが、日本刀を武器としてだけではなくファッションとしても気に入っているので、剣にもこだわりを持っている。刀の良さも剣の良さもよく知っている妖夢にとって興味のあるものであった。しかし、今回ばかりはそれがいけなかった。不意に自分の所有している刀に視線がいってしまったその時に体勢を動かしたために気がつかなかった。

 

 

 ペキッ!

 

 

 足元に落ちていた小枝を踏んづけて音を立ててしまった。

 

 

 しまった!?音を立ててしまったら……!私は咄嗟に視線を妖怪共の方へ向ける……妖怪共がこちらを向いていて目が合ってしまった。バレてしまい、最悪の状況になってしまった……だが、相手はただの妖怪の束に過ぎない。私に掛かれば一分と持ちやしない!

 

 

 「女がいるぞ!捕まえろ!」

 

 

 子分の一人が叫ぶ妖夢を捕らえようと近づいていく。

 妖夢はすぐさま刀を抜き、近づいてくる一匹の妖怪の腕を切り落とす。

 

 

 「ぎゃあああああ!俺の腕がぁああああああ!」

 

 

 妖怪は痛みで悶絶する。その様子を見た仲間の子分達は一瞬たじろいだ。それに比べて妖夢は余裕の表情を見せている。

 

 

 「どうしたんですか?私を捕まえるんじゃなかったんですか?」

 

 「ぐっひひ!貴様か!俺様の仲間をやったのは?」

 

 「ボス!あいつ剣を持ってやすぜ!」

 

 「刀です!」

 

 

 うっかり反応してしまった。私が持っているのは長刀の【楼観剣】と短刀【白楼剣】である。剣と入っているがちゃんとした刀です。剣と刀は同じ扱いにされがちですが、私は剣は剣、刀は刀と区別しています。形も刀の形をしています。なので、私が持っている刀を剣と呼ぶのは私自身が許せないのです。

 それは置いておきましょうか。それにしても私がこいつの仲間を殺したと勘違いしているようですね。違うということを証明できませんけど、違うということだけは言っておこう。それでも襲ってくるなら斬るまでですけどね。こんな妖怪共なんて大したことではありませんし。

 

 

 「私はお前たちのような醜い輩の仲間なんぞ知りません」

 

 「こいつ!俺たちを醜いだと!?」

 

 「ボス!こいつやっちゃいましょう!」

 

 「ああ、そうだな」

 

 

 妖夢の一言余計なことを言ったために妖怪共は怒りに任せて妖夢に狙いを定める。妖夢を爪や鈍器で狙うが妖夢は軽々とそれを避けて刀を振るう。肩と腰に一撃ずつ与え、子分らは痛みに苦しむ。妖夢にとっては赤子の手を捻るように簡単な相手だった。

 

 

 雑魚ですね。私に掛かればこんなもんです。全くもって話しにもなりません。それにあの親玉さえ潰せば子分共も逃げ出すかもしれない……まぁ、全員斬った方が早いからそうしますけどね!

 

 

 妖夢は(たか)(くく)っていた。自分ならば余裕だと……

 

 

 それが運命を左右した。

 

 

 「隙あり!!」

 

 「――あっ!?」

 

 

 気がつかなかった。いつの間にか背後の草むらから飛び出した子分が妖夢に体当たりをくらわせた。妖夢は飛ばされ地面を転がる。痛みを感じるもすぐに立ち上がろうとするが、すぐさま他の子分共が妖夢を取り押さえて刀を奪う。

 

 

 「か、かえせ!私の刀!!」

 

 「誰が返すかバーカ!油断したてめぇが悪いんだ」

 

 

 妖夢は取り押さえつけられながら思った。

 

 

 しまった!私が油断してしまったばかりにこんな奴らに……!

 

 

 屈辱だった。だが、自分の傲慢さに嫌気がさした。雑魚と(たか)(くく)ったせいで捕らわれる不甲斐ない姿をさらすことになった。妖夢は地面に顔を押さえつけられ、手足も動かないように拘束されてしまった。楼観剣と白楼剣も奴らの手の中だ。

 

 

 楼観剣と白楼剣を手にした子分は物珍しそうに眺めており、腕を斬られた子分は妖夢に怒りを向ける。他の子分共もこれから妖夢をどうするか話し合っていた。そんな中で親玉が妖夢に近づく。血がついた体に悪臭が妖夢の鼻につく。

 

 

 「お前が俺様の仲間を殺した奴か?」

 

 「ち、ちがう!私じゃない!」

 

 

 妖夢は真実を言った。もうこの状況になってしまったらどうすることもできない。今の妖夢に戦うという選択肢は存在しなかった。

 それを聞いた親玉は少し考える素振りを見せると納得したように呟いた。

 

 

 「そうだな。奇襲もわからねぇ間抜けのお前が俺様の仲間を殺せるわけはねぇからな」

 

 「……!」

 

 

 妖夢の心が痛みを感じた。

 

 

 悔しい……こんな奴にバカにされるなんて……!私は確かになめてかかっていた。けれど、それは……!

 

 

 妖夢は気が付いた。言い訳をしていると……

 何かを理由にして自分はそれで負けてしまったのだと自分に言い聞かせているように感じたのだ。そして、そんな自分を知ってしまい、気づいてしまったのだ。

 情けない……幽々子が妖夢に向かってそう言い放っているような幻覚までもが見える。幽々子に幻滅されるのではないか、幽々子に必要とされなくなるのでは?そう無意識に想像してしまい、気分が悪くなる。妖夢は無意識に自分がまだまだ半人前であることを実感してしまっていた。

 

 

 そんな状態の妖夢に更に追い打ちをかけるような出来事が起こる。

 

 

 「ふむ、俺様も運がいい。そろそろ嫁が欲しかったところだ。こいつは中々いい面をしている……決めたぞ。お前俺様のガキを生め」

 

 

 妖夢は一瞬理解できなかった。頭の中が真っ白になり、牛顔の妖怪を見つめる……

 

 

 「な、なにを言っている!?」

 

 「俺様だって長年生きてきたんだ。そろそろお愉しみが欲しいと思っていたんだよ。安心しろ、毎日たっぷりと可愛がってやるからな。ぐひひひ♪」

 

 

 親玉が舌なめずりをするとよだれがこぼれる。鼻息も荒くなり、興奮していることがわかる。次第に妖夢は己の置かれている状況が非常によくないことだと理解して逃れようと暴れだすが、何人もの妖怪共に押さえつけされていて逃げることなどできやしない。

 牛顔の親玉が妖夢の体を舐めまわすように見る。唾液が滴り落ちて吐く息が妖夢を汚す。

 

 

 「体は幼い感じが残っているが柔らかそうな肌だ♪俺様がたっぷり味わって、体の芯まで感じさせて忘れさせなくしてやるぜ!ぐひひひひ♪」

 

 「や、やめろ……!」

 

 「怖がるな。次第に慣れるし、ガキを生んでも毎日毎晩抱いてやるからな♪ぐひ、ぐひひひ♪」

 

 「やめ……やめて……やだぁ……!」

 

 

 い、いや……嫌!嫌嫌嫌嫌嫌!!こんな奴の子供なんて生みたくない!気持ち悪い、臭い、近づくな!離して!お願い!誰か……誰か助けて!!幽々子様!!!

 

 

 妖夢の服に手を伸ばして、力任せに破く。破れた箇所から下着が見え、周りの子分共も興奮を抑えきれない……

 

 

 「大丈夫だぁ!いい子にしてたら食わずに養ってやるからな♪ぐひ、ぐひひひひ♪」

 

 

 妖夢は願った。望んでも誰も来ないだろうと思いつつも最後の思いを乗せて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 助けて!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ぶぎゅぅ!!?」

 

 

 恐怖で目を閉じていた妖夢の耳に悲鳴じみた声が聞こえた。周りの妖怪共も驚いているのがわかる。ゆっくりと目を開けて見ると、顔面に大きな石がめり込んだ牛顔の妖怪の姿だった。

 そのまま仰向けに倒れてしまい、周りは唖然としていた。そして、駆け寄った子分共が心配する中、妖夢を捕らえていた妖怪の首が飛んだ。

 

 

 「………え?」

 

 

 妖怪の手から逃れた妖夢が誰かに抱き寄せられた。そこには先ほどの醜い妖怪共とは比べ物にもならないように美しく凛々しい顔立ちの男性が妖夢を守るように抱いていた。

 

 

 「………無事か?妖夢?」

 

 

 私と彼との初めての出会いだった………

 

 

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 衣玖に許可をもらって地上の視察に来ていた。本当は東方の世界を堪能したいというのが本音だけど………衣玖には今日中に帰ると言ったし問題はないでしょう。それにしても人里はいいな♪みんな親切に挨拶してくれるし、何より温かい………生前の私にはありえない光景に涙を心の中で流しながら歩いていると慧音と出会う。

 

 

 「天子、来ていたのか」

 

 「ああ、慧音元気していたか?それに妹紅は今日はいないのかな?」

 

 「私は元気だ。妹紅なら竹林の奥の永遠亭に行っているだろうな」

 

 

 永遠亭は妹紅の宿敵であるお姫様が住んでいる。ならば今日も殺し合いしているんだな。殺し愛とも呼べる程の仲良しだよね。喧嘩する程仲がいいって言うし、私も萃香と喧嘩して仲良くなったしね。次の宴会が楽しみだ♪

 

 

 「天子、新聞読んだぞ。まさか鬼を倒してしまうなんて!天子は強かったのだな」

 

 「そんなことないぞ。私は萃香の思いに答えただけだ。それに萃香と戦って彼女と仲良くなれた。嬉しい事だらけだったよ。喧嘩してよかったと思っている」

 

 「まるで考えが鬼みたいだな」

 

 

 慧音と二人で笑い合う。文が私の元へ来て、インタビューしてくれたけど初めは衣玖が警戒して焼き鳥が焼き上がってしまうんじゃないかと冷や冷やしました。文がいろいろと聞いてくれてとても緊張していた。私のことが幻想郷中に広がったら私は有名人になってしまう………内心ドキドキで大変だったわ。

 

 

 「そうだ天子、言っておくことがある」

 

 

 ん?どうしたの慧音?まさか告白とかないよね?嬉しいことは嬉しいけど、私中身は女の子だし、私困っちゃうから………

 

 

 内面で妄想している天子を知る由もしない慧音が言った。

 

 

 最近、森の方で怪しい音が響いて悲鳴みたいなものが時より聞こえるとか………何ですかね?私はホラー要素は苦手なのだけれども、人里のみんなにはお世話になっているし、放っておくと何かまずい気がする……今日は視察に来たことも一応だけれどあったので行ってみるか。

 

 

 私は慧音と別れて森へ入った。勿論、慧音に心配かけたくないので音の正体を探ることは伝えてない。よってここには私一人だけである。昼前なのに、日光を遮るように木々が立ち並んでいて薄暗い。それでも木々の隙間から多少の光が入るので真っ暗というわけではないのだ。明かりを灯す必要はないぐらいの暗さなので道を歩くのには問題ない。

 そんな森の中で歩いていると遠くの方で微かに音がなった。もしかすると慧音が言っていた音なのかもしれない。それに悲鳴という単語が気になる………何もなければいいんだが………

 

 

 天子は音がする方へ歩いていると妖気を感じた。それは小さいながら複数の妖気だった。それと何やら話声が聞こえてきていた。

 

 

 「お前が俺様の仲間を殺した奴か?」

 

 「ち、ちがう!私じゃない!」

 

 

 誰かの声がする。声質的に一人は女性のようだ。もう一人の方は声が低い……すると男か?それに殺したとか物騒な単語が聞こえてきた。女性の方は否定しているようだが一体何が起こっているのだ?

 

 

 「そうだな。奇襲もわからねぇ間抜けのお前が俺様の仲間を殺せるわけはねぇからな」

 

 「……!」

 

 

 近づいている……この草むらの先に声の主がいるようだ。

 

 

 天子は草むらから顔を出して覗いた。すると、そこにはよく知る顔がいた。

 

 

 妖夢だ!まさかこんなところで妖夢と出会えるだなんて感激……できないな。何やら妖夢は見慣れないモブ妖怪に捕まっているようだ。辻斬りしてしまって怒っているのか?だが、雰囲気がただならない……嫌な気分だ……

 

 

 「ふむ、俺様も運がいい。そろそろ嫁が欲しかったところだ。こいつは中々いい面をしている……決めたぞ。お前俺様のガキを生め」

 

 

 …………………はっ?

 

 

 天子は一瞬思考をやめてしまった。

 

 

 「な、なにを言っている!?」

 

 「俺様だって長年生きてきたんだ。そろそろお愉しみが欲しいと思っていたんだよ。安心しろ、毎日たっぷりと可愛がってやるからな。ぐひひひ♪」

 

 

 こいつは何を言っている?妖夢は捕らえられ、周りには妖怪共が取り囲む。それに牛顔野郎は気持ち悪い程の興奮状態だ。妖夢は妖夢で血の気が引いたように怯えた表情になっていた。

 

 

 「体は幼い感じが残っているが柔らかそうな肌だ♪俺様がたっぷり味わって、体の芯まで感じさせて忘れさせなくしてやるぜ!ぐひひひひ♪」

 

 「や、やめろ……!」

 

 「怖がるな。次第に慣れるし、ガキを生んでも毎日毎晩抱いてやるからな♪ぐひ、ぐひひひ♪」

 

 「やめ……やめて……やだぁ……!」

 

 

 妖夢は声が震えていた。妖怪共の魔の手が妖夢に伸びようとしていた。

 

 

 そんなとき私はつまらないことを思ってしまった……

 

 

 これが幻想郷の裏側なのだろうか……私はゲームと天界での生活で表の面しか見えていなかったのかもしれない。ゲームは主人公達を操作して異変を解決し仲良くなっていく。天界でも皆、歌って踊って遊んで毎日を過ごしている。だが、私は記憶の隅に追いやっていただけなのかもしれなかった。ゲームの設定上でも辛い過去を持つキャラ達はいるし、天界に引っ越して来た時でも不良天人と陰で言われていた。私の努力で今ではそういうことはなくなったが、実際体験したことだった。それを考えると目の前の状況だってあり得ないことではない。

 コインの表があるように裏がある。朝があるから夜がある。男と女の性別があるように全てのものにバランスがある。幻想郷の人間も妖怪に襲われ命を落とし食われる現実、人間が妖怪を退治し命を奪う、頭の中では当然あるだろうなと思っていたことでも、逃れられぬ残酷な場面を目を通して見てみると胸糞悪いったらありゃしない。

 天界から少女が襲われそうになった時も助けたのは胸糞悪かったから……死ぬのを見るのが嫌だったから……救いたいと思ったから……私自身のエゴだった。モブとはいえ、この世界に生きる者達を殺して少女を救った。弱肉強食の場面で私は横やりを入れた。それがこの世界にとって正しいことだったのか?私は今、そう疑問を感じてしまった。

 

 

 転生という形でこの世界にやってきて、元天子ちゃんの人生を横取りして生きている私は卑怯者なのかもしれない。元のままの私だったなら一生家の中で閉じこもっていただろう……比那名居天子という存在として私はここにいる。元天子ちゃんの影響で私の性格は変化していると思っている。萃香との戦いで我慢できたのもそのおかげだろうし、戦いたいという衝動にかられたのもそうだ。原作のキャラだから助けるのか?弱肉強食の世界で自己満足のために救おうとしているだけじゃないのか?お前はただカッコつけているだけじゃないのか?たとえそう言われたとしても……それがなんだ?

 

 

 「お前は元天子のおかげで今があるんだぞ」……それでもいい。「お前は本来この世界にいない存在なんだぞ」……そうだ。本来ならこの場に私はいない……だが、今この場にいるのは引きこもりで一日中パソコンに向かっていた時の私じゃない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 非想非非想天の息子であり、天人くずれ……比那名居天子だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前で襲われている子がいるのに、世界の理など他人の目などどうでもいいことを一瞬でも気にしてしまった私自身をぶん殴ってやりたい。少女を助けた時はこんなことなど思わずに救いたいと思ったじゃないか!すまない妖夢!絶対に救ってあげるわ!!

 

 

 「大丈夫だぁ!いい子にしてたら食わずに養ってやるからな♪ぐひ、ぐひひひひ♪」

 

 

 その子に触れるな!!

 

 

 天子は要石を牛顔の妖怪に放った。

 

 

 「ぶぎゅぅ!!?」

 

 

 牛顔の顔に要石が食い込み仰向けに倒れる。すぐさま妖夢の元へ駆け寄り緋想の剣で、妖夢を捕らえている妖怪の首を()ねる。

 

 

 「………え?」

 

 

 妖夢から声が漏れる。すかさず天子は妖夢を守るように抱き寄せる。

 

 

 「………無事か?妖夢?」

 

 

 妖夢の目には涙が溜まっていた。しかし、助けが来たことがわかると怯えた表情は次第に落ち着きを取り戻し、呆然としていた彼女の意識を呼び戻す。

 

 

 「あ、あの……あな……た……は……」

 

 

 まだ怯えていたためか声がうまく出ない妖夢に優しく語り掛ける。

 

 

 「私は比那名居天子、妖夢はここにいてくれ」

 

 「ひ……なな……い……」

 

 「大丈夫だ。私が守ってやる」

 

 

 妖夢を担ぎ、木の根元まで運び座らせる。そして妖怪共に向き直ると、先ほど要石の一撃を受けた牛顔の親玉が起き上がった。

 

 

 「ぐびひぃ!貴様!この俺様のお愉しみの邪魔するとは一体どこの誰だ!?」

 

 「彼女に名乗っても貴様に名乗るほど私の名前は安くはない」

 

 「な、なんだとぉ!!」

 

 

 妖怪共は天子を睨みつける。子分は天子の手に持っている緋想の剣に気づく。

 

 

 「ボス!奴が持っているのも剣ですぜ!」

 

 「貴様か!?俺様の仲間を殺したのは!?」

 

 「……一体何の話だ?」

 

 

 牛顔の妖怪は天子に言った。以前の地底での異変の時に人間の女の子を見つけ、餌とするために牛顔の部下である4匹の子分が先に追いかけたことを伝える。その子分とは天子が天界から見つけ、守った時に斬った妖怪共であった。

 

 

 まさかあの時の……私のミスか……死ぬのも時間の問題だろうと放っておいたことも、仲間がいるかもしれないという配慮を視野に入れずに自身で完結してしまったせいか……私は愚か者のようだ。少女を優先したのは間違っていなかったと私は思っているが、その結果が罪のない妖怪達を巻き込んでしまった。どうしようもないことだとわかっているが、私のせいで死んでしまった妖怪達に申し訳ない……妖夢もこんな目に巻き込んでしまった!

 

 

 天子は唇を噛んだ。憎いとか、悔しいとかではない。自分自身に怒りを感じた。あの時はきっと少女を優先してよかったと思う一方で、自分のせいで周りに転がっている妖怪達がひどい目にあったことも妖夢に怖い体験をさせてしまった事実に怒っていた。

 

 

 「……そうだ。私がお前たちの仲間を殺した」

 

 「そうか……そっちから現れてくれるとはな……お前たち!こいつを殺せ!!」

 

 

 私はエゴイストだ。私のせいでこうなってしまったのだが、今もの凄くムカついている……こいつらに……関係のない妖怪を殺し、妖夢を傷つけ、女としての尊厳を犯そうとしたこいつらに慈悲などない……

 

 

 「……貴様らに今日生きる資格など……ない!」

 

 

 与えるのは確実なる死だけだ……!

 

 

 ------------------

 

 

 「死ねぇ!!」

 

 

 一匹の妖怪が天子の命を奪おうと爪を振り下ろす。

 

 

 「無駄」

 

 

 天子は軽々と避け、緋想の剣で妖怪の首元を突き刺す。そして無情に横に振るうと刺された妖怪の首は飛び、鮮血をまき散らして絶命した。他にも近くの妖怪共が仇を打とうとする……が、天子は軽々と妖怪共を剣で切り裂いていく。手、足、胴体、首がバラバラとなり、命の灯が消えていく。そのすぐ後にも他の妖怪達が天子を襲おうとしたが、拳で受け流し、要石で体を砕き、足で妖怪を痛めつける。あまりの痛さに妖怪達は悲鳴を上げ、地面を転がり苦しむが天子はそれを許さない。

 

 

 苦しむ妖怪の顔に足を乗せ力を加える。ぐしゃっ!と音を立て、妖怪の顔はただの肉塊に変貌した。他にも転がる妖怪達を要石で体ごと潰していく。地面には原型を留めていない肉の塊と赤く染まった大地だけ……そんな光景を見ている牛顔の親玉と残った2匹の子分は自然と足が後ろに下がる。

 

 

 「ボ、ボス……な、なかまが……!?」

 

 「う、うろたえるな!相手は一人だぞ!お前たちがまだいるじゃねぇか!」

 

 「ボ、ボスも一緒に戦ってくれるんですよね?」

 

 「も、もちろんだ……い、いけよ!早く!」

 

 

 2匹の妖怪はお互いに顔を見合わせ天子にゆっくりと近づいていく。それは警戒よりも恐怖で動きがゆっくりになっているようだった。

 

 

 「……!」

 

 

 天子が妖怪を睨む。睨まれた2匹の妖怪はたじろいだ瞬間終わっていた。

 2匹の妖怪は胴体が真っ二つに別れて地面に転がった。自分が殺されたなど知らずにいけたことが幸いなことだろう……

 

 

 今の天子に慈悲など持ち合わせてなどいない。今の一瞬だけは命を狩る者であり、笑みを見せることなどない。仮面を被っているかのような無表情で残った牛顔の妖怪に近づく。

 

 

 「ぐ、ぐひぃ!?お、おのれ……!ぶち殺してやるー!!」

 

 

 大きな拳を上げて押しつぶさんとする。だが、天子はそれを片手で難なく受け止めた。妖怪の方は驚いた。力は人間よりも上、それに妖怪の中でも力ならそこら中にいる妖怪よりも上だと自負していた牛顔の親玉の拳を難なく受け止めてしまっていた。

 

 

 「き、きさま!人間じゃないな!?」

 

 「ただの天人くずれだ……」

 

 

 天子は妖怪の拳ごと持ち上げて放り投げた。宙を舞い、地面に叩きつけられた妖怪は信じらないといった顔をしていた。

 

 

 「ば、ばかな!?俺様が力負けするなんて……!?」

 

 「貴様など私の(萃香)に比べれば天と地の差……いや、貴様と比べるなんて失礼だな」

 

 「な、なんだと!?この野郎ー!!」

 

 

 その言葉に激昂した妖怪は天子に再び襲い掛かるが、二度剣を振るうと妖怪の両腕が落ちた。一瞬何が起こったのか頭が理解できなかったが、体に激痛が走る。妖怪は痛みに悲鳴を上げるがそれが最後の断末魔となった。

 

 

 天子は緋想の剣をしまうと、ジャンプして牛顔の頭上に飛ぶ。両手で牛顔の顔を掴み、体を捻ると骨が砕け、肉が裂ける音がする。更に捻りを加えると、妖怪の顔が360°回転したかに思うと鮮血を噴出しながら首が千切れる。首から上を失った妖怪の肉体は力無く地面に倒れる。着地した天子の手には無理やり体と首を千切られ絶命した親玉の首が乱暴に握られていた。天子はその首を捨てると血だらけになった体を見ながらため息をついた。

 

 

 「……汚れてしまった……絶対に衣玖に怒られる……」

 

 

 帰ったら絶対にこっぴどく叱られるのだろうと天子は思っていた。もしかしたら、天界の皆が地上に宣戦布告することになったらどうしようかとも心配していたが、今は妖夢のことが先だ。木の根元で天子を唖然と見つめる妖夢の元までやってきた。天子は優しく妖夢に語り掛ける。

 

 

 「大丈夫か?立てるか?」

 

 「え……あ、あの……」

 

 

 どうやら妖夢は腰を抜かしてしまったようだった。それも無理はない。妖怪共に襲われそうになった恐怖と目の前の非情な殺戮を見せてしまった……感情的になりすぎたな……

 

 

 「怖い思いをさせてすまない……私のせいで妖夢に嫌な光景を見させてしまって……」

 

 

 天子は謝った。妖夢は慌てて否定する。

 

 

 「あ、あやまらないでください!助けていただきましたし、謝るのは私の方です。ごめんなさい………」

 

 「……妖夢……ありがとう」

 

 

 天子はようやく笑った。先ほどまでは表情は硬く、誰もが心など持たぬ者の面だと思ってしまう程だったから……

 

 

 落ち着きを取り戻すと、妖夢はふと疑問に思ったことを聞いた。何故自分の名前を知っていたのか?一瞬天子は狼狽えたように見えるが、友人に聞いて知っていたことで貫いた。ゲームで知っているなど答えたら変人カテゴリーに分類されることを恐れたなんて妖夢は知らない。

 

 

 妖夢は天子に肩を貸され、立ち上がったが少しフラフラしているがそれでも白玉楼に戻ろうとしていた。折角買った食材は戦いの中で散乱して使える状態じゃなかったが、再び人里に帰る気力はない。今は帰ってゆっくりと気持ちと体を休めたい気分だった。

 

 

 「妖夢は帰るのか?私が送って行こう」

 

 「ありがとうございます。ですが、私は飛べるので問題ありません。お恥ずかしながら腰を抜かしてしまうとは……」

 

 「それもあるが……その……服はどうするんだ?」

 

 「服……?」

 

 

 妖夢は自分の服を見ると破けて下着が見えている。妖夢は目をパチパチと閉じたり開いたりした後、顔が真っ赤になっていき……

 

 

 「きゃあああああ!!!」

 

 

 天子の顔をおもいっきりぶん殴ってしまった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……ごめんなさい……天子さん……」

 

 「いや……別に痛くなかったから心配ない……」

 

 

 妖夢は腰が抜けてしてしまい、飛べるが格好が格好なので天子に白玉楼まで送ってもらうことにした。二人の目の前には広大な屋敷が立っており、ここが白玉楼である。天子は妖夢の方を見ないようにゆっくりとしたペースで門前まで妖夢を連れてやってくる。ちなみに天子は妖夢にぶん殴られたが、体が丈夫なので痛くも痒くもなかった。ここに来るまでに何度も妖夢に謝られていた。天子は何も気にしていなかったが、妖夢は先ほどから顔が赤い。

 

 

 「天子さん、本当にごめんなさい……助けていただいたのに私……あなたを殴ってしまって……」

 

 「気にしていない。それに私のせいでもあるんだ。その……すまない」

 

 

 妖夢が謝れば天子が、天子が謝れば妖夢がと言ったお互いに謝罪の連鎖が続いている光景なのである。そんな中で天子がいきなり笑った。

 

 

 「ふふ、妖夢は本当に真面目だね」

 

 「わ、わたしは真面目が取柄ですから……他の方からはよく揶揄われたりしますが……」

 

 「そうなんだね。でも私はその真面目なところが好きだけどね」

 

 「す、すすすす、しゅきぃ!?」

 

 

 おもいっきり噛んだ。妖夢の顔が更に赤くなり湯気が出ている。こういったことには免疫がないようだった。妖夢はそれから黙ってしまい二人の間は沈黙に包まれた。

 

 

 気まずい……妖夢を褒めようとしたけど失敗か……まぁ、もう門前はすぐそこだし、無事に妖夢を送り届けることができたからよかったけどね。

 

 

 そうしていると、ようやく門前にたどり着いて天子が扉を開く。天子は妖夢を白玉楼へ送り届けたらすぐに天界に帰ろうかと思ったが、そうはならなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あ!もう妖夢ったら遅い……あなたは誰かしら……それに妖夢……その服……あなた妖夢になにしたの……」

 

 「「あっ」」

 

 

 天子は血まみれ、妖夢は服が破れて服は乱れた状態だ。それに天子は男で妖夢は女……目の前には白玉楼の主である幽々子……幽々子の目に光はなく、ゆったりとした表情ではなく、静かに敵意をむき出しにした表情だった。冷たく鋭い視線を天子に向ける幽々子の周りには美しく残酷な蝶が舞っていた……

 

 

 最悪の状態で最悪の現場に遭遇してしまった……

 

 


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