比那名居天子(♂)の幻想郷生活   作:てへぺろん

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中々筆跡が進まなかったですが、ようやく投稿できます。


短いですがそれでは……


本編どうぞ!




82話 外の世界と幻想郷

 幻想郷は(一部のみ)慌ただしい状況に陥っていた……

 

 

 「どうして天子殿はまだ見つからないのですかぁああああ!!?」

 

 「太子様落ち着いてください!」

 

 「太子様!我にお任せを!また博麗の巫女の奴に催促してくるのじゃ!」

 

 「布都!こうなったら私達の仙術で多くの犠牲者を出してでも天子殿を探しだす術を……!」

 

 「だから落ち着いてくださいってば!!」

 

 

 天子が消えてしまいその捜索が行われていた。しかし一向に見つからず情報もないため捜索は困難を極めていた。そんな中でここは神霊廟で取り乱す太子こと豊聡耳神子を必死に引き止めるは蘇我屠自古、その周りでちょこまかと進言するのは物部布都であった。そしてその光景をため息交じりに見ているのは邪仙である霍青娥と宮古芳香であった。

 

 

 「豊聡耳様はあの殿方のことになると腑抜けになってしまいますわね……これならばそこらにいるアリの方がマシですわよ?」

 

 「せ~い~が~の~い~う~と~お~り~!」

 

 「芳香ちゃんもこう言っているので、豊聡耳様はご隠居なさったらどうです?」

 

 「青娥!私はまだまだ現役です!天子殿に救ってもらった命と私に課せられた新たなる使命をここで投げ出すわけにはいきません!そのためにも……天子殿成分を補給するためにも青娥も天子殿を探してください!」

 

 「嫌ですわ。何故わたくしがそのようなことを……」

 

 「ああ……天子殿はどこでしょうか……きっと今頃は愛しい私が傍にいないから寂しい思いをしているに違いない!こうなったら私自身の足で幻想郷の隅から隅まで地底から天界のそのまた先まで探しだしてみせる!天子殿待っていてくださいよー!!!」

 

 「太子様、闇雲に出かけるのは危険です!もっと情報を集めてからでも……!」

 

 「屠自古よ、嫌ならついてこなくてもよい!後に続け布都!」

 

 「我にお任せを!」

 

 「太子様!?ちょっと待ってくださいってば!!」

 

 「……はぁ」

 

 

 神霊廟から飛び出してそのまま走り去って行ってしまった光景に深いため息しかでない青娥であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「まだ見つからないのか……あいつ何回厄介ごとに巻き込まれているんだよまったく」

 

 

 迷いの竹林で背中に籠を背負いタケノコをしている藤原妹紅に、大きな石の上で胡坐(あぐら)をかいているのは因幡てゐである。

 

 

 「妹紅は心配じゃないのかい?恋する乙女さん♪」

 

 「……今日は晩飯はうさぎ焼きだな」

 

 「冗談ウサよ」

 

 

 妹紅の握りしめられた拳から炎が燃え上がっているのを見たてゐは冗談だと言い張る……冗談で言ったわけではなかったのだが。

 

 

 「でも心配じゃないのかい?のんびりタケノコなんてとっていていいの?」

 

 

 てゐの言うことは間違っていない。妹紅は天子が消えたことで動揺した。しかし前にもそんなことがあったと頭の隅で憶えていた。それに他の者も捜索しているし、自分も時間がある時は歩き回って探している。それでも今まで通りの日常を妹紅は過ごしていた。

 

 

 「うん?あいつは巻き込まれる体質らしいし、前も小鬼に攫われて消息不明だった時期もあったんだ。けれど、あいつは無事だと思うぞ」

 

 「どうしてわかるんだい?」

 

 「……無事だと信じたいからだ。それにあいつはそう簡単に挫けるような弱い奴じゃない……だから無事だと信じて私は待っていればいいんだよ」

 

 「……妻が夫の帰りを待つ感じ?」

 

 「ぶほぉ!?ち、ちがう!つ、妻だなんて……ごにょごにょ……」

 

 「(うわぁ……)」

 

 

 顔を真っ赤にしてモジモジする姿を晒す妹紅にドン引きしたてゐであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「妖夢、聞いてる?」

 

 「……」

 

 「妖夢、妖夢、妖夢ちゃ~ん?」

 

 「……」

 

 「妖夢ちゃんのお胸はこの饅頭よりも小さい……それは何故かって?元々小さいからよ!なんちゃって♪」

 

 「……」

 

 「……はぁ」

 

 

 ここは白玉楼の一室でそこには毎度お馴染みのテーブルに山盛りにされた料理の数々の光景とピンクの悪魔である西行寺幽々子と魂魄妖夢が向かい合っていた。しかしその一室の空気は重苦しかった。妖夢のせいであるが……

 

 

 「妖夢そろそろ元に戻りなさい。心配なのはわかるけどいつまでも落ち込んでいるのは良くないわよ?」

 

 「あっ、幽々子様……なんでしょうか?」

 

 「何も聞いていなかったようね。天子さんのことになると周りが見えなくなるのは未熟な証拠よ?」

 

 「す、すみません……」

 

 「ま、そういうところが可愛いんだけどね♪」

 

 「も、もう幽々子様ったら……」

 

 

 頬っぺたをプニッと突かれて恥じらいを見せる妖夢は心の底では今か今かと天子の帰りを待ち続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「幽香元気出してよ……」

 

 「私は元気よ……メディ」

 

 「じゃあさ……イライラしないで」

 

 「……」

 

 

 太陽の畑で水やりをしている幽香。その手元のじょうろから水が流れ出る……それはじょうろの口からではなくひび割れた箇所から流れ出ていた。天子がいなくなり一向に帰って来る様子もなく時間が過ぎていくばかりで音沙汰無し。何度か人里や里外れを見て回ったが結局手がかり無し……次第に幽香の機嫌が悪くなり始めて何日も過ぎており、その内幻想郷中の住人相手に暴れ出してしまうんじゃないかと花達も気が気ではない。自分達に被害は来ることはないのだが、それでもどうにかならないかと花達も不安が募っている。

 

 

 「幽香は最近怒りっぽいよ?八つ当たりしないだけいいけど……お兄さんのこと気になっているんでしょ?」

 

 

 幽香の肩がビクリと震える。メディスンは花達ですら避けていた会話を平然と言った。花達ですら今の幽香に他人行儀な態度を取ってしまう程に不機嫌が蓄積している証拠である。

 

 

 「……なんでそう思うのかしら?」

 

 

 そんな本人は何もわからぬ笑顔で答えようとしているようだが、顔が引きつっていた。

 

 

 「表情に出ているよ幽香、それに人里へ行ったりしているのはお兄さんの行方を探しているからだよね?」

 

 「……」

 

 

 笑顔だが笑っていない……風も花達もこの場の空気に無言を貫き通すことを決めた。この空気の中に平然と立っていられるメディスンの度胸には誰もが感服するだろう。

 しばらく沈黙が支配していたが、やがて笑顔を崩して息を吐く幽香……

 

 

 「降参よメディ……そうね。天子を探していた……けど手がかりは当然ゼロだった。一体どこで油を売っているのやら……」

 

 

 今度はピキピキと言う音を立てて手元のじょうろが悲鳴を上げて……

 

 

 「今度会った時には……色々とお話してあげないとね♪」

 

 

 ピキピキと言う悲鳴からバキンという叫び声に変わり、じょうろは幽香の犠牲となってしまった。それを見たメディスンは天子も同じ目に遭うのだろうと確信したとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それで……まだ見つからないのですか?」

 

 「ダメね、どこにいるかもわからない相手を探すのは至難の業なのよ」

 

 「そう……ですか……霊夢さんと魔理沙さんの方は……?」

 

 「残念だけれど私の方もからっきし外れよ」

 

 「こっちもだぜ……香霖(コーリン)(霖之助)の奴も責任を感じているしな……天子のやつどこに消えちまったんだ?」

 

 

 博麗神社を訪れていたのはお馴染みの魔理沙、そして衣玖と華扇であった。天子の消息を絶ってから時間が経過し、華扇の手も借りて幻想郷を隅々まで片っ端から捜索したが結果はご覧の通り……霊夢に至っては投げ出しかけである。しかし友好的に賽銭を恵んでもらえる天子がいなくなってしまえば、これからの生活に支障をきたすので止めるに止めれないジレンマに支配されていた。その中で天子と共に早苗も消えてしまったが特に気にされていない様子で、霊夢いわく「ふ~ん」だそうだ……もはや感想すらなかった。

 

 

 「守矢の神様達も長引く失踪で心配し過ぎて、精神が耐えられなくなったらしいわ。今は永遠亭で療養中みたいよ」

 

 「マジかよ……」

 

 

 華扇の報告に絶句する魔理沙、早苗に振り回されている神奈子と諏訪子だが、それでも大切な家族の安否が不明でそれが何日も続けば無理もないことだった。しかし心配されている本人は今の生活を満喫中である……二神不憫なり。

 

 

 手がかりがないのは事実なのでどこをどう探せばいいのか見当もつかない……一体どうすればいいのかと焦る一向だが、衣玖の一言がこの場にいる全員の目を覚まさせた。

 

 

 「もしかすると天子様はここ(幻想郷)にはいないのかも知れませんね……」

 

 「「「……あッ!?」」」

 

 「……どうしましたか?」

 

 

 衣玖のボソリと呟いた言葉にこの場に居た全員の意識が覚醒した。どうして今まで気がつかなかったのだろうかっと思ってしまう。

 

 

 「そうだったぜ!外の世界は調べていないぜ!もしかしたらそこにいるかもしれないぜ!!」

 

 「なんで思いつかなかったの……その可能性は十分にあると言うのに……」

 

 

 魔理沙は手がかりが見つかるかもと期待を胸に、華扇は見落としていた可能性に気づき自分の情けなさに頭が痛くなった。だが、まだ外の世界に居るとは確証が持てないし、何よりも博麗大結界を通って外に行くなどこの場に居る者は誰も経験したことが無い。

 

 

 「……これは紫の協力が必要になりそうね」

 

 

 霊夢は外にいる可能性を信じ、妖怪の賢者(八雲紫)とコンタクトを取るのであった……

 

 

 ------------------

 

 

 「……っと容赦なく弾幕を撃って来て暴力を振るったり、こんなに気高くプリティな美少女に向かって自分のパチモンか!とか言うんですよ?今思い出すとあの時の霊夢さんをボコボコにしてやりたかったです!」

 

 「してやりたかったと言う事はしてないの?」

 

 「しようとしましたけど返り討ちになりました!」

 

 「相手が霊夢だから当然と言えば当然だろうな」

 

 「なんですか天子さん!私よりも霊夢さんの方が可愛いって言いたいのですか!?」

 

 「強さの話をしていたのではなかったのか……」

 

 

 早苗の自慢話が続いておりため息が出てしまう……私達は菫子ちゃんの超能力を目の当たりにしてそのまま早々と帰って来た。興奮しっぱなしでは話すらできないので、落ち着きを取り戻させてようやく幻想郷について語ることにした。菫子ちゃんは今までにない程の食いつき具合度が半端ではない。あれね、自分以外に初めて特殊な力を持った相手に出会えた感動もあったのだろう。きっとこれがきっかけになって、のちに異変へと繋がっていくのだろうが……それはそれでいいかもしれない。原作に関わることなくこのまま時が過ぎてしまい宇佐美菫子と言う人物が存在しない東方になってしまったりしたら絶望だからね。原作キャラが居なくなってしまったら泣くわね絶対。

 それで初めは幻想郷についてのことを話していた。人間だけでなく妖怪や神様と言った忘れ去られて空想の存在になっている者達の楽園であることも伝えておいた。菫子ちゃんは優しい子なので幻想郷を侵略することはないけど、原作では幻想郷を内側から破壊しようとしたから一応警告と注意の意味を込めておいた。頭のいい彼女ならわかってくれると思うけど、途中から早苗の自慢話にいつの間にかすり替わり現在では愚痴にまで発展している始末である……菫子ちゃんのお母さんもまだ帰宅しておらず、幻想郷で起きた出来事なので少しでも幻想郷のことを知りたい菫子ちゃんは話に夢中だ。私はいつまで経っても終わらない早苗の話に目がウトウトし始めてしまう……

 

 

 「天子さん授業中居眠りは感心しませんよ」

 

 「……授業じゃない」

 

 「いいえ、この素晴らしく美しい東風谷早苗の数々の偉大なる活躍を講義している……すなわちこれは義務教育の一環なのです!」

 

 「ワケガワカラナイヨ」

 

 

 私は某魔法少女アニメの生命体のようになってしまった。早苗の言っていることは毎度のことながらぶっ飛んでいるが、そんなことよりも寝てしまいたい……しかし私が寝てしまい、早苗のぶっ飛んだ妄想話を聞かされ続けて菫子ちゃんがもしも真に受けてしまったら……早苗色に染まってしまった菫子ちゃんが誕生してしまう可能性がある。それだけは何としても阻止したい。早苗が二人も居るとなったら疲労で私が死んでしまうから。

 

 

 睡魔に襲われながらも現状を見守る天子、その視界が窓の方へと不意に向けた時だった。視界の端にそれは一瞬映った。

 

 

 「ん?」

 

 「どうしました天子さん?」

 

 「どうかしたのかしら?」

 

 「いや……別になんでもない」

 

 

 気のせいだろうか、見たことのある影が映ったと思ったんだけど……?

 

 

 心にモヤモヤがかかっていた。睡魔も一瞬にしてどこかに飛んでいき窓の外に映った正体を確認するために一人部屋から出て行く。他の二人は話に夢中で気がつかなかった。

 

 

 天子は庭に出て今は7時頃だ。周りは街灯や家の建物の光で明るい状態なので見つかると思い、気になった影を探すが見当たらなかった。おかしいと思うが見つからないものは見つからない……気のせいだったと割り振って踵を返して戻ろうとした時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「こんにちは天子さん」

 

 「……橙か!?」

 

 

 聞き覚えのある声に振り返るとそこにはここにいないはずの橙が立っていた。

 

 

 「迎えに来ましたよ」

 

 

 天子と早苗の外の世界での生活が終わりを迎える時が来たようだ。

 

 

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