最強の前にて君臨する鬼   作:破門失踪

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新キャラ出ます。是非は知らん。やりたいようにやって纏めきれなくなって、爆発四散するだけじゃ。


まぁ気楽に見てってください。




第8話

 

爆発音と銃声、そして悲鳴。これまでの日常では全く聞くことの無かった不快な音。

 

 

 

 

 

建物が炎上し、熱気が肌を焼いていく。

 

 

 

ほんの少し前までここは、観光地の巨大な商業施設特有の、人々の喧騒に溢れていた。しかし、それは大きな衝撃と爆発音で掻き消された。

 

 

 

 

本来これは優しい両親と、言葉はキツいけど頼りになる兄さんとの楽しい家族旅行の筈だった。

 

 

 

そんな幸せな時間は一転して、この世の地獄へと変わった。

 

 

衝撃と爆発音の後、頭上から降ってきた瓦礫。それはちょうど母さんの真上から落ちてきて、次の瞬間には肉と骨が潰れる音と、夥しい血液が瓦礫の隙間から溢れ出る。母さんを庇うように動いた父さんも同じく下敷きになった。

 

 

それを見て言葉を失った。思考が止まった。何が起きたのかすぐに理解できない。脳が認識しようとしない。

 

 

明らかに事切れたであろう両親を助けようと、無意識の内に手が恐る恐る伸びる。すると手首辺りを強く掴まれ、僕は我に返った。

 

「無一郎!何をしている!逃げるぞ!」

 

 

僕の手を掴んだのは、覚悟を決めた兄さんだった。父さんも母さんも死んでしまった事をすぐに飲み込んで、その場で最善の行動をとろうとしていた。

 

 

兄さんに引っ張られる形で、地獄絵図となった商業施設を走り抜けた。

 

時折聞こえてくる銃声や悲鳴に気を取られる。

 

兄さんは違うけど、僕は伐刀者だ。まだ何の訓練も受けてないけど、魔力を使って身体能力を強化する事くらいはできる。

 

視界の端で小さな女の子が瓦礫から這い出ようと、泣きながら藻掻いていた。それを見て助けに行くべきだと思った瞬間、兄さんの腕を引っ張る力が強くなった。

 

「余所見をするな!ろくに力も使えないお前に何ができる!」

 

「でもっ!!」

 

「いいから走れ!」

 

 

女の子の泣き声が遠くなる。僕にちゃんとした力があったなら。まだ魔導騎士になるのは先の事だと思って、普通に生きてきた過去の自分を呪った。

 

周りを見れば同じような光景が広がっている。その度にそこに意識を取られ、先程と同じく兄さんに腕を引っ張られた。

 

 

 

 

 

今までとは規模が比べ物にならない爆発音が轟いた。

 

 

世界がひっくり返るのではないかと思う程の振動。同時に激しい爆炎が眼前に迫り、僕ら兄弟を包もうとしていた。

 

 

炎の壁を前にして、僕ら兄弟が助かる為にはどうしたらいいのか。

 

 

僕の能力や魔力なら何とかなるのか?……いや、無理だ。こんな衝撃と炎を防げる訳が無い。

 

 

僕が何も出来ずに動けなかった時、腕を掴んでいた兄さんが前に出る。そして爆発に背を向けた。僕の壁となる為に迷いなく動いて。僕と違って兄さんは魔力を持ってないのに。

 

 

衝撃と炎が僕らを包んだ。軽々しく吹っ飛ばされ、壁に頭を打って気を失ってしまった。

 

 

 

 

火傷の痛みで意識を取り戻した。あまり大事になっていないのは、僕の魔力が身を守ったのと直撃は避けれたからだ。

 

そして、爆炎の直撃を受けた兄さんは肌が焼け爛れるどころか、背中の肉が一部吹き飛んでいた。そんな状態でも兄さんは僕の手を握っていた。

 

 

僕はもう何も考える事が出来なくなっていた。ただただ涙を流すことしか出来なかった。

 

 

 

すると視界に複数の人間が入ってきた。黒い色の戦闘服とガスマスクに身を包んだ五人。それぞれの手にはアサルトライフルが握られていた。

 

最初は助けが来たのかと思って、声を出して助けを求めた。

 

 

でもそれはすぐに違うとわかった。その一人の銃口がコチラに向いたからだ。

 

ガスマスクで目元しか見えなかったけど、アイツらは僕らの様子を見て、そしてこの地獄を見て笑った。喜劇を見たかのように笑っていた。

 

 

兄さんの状態を見て、楽しそうに笑いやがった。

 

 

その表情を見て、僕の中で何かが弾けた。視界と思考が真っ赤に染まった。

 

 

 

何が楽しい?

 

 

何が面白い?

 

 

 

途轍もない咆哮が自分の喉から出ていた。ほとんど使った事の無い刀の霊装を手に持ち、そいつらに駆け出した。

 

 

 

 

 

 

気づいたら全員殺していた。心底どうでもよかった。

 

 

 

 

無茶をしたのか身体は重たかった。それでも足を引き摺る様に兄さんの許へ。返り血で真っ赤に染った手で抱き抱えた。

 

もう一歩も動けない。ここで僕も死ぬんだと思った。

 

「お前は……生きろ」

 

「えっ……」

 

兄さんは生きていた。でも誰の目から見ても救助が間に合うとは思えなかった。弱々しい声で最期の言葉を紡いでいた。

 

 

「お前は誰かの為に無限の力を出せる……選ばれた人間だ。神様も……俺じゃなくお前だったら……助けてくれる……」

 

 

兄さんの心音が止まる。

 

周囲の熱気とは逆に、兄さんの身体は冷たくなっていく。

 

その感覚をずっと、ずっと味わい続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めたら病院のベッドの上だった。そして僕はこれまでの記憶を失っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

病院で医師や看護師に言われるがまま過ごす日々。

 

病室のテレビで先日起こったとされるテロの映像が流れると暴れていた……らしい。らしいというのはその間の記憶が僕には無いからだ。

 

記憶を失った事で不安定になっている。加えて精神的な理由から記憶保持能力にも問題があると言われた。

 

 

両親も兄さんも死んでしまったと聞いたが、僕にはその実感が無かった。家族の顔を思い出そうとしても、記憶に霞がかかったように何も思い出せない。

 

 

ただ思い出そうとすると、理由もわからないまま、血が出る程の握り拳を作っていた。

 

 

 

ある日、病室を男の人が訪ねてきた。

 

「久しぶりだね、無一郎君。私の事を覚えているかな?君の御両親とは仲良くさせてもらっていたんだけど」

 

どうやら僕の知っている人らしい。けど、記憶の中からは思い出せなかった。

 

 

後から知ったのは日本の総理大臣だった事。月影獏牙さんというらしい。僕は月影おじさんと呼ぶようになった。

 

 

この人だけが忙しい職務の間を縫って、何度も何度も病室を訪れてくれた。おじさんとの何気ない会話が、記憶が無くて不安な僕にはありがたかった。

 

 

最初は前回訪れてきてくれた事も、次の面会の時には忘れてしまっていた。ただ何度も来てくれるおかげで、おじさんとの記憶だけは少しずつ定着するようになった。

 

 

ある日、月影おじさんの能力で僕の過去を見させてもらうことに。辛い時はいつでも止めると言われて、僕は何を見せられるのかと身構えた。

 

 

 

 

気がついた時にはおじさんの護衛の人達に押さえつけられていた。なんでも僕は自分の過去見ている際に、また暴れ始めたらしい。おじさんに掴みかかっていそうだ。

 

 

本当に申し訳なかった。おじさんは笑って許してくれた。それどころか見せた事に謝ってくる。二人でお互いに謝り合うことになった。

 

 

 

そんな事があっても僕の記憶は蘇らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

おじさんとの面会やカウンセリングを受けて、暴走はしなくなった……筈。カウンセラーの人が言うには、おじさんが心の拠り所となって、空っぽで不安定だった心が安定しだしたのだという。

 

どうやら僕はテロについて見たり聞いたりすると、異常な怒りが溢れるらしい。

 

 

おじさんは脳が覚えてなくても、心と身体が覚えているからだと教えてくれた。

 

僕がテロで家族を失ったから、その怒りが溢れてくるというのは理解していた。でもやはり実感が湧かなかった。

 

 

 

 

精神が落ち着いて退院する事になった。退院の手続きも、その後の暮らしの事もおじさんに頼る事になった。どうやら僕と親しい親戚が見つからなかったらしい。これからは一人暮らしとなる。

 

「すまないね……私が面倒を見てあげれれば良かったんだけど、これからは職務を抜け出せなくなりそうなんだ。正直今も秘書からの鬼電が止まらない」

 

月影おじさんは画面いっぱいに連絡通知が並ぶ携帯を苦笑いしながら見せた。同じ名前の人からのメッセージや不在着信が列をなしている。

 

見ていると今日何度目かの着信音がなり、おじさんは確認すること無く切っていた。

 

「ごめんなさい……」

 

何から何まで本当に迷惑をかけてしまっていて、自然と謝罪が出てきた。

 

「辛い事があったんだ。今はいくらでも甘えていいんだよ」

 

そう言って僕の頭を撫でてくれるおじさん。急に思いついたかのように手を打った。

 

「そうだ!退院祝いをあげよう。何か欲しい物とか、して欲しい事はあるかな?これでも総理大臣だからね。言い方は悪いけど、ある程度の事は叶えてあげれるよ」

 

「おじさん……公私混同はダメだよ」

 

「仕事を抜け出すのも、権力の私的利用も……バレなきゃ問題ないさ」

 

「……本当に総理大臣?」

 

おじさんのわざとらしい悪い顔につい笑みがこぼれる。本当は仕事を詰めてまで会いに来てくれているのに。

 

「向いてないのは自分が一番わかっているんだけどね……

 

さて、他でも無い君の為だ。何でも言ってくれ。国家権力が及ぶ範囲で頼むよ」

 

おじさんのご厚意に、申し訳無く思いつつも受け取る。自分がやらないといけないと感じている事の手助けを求める事にした。

 

「じゃあ、一つお願いがあります」

 

「何だい?」

 

 

 

「僕に力をください」

 

 

おじさんは目を丸くした。

 

「それはつまり……伐刀者としてのという事かい?」

 

「はい……伐刀者として、そして剣士としての力が欲しい。僕を鍛えてくれる人を紹介してください」

 

「君はあと三年と少しで学生騎士だろう?それまではゆっくり……」

 

「それじゃ駄目……力が無くて弱かったから、僕は怒って悲しんでる。記憶は無いけどそれだけは身体が覚えてる。

 

だから、僕を誰よりも強くしてくれる人を紹介してください」

 

 

おじさんは初めは困った顔をして、その後何故か凄く顔を顰めて、一つ大きなため息を吐いて、ようやく頷いた。

 

「わかった……君にとっておきの師を紹介してあげよう。向こうの都合を確認する必要があるが、他の誰でもない君なら、もしかしたら認めてもらえるかもしれない」

 

「ありがとう……わがまま言ってごめんなさい」

 

「謝ることは無いよ。君が目的を持って前に進んでくれる。それだけで良いさ」

 

 

 

 

 

 

後日僕は、とある人を紹介された。

 

一目見ただけで鳥肌が立つ程の存在感がある人。優れた剣士とはこのような雰囲気を纏うのかと、自己紹介の時にものすごく緊張した。

 

そんな固まった感情も、その人の一つの動作で和らいだ。

 

僕と目線を合わせる為に少しだけ膝を曲げて、頭を軽く撫でられた。大きくそして温かい手。

 

撫でられた意図はわからなかったが、その人の瞳には優しさと少しの戸惑いが表れていたように見えた。

 

 

「……力が欲しいのか?」

 

「はい」

 

 

これが僕、時透無一郎とお師匠様の出会い。一度空っぽになった僕の新たなる始まりだった。




時透君の心情が掴めず相当難産。さすが霞柱……

これからはもう少し時透君らしさを出せるようにしたい。

世界観的に家族との記録は残ってるから、それでも思い出せないって、表現的に実感が無いくらいしかないのかねぇ。

そんな彼にはこの世界ではテロ狩りとして頑張って貰いましょう。

ちなみにおそらくもう追加キャラは無いと思われます。


感想評価励みになります。本当にありがとうございます。誤字報告とても有難いです。




……でェ丈夫だ。オラまだやれる。
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