シオンに小突かれる感覚で目を覚ました。
カーテンを開けると、ひんやりとした早朝特有の空気が流れ込んできた。
ねぼけ眼を必死でこじ開けて見てみると、窓からちょうど昇ってくる朝日がかいま見えた。
少し早すぎたか、と思ったが初日で迷子になる時間も考えると丁度いいんじゃないだろうか。
残念ながら他の子達はまだまだ夢の中のようで、この素晴らしい眺めを一緒に眺める相手はいない。
「ふあぁ」
だがそんな事はたいして気にもせずに、私は大きなあくびをしながら伸びをした。
「あ、そうだった」
昨日、日記を書くのを忘れていた。
トランクからノートとペンを引っ張り出して、書き始める。
毎日一言でも書くのは意外と重要で、この日記を書くようになってから格段に英語が上達した気がする。
それにハリポタのストーリーについて思い出した事も書いておく。
流石に忘れていくからね。
そのおかげか、もう日記は十冊を超えた。
えぇっと……
遂にホグワーツに来た。
友達も出来た。
あと……ブラック家のご令嬢が同級生だった。
原作通りに進まないかも。注意しないと。
そこまで書き終わってからノートを閉じて枕元の棚に置いた。
……暇だし、今日の準備でもするか。
のろのろと鞄に教科書を詰め、制服を取り出した。
全て着終わってからロシア語の絵本を取り出す。
これ位の簡単な文章なら読めるようになってきたのだ。
その時、シャッという音がした。
見ると、赤いカーテンの陰から眼鏡をかけたシェリーが顔を覗かせていた。
昨日は夜更かしでもしたのだろうか、形のいい目の下に薄く隈ができているように見える。
もしかして私の物音で目を覚まさせてしまったのか、と気がつき少し申し訳なくなった。
「おはよう、シェリー」
「んぅ……おはようございます、フローラ。早いですね」
そう言って微笑むシェリー。寝起きにしては、随分と頭がしっかりとしているようだった。
もしや、朝まで起きていた……なんて言うのは、考えすぎだろう。
そんなことをぼうっと考えながら私は笑みを浮かべてシェリーに返事をした。
「そうかな?はやく準備しなよ」
シェリーの準備が終わり、大広間に向かう。
1年生は絶対に迷う筈のホグワーツ校を、私はシェリーの先導によって迷わず大広間に着いた。
え、何この子最強?
マーマレードをたっぷり塗ったトーストに齧り付くシェリーに、問い掛けてみる。
「よくここへの道分かったね」
「従姉からよく聞いてたんです。それに……」
そこまで言ったところで少しだけ目を伏せる。
「道を覚えるのは得意なので」
「へ、へえ」
本人はさらりと言っているものの、これは得意レベルの暗記術ではないだろう。
才能が溢れでている。
「そういえば、アステリアさんはまだ来てないんだね?」
アステリアさんの名前に少しだけシェリーの指が震えたが私は気がつかなかった。
「え?ああ……多分リアはもう食べ終わったんじゃないでしょうか」
「……早くない?」
シェリーのおかげで一年生としては一番はやく辿り着けた方だろう。
実際、大広間を見回してみても朝食を食べている人はぽつぽつ。
寧ろ今席について食べ始める人が目立つので、今位から人が増えていくのではないだろうか。
「リアは昔っからそうでしたよ」
そう言ってシェリーが微笑んだ。
昔から仲良かったんだろうなぁ。
良いなあ、幼なじみ。
私には幼馴染と呼べる人間はいなかった。
前世では居たには居たが、虐められていた私をみて高速で手の平を返すようなやつだった。今更名前も思い出したくはない。そんな気持ちとは裏腹に脳裏に蘇ってくる奴の顔を頭の隅の方に箒で寄せた。
……あ、いつの間にかシェリー、パン食べ終わってる。
……食べるの速くね?
そして、食べているのが甘い物ばかりである。
太るよ。
しかも大量。
ドーナツ、シフォンケーキ、フルーツジュース。
太るよ。
そう言うと、無言で頰をつねられた。
笑顔が怖いんだけど、この子母さんと同じ系の子なの?
趣味でイラスト描いてるんですが、遂にデジタルに手を出します。