大広間を出ると、生徒で賑わっていた。
沢山の囁き声が聞こえてくる。
「な、あのシリウス・ブラックの姪が……」
「どーせあいつも死喰い人だよ」
「ホグワーツで人を殺すのはやめて欲しいよな……」
「兄貴と一緒になって問題起こすんじゃない?」
それは、ほとんどがアステリアさんの噂話だった。
犯罪者の家族は、それだけで好奇の目に晒されてこそこそ言われる。
とばっちりを受ける。
しかも、シリウスは冤罪なのに。
……気持ち悪いなぁ。
「……速く行こ、シェリー」
「はい」
内心そんな気持ち悪さを抱えたまま、変身術の教室へ向かう。
シェリーの殺気にも気づかずに。
変身術は、いかにも厳しそうなマクゴナガル先生が教えてくれるらしい。
初めに長々と書きにくい羊皮紙に板書を写した後、遂にマッチ棒が1本ずつ配られた。
……この木の棒を針に変えろとおっしゃるのですか。
その通りでした。
余談だが、私は変身術が一番苦手だ。
変身術は、いわば頭の中のイメージを現実に投影し、形取るもの。
つまり、想像力と記憶力がモノを言う。
……そっかぁ、私ってイマジネーション力拙いのかぁ。
…………そっかぁ。
ま、まあやってみなければ分からない。
ぐっと目を閉じて、針を思い浮かべる。
えーっと、針、針……ピンク色の、先が丸い……あ、やべ編み針思い浮かべちゃった。
違う違う、あの金色の光ってる尖ったやつ……そう、それそれ。
あ、光沢……?え、それ必要?
目を閉じたまま杖でマッチ棒を探し当て、ポンポン当てる。
針、針……金色で、穴が空いてて……
満足するまで叩いてから、目を開けた。
……あれ?マッチ棒が無い……だと?
机の上からマッチ棒が消えていた。
ま、まさか叩き続けたから机から飛んで行ったのか。
慌てて机の周りを探してみると、キラリと光る物を発見。
先生が見てないのを確認してから、そろっと拾い上げた。
机の上に載っけて見てみると、光沢が足りないような気がするが、10メートル離れて見ればまあ針に見えなくも無い物だった。
よし、よくやった私。
私の急上昇した気持ちは、アステリアさんのちらりと見えた針を見て急降下した。
完璧な宝飾品ともいえる程綺麗な黄金の針。
私の不格好な物とは似ても似つかない。
「フローラ、出来たんですか?」
「シェ、シェリー……」
微笑むシェリーを見てもう一度上がり直した私は固まった。
そこに置かれていたのは、アステリアさん程凝ってはいないがシンプルな美しい針。
ほら、アレ。
私の所の針は、見た目こそ凝ってないけど作りと素材良いからぁ的な?
絶対折れませんからぁ的な?
て・き・な!?
……ふっ、落ち着こう。落ち着くんだ、フローラ。
この人達が凄いだけだ。
私は普通だ。
そう、普通。
大丈夫大丈夫。
結局、マクゴナガル先生がシェリーとアステリアさんの針を褒めて、珍しく微笑みを見せてから変身術は終わった。
……うん、悲しいぜベイベ。
さて、その後も妖精の魔法学やら闇の魔術に対する防衛術(長い。そして臭い)などなど色々やって、ホグワーツ最初の日は終わりを告げた。
森に行ってきたらしいシオンを綺麗にするために、シェリーに手伝って貰ったのは、良い思い出だ。
いやあ、喉が痛いですね。
皆様も健康にはお気をつけ下さい。