ドラゴン使いの少女は。   作:トリスティティア

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どうもこんにちは、やっとテストが終わりました。


箒とおできと私。

マルフォイが角ナメクジを完璧に茹でたからみんな見るように、とスネイプがそう言った。

逆に角ナメクジの完璧な茹で方とはなんぞや。等と考えていたら、シューシューという音がした。

どうやらネビルがどうした事か、シェーマスの大鍋を溶かしてしまったらしい。

鍋はねじれた小さな塊になっていた。

ここまで来るともはや才能である。

 

と、私は安全な椅子の上で考えていた。

ネビルがぐっしょりと薬を被ってしまったらしく、腕や足に真っ赤なおできが次々に吹き出してきていた。

あああ、見てるだけで痛そう。

 

「馬鹿者!」

 

流石に慌てた様にスネイプが言って、杖を一振りすると薬が一滴残らず消えた。

さ、流石ホグワーツ教師の名は伊達ではない。

 

「おおかた、大鍋を火から下ろさない内に山嵐の針を入れたんだな?フィネガン、医務室に連れていきなさい」

 

ネビルとシェーマスが立ち上がって、教室から出て行く。

それから出し抜けにハリーに注意を向けられた。

 

「ポッター、針を入れてはいけないと何故言わなかった?彼が間違えば、自分がよく見えると考えたな?グリフィンドールはもう一点減点」

 

まあネビルが失敗したのは事実なのだが、ハリーに言う事はないだろう。

ザ・理不尽である。

陰湿ぅ!

 

結局、グリフィンドール二点減点とネビルの怪我で、初の魔法薬学は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

さて、最悪だった金曜日の、次の週最初の日が、遂に来た飛行訓練の日だった。

 

2日続けてのスリザリンとの合同授業。

授業構成する奴頭沸いてんのかと言いたくなる程のタイミングの悪さである。

 

そして、物語が大きく動き出すエピソードだ。

私には必死に目立たない様にしている事しか出来ないだろう。

まあ、私は箒に乗った事自体無いので、目立ちようがないが。

 

そんな訳で、私はすっかり久しぶりに落ち着いた気分で優雅に朝食を食べていた。

その時、小包みが私の膝に落とされた。

慌てて上を見ると、きらきらと光る黒い毛のドラゴンが一頭、窓から出て行くところだった。

 

「うわー、重い。こんなの持ってきてくれたのに、休むこともないとは……流石」

「あれ?あの子、コーフですよね?」

「あーいや。あの子はローザ。母のドラゴンだよ」

 

よく見ると、少しだけ赤い毛が混じっている。

何より、コーフよりパワーが凄い。

 

「へぇぇ」

「『思い出し玉』だ!」

 

ネビルの声が聞こえた。

手のひらに収まるくらいのガラス玉を握っている。

 

「ばあちゃんは僕が忘れっぽい事知ってるから……何か忘れてると、この玉が教えてくれるんだって。ほら、こんな風に握って、赤くなったら……あれ」

 

玉の中の煙が真っ赤に光り出した。

ネビルが何を忘れたのか思い出そうとする。

成る程、確かにお婆さんの判断は正しかったらしい。

……まあ、忘れた事を思い出せていないけど。

 

顔をしかめるネビルの後ろに、マルフォイが通りかかって、思い出し玉を奪い取った。

それを見て、ハリーとロンが立ち上がる。

おおこれはあのシーンが見られるか、と思いきや静かな声が空気を割いた。

 

「マルフォイ、辞めなさい?それはロングボトムの物よ。盗みが悪い事だって教わらなかったのかしら」

 

声のした方を見ると、アステリアさんがその黒い瞳でマルフォイを見ていた。

決して睨んでいる訳ではないのに、明らかにその場の空気は冷えきっている。

 

マクゴナガル先生が近くに来るのに気がついたマルフォイが真っ先に解凍された。

 

「………チッ」

 

小さく舌打ちして、マルフォイは玉をテーブルに戻して、逃げて行った。

 

 

きっかり午後三時半、グリフィンドール生は群れをなして校庭へと降りて行った。

気持ち良くすっきりと晴れた青空だ。

 

平坦な芝生に数十本の箒が並べられている。

スリザリン寮生もその隣に並んでいた。

そういえば、セシルが愚痴っていた。

少し左による箒があるとか、高い所に行きたがる箒とか。

……はは。

 

マダム・フーチが来た。

鷹みたいな顔をしている。

やっぱ、長年空を飛んでいると鳥に似て来るんだろうか。

 

「何をぼやぼやしてるんですか。さあ、箒のそばに立ちなさい。早く」

 

箒をちらりと見下ろした。

随分と年代物の箒で、薄らとシューティング・スターという刻印が見える。

かつてセシルが語っていた事を思い出す。

昔流行っていた安い箒だ。

年月と共に劣化してくるんじゃなかったか。

…………はは。

 

「右手を箒の上に突き出して、『上がれ!』と言う」

 

皆が「上がれ!」と叫んだ。

果たして、私の箒はコロリと転がっただけだった。

だがしかし、私のそれは普通だった。

ハリーのように一発成功は珍しいようだ。

 

でも、多分ドラゴンも箒と一緒だろう。

そう迫力と共に言えばきっと、答えてくれる!はず!

シェリーと母さんの笑顔から学べた事も多いし、成功させて見せるぜ!

こう、怖い笑顔を作って……

 

「上がれ?」

 

おお!ゆっくりとだが、確実に空に浮かび上がり私の手に収まった。

やっぱり、想いは通じるんだね!

 

次に乗り方を教えられた。

木にまたがっている感触は全くない。

寧ろ座り心地が良い。

まるでクッションに乗っているようだ。

 

「さあ、私が笛を吹いたら、地面を強く蹴ってください。箒はぐらつかないようしっかりと押さえて、少し前屈みになって降りてきてください。笛を吹いたらですからね……一、ニの……」

 

トン、と地を蹴る音がした。

ああ、やはりネビルが飛んで行った。

ぐんぐんと上がって行く。

そして、ああ、運の悪い事にセシルの言っていた高い所に行くとぐらぐらと揺れる箒だったらしい。

 

遂にネビルが振り落とされた。

このままだと、良くて骨折、打ちどころが悪ければ重体だ。

でもな。

 

「スポンジファイ」

 

ネビルの落下場所になりそうな所に向けて呟いた。

これで取り敢えずは大丈夫だ。

きっと、スポンジのようになって受け止めてくれるはず。

 

その時。

一際大きい風がネビルを揺らして、横に飛ばされた。

 

まずい。

このままだと頭から落ちる。

しかも、呪文が効いていない所に。

 

悲鳴に混じって何かが聞こえて来る。

これは……アステリアさん?

 

果たして、ネビルは弾みながら草地に着地した。

欠陥箒は、禁じられた森にゆらゆらと飛んで行った。

マダム・フーチが真っ青になってネビルの上に屈み込む。

 

「手首を捻挫してる……さあ、ネビル。大丈夫。立って」

 

先生が私達に向き直って言う。

 

「私がこの子を医務室に連れて行きますから、その間誰も箒には触らないように。さもないと、クィディッチのクの字を言う前に出て行ってもらいますからね……さあ、行きましょう」

 

涙で顔をぐちゃぐちゃにして、ネビルは先生と保健室へ向かって行った。

 

二人が声の届かない所まで行った瞬間、マルフォイが笑い出した。

 

「あいつの顔を見たか?あの大まぬけの」

「やめなさいよ」

 

と、噛みついたパーバティをパンジィがはやしたてる。

知能レベルが小学生だ。

……ああ、11歳はまだ小学生か。

 

「ごらんよ!ロングボトムの婆さんが送ってきた馬鹿玉だ!」

 

どうやら落ちる時にネビルのポケットから落ちたらしい思い出し玉を、マルフォイが拾い上げた。

 

「マルフォイ、こっちに渡せ」

「それじゃ、ロングボトムが後で取りに来られる所……そうだね、木の上にでも置いておこうか」

「こっちに渡せったら!」

 

二回目にハリーが強い口調で言った時、マルフォイはひらりと箒に飛び乗った。

成る程、自慢話は嘘ではなかったらしい。

 

「ここまで取りにこいよ、ポッター」

 

私に箒テクがあったなら、すぐにでも乗る所だが生憎と乗馬テクしか無いのだ。

……後は、ドラゴンとか?

 

「駄目よ、ハリー!先生が仰ってたでしょ?私達全員が迷惑するの!」

 

ハーマイオニーの心からの叫びを無視してハリーが箒で浮かび上がる。

流石はシーカーの息子。

クィディッチの才能は充分にあった。

 

いとも容易げに浮かび上がるハリーを見て、マルフォイが唇を噛んだ。

 

「こっちへ渡せ。箒から突き落とすぞ?」

「へえ、出来るかな?」

「ここにはお前の大きいお友達は助けに来ないぞ。ピンチだな!」

「………取れるもんなら取ってみなよ、ほら!」

 

そう言って思い出し玉を放り投げたマルフォイは電光石火、地上に戻った。

 

まあ臆病者は放っておいて、期待の超新星、ハリーはというと勢いよく投げられた玉を窓すれすれの所でキャッチした。

それを見た生徒達から、自然と拍手が沸き起こる。

 

地上に降り立ったハリーの笑顔も束の間、マクゴナガル先生の声に凍りついた。

 

「ハリー・ポッター……!」

 

ふるふると震えるハリーにスカウトだと教えてあげたい気もするが、黙っておく。

 

「まさか……よくもまあ、あんな大それた事……」

「先生、ハリーが悪いんじゃないんです……」

「お黙りなさい、ミス・パチル」

「でも先生、マルフォイが」

「くどいですよ、ミスター・ウィーズリー。ポッター、一緒にいらっしゃい」

 

マクゴナガル先生とハリーの背中が城に消えていった。

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