夕食時になると、ハリーがシーカーになった事が伝わってきた。
ちなみにソースはセシル。
「100年ぶりの一年生シーカーらしいね」
「凄いですよね!」
意外な事に、キラキラと瞳を輝かせてシェリーが言う。
「す、凄い……の?」
「だって!クィディッチですよ!しかも、シーカーはチームの花形!」
「ほーん」
「ほーんて何ですか、ほーんて!クィディッチは魔法界の浪漫ですよ!」
「へ、へえ」
鼻息を荒くしてシェリーが興奮している。
ここまでテンションを上げるとか、クィディッチ恐るべし。
「じゃあハリーにサインでももらって来れば?」
「あ、遠慮します。興味無いんで」
「そうなんだね!?」
一瞬で瞳の色が元に戻った。
あれ、そういえば……
「シェリー、眼鏡変えた?」
「え?い、いや別に変えてませんけど?」
「あ、そう?」
前は黒縁だったのに、今は紫がかって見えた。
あ、私の目がおかしくなったのか。
ふ、目が良い事だけは取り柄だったのになぁ。
「ポッター、最後の食事かい?」
遠い目をする私の耳に、そんな言葉が入って来る。
「地上ではやけに元気だね?……お友達もいるしね」
「ふん、僕一人でいつだって相手になろうじゃないか。ご所望なら今夜でも良い。
杖だけを使う、魔法使いの決闘だ。……魔法使いの決闘なんて、聞いた事もないんじゃ無いの?」
笑みを顔に貼り付けて、マルフォイが言った。
「もちろんあるさ。僕が介添人をする。お前のは?」
「クラッブだ。真夜中の……トロフィー室にしようか。いつも鍵が空いてる」
そう言い残し、マルフォイは立ち去った。
うわー、いかにも罠っぽいのに。
これについて行っちゃうハリーとロンもアホ。
「本気なんでしょうか、あの人達」
「さあねえ、分かんない」
「決闘を真夜中にやるなんて……しかもトロフィー室で」
ああ、そういえばシェリーは礼儀に厳しいんだった。
決闘に良い時間帯とか場所とかあるんだろうか。
「トロフィーに傷が付いたらどうするつもりなんでしょうか」
「あっ、そっちね」
「それに、一応シーカーなんですから。怪我して試合に出れなくなったら……」
「うん、そっちかぁ」
意外と辛辣だった。
てか、予想と違ってたわ。
いずれにしても、「終わり良ければ全て良し」である。
流石に真夜中に寮を出ようとは思わないし、野次馬にもなる気も無い。
そして暖かいベッドですやすやと眠っていた私は、突然叩き起こされた。物理的に。
「うう……」
「フローラ、フローラ、起きてください」
「ん、シェリー?何さこんな夜遅くに」
声を押し殺して囁きかけてくるシェリーの声には、いつもの落ち着きが足りなかった。
「リアが、出て行ってしまって……」
「え、アステリアさん?」
見てみると、確かにアステリアさんのベッドのカーテンは開いていた。
いつもぴっちりと閉まっているのに。
「……ちょっと、談話室で話そうか」
所変わって、談話室にて。
「こんな真夜中に出て行っちゃうなんて、追いかけようかとも思ったんですけど、私カメレオン魔法使えないし……」
「で、私を叩き起こしたと」
「そうです」
「………はぁ」
これでふざけていたら殴る所なのだが、いかんせん目が真剣なので殴るわけにもいかない。
普段から白い顔をますます青白くさせている。
「フローラなら、透明化魔法位使えると思いまして……」
「えぇ……」
そう期待して貰っちゃあ困る。
思い出して欲しい。
私は変身術が苦手なのだ。
透明化……に近いものをちょろっとやっただけに過ぎない。
ましてや透明化魔法なんて無理すぎる。
「お願いします……!」
今にも泣きそうな瞳でシェリーが見つめてきた。
うぐっ。
そういう瞳されると弱いんだよぉ。
「………分かったから。ちょっと待って」
「本当ですか!」
シェリーがパアァっと顔を輝かせた。
現金なやつ。……ま、友達だからね。
そう思いながら寝室でシオンを起こした。
不機嫌そうな目で見つめてくるシオンに、鞄から出した包みを見せて言う。
「起きてくれたら、この中身あげるから」
包みを見た瞬間、シオンがうなずいた。
よし、交渉成立。
シオンを連れてまた階下に戻ると、シェリーが待っていた。
「シェリー、私の手握って……シオン、"不可視化補助"」
ふわり、と宙に浮かび上がったシオンの毛を摘んで言う。
これで見えなくなったはずだ。
そう、多分。
「さてと、シェリー行くよ。あ、喋る時は小声でね」
「………は、はい」
私達は廊下への穴を潜った。