ドラゴン使いの少女は。   作:トリスティティア

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どうも、コメディが書けそうに無いトリスティティアです。


杖との出会い。

来たるは、8月30日。

私の4歳の誕生日である。

そして、杖を買ってもらう日でもある。

ダイアゴン横丁のオリバンダーの店に連れて行ってもらい、杖を選ぶ……いや、杖に選ばれるらしい。

 

物凄く楽しみだったのだが、なにぶん映画を見たことがない為、オリバンダーさんがどういう人なのかはっきりとは分かっていない。

何か不思議な人だという事は知っているのだが。

確か、梟のような人だとか書いてあった気がする。

 

そんなドキドキに胸を高鳴らせ、オリバンダーの店のドアを開く。古いドアを開ける時の音は、なかなかに背筋がぞっとする。

そこはとても綺麗……と言いたいが、そうでもない、埃っぽい汚い店だった。

 

天井までの高い棚には、数えきれない程の埃まみれの杖の箱が並んでおり、所々蜘蛛の巣がかかっている。

あとはキャスターのついた脚立や、申し訳程度の椅子が一つに、枯れかけの観葉植物。

ごちゃごちゃとした印象だ。巣があるだけで、本物の蜘蛛が居ない事が唯一の救いでは無いだろうか。

 

私が店の中を見回していると、突然カラカラという音がして、超スピードでトロッコのような物に乗った老人が走って来た。

 

「いらっしゃいませ」

 

老人は柔らかいがよく通る声で言った。

フクロウのように大きな、薄い色の瞳が私を見据えた。

なるほど、確かにフクロウのような人である。絶対頭360度回る。

 

無駄にアクロバティックな動きを見て、固まってしまった私の代わりに父が言う。

 

「こんにちは、オリバンダーさん」

「おお、クリス・アルテミルじゃないか。40センチの葡萄の木、しなやか。そうじゃったよな」

「はい、その通りです」

 

流石の父もオリバンダーさんの前では普通の人っぽい。

まあ、当たり前と言えば当たり前なのだが。案外、家の外では普通なのかもしれない。

だがそれを抜きにしても、何となく父がかしこまる気持ちは分からなくも無い。この不思議な老人には、何だか人を威圧する何かがある気がする。

……何だか、フクロウに睨まれたネズミのような気分だ。

 

「今日は、娘さんの杖を買いに来たのかな?」

 

その時、突然自分の方を見られて、ビクッとする。

だ、大丈夫。話してみればただのお爺ちゃんじゃないか。

フクロウでは無いんだ。

そう思いつつ、さっき失礼な事を考えていたのを気づかれていないかどうか不安になる。

 

「はい、今日が4歳の誕生日なので」

「ほうほう……では、早速始めましょうか」

 

オリバンダーさんは銀色の巻尺を取り出した。

 

「どちらが杖腕ですかな?」

 

杖腕、というのはペンを持つ方だろう。

 

「右です」

「では、腕を伸ばして。そうそう」

 

言われるがままに無造作に腕を伸ばす。

そして、腕ではなく上半身の寸法を測られたが、胸囲を測られそうになったところで父さんにはたき落とされると、少しよろよろとしながらちゃんと腕の長さを測り始めた。

その間に、オリバンダー老人が淡々とではあるが杖の話をしてくれる。

一度本で読んだ筈なのだが、中々に面白い話で、聞き入ってしまった。

 

そのせいか、鼻の穴の間を巻尺が測っていることに気づいた時には、老人は杖の箱を取り出していた。

 

「もう良い」

 

とオリバンダーさんが言うと巻尺はくしゃりと床に落ちて丸まる。

一瞬踏み潰してやろうかと思ったが、すれすれのところで踏み止まった。流石に商売道具を壊すのは不味いであろう。

 

「楓にユニコーンのたてがみ。20センチ、柔らかい。どうぞ、手に取って振ってみてください」

 

恐る恐る手に取り、振ろうとしたところでもぎ取られた。

 

「だめだ。では、柊と不死鳥の羽根。30センチ、頑固。どうぞ」

 

今回は振らせてもらえた。

カシャン、と儚い音がして、何も入っていない水槽が割れる。……水入ってなくて良かった。

 

「いかんいかん。では……」

 

その後も色々と試し、段々箱が積み重なっていき、老人の瞳の輝きと腕の筋肉痛も強くなっていった。

どうやら私はオリバンダーさんの職人魂に火をつけてしまったらしかった。

一時間ほど経過し、箱の高さが30センチ位になり、私が腕の痛みに思考を放棄して、オリバンダー老人の瞳の輝きがLED並みになって来た頃、オリバンダーさんが一本の杖を選んだ。

 

「少々珍しいですが、桜にドラゴンの羽根の筋。32センチ、しなやか。どうぞ」

 

何回目かも分からないまま、適当に杖を振る。

すると、何故だか杖から暖かい風の様なものが指を伝って流れ込んできた。

 

杖の先にあった枯れた観葉植物はみるみる内に息を吹き返して、キラキラと光って見える綺麗な花を咲かせている。

 

「おお!」

 

オリバンダーさんに聞くまでも無い。

この杖が私の今後の相棒になる、という事だろう。

細かい装飾のなされたそれを見下ろして、私は張り詰めていた頬を緩めた。

 




笑える小説を書ける人って、本当に尊敬します。
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