ドラゴン使いの少女は。   作:トリスティティア

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どうも、最近コントにはまっているトリスティティアです。


時の流れは河の様に速く。

1991年 7月30日。

机の上に置かれたカレンダーを見つめて、時間の流れの速さにため息を吐いた。

よくよく考えてみると、ここ数年カレンダーを見た記憶が無い。

一応毎年買い替えていたはずなのだが、その度にシオンと名付けたドラゴンに破かれたりイライラがピークに達して自分で破ったりしていたからだろうか。毎日の様に叫び声が絶えなかった事は思い出せる。

それだけドラゴンのしつけは大変だった。

今でこそ従うが、始めは言う事も聞かないし、噛みつこうとするし、吠えるし。その癖両親には絶対に逆らわない。

一応私はシオンの主人のはずなのだが、どうも舐められていた様な気がしてならなかったな。

 

その結果、ドラゴンの吠え声と私の叫び声が広い家にこだましていた。

そして、もう一つ。ドラゴンには鳴き声と牙と爪以外に能力があった。

 

それは、「大きさ」だ。

ドラゴンは、大きさを自在に変えられる。

それこそポケットに入るレベルから家がぶっ壊れるレベルまで。

……うん。

子供の頃は、それもコントロール出来なくて、何度壁がぶっ壊れ、説教された事か。

つくづく成長を感じる。

 

シオンにおやつをあげていると、窓から雨音に混じってこつこつとなにかを叩く様な音が聞こえて来た。

そちらに目を向けると、フクロウが手紙を持って窓を蹴っていた。急いで窓を開けて手紙を外してやる。

嬉々として捕まえようとするシオンを制止し、ナッツを一粒やると、びしょ濡れのフクロウは飛び去っていった。

フクロウを見送ってから手紙を広げてみると、家の住所だけでなくちゃんと事細かく今居る場所まで書いてある。

鑞付けの紋章にライオンや蛇が見える為、ホグワーツからの手紙と考えるのが妥当だろう。

まあ、大雨の中届けられた乾き切っている手紙が一般人からだったらびっくりだが。

 

部屋の椅子に座ってから、封筒を開ける。

思った通り、それはホグワーツの入学許可を示す手紙だった。

見たところ羊皮紙に直筆っぽいが、マクゴナガル先生が1枚1枚手で書いているのだろうか。そう思って見ると、マクゴナガル先生の血の滲むような努力が何となく垣間見えてくる。

羊皮紙に羽根ペンって、めちゃくちゃ描きにくいのに。

というか、羊皮紙って何時代のことだろうか。普通に植物由来の紙を使えば良い話だし、万年筆だってボールペンだってあるのだから。

 

……って、そうじゃない。

脇道に逸れるのは私の悪い癖。文具談議は今は必要が無い。

早速母さんに報告しなければ。

 

シオンを後に続けて、母さんがいる筈の居間に向かう。

 

「母さん、ホグワーツから手紙が……」

「あら、フローラ、ほんと「本当かい、フローラ!」

「あ、父さん居たんだ」

 

見事な巻き舌で名前を呼ばれた。

本当に2人とも老けない。

てか、父さんのテンションが高過ぎて怖い。折角の美形が台無し。

思わず眉を顰めて半目になりそうになるが慌てて目を見開いた。

 

「あのねクリス。フローラは今、私と話していたの。遮らないでくれるかしら?」

 

口元に笑みを滲ませて母さんが言った。明るいはずの瞳の色がどす黒く染まっている。ぶっちゃけて言えば怖い。

正面から見つめられた父さんは、冷や汗をだらだらと流しながら愛想笑いを浮かべる。

我らが父は今日も元気に尻に敷かれている様だった。

 

「ご、ごめんごめん」

「で、フローラ。おめでとう。学用品買いに行かなきゃね」

 

さっきとは違う柔らかな笑顔で言われる。この切り替えの速さにも、もう慣れてしまった。

 

「母さん、羊皮紙買わないと……って、何々?」

「あ、セシル」

 

良いタイミングで兄が入って来た。右手に紙を持っているところを見るに、兄にも同じタイミングで手紙が届いたらしい。

1羽で2人分届ければ良いと思わなくも無いが、宛先が違っていたからだろうか。そう考えると、送り主は妙に完璧主義らしき物があるらしい。それならもうちょっとくらい生徒の安全にも注意を払って欲しい。

そんな事をぼんやりと考えていると、セシルもやっと察したらしい。

 

「ああ、フローラも遂に、ホグワーツ入学か。長かったなぁ」

「そうね……学用品は、セシルと一緒の日でいいわね」

 

手紙を読みながらお母さんが言った。

 

「おお!久しぶりに家族で出かけ」

「あ、僕途中から友達と合流するから」

 

付き合いの悪い兄はともかく、私は今年頃の娘らしく買い物にわくわくしていた。

願わくば、買い物の日は晴れていてはくれないだろうか。

 

 

すっきりと晴れ渡った青空。

夏の空は、魔法界でも人間界でも変わらず綺麗だ。

 

……なぁんてかっこいい事を考えてみる。残念ながら私にはポエマーの才能は無いようだ。

 

私は今、家族とダイアゴン横丁に来ている。

 

父が羊皮紙と羽ペン、望遠鏡を買っている間に、私とセシルは、制服を買いに「マダムマルキンの洋装店」まで来ていた。

(母は兄が早速穴を開けた錫鍋と、魔法薬セットを買いに行っている)

 

洋装店に向かう間、ハリーとマルフォイに会うかどうか内心不安と期待が7:3の割合で存在していたのだが、店の前にハグリッドの巨体が見えなかった事で、良くも悪くも裏切られた。

 

採寸されながら考える。

 

ここで出会わなくて良かったのかもしれない。

アルテミル家は聖28一族ではないとはいえ一応純血である。

しかも、父は魔法省勤め。フォイフォイの父親とも知り合いかもしれないのだ。

そして私は純血主義では無い為、フォイフォイに睨まれる可能性がある。

しかも、ハリーと交友関係を結んでしまう可能性もある訳だ。

別にハリーと友達になっても良いのだが、所詮私はモブ。

仲良し3人組では無い私が不用意に「生き残った男の子」に近付いたらどうなるか……死ぬよね。うん、死ぬ。死の呪文かけられるかバジリスクに睨まれるかトロールの棍棒でミンチになるかして死ぬ。

詰まるところ、ハリーは私にとって歩く死亡フラグと言っても過言では無いのだ。出来れば一生関わり合いにはなりたく無い。

 

ああ、神様ありがとう。このまま何事も無く第二の人生を謳歌したいです。

青春とか、最高だぜ!いえっへい!とか、友達いっぱい出来ちゃってどうしよう!とか是非とも思ってみたいです。

 

ああ、何て生きるって素晴らしいんだ。命って尊い。

今ならどんな痛みにも耐え切れる様な気がしてきた。

 

段々命への信仰心を開花させて行く私を、危ういところで鋭い痛みが食い止めた。

 

「痛っ!」

「あら、すみませんね」

 

見ると、ピンが私の腿を刺し貫いていた。

……神様、どうやら私にはまだ痛みを克服するのは無理な様です。

歯を食いしばりながら、そんな事を考えていた。

 

 

 

まあそんな事もありましたが、喉元過ぎれば熱さ忘れる。すっかり私は元気いっぱい100%である。

 

「じゃ、俺は友達と買い物するから」

「うん、じゃあね」

 

いつの間にか生意気にも一人称が俺になっていた兄と別れ、私は「フローリシュ・アンド・ブロッツ書店」に向かった。

勿論教科書を買う為だ。

兄はきっと、友達と買いに来るんだろうな。……羨ましい。

 

薄暗い店内では、天井まである本棚にぎっしりと本が詰まっていた。

それは前世でお気に入りの場所だった国立図書館を思わせて、大好きな光景だった。

最も、前世よりも不思議な本が沢山あるが。何も書いてない本、切手から敷石まで色々な大きさの本。

心が躍る。

 

リストをポケットから出して、取り敢えず教科書を探し出して行く。

店員に探してもらっても良いのだが、自分で探すから楽しいのである。これが浪漫というものだろうか。

 

無事に様々なところに散らばった教科書を探し終え、次は完全なる趣味の本探しだ。

 

ロシア文学。今日のお目当てはそれだった。歴史のコーナーは当然素通りする。

選り好みしないと数年前に決意したような気もするが、残念ながら私は歴史の本を開くと同時に寝落ちしていたのでもう諦める事にした。人間、諦めが肝心なのである。

 

そうして探し回っていたのだが、中々見つからない。

何故だ……普通入荷したばかりならば取り易い場所に置く筈じゃ……

店員に聞こうにも、プライドと人見知りがそれを許さない。

自分で見つけてこそ、達成感があるのだ。意外にも私は職人気質だったらしい。

 

めらめらと謎の気合いを入れて、やっと発見した。

上にあったのだ。下ばかり見ていて気付かなかったのか。まあ、仕方が無いだろう。何故か、歴史のコーナーにあったのだから。

しかし、何はともあれやっとアレを買える!と、喜びに満ち溢れたのも束の間。

早速背伸びをして、本を取ろうとした所で、私の脳裏にある考えが過ぎった。

 

………あれ、もしかして背が足りてない?………という考えが。

 

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