ドラゴン使いの少女は。   作:トリスティティア

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どうも、最近チャリ通になったトリスティティアです。


さあ燃やそう、あの帽子。

汽車が停まり、皆押し合いへし合いしながら外に出た。

キングズ・クロス駅とは似ても似つかない様な、小さな暗いプラットホームだ。

9月とはいえ、イギリスの夜はまだひんやりと冷たい。ローブを体に巻きつける。あまり変わらないが、精神的には暖まるのでこれで我慢しておこう。

 

「イッチ年生!イッチ年生はこっち!」

 

ランプを持った大男……ハグリッドの方に、一年生達はゾロゾロと向かって行った。

 

「さあ、ついてこいよ……もうイッチ年生はいないな?足元に気を付けろ。いいか?イッチ年生、ついてこい!」

 

何故か整備されていない狭い小道を、真っ暗な中ハグリッドに続けて降りていった。

結構な距離があるので、絶対に舗装した方がいいと思ってしまうのだが。

幸運にも誰一人として転ばずにやっと下まで降りた所で、ハグリッドの声がした。

 

「みんな、この角を曲がったらホグワーツが見えるぞ」

「うわぁ!」

 

広い湖の向こうに見えるのは、幻想的な景色だった。

キラキラと輝く窓、壮大な城。

絵の一部だと言われても納得してしまいそうな程綺麗だった。

 

「四人ずつボートに乗って!」

 

ハグリッドの声に、岸辺に繋がれた小船にやっと気がつく。

シェリーと一緒に、ネビルと黄土色の髪の少年と乗りこむ。

 

「みんな乗ったな?よーし、では進めえ!」

 

一人でボートに乗っている巨体のハグリッドの声に続いて、ボートが一斉に動き出した。

 

「おうっ」

 

意外とスピードがあった。

落ちそうになり、思わずボートの縁を掴む。

ほっとして横を向くと、何か白いモノが見え……その正体に気づいた瞬間、私は一気に青ざめた。

 

「頭下げぇー!」

 

という声にも反応出来ず、危うい所でシェリーに押し下げられた位には私は動揺していた。

幽霊じゃない。あれは、どう見てもシオンだった。

何をやっているんだろうか。

ケージに入れて鍵を閉めたはずなのに、どうやって逃げ出したんだろうか。

皆城に見惚れていて気づいていないのを良い事に……。

 

 

 

陸に上がって、皆が城の中に入って行く中、私は1人遅れて白い物……もとい、シオンを捕まえる。

 

私を見上げて鳴こうとするので、必死で止めた。

バレると不味い。一学期の一番最初から怒られるとか嫌。

仕方ない、奥の手を使おう。

 

「……シオン、"不可視化"と"小型化"」

 

私の囁き声と共に、手の平サイズになったシオンの姿が薄れていく。

私は主なのでまだ見えているが、きっと他の人には見えないだろう。

 

「フローラ?如何したんですか?」

「あ、あぁごめんシェリー。今行く」

 

不可視化プラス小型化したとはいえまだまだ心配なので、後ろ手にシオンを隠して、シェリー達を追いかけた。

 

 

 

 

城に入ると、今度は一年生達はマクゴナガル先生に引き渡される。後を着いて行き、通された待機場所は意外と狭かった。

 

「ホグワーツ入学おめでとう」

 

全員が収まった事を確認したマクゴナガル先生が挨拶を始めた。

シオンをしっかりと手の中に隠す。

 

「新入生の歓迎会がまもなく始まりますが、大広間の席につく前に、皆さんが入る寮を決めなくてはなりません。寮の組み分けはとても大事な儀式です。ホグワーツにいる間、寮生が学校での皆さんの家族の様なものです。教室で勉強するのも、寝るのも寮、自由時間は寮の談話室で過ごす事になります」

 

つまり、寮で友達が出来なかったら卒業するまでぼっちという事だ。

……シェリーと一緒の寮になりますように。

 

「寮は4つあります。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンです。

それぞれに輝かしい歴史があって、偉大な魔女や魔法使いが卒業しました。ホグワーツにいる間、皆さんの良い行いは寮の得点になりますし、反対に規律に違反した時は寮の減点となります。学年末には、最高得点の寮に大変名誉ある寮杯が与えられます。

どの寮に入るにしても、皆さん1人1人が寮にとって誇りとなるよう望みます」

 

ま、どれだけ頑張ってもグリフィンドールが勝つに決まっているのだが。あーあ、嫌だな、えこひいき。というわけで、私は出来ればレイブンクローかハッフルパフに入れてもらいたい。

 

「まもなく全校列席の前で組み分けの儀式が始まります。待っている間、出来るだけ身なりを整えておきなさい」

 

マクゴナガル先生は、一瞬ロンやネビルに目を止める。

 

「学校側の準備ができたら戻ってきますから、静かに待っていてください」

 

先生が部屋を出て行った。

ほっと一息つく事が出来た。

流石にこのまま組み分けは無理だろう。どうする。ポケットにでも入れておくか。

 

「あれ、フローラ。その手に乗っているの……」

「うぇぇっ!?」

 

ついつい驚いて変な声が出た。

私の手の中をシェリーが覗き込んでいる。

 

「……え?」

 

見えている?

いや、そんなはずは無い。何故なら、不可視化は1番初めに習得する技術だから。今更失敗する訳が無いのだ。

 

「あ、い、いえ。見間違えただけでした」

「そ、そうだよね」

 

この際シェリーの言葉を信じよう。きっと、埃か何かが見えただけだろう。

さて、どうやって話題を変えようか。話題を探しながら誤魔化すように笑みを浮かべたら、シェリーの方から話を振ってくれた。

 

「フローラは、組み分けの儀式が怖くないんですか?皆色々言っていますけど」

「んー、大して」

 

強いて言えば、皆の前で帽子をかぶるのが少し緊張するくらいだろうか。注目されるのは苦手だった。

シェリーだって、さして気にもしていないように思える。

その事を聞くと、大分歳の離れた従姉が居るらしい。親族にホグワーツ卒業生がいるという事は、マグル生まれじゃないのか。純血の家系なのかな?

 

その事を聞いてみようかと思ったが、ちょうどマクゴナガル先生が扉を開けたので結局聞けずじまいだった。

どうやら準備ができたらしく、言われるがまま、私達は一列で大広間へと向かった。

どさくさに紛れて、シオンにポケットに入ってもらう。

 

重そうな扉を開け、大広間へと入っていった。

 

そこに広がっていた光景は、想像の何百倍も綺麗だった。

空中に浮かぶ何百本ものろうそく、キラキラと輝く金色の皿とゴブレット。

天井があるなんて、信じられない程綺麗な星空。

 

「本当の空に見える様に魔法がかけられているのよ」

 

ハーマイオニーが遠くの方でそう言うのが薄っすらと聞こえた。

 

マクゴナガル先生は上座のテーブルの所まで私達を引率し、全校生徒に顔を向けるかたちで並ばせた。

何百という顔が、キラキラと光る瞳で見つめてくる。

……意外と全校生徒多かった。

 

先生が一年生の列の目の前に、四本足の椅子と年季の入った汚いとんがり帽子を置く。私は別に気にしないのだが、あれを被るのは潔癖症の人は抵抗あるんじゃないだろうか。

組み分け帽子は切れ目の口を開いて、歌い出す。

静まりかえった大広間に、その声は良く響いた。

 

寮の説明を、歌に練り込んでいる。

(その労力を自分を綺麗にする事に使えと思ったのは私だけだろうか)

 

それによると、グリフィンドールは勇気ある者、ハッフルパフは善良な者、レイブンクローは賢い者、スリザリンは狡猾な者が行くらしい。

……あれ?スリザリン褒めてなくない?

 

まあ良い。

私はグリフィンドールとスリザリン以外になれれば万事OKなのである。

出来れば影の薄いハッフルパフなんかだと最高だ。

失礼な事を考えながら、周りと一緒に拍手をする。

 

拍手が止んでから、マクゴナガル先生が羊皮紙の巻紙を持って進み出る。

 

「ABC順に名前を呼ばれたら、帽子を被って椅子に座り、組み分けを受けて下さい」

 

という事は、私結構早めに呼ばれるんだな。一、二番を争う程度には早いだろうか。

 

「アボット・ハンナ!」

 

金髪のおさげの少女が前に出て、すっぽりと帽子を被った。

一拍おいて、帽子が叫ぶ。

 

「ハッフルパフ!」

 

わっと沸いた右側のテーブルが、ハッフルパフなのだろう。先輩達が暖かく迎え入れているのが見える。ああ、あの席に座りたい。

 

「アルテミル・フローラ!」

 

予想通り、早かった。

注目されながら小走りに椅子に向かう。

 

「え、まじ?あのアルテミル家?」

「また問題児か……?」

「あの子もドラゴン連れてるのかなぁ」

 

等と、騒つく声が聞こえてくる。途中で全力で手を振るセシルの顔が見えたが、全力で無視した。まさか振り返せるはずもないだろう。

というか、また問題児って……セシルよ、ホグワーツで一体何をしていたんだい?

心臓をばくばく言わせながら、椅子に座って帽子を被る。

 

頭の中で組み分け帽子の声が響いた。

 

『ほお、アルテミル家の妹か。成る程……やはり……』

『あ、あの出来ればハッフル』

 

そこまで言いかけた所で、組み分け帽子は言った。

 

「グリフィンドール!」

 

ジーザス。急降下していく私の気持ちをは裏腹に、次の瞬間、上がる歓声。

 

おいこらちょっと待て。

ハリーの言う事は聞いてた癖に、私の言う事は聞かないんだなこんちくしょー。何だよアルテミル家の妹かって。アルテミル家に産まれたら強制的にグリフィンドールなのかよ。結局血ですかこの野郎。

火つけて池に投げ入れるぞこいつ。そのままイカの餌になれば良いんだ。

 

内心帽子に対する呪いの言葉をぶちまけながら帽子を椅子に置き、左端のテーブルに向かう。周りの眼が無ければ確実に私は帽子を引き裂いていただろう。

 

ふらふらと席に着く。

力の無い目で次の組み分けを見ようと前を向いた。

 

「ブラック・アステリア!」

 

ブラック?

名前を呼ばれて前に進み出たのは、整った顔の黒髪の女の子。

あれ?あの子、どっかで見た気が……。

 

さざなみの様に広がる囁き声が、僅かな既視感と違和感を吹き飛ばした。

それは、私の時の様に好意的なものじゃ無い気がした。

 

そんな声を気にせずに、無感情に少女は歩いて行き、帽子を被る。

 

十秒程沈黙して、帽子は告げた。

彼女の人生の道標を。

 




見事にグリフィンドールになっちまいましたね。
最初、レイブンクローにしようか迷ったんですが、結局グリフィンドールでしたね。
組み分け帽子が焼き芋の糧にならない事を祈りましょう。
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