海上では一方的な戦いが繰り広げられていた。といっても味方によるものではなく、アンノーンつまり深海棲艦による攻撃によってだ。この戦闘によって戦艦山城が流血するレベルの被害を受けており、重桜艦隊は防戦一方の戦いを強いられていた。
「もう!なんなのよコイツら!」
「量産型もすべて倒されました!これ以上はもう!」
戦闘中の古鷹と加古が高雄に叫ぶ。
「くっ、奴らは一体何なんだ!」
艦隊と相対するのは、ヘ級1体とニ級3体、そして、戦艦ル級と戦艦タ級だ。
「ロブデビパザダギダグ、ガンジャボゾロパゾググス?」
「ヅギゼザ。ギズレデギボグ。ゾグゲゲゲルビギギョグパガスラギ。」
ル級とタ級は奇妙な言語で会話しているが、その内容が分かる者はここにはいない。
「一体何を話しているんだ?どこの国の言葉だ?」
「高雄さん!」
綾波が高雄の隣に立つ。
「綾波が囮になるです。山城さんを連れて撤退を。」
「ダメだ!そんなことできん!」
「誰かが囮にならないと、逃げられないです。早く。」
「しかし!」
その瞬間、高雄たちの周囲に爆発とともに強大な水柱が立ち上がった。撃ったのは当然ル級とタ級だ。
「ジャガバ。」
ル級が漆黒の主砲を向けたその時、どこからか飛んできた弾丸がル級に命中し、仰け反った。
「ザセザ!?」
弾丸を放たれた方向に目を向けると、そこにはバイクに乗ったマゼンタ色のセーラー服を着た少女がいた。
「誰だ?」
艦隊の誰もが疑問に思った。あんな少女重桜では見たことがない。そもそも重桜艦船の特徴である獣の耳や角が存在しない。
「ビガラ、バンルグレサギザザムツキバ!?」
(貴様、艦娘ライダー睦月か!?)
「ムツキ?ヂガグバ、ゴセパバンルグレサギザザフブキザ!」
(睦月?違うな、俺は艦娘ライダー吹雪だ!)
「同じ言語をしゃべってる?」
「攻撃したところを見るに、敵の仲間というわけじゃないさそうだけど。」
「お前ら、下がってろ!こいつは俺がやる!」
「重桜の言葉をしゃべれるのか!?いったい何者だ!」
「こいつらは俺じゃないと倒せん。黙ってみてろ。」
ライドブッカーをソードモードにして刀身を撫でると、カードを挿入する。
『ATTACKRIDE SLASH』
強化された斬撃がヘ級とニ級達を切り裂き、爆散した。
「すごいです。」
「一撃で倒すなんて。」
(あの刀を撫でる仕草・・・まさか。)
「ジャボンヅンザギゼ!ボソギデジャス!」
(雑魚の分際で!殺してやる!)
ル級が突撃してくるが、吹雪は次のカードを挿入する。
『ATTACKRIDE ILLUSION』
吹雪が3人に分裂し、ル級を取り囲む。
「バ、バンザボセパ!?」
(な、なんだこれは!?)
「「「どうした?俺を殺すんじゃないのか?」」」
『ATTACKRIDE BLAST』
3人の吹雪がライドブッカーをガンモードにし、分裂した銃口から光の弾丸を撃ち出す。
「ガッ!グガァ!」
連続攻撃を受けたル級はゆっくりと崩れ落ちたのち、爆散した。
「残るはお前だけだ。」
「ジョグザンジャバギ!ビゲスグバヂザ!」
(冗談じゃない!逃げるが勝ちだ!)
「逃がすか!」
『FAINAL ATTACKRIDE FU FU FU FUBUKI』
吹雪とタ級の間に10枚のライドカードを模したホログラムが出現する。吹雪は跳躍し、ホログラムを貫きながらタ級に必殺技ディメンションキックを放った。その一撃を受け止めきれるわけもなく、タ級はあっさりと爆発四散した。
「ま、こんなもんか。」
吹雪はお仕事終了というように手を払い、マシンディケイダーに跨る。
「待て!貴様何者だ?KAN-SENか?それともセイレーンの新型か?」
「話すことはない。あと、俺はセイレーンじゃない。じゃあな。」
方向転換し、バイクを走らせる。
「待て!とまれ!」
だが、吹雪は止まらず、出現させたディメンションゲートの中に消えていった。
その夜 憲兵詰め所
ツカサが電話をかけていた。場所は当然自分の家だ。
ジリリリリ ジリリリリ
ツカサの家の黒電話が鳴る。今時黒電話?と思うかもしれないが、三笠が多機能電話は難しいというのでこちらに変えたのだ。
「はい、角谷です。」
電話に出たのはエンタープライズだ。
『エンタープライズか?俺だ、ツカサだ。』
「ツカサ!連絡がないから心配してたんだ。そっちはどうだ?」
『あぁ、深海棲艦どものせいでちょっとヤバイ状況だ。もしかしたら三笠に来てもらわないといけないかもしれない。』
「そんなに酷いのか?分かった、三笠にも伝えておこう。」
『頼む。それからユニコーンは?』
「彼女なら、オイゲンが寝かせたよ。ツカサが帰るまで起きてると駄々を捏ねていたが。」
『そうか。心配かけて悪かったな。明日には帰るって伝えておいてくれ。』
「分かった。そっちも気をつけて。おやすみ。」
「あぁ、おやすみ。さて、行きますか。」
受話器を置いたツカサは、詰め所をあとにした。
重桜母港会議室
長門、赤城、加賀の3名が集まり話し合っていた。
「まったく、アンノーンだけでも厄介だというのに、この上まだ厄介なものが出てくるとは。」
「加賀、少し落ち着け。赤城よ、この娘について分かっていることはあるか?」
机の上には上空から撮影されたらしい吹雪の写真が複数置いてある。
「はい。まず、この娘は我々同様水上に立つことができます。しかし、御覧の通り重桜KAN-SEN特有の耳や角が存在しません。艤装も既存のものとは若干異なるようです。」
「重桜でないとすると、他の陣営か?」
「高雄曰く『流暢な重桜語を話していた』とのことですので、判別がつきません。それから娘の武器ですが、銃、剣、札入れの3つに変形させることができるようです。」
「札というのは?」
「彼女の腹部に取り付けられている機械が分かりますか?どうやらそれに札を入れることで、能力を発動しているようです。ロイヤルに札を艦載機に変える空母がおりますが、関連は不明です。」
「そして、この娘はアンノーンを全滅させた後、銀幕の中に消えて行ったと。」
「はい。我々の攻撃が一切通じなかったアンノーンを赤子の手をひねるかのように易々と倒してしまったとのことです。」
「長門様、やはりこの娘、セイレーンの新型兵器ではないでしょうか?こちら側にアンノーンに対抗できる兵器がない以上、奴らのものと考えるのが妥当ですが。」
「それはどうかしらね、加賀。高雄たちは彼女自身の口から『自分はセイレーンではない』という発言を聞いているのよ。」
「そんなもの当てにはなりません!」
「止さぬか加賀。余もこの娘のことは気に掛かるが、脅威がない現段階では対処する必要もあるまい。」
「私もそう思います。今は、アンノーンについてです。」
「加賀、確認を。」
「はい。アンノーンによる襲撃はこれで4回目。すべて海上の大桜を中心に半径2海里以内の地点で起きており、1回の襲撃ごとに誰かしら轟沈寸前の重症を負わされております。1回目は飛龍、2回目は長良、3回目は夕暮、そして此度の4回目は山城。以前の3回まではアンノーンを倒すことはできず、撃退に成功しております。」
「撃退というより、向こうが用は済んだというようにさっさと帰ったいった感じですが。」
「奴らの目的はなんだ?なぜこんなまどろっこしい戦いをするのだ?」
ガチャ
「お、ここか。」
突然扉が開き、ツカサが入ってきた。
「な、何者だ!?今は会議中だぞ!」
「悪いな、手詰まりになってるんじゃないかと思って手伝いに来た。」
「なんだと?」
「お主、さっきの、ツカサと言ったな?」
「よう長門、数時間ぶりだな。」
「貴様!長門様になんという口を聞く!」
「待ちなさい加賀。あなた、確か新任の憲兵隊長さんね?手伝うとはどういうことかしら?」
「なぁに、襲撃の法則性が分かったから教えてやろうと思ってな。」
「法則性だと?」
「ふむ、やはり法則があったか。で、それを教えてはもらえぬか?」
「そうしたいのは山々なんだが、急いできたもんだから喉が渇いてな。」
「加賀、この御方にお茶を。」
「ね、姉様!?しかし!」
「加賀、早くなさい。」
「・・・はい。」
「あまり熱くしないでくれよ。猫舌なんでな。」
「厚かましい奴め。」
程なくして戻ってきた加賀からお茶を受け取り、ゆっくりと飲む。
「いいお茶だな。静岡産?なんか飲んでたら、小腹も空いてきたな。」
「加賀、この御方にお茶菓子を。」
「何で私がこんなことを・・・。」
「あ、羊羹はさっき食ったから、最中か八つ橋にしてくれよ。」
「ホントに厚かましい奴!」
再び戻ってきた加賀から最中を受け取り、それを食す。
「羊羹も旨かったが、この最中も旨いな。腕のいい給糧艦でもいるのか?」
「それで、そろそろ法則性とやらを教えてもらえないかしら?」
「・・・地図あるか?」
「貴様!このうえまだ食い物を要求するか!」
「チーズじゃない!地図だ!耳ついてんのか?」
「加賀・・・。」
「ち、違うんだ姉様、聞き間違えただけで。」
「何でもいいからはよう地図を持ってこぬか。」
ツカサは地図を受け取り広げ、襲撃された地点に×印を書き込む。続いて襲撃地点の近くにある島と島を線で結んでいく。するとどうだろう、歪な形ではあるが、五芒星が出来上がった。
「見ろ、襲撃地点の近くにある島同士を線で結ぶと、五芒星が完成する。襲撃はすべてこの五芒星の内側で行われている。」
「なるほど。だが、まだ5回目の襲撃は起きとらんぞ?」
「これから起きるんだよ。まだ襲撃が起きていないこの島の近海、ここには誰も近づけさせるな。」
「なるほど、よく分かったわ。加賀、直ちにこの島付近への接近禁止令を出しなさい。」
「分かりました!直ちに!」
そういい残して加賀は会議室から出て行った。
「じゃ、俺も帰るぜ。お茶と最中旨かったぞ。」
「えぇ、礼を言うわ。あなたのおかげで皆が救われた。ありがとう。」
「余からも礼を言おう。」
「止せよ。礼なんていらない。じゃあな。」
「行かせてよろしかったのですか?」
「あぁ。角谷ツカサ、なかなか興味深い男だ。」
出撃ドック
高雄は1人考え事をしていた。
(あの剣を撫でる仕草、それに太刀筋、まるで彼のようだった。いやしかし、そんなことありえるのか?)
「高雄さん?」
「ん?綾波か。どうしたこんな時間に。」
「気になることがあって眠れなかったのです。」
「気になること、あの娘のことか?」
「はいです。高雄さんは、アンノーンとあの娘の会話で聞き取れた部分がありますか?」
「ふむ、やはり綾波にも聞こえていたか。」
「『ふぶき』と『むつき』、綾波たちの知っている名前なのです。」
「なぜ奴らがその名を知っているのか?どういう意味で言ったのか?」
「気になることはそれだけじゃないです。」
「というと?」
「角谷ツカサ。」
「っ!」
「あの人が来た丁度その日に、アンノーンを倒すことができる人が現れる。これは偶然なのでしょうか?」
「あの2人には、何か関係があると?」
「ツカサさんからは奇妙な違和感を感じたのです。同じ違和感をあの娘からも感じた。偶然とは思えないのです。」
「実は拙者も彼が只者ではないと感じていた。しかし、関係があるという証拠もない。あまり人を疑いすぎるのはよくないと思うぞ。」
「はいです。」(でも、もしあの娘が、あの人が言っていた吹雪なら、綾波は・・・。)
文中の翻訳の有無は、理解できる者がいるかどうかで決まります。
グロンギ型深海棲艦
特殊な言語で意思疎通を図り、人や艦娘をゲームのように殺していくことを生きがいとしている。
駆逐・軽巡・雷巡はゲゲルを行えず随伴しかできない。潜水・重巡・戦艦・空母からゲゲルを行うことが出来る。鬼・姫は基本的にゲームマスターや審判を務めるためゲゲルをすることはめったにない。ゲゲルを成功させた者は、自分の艦種と対応する鬼とギンバゲゲルを行い勝利することで、敗北した鬼の力を得る。また、同じ手順で鬼が姫になるためのヂョグギンバゲゲルも存在する。