リーダーである南方棲戦姫が死んだことで、残ったグロンギ型深海棲艦は大慌てで逃げていった。吹雪は逃げる者たちを追撃することはせず、手に持っているアヤナミカリバーを上空に放る。すると、アヤナミカリバーは無数のキューブに戻り、海上で集結して綾波の姿に戻った。
「よう、大丈夫か?」
「振り回されすぎて、ちょっと目が回ってるです。」
吹雪の手をとり、フラフラと危なっかしい足取りで立ち上がる綾波。
「リーダーが死んだ以上、奴らは当分この国には来ないだろう。」
「ツカサ、ありがとです。それと、悪魔って言って攻撃したこと謝ります。ごめんなさい、です。」
「気にすんな。俺は気にしてない。さてと、あとはアレだな。」
ツカサが見上げるのは枯れ果ててしまった大桜。これがなければ、重桜の艦船たちは加護を受けられなくなってしまう。
「コイツを元通りにしないとな。」
「そんなことが出来るのですか?」
「あぁ、きっとうまくいく。」
『KANMUSURIDE AKATUKI』
吹雪は暁の姿に変わると、大桜の麓に向かった。
「近くで見るとでかいな。よし!」
『ATTACKRIDE INOCHINOOTO』
バックルから飛び出した音撃鼓火炎鼓が幹に固定され、直径3mほどの大きさになる。
「ハァァァァァ!生命の音!」
暁は音撃棒烈火を使って火炎鼓を叩き始めた。
生命の音とは、ツカサの前世である艦娘ライダーたちの世界で艦娘ライダー暁が使用した技だ。かつて、暁がとある島で魔化魍型深海棲艦と戦闘を行った際に火を噴く大型魔化魍によって島中の森が焼き尽くされてしまった。魔化魍の殲滅には成功したが、森が焼かれそこに住まう生き物たちが消え去ってしまったことを悲しんだ暁は、音撃鼓で生命の音を奏でることで、新たな生命を芽吹かせようとした。だが、これは奏者の体力を奪い取ってしまう諸刃の技でもあるため、最初は暁の体力が持たず失敗するかと思われた。だが、そこへ駆けつけた響の音撃管烈風、雷の音撃真弦烈斬、電の音撃弦烈雷の四重奏で体力の損耗を分散することで暁の負担を軽減、結果生命の音を完奏に成功。小さくも新たな生命を芽吹かせることができた。
今ツカサが行っているのは、その生命の音そのもの。枯れてしまった大桜を復活させようとしているのだ。しかし、奏者の体力を奪ってしまうのもまた同じ、次第にツカサの身体から力が抜けていく。
「ぐっ、まだだ!まだ、倒れるな!」
必死に自分を鼓舞し、演奏を続ける。その様子を見守る綾波、そしてもう1つ、少し離れた鳥居の上に銀髪の少女が立っていた。
「ふ~ん、お宝探しに重桜まできたけど、面白いことしてるじゃない、ツカサ。」
少女は右手に持っている青い銃に3枚のカードを装填する。
『KANMUSURIDE』
「折角だし、手伝ってあげますか。」
『HIBIKI』『IKAZUCHI』『INAZUMA』
「お願いね。」
響は音撃管烈風を、雷は音撃真弦烈斬を、電は音撃弦烈雷を構え、演奏を始める。
(ん?なんだ?身体が軽い?)
先ほどまで体力の損耗によって重く感じていた身体が今度は軽く感じることに違和感を覚えるツカサ。
(まさか、響たちが向こうの世界から手伝ってくれてるのか?)
見当違いな推測をしつつ演奏を続ける。負担が減ったことで演奏もスムーズに出来ている。
「これで、ハァ!!」
ドォン!
最後の一叩きを終えた瞬間、幹の色が変わっていく。枯れていた先ほどとはうって変わって明らかに活力を取り戻している。枝には小さな蕾が膨らんでいる。大桜は復活したのだ。
「これでいい。時間は掛かるが、大桜は必ず元通りになる。」
「すごい。」
「さて、俺は行くとするか。」
「皆に会っていかないのですか?」
「あぁ、質問攻めにされても困るしな。お前からよろしく言っておいてくれ。じゃあな!」
「ツカサ、ありがとう、です。」
吹雪はマシンディケイダーに跨り、走り去っていった。
「これで貸し借りゼロよ、ツカサ。」
そう言うと、少女は鳥居の上から煙のように姿を消した。
重桜母港
「綾波!無事だったんだな!」
「高雄さん、ただいまです。」
「ツカサ殿は?」
「あの人は、行きました。」
「そうか。」
「むぅ、奴には色々と問い詰めたかったのだが。」
「まぁよいではないか。」
「長門様!赤城姉様も。」
「あ奴はアンノーンを倒し、重桜を救った。感謝すべきであろう?」
「長門様のおっしゃる通りよ加賀。綾波、あなたもそう思うでしょう?」
「はい。ツカサは大桜も蘇らせてくれたです。」
「あの男はそんなことまで?一体奴は何者なんだ?」
「あの人は、通りすがりの艦娘ライダー。ただそれだけです。」
「通りすがりの艦娘ライダー、か。ふむ、それならいずれまた重桜を通りすがるかもしれんな。」
「その時は、私が相手になります。私に給仕をさせたことを後悔させてやる!」
「おーい!綾波ー!」
声のした方向を見ると、夕立、時雨、雪風が手を振りながら走ってくる。
「行きなさい、綾波。皆あなたのことを心配してたわよ。」
「赤城さん、はい。行ってくるです。」
綾波は手を振りながら3人の元へ向かう。
少し離れた物陰でツカサと三笠はその様子を見ていた。
「よかったのか?別れの挨拶をしなくて。」
「あぁ、どうも俺にはアイツとはこの先、縁がありそうな気がするんだよ。」
綾波は夕立に飛びつかれ、時雨と雪風に揉みくちゃにされている。だが、その表情は明るく笑っている。
「またな、綾波。」
そう言ってツカサはポラロイドカメラのシャッターを切る。出てきた写真はいつも通り歪んでいたが、綾波の笑顔ははっきりと写っていた。
「行こう三笠。次の戦いが俺を待っている。」
「あぁ、共に行こう。」
2人は母港を後にし、帰路についた。
その上空
「もー!重桜にツカサがいるからって、お兄ちゃんとエンプレスが言ってたから来たのにどこにもいないじゃない!どこにいるのよー!」
小さな白いコウモリの小さな叫びを聞く者は誰もいなかった。
正体不明の艦娘ライダーについては、いずれ。
艦娘ライダー???
仮面ライダー???の力を得た艦娘ライダー。他の艦娘ライダーを召喚できる。