ストーカー×ストーカー×ストーカー   作:椿遊

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勢いで書いてしまいました。


第1話

金曜日の18時過ぎ。社内にてデスクワークに励んでいる人、退勤の用意をしている人、飲みの話をしている人たちの姿が目に映る。もちろん自分は退勤の用意をしている。

 

残業なんてしたくないからね、仕方ないね。

ただ、残業するならカードきっとけよ、みたいなブラック企業では決してない。しっかりと残業手当は払われるし週休2日はきちんと守られている。たまに休日出勤もあるがその分、平日が休みになることもあるので不平不満が溜まっている、というようなことはない。

単純に今日は予定があるのだ。

 

「林くんお疲れ様〜、明日誕生日だったよね?はいプレゼント」

 

「まじっすか、黒木先輩ありがとうございます」

 

明眸皓歯、楚々、立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花などなど言葉が挙げられる、俺にとっての癒し療法の擬人化といっても過言ではない黒木利奈さん。入社が1年先の先輩である。

 

彼女から誕生日プレゼントを受け取ったのは同期の林。そして、2人の会話を聞いて絶許している自分は河野大樹、独身、25歳。

 

「じゃ、また来週」

 

にししと笑みを浮かべ踵を返しカードを切って上がった黒木さん。その姿を追うように俺もカードを切る。

足早に会社の通路を歩いていく。しかし金曜の夜、さっさと帰ろうとする人は多く会社から出るのにややもたついてしまう。

 

会社の外へ出て通行人を避けながら前へと進む。

「あ、いた」

 

東京ガールズコレクションに出演しているモデルのような歩き方ではないが、視線が勝手に黒木さんのほうへと惹きつけられたかのようにすぐに発見する。

 

そして後ろから歩くペースを少し落とし歩いていく。

黒木さんとの距離がやや縮まり電柱の陰に身を隠す。

 

予定とはこのことである。黒木さんが今日も安全に、怪我をすることなく、変な輩に絡まれることなくご自宅にお帰りになられることを祈り様子をみているのだ。

 

黒木さんは月曜日から木曜日までは女性社員と一緒に帰るので後をつけることなどないのだが、なぜか金曜日は1人で帰っている。なにかあったらどうするのだと思いこうやってSPさながら黒木さんを守ろうと行動しているのである。

入社したときは筋肉という筋肉は母胎の中に置いてきたのかと言わんばかりに柔らかかった腕や足だったのだが、黒木さんに万が一のことがあったらと気持ちから、トレーニングをかかさなかった。その結果しっかりとした筋肉が全身についていた。

「ん…?」

 

普段ならばこの通りを曲がることなく、まっすぐ歩いていたはずの黒木さん。

この通りを曲がった先は突き当たりなのだが…曲がった…?

数ヶ月に渡り黒木さんを見守ってきた自分にとって初めてのできごとだった。

いつもと違う行動をとった黒木さんを見失ってその後なにか起きたら…。ざわつく心を抑えて今このときから休日を過ごすなんてことができるはずもなく。

 

焦って、徒歩から足の運動を徐々に素早くしていく。

 

数十メートルは離れていたはずだがダッシュによって曲がり角へと即座に踏み入れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっほ、ストーカーとは悪趣味だねぇ…河野くん」

 

笑顔でその場に突っ立っている黒木さんが目の前にいた。

 

「いやー、こんなところで会うなんて偶然ですね」

 

「そうだね、突き当たりの、こんなところで会うなんて偶然だよね」

 

にこっとした表情は変わらないまま会話を続ける。

「ほんと偶然ですよね」

 

一方の自分は無理矢理にでも笑って会話を続けるしかなく。

 

「…ねぇ」

黒木さんが言葉を発しようとした瞬間だった。

 

 

「先輩!どうしたんですか!」

 

社内にてよく聞く声が耳に入ってきたと思えば、その社内にてよく聞く声の人物の姿が俺の後ろにあった。

 

はぁはぁと肩で息をしていることから恐らく走ってきたのだろう。ヒールで走って怪我でもしたらと思いやや心配になったのだが、俺の後輩がなぜこんなところにいるのだろうか。

 

 

「先輩、普段ならさっきの通りで曲がるなんてことないのに…急に曲がるからどうしたんだろうって思って……。?利奈先輩と2人…?」

 

彼女から見て俺の奥に立っている黒木さんの姿を視界に捉えたかと思うと黙り込む彼女。

何かあれば絡んでくる、普段の姿は天真爛漫という言葉がぴったりな、1つ下の後輩椎葉優衣がなぜここにいる。そして黙り込むとは珍しい。口を開けばなんとやらという言葉があるが彼女の場合、口が開きっぱなしなので口が閉じているこの瞬間が非常に珍しい。

 

 

「だ、だめですよ!こんな突き当たりの路で、えと…えっちな行為は不純です!」

 

口を開けば爆弾発言だった。

 

「「ち、違うって!」」

 

黒木さんと俺の前に声が重なった。

 

「だって、こんな突き当たりで2人っきりなんて怪しすぎます!」

 

訴えるように声を上げる後輩。確かに突き当たりで2人っきりとは怪しい。しかも黒木さんは俺が曲がってくることがわかりきっていたみたいだった…。あれ?黒木さん怪しくないか?…そういえばこの後輩も何で突き当たりまで走ってやってきたんだ?椎葉も怪しいぞ。

 

「なぁ椎葉、そういえばお前もなんでこんなとこに来てるんだ?」

 

 

「え?先輩の後つけてたらそりゃ来ちゃうに決まってますよ?」

 

 

は?俺の後をつけてきただって?

 

「ストーカーじゃねぇか」

 

「あなたも私のことつけてたじゃないの」

 

やや頬を赤く染めていた黒木さんがぼそっと口を開く。

 

「つけてないですから」

 

「じゃあなんでこんなとこに来たのよ」

 

ぷくりと頬を膨らませて怒ってますアピールをしているのだろうか、可愛い。黒木さんマジ癒し。

 

「今日は曲がって家まで帰ろうと思ったら突き当たりだっただけです」

 

「河野くんの家って反対方向じゃない。あそこのスーパーが近いからっていつも食料品買ってるじゃないの。安いし、あそこのおばちゃん、私の顔見ると値引きシール貼ってくれるし、たまに私に貼らせてくれるし、ほんといいスーパーよね」

 

「え?なんで家の近くのスーパーのおばちゃんと仲良くなってるんですか。黒木さんの家の近くのスーパーのほうが便利なはずじゃ」

 

 

「たまたまよ」

 

 

ぷいとそっぽを向いてしまった黒木さんを見つめていると横から声が飛んでくる。

 

 

「ちょっと先輩方!私の質問に答えてください!突き当たりで何しようとしてたんですか!」

 

俺の腕を掴みぶんぶんと上下に振り動かさせられ、後輩へと視線を移す。

 

 

「じゃあ先に俺の質問から、椎葉って俺のストーカーなの?」

 

「ストーカーじゃないです。後ろから見つめて隊です」

 

 

「それは世間一般ではストーカーというのでは」

 

「河野くん…あなたがいうの?」

 

 

好きな先輩の後をつけてたらストーカーが俺の後をつけていたようだった。

 

 

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