メスガキをわからせたかった大人がメスガキになってしまっただけのお話 作:千智
ピンポーン、とインターホンが鳴る。
「……んぁ?」
椅子に座ってダメになっていた私はそれに反応してのっそりと体を持ち上げるのです。
勘違いかとそのまま玄関のある方を見ていると、違うぞと主張するようにもう一度チャイムが鳴ったのです。
「あー、はいはい。いまでるのですよーっと」
とりあえずのためのパーカーを被り、ぽてぽてと足音を鳴らしながら考えるのです。果たして、私の家に来るような用件は何かあったかなと。
基本的に私の家に来るのはネット注文した荷物。基本的に外出で外見を晒せない私は、食事や日用品以外をネットで済ませているのです。
……しかし今日はそんな荷物が届くような日でもないし、特に心当たりがあるわけでもないのですが……
「んぇー……?」
セールスかなにか? それなら私の至福のひとときを邪魔した罪を償ってもらう必要があるのですが?
ドアチェーンをかけたまま鍵を開く。
と、同時に勢いよく扉が開かれるが途中でチェーンが引っかかってガチャン! と大きな音を立てたのです。
「ひっ」
しかしそんなことを予想もしてなかった私が多少なりとも驚くのは仕方がないことなのです。
私はつよつよな大人ですので、チェーンをかけていたことをすぐに思い出し不法侵入しようとした輩に対して鼻を鳴らして胸を張ったのです。
「ふ、ふん。どこの誰かは知らないですが、考えることなんてお見通しなのです。大人しく尻尾を巻いて帰るがいいのです、さもないと警察のお世話となるのですよ──」
変態ロリコン野郎、と続けようとしたところで。
その扉一枚挟んだ向こう側から、聴き慣れない
「それは、あたしも読んでますよぉ〜?」
次の瞬間に隙間から何やらゴツいハサミのようなものが滑り込んできたかと思えば、鈍い音を立ててチェーンが分断されたのです。
えっ、と思うまもなく開かれた扉の向こうには声から既に想像のついていたメスガキ──若干大人びて見えるのはきっとその大きな胸のせい──が仁王立ちで立っていましたのです。
そしてその左手には今し方ドアチェーンを噛み切ったチェーンカッターが握られていて──いや、それよりも。
私は、こいつに見覚えがあるのです。画面越しに見る時と勿論服装こそ違えど、このドヤ顔をしているメスガキを私が見間違えるはずがない……!
「こんにちにゃんにゃ〜ん、この天才アイドルが来てあげましたよ〜」
「まさか……パイン、なのです……!?」
モモコ率いる、プリティ・ボンバーズ。そのサブリーダーであるメスガキ──通称、パインがそこにいたのです。
私の呟きに対してニンマリと笑顔を浮かべたパインはそのままズイッと一歩、身体を私の前へと踏み出して。
「とりあえずお邪魔させて貰いますね、白金さん……いえ」
そして私の被っているフードへと手をかけて。
そのまま、ぱさりと頭から外したのです。
「プラチナさん?」
●~*
「はー狭っ苦しい家ですね、この天才を招待するには少々お粗末なのでは?」
「……勝手に入ってきておいて何をいってやがるのです」
椅子に座って私の部屋をぐるりと見渡し、そんな文句を垂れるパインの前に水を置く。
「そんなに嫌ならさっさと帰ってもらっても構わないのですよ、私は」
「いえいえお構いなく〜」
「はー??? 最初から構うのは私なのですが?????」
さっきは不覚をとってしまったのですが、ここは私の城。例えアクアだろうと大きな顔はさせないのです。
溢れない程度の勢いでテーブルにお茶の入ったコップを叩きつけ、私もパインの正面に座る。
「で、モモコの影に隠れてる二流アイドルがなんのようなのです?」
お茶を口に含んだタイミングで挑発を投げかけると一瞬だけパインの動きが止まり、お茶を口の中へと流し込んだのです。
……中々うまく隠しましたが、止まった一瞬眉がぴくりと動いたのは見逃してないのです、手応えありなのです。
パインは一つ咳払いを行い、取り繕うかのように
「単刀直入に言いますね〜」
「いいからさっさと言って帰れなのです、モモコならまだしもボンバトにも参加してない二流アイドルはお呼びじゃないのです」
「…………、そのボンバーバトルで、あたしと勝負してもらいます」
……ふぅん?
私はその言葉を受けて、自分の眼が細くなったことを自覚したのです。
私はそんな安い挑発に乗るほど馬鹿ではないのですが、改めてこのパインという存在を思い返します。
パイン……『プリティ・ボンバーズ』のメンバーは名前にフルーツが入っているのですが、おそらく芸名でしょう。本名は当然の如く知らないのです。
今は私服で、その極めて遺憾な乳袋を露わにしていますが、常ならモモコと同じようなアイドル衣装を身にまとって、歌って踊っているのです。
まぁ、私にとってはその程度しか知らない存在なのです。あくまでもモモコのおまけ……そんな認識だったのですが。
こうして、近くで見てみるとまた違った感情を私は持ったのです。
即ち──このメスガキを
私のセンサーに反応した以上、引くわけにはいかないのです。
しかし、大の大人が目の前に垂らされた餌にすぐさま食いつくわけにもいかないのです。
勝負は既に、始まっているのですから──!
「はー、なんで私がそれを受けなきゃいけないのですかぁ〜?」
「それは勿論、モモさんへの踏み台にするためですけど?」
間髪入れずの返しに、私は一歩遅れて感情が沸騰しそうになるのを感じたのです。
それを押さえ込むように私は自分に用意したお茶を手に取り、一息に飲み込みます。
「あれあれ〜? もしかして自分がそんな、この超天・才アイドルのパイにゃんに注目されてるとでも思ったのですか〜? ちゃんちゃらおかしいですねぇ」
ニンマリと目が笑ったまま、パインはクスクスと忍び笑いを溢します。
「なんの間違いかはわかりませんが、モモさんはあなたに執着している様ですしぃ、私の本格的なボンバーバトルデビューと同時にライバルを再確認して頂こうかなー、と」
「ははぁ、そういうことなのですか。なら、手加減した方が良いのですね、私が勝ってしまったら台無しなのですから」
「別にそんなのはいらないですよぉ、だってパイにゃんは──」
そこで挑発的に私の瞳を覗き込む。
意地の悪そうな笑みを浮かべて、パインはその後を続けた。
「
「受けてたってやるのです。さっさと日時を言えなのです」
……もとより、断る理由なんてそもそもないのです。
私が彼女をメスガキと感じた以上、私は大人として彼女をわからせなければならないのです。これは真理なのです。
故に、ここまで
「そうこなくてはです♪ では、日時ですが来週の日曜日、19時からでどうでしょう」
「来週なのですか〜? そんなに時間空けて、自信もないのですか〜?」
「今日明日でも勝つのはパイにゃんですけど、それじゃ見る方も少ないのでつまらないじゃないですか〜? だから一週間は宣伝させてもらい大勢を集めさせていただこうかと」
「上等なのです、首を洗って待ってるといいのです」
私の宣言も意に介さず、ふふんとせせら笑ったパインは『お暇しますね』と席を立ちました。
別に見送る気もない私は座ったまま『さっさと出て行けなのです』と返し、去っていくパインの背を睨んでいたのですが。
居間から出るための扉に手をかけて、くるりとこちらを振り返ったのです。
「そういえば」
「なんなのですか」
「いえ、別に。そういえば、言い訳を塞いでなかったなぁと思いまして〜」
「……だから、なんなのですか」
んふふ〜、とパインは手をかけたドアに寄り添う様に身体を寄せて、少しの隙間を開けるとそのままそこに滑り込み、こちらを覗き込みながら少しずつ閉めていくのです。
「別に私が負けたからと、白金さんの事をバラすつもりはないのでご心配なく」
「────は、」
「では、さよならですにゃ〜♪」
思いがけず私が立ち上がろうとした期先を制する様に扉を閉め、続いて玄関の扉も開いて閉まる音がしたのです。
片膝をついて立ち上がりかけた私はそのまま膝をたたみ、ぶつけようのない怒りで歯を強く噛み締めました。
パインは、『
つまりそれは、それを使ってしまえば相手にならない、とメスガキによくある大人を舐め腐った行動であり。
そしてそれを一番事前交渉の最後に持ち出すということは、勝負をする前から負けているのだと私に叩きつけることに他ならず。
眼前にこれでもかと言うほどデカデカと表示されている、ポップアップ(《メスガキ度が上がりました! 76%→79%》)など目に入らないぐらいに私の怒りが有頂天に……79パーセント!?
叫びたくなるのをグッと堪えて、しかしじっとしているわけにもいかず寝室へと駆け込みベッドに飛び込み、そして枕を力一杯叩くのです。
「ぐぬ、ぬぬぬぬぬぬぬ……!!」
メスガキ度が上がってしまったということは、わからされてしまったということなのです。
それも、あんなメスガキに……! つよつよな大人である私が……!
「ふぅーっ、ふぅーっ……いいでしょう……!」
これは戒めなのです。
モモコのおまけと侮ったことを認めるのです。しかし、次はないのです、油断はもう一切しないのです。
与し易い相手と思わせなかったことを、次は私が後悔させてやるのです……!
一週間後を楽しみに待っているがいいのです。
メスガキがよ……私が、この手で……
「わからせてやるのです……!」
●~*
『ちゃんねるをご覧の皆さん、こんにちにゃ〜ん♪ プリティ・ボンバーズ次期リーダー、泣く子も悶える天っ・才! アイドルといえば〜……そう!』
【パイにゃーん!】
【パイにゃん!】
【モモぴゅん!】
『パイにゃんですにゃ〜! ……って、誰ですかモモさんの名前出したのは! パイにゃんですにゃー!!』
「何をやっているのですかこいつは……」
ボンバーバトルに接続して既に待機していた私は、画面を投影してパインの配信画面を見ているのです。
私に喧嘩を売ってきた一週間前から本人が散々に煽り散らかしていた甲斐もあり、急上昇ランキングや呟きのトレンドにも乗っているのを見たのです。
それらが全部、モモコに自身を振り向かせる、つまり私を踏み台にするための前座だということを思うと、私は……
「
パインはパフォーマンスかどうか知りませんが……というか私に喧嘩を売ってきた以上本音だと思いますのですが、プリティ・ボンバーズのリーダーの座を狙っているのです。
つまりモモコとは実質的にチームメイトといえどもライバル。そんなモモコを見ているパイン本人がわざわざ私に接触してきた、ということはモモコは私に執着していると見て間違い無いのです。
つまりこのバトルは、モモコも観戦する筈なので。
「わからせがいが、あるのです……!」
ここでパインをわからせれば、モモコに見られている以上精神的ダメージが増えることは必至。
つまり私のわからせ度も大きく上昇する……! そうしたなら、先週のは無かったことにしてやってもいいのです。
『ボンバトは、今までもパイにゃんもかる〜くやっていましたけれど、今日からは本格参戦! モモさんのお株も奪っちゃいますにゃん!』
言いながら、画面向こうのパインは自らのゲームプロフィールを表示したのです。
名前の横に表示されているランクはマスターB。十分な実力を持っていると証明できるランク……であることは既に私も知っているのです。
裏で手早くランクを上げたのか、プレイ動画が少なかったですが他者の配信に乗ってしまっている動画でスキル構成も大まかにはわかっているのです。
ほぼ全てがモモコと同系統のスキル。モモコのスキル自体スタンダードなものですが、パインも若干は異なるとはいえ一般的なブロッカーのスキル構成に漏れないのです。
少なくとも私にとっては、モモコ相手に腐るほど対戦した型で、グリムよりもよっぽど与し易い相手なのですが。
……まぁ、それでライバルを超える、ということがパインにとっての『わからせ』ることなのでしょうね。
『ではでは〜、早速本日のメイーン、イベントっ! に、移らせていただきますにゃ!』
画面の向こうでパインがぽちぽちと操作し、背景がバトル控え室になったのと同時、私の目の前に『【パイン】からバトルの申請が届きました。承諾しますか?』と表示がされたのです。
一も二もなく、私はパインの配信画面を閉じて『YES』を押すのです。すると青白い転送エフェクトに包まれて、視界が反転。次の瞬間には目の前に黄色を基調としたメスガキ──パインが立っていたのです。
空中に浮いているミンボーカメラから視線をこちらへ向けて、パインはニンマリと笑みを浮かべます。
「こんにちはで〜す♪ ささっ、どうぞこちらへ〜」
「こんにちは、なのです。一週間ぶりなのです」
言いながら、私もカメラに映るように誘導されます。
ミンボーが構えているカメラの頭上には今カメラに映っている画面と、伴って見ている方々の反応……つまり現在の配信画面がそのまま映されているのです。
モモコの配信に軽く映ることは今までもありましたのですが、こうして画面の向こうを認識するのは初めてな気がするのです。
「それでは自己紹介をど〜ぞ、にゃ!」
「マスターAのプラチナなのです。もうすぐグラマスなので、そこのパインよりもつよつよなのです。どうぞよしなに」
【かわいい】
【メスガキがよ……】
【誰?】
【パイにゃんマウント取られて草】
【プラチナちゃんprpr】
「わ、ぁ……」
私が軽く頭を下げて、それから見たチャットの速さに頭がクラクラするのです。
別に私自身が読む必要はないのですが、配信者はこれを良く読みながら進行できますですね?
「ふふ〜ん? そんなにつよつよなら、勿論パイにゃんにも負けないのですよねぇ〜?」
「
「つーまーり、ハンデをつけないバトルでは負けないということですよね?」
「だからそう言っているのですよ。その頭は飾りなのですか?」
私がそう挑発するも、パインは全く意に介さず。
むしろ罠に嵌ったとでもいうように笑みを深くするのです。
「では、そこまで自信のあるプラさんが
「プラさ……? いや、なんで私がそんなこと──」
「あれ〜? もしかしてプラさん、
……ああ、なるほど。相手の自信を逆手に取って、逃げ場をなくすというわけなのですか。
単純で、古典的で……それでも効果的な挑発なのです……!
「いえいえ、たしかに
「わかりましたのです」
「んん〜? なにか言いましたかぁ〜?」
「わかったと、言ったのです。確かによく考えれば、
私のその言葉にチャット欄も賑わいますが、どうでもいいのです。
今言った通り、勝てばいいのです。そして同様に、私がパインに負けることはあり得ないのです。
なぜなら──大人は子供に負けないため。
「逆に、ここまでお膳立てしておきながらあとで吠え面かいても知らないのですよ」
「くふふ〜、そうですね、吠え面かかせられるといいですねぇ〜」
余裕しか見せないパインを相手に、地団駄を踏みたい衝動に駆られましたがなんとか抑えるのです。
というか、そんなメスガキムーブは私には似つかわしくないのです。私は、つよつよな大人なのですから!
「では、罰ゲームは後の楽しみに取っておくとして……そろそろ、マッチングを始めますにゃん♪」
機嫌が良さそうにぽちぽちと操作するのを、私は腕を組んで見守るのです。
「ルールは4VS4の拠点防衛戦、パイにゃんとプラチナさんは別チーム固定の、ありありルールでよいですか?」
「構いませんのですが……むしろそれでいいのですか?」
ありありルールとは、ゲストあり、ランク制限ありのルールなのです。
フレンドマッチの性質上、ルームパスワードを解放すれば今配信を見ている中からだけでも選出することが可能なのです。つまりやろうと思えばパインの味方で埋めることができると言うことなのに、その手段を取らないのが疑問なのです。同じく疑問に思ってるのか、配信コメントにも同じ様な質問が溢れていますのです。
それを指して質問を投げかけると、やれやれというようにパインは首を振るのです。
「モモさんもやるときはありありじゃないですか。ならパイにゃんもそれに倣うのが筋ですにゃ」
「……変なところで律儀なのです」
【えらい】
【えらい】
【流石パイにゃん】
「それに、同じ条件でプラさんに勝つことで、パイにゃんこそチームリーダーに相応しいと皆さんに知らしめられますのでっ! うーん、この天才的発想……自分の才能がこわいっ!」
【すぐ調子に乗る】
【図に乗るな】
【さっきの殊勝な子を返して】
「なんとでも言うがいいにゃ、っと。もうマッチングが完了したみたいですねぇ〜」
次々とルームに転送エフェクトが発生し、プレイヤーが出現してきたのです。
パインチームは特に有名プレイヤーはいないですが、マスターAで揃っているのです。普通に手強いと思うのです。
対して私のチームは──
「……ん? あれ、なのです?」
一人、二人……何度瞬きしても、目を擦っても二人しか味方プレイヤーがいないのです。
それにパインも気が付いたのか、軽い足取りで私に近づいてきて囁くかけてくるのです。
「くふふ〜? おかしいですねぇ、あと一人が来ませんねぇ〜? ラグでしょうか〜?」
「……この場合はどうなるのです?」
「一応少し待ってみますが、NPCで開始しますよ」
「……罰ゲームは?」
「勿論、あるに決まってます♪」
パインのその言葉に、私の顔が歪むのがわかるのです。
このゲームのNPCは、マスターランクにもなってれば1vs1でも余裕なのです。時折不明な行動をすることもしばしばですし、まず戦力として数え辛くなるのです。
そうなれば実質3VS4……負けは必至なのです。
「まー、例え誰と組もうと、誰が来ようと、パイにゃんは圧倒的天才力で勝ってやるにゃん♪」
「くぅ……」
このままマッチングか確定してしまえばパインは余裕で勝つことができるのです。だから大言を吐くのですが、私には反論する余地もないのです。
罰ゲームがちらついて……いや、例えどんなに劣勢だろうと……屈強な大人は子供に負けるわけにはいかないのです!
パインを睨みつけて、いざ反論しようと口を開きかけたところで──ようやく、最後の転送エフェクトが出現したのです。
私が心の中で安堵するのに対して、パインはあからさまに不機嫌そうな顔を一瞬浮かべましたが直ぐに取り繕い最後のバトルメンバーに向き合いました。
「やーっと来ましたね。もう、ラグなんかでパイにゃんを待たせるなんて、承知しな、い……?」
「申し訳ありません。接続エラーで再起動をかけていたので、遅れてしまいました」
──突然ですが、ボンバーバトルのランク制に関して説明するのです。
マスター、スーパースター、スター、レギュラー、ルーキー、ビギナーの順に高く、それぞれABCでランク付されているのは同じなのですが、マスターAの上に私の知らなかったランク……グランドマスター、通称グラマスというのが存在するのです。
さっき自己紹介の時にも言った通り、私ももうすぐグラマスなのですが……グラマスの中でも更にトップクラスはマスターランクでもまるで歯が立たないなんてことがしばしばなのです。
「此度も互いに愛し、愛されましょう──どうぞよろしくお願いしますね」
【あっ……】
【あっ】
【愛キチ! 愛キチじゃないか!】
【セピア様!】
そんなグランドマスターの一人が、彼女……『セピア・ベルモンド』──ヴァンパイアハンターの血を受け継いでいる、というのが公式設定だったハズなのです。
そういう設定のプレイヤーである、という可能性もあるのですが……おそらく本当なのだろうというのが私の見解なのです。
アクアとのバトルの際に高確率で出現するのですが、味方にした時のその時の頼もしさといったらないのです。勿論それ以外も、なのですが。
「セピアさん、久しぶりなのです」
「あらプラチナさん、お久しぶりです」
「はいなのです。セピアさんが味方なのは心強いのです」
言いつつ、ちらりとパインを見ると、流石のパインもセピアさんのことを知っているのか明からさまに目が泳いで動揺を隠せていなかったのです。
確かにアタッカーとして五指に入るとは思うのですが、普段のバトルなら二人がかりならなんとか食い止められはするのです。
セピアさんの頭がおかしくなるのは基本時にアクアの──……あっ。
いいこと、思いついたのです。
「セピアさん、今日は一つお願いがあるのです」
「あら、なんでしょうか?」
「私が
「にゃっ!?」
私の言葉に驚いたようにパインが声を上げて、ぐるりとセピアさんの首がパインの方へと向く。
それは単純明快で、つまりセピアさんのヘイトをパインに向けさせればよいのです。
普通のバトルならなんとか抑えられるというのも、とあるスイッチが入ってなければのお話。そのとあるスイッチというのは勿論『愛』、なのです。
愛を愛し、愛に愛されしセピアさんは愛を布教しており、そのためならどんな手段も愛故に
私から目を背けたセピアさんがどんな顔をしているかわかりませんが、多分すごい笑顔を浮かべているのでしょうね……と思っていたら凄い勢いで近寄ってきたパインが冷や汗をダラッダラに垂らしながら『失礼しますっ!』と私の腕を掴み、これまた凄い勢いで集まっていた場所……厳密に言えばセピアさんから遠ざかるのです。
そうして今度は私の肩を凄い形相(俗に言うお目目ぐるぐる状態なのです)で掴み、ガクガクと揺さぶりながら抗議してくるのです。
「なっ、なんてことするんですか!? これもうセピさんが私を執拗に狙ってくるのですけどっ!?」
「いや、なの、ですね。パインが、言ったの、ですよ?」
言いながら私を揺するパインの腕を押さえて、息を整えるのです。
多分、私も満面の笑みを浮かべていたことでしょう。
「誰が来ようと勝てるのですよね? 奮闘、楽しみにしてるのですよ」
同時に待機時間一杯になり、聴き慣れたボイスで『ボンバーバトルスタートします!』とアナウンスが流れるのです。
互いに転送される姿を見ながら、最後にパインの声が聞こえてきたのでした。
「ぜっ、たいに! わからせてやるにゃあぁあああああああ!!」
そんな負け惜しみを聴きながら、視界の端に現れた『NEW!』のメッセージへと意識を向けるのです。
そして開かれた、『わからせ度:73%→74%』の文字に達成感を感じながら、私は呟くのです。
「まっ、後はアーカイブだけで勘弁してやるのです」
少なくとも、今日は。
今からセピアさんにやられるパインの姿を楽しみにしながら、私は改めてバトルへと意識を向けるのでした。
●~*
【プラさんを】ボンバトでボコボコにしてやるにゃん♪【わからせます】:配信済
「なんでこうなるの〜!?」
【あーあ】
【だから言ったのに】
【見て損した……時間の無駄だったわ】@モモぴゅん
【モモぴゅん!?】
【モモぴゅんもようみとる】
「モモさん!? てっ、天才的想定外っ!!」
配信アーカイブには配信を見ていたモモコの失望コメントと、破損した服から覗く肌をなんとか隠そうとしながら喚くパインの映像が残っていたのです。
なんとか愛(物理)を教えてあげようとしているセピアさんから、壁を出現させて逃げながらボヤきます。
「うう……パイにゃんはただ、プラさんに破損衣装で一曲歌って踊ってもらって、モモさんとそれを笑うつもりだっただけなのにぃ〜」
【は? なんで勝ちにいかないんだ】
【天才的失望】
【負けたらお前がやれ定期】
【アイドルグループが素人を笑い物にするとか悪趣味すぎて草】
「見つけました♪」
「にゃにゃにゃっ!?」
横合いからブロックを破壊してきたセピアさんが、その大剣……いや、いつの間にかチェーンソーになってるのです。チェーンソーを携えて現れました。
……パイン視点なので、完全にホラーなのです。
「ゆ……許してにゃ……」
「だーめ♪」
そしてセピアさんのチェーンソーが唸りを上げると同時、鼓膜がなくなる前に私はそっと動画を閉じましたのです。
……とりあえずこのあとは、ベースを守っていた私は知らないことでありますのですが。
最終的にはパインが破損衣装でヤケクソにライブをしていた、ということだけ追記しておくのです。
プラチナちゃんがこの世界に飛ばされたのはパイン実装直前のため、パイン以前以降のキャラは知りません。
※今度こそ続かない
けど、アンケートは設置
ボンバーガールの筐体数もっと増えろ
ボムガキももっと増えろ
次のメイン
-
モモぴゅん
-
アクア様
-
グリアロちゃん
-
パイにゃん
-
ブロッカー以外のその他キャラ