メスガキをわからせたかった大人がメスガキになってしまっただけのお話   作:千智

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※グリムアロエ回です。


【朗報】メスガキプラチナちゃん、────になる【動画あり】

 ……突然ですが、ボンバーバトルにはボンガとは違うVRゲーム特有の機能が存在するのです。

 それは敗者チームに対して勝者チームが相手の衣装を変更できる、というものなのです。

 基本的に相手を貶めることになるのでマナー的に使われない機能ではあるのですが、アバターが筋肉系のもので見るに堪えなかったり、そもそも事前の罰ゲームとして決めておいて着替えさせる、というのは往々にしてみられる光景なのです。

 そして私はその機能を悪用されてしまい、心の中までこの口調になってしまったというわけなのですが……

 じつに、それは一月程前に遡るのです。

 

 

 ●~*

 

 

 視界が暗転して、一瞬の暗闇の後に視界の中心から世界が構築されていく。

 何度も見た、ロッカールーム兼控室のような自室……ボンバーバトルのマイルーム。

 今私が座っているログイン用の椅子やベッド以外は、あたかも試合前の控え室のような場所だ。

 

 ボンバーバトルは基本的なバトルは無料で行える。だがアバターや服装、またスキルなどに関しては課金制のシステムをとっている。

 課金は運営がデザインしたものをガチャなり販売なりで購入してもいいし、一定のお金を払うと導入できる自作、またその導入したものを販売できるシステムもあるのでそういったものを用意するガチ勢もいる。

 ちなみに、プレゼントも可能だ。勿論無差別でなくフレンドになってなければいけないという縛りもあるが……そのフレンドになっている、シロさんからは変なアイテムが送られてくることがある。

 なんかセミとか……おでんとか……最近だと、モモコから『なんか見つけた』というメッセージと共にプレイヤーメイドの私のデフォルメ顔の髪飾りが送られてきていた。何でそんなものがあるのか……どれも多分、一生装備や設置することはない。

 

 ちなみに、私のアバターや服装に関しては私がこのゲームに挑むことを知っていたように初めから設定・反映されていた。

 でなければ今の姿とそっくりなアバターを自分で作成するわけがないし、こんな、ふりふりな魔法少女もさながらな服装を導入するわけがない。

 ……ついでに言っておくと、一部の衣装を除いてこのゲームを始めたての初心者が着ている中性的なデフォルト装備に変更することもできない。何かしらのロックがかかっているようで、私をこの世界に送り込んだ存在の陰謀を感じる。

 逆に、変更できる一部の衣装に関してだが……これはまぁスクール水着だったり、メイド服だったり……私が着るわけない服装ばかりだ。

 

 ……とりあえず閑話休題。

 ともかく、私のマイルームはほぼデフォルトのままだということだ。

 それこそアイドルでマイルームガチ勢のモモコからはああしろだこうしろだ、もっとかわいくー、だの言われたこともあるが、『そんなことに拘ってるから私に勝てないのですよ〜?』と煽るとすぐにバトルへと移行する。

 勿論私の勝ちで終わり、翌日にモモコ趣味のマイルーム家具が送られてきて、それを私はボックスに放り込み、後日またマイルームに来た時に『なんで折角モモぴゅんがあげたのに置いてないの!?』とキレられてまたバトルすることになるのがこの頃の一連の流れでもある。

 

「そのモモコは……今はログインしていないようなのですね」

 

 エメラ、セピア、モモコ、シロ、クロと並ぶフレンドリストはどれも点灯しておらず、それは全員ログインしていないことを示していた。

 セピアさんもいない、ということはアクアもログインしてないということとほぼイコールだ。

 とすれば、だ。

 

「単純に、ランクマでランク上げでもする……のです」

 

 強制的についてくる語尾はさておき。

 現在の最上位であるグランドマスターは全プレイヤーでも一握りだ。勿論マスター帯ならグラマスともマッチングすることがあるので負けてしまう(わからされる)リスクをとってまでランクマに臨む意味は薄いのかもしれない。

 しかしながら、だ。私が先にグラマスへ辿り着くことでモモコが悔しがるだろうことは想像に難くない。

 それならば多少のリスクは負ってでも挑戦するのが男というものだ……そう、強い大人というものだ!

 

「では、ゴーボンバー、なのです」

 

 厳密にはまだゴーボンバーではないけれど。

 手元の画面を操作して、4vs4の拠点防衛戦にエントリーをする。すると同時に一瞬だけの浮遊感、それから切り替わるように視界が暗転する。

 バトル開始待機中は白い四方の部屋に転移する。唯一あるものといえば決定したバトルステージを示す巨大モニターぐらいのものだろう。

 ちなみにフレンドマッチなどで部屋を立てるときにはこちらもオリジナルの待機部屋を設定できる。そこまでガチな人は少ないが。

 手元で掲示板やSNSを表示する間も無く、次々と参加エフェクトが表示されてまずは自チームのプレイヤーが出現する。

 

「どうもよろしくー……あっ、プラチナちゃんだ」

「ん。どうぞよしなに、なのです」

 

 マッチングした味方のプレイヤーに挨拶を交わしつつ、念のためロール・スキルセット画面を開いておく。

 キャラクター選択でキャラクターと応じたスキルを選べた元の世界のゲームとは異なり、このゲームはキャラクター選択はできない。しかしランダムマッチである以上ロールが被ることもある。なのでプレイヤーは、マッチング画面でロールやスキルをセットし直せるのだ。

 ロールはもちろん、『ボマー』、『アタッカー』、『シューター』、『ブロッカー』の四種類。それぞれでボムの設置数、スピード、体力の上限値が決まっていて、加えてスキルはそれぞれのロールに対応したものを四種類までスキル欄にセット、二種が使用可能・リキャスト開始されるので折を見て使い分けるというのは私のよく知る元々のボンバーガールとそう変わらない。

 おまけとして、同レベル帯で使えるスキルは一種類まで、極々一部のスキルはスタイルのステータス上限を若干上限するというのもあるが、後者はあまり関係のないことだ。

 

「それにしても、私の名前もそこそこ売れて来たのです?」

「ボンバトやってる人でプリボン……特にマスAのモモぴゅんを知らない人はいないし、そんな子と張り合ってるメスガ……んんっ、かわいい女の子プレイヤーがいれば、そりゃもう……あ、ブロッカー譲りますよ」

「……かわいいかどうかはさておき、私はモモコなんかに負けるわけがないのですから、まぁ有名になるのも当然といえば当然なのです。ブロッカー良いのですか、私マスBでそちらはマスAなのですけど」

 

 私のメインロールはブロッカーだが、他のロールも出来ないことはない。というか多少なりともできないでマスターBまで上がれるわけがない。

 それは他の人も同じではあるが、ランクが高い方がメインロールも強いというのは常識ではある。

 なので、まだマスBである私より、マスAである彼の方が上手なのでは、と思うのだが……

 

「いやいやモモぴゅんの配信試合見てても遜色ないと思うし、多分俺より上手いから全然大丈夫だよ」

「そうなのですか? でも悪い気がするのです……なんなのですかその微妙そうな顔は」

 

 私が殊勝な態度をとっていると不愉快とまではいかないが妙な表情を見せられた。

 なのでそのまま突っ込みをいれると、同意を求めるように他の二人を見る。私も釣られて見ると、一様に同じ表情をしていた。

 

「いや……だから、なんなのですかその顔は」

「いやだって……なぁ?」

「うん……なんて言えばいいのか……ええっと、噂になってるほど生意気じゃないんだなって……」

「……私のことをなんだと思ってるのですか」

 

 『メスガキでしょ……』という自チームメイトの心の声が聞こえたような気がした。それに対して声を荒げそうになってしまうが、深呼吸して何とか抑える。こう言う反応もたまにある、珍しいことではない。

 しかしメスガキ総合スレやらボンガ対戦スレやら配信戦実況スレでわかっていることではあるが、どうにも私を知る人……つまりモモコの配信戦を見ている人は私とモモコの対決をメスガキ大戦と思っている人が多いようだ。

 草の根活動ではないけれど、ここはズバッと大人として……そう! 大人として! 優しく諭すように、誤解を解くべきだ。

 

「あのですねぇ、私だって人は選ぶのですよ?」

「……というと?」

「モモコみたいに、私の様な立派な大人を舐め腐るメスガキには相応の対応をしますが、そうでなければキチンと礼儀は払うのです」

「大人……?」

「大人……」

 

 大人でしょうが!! と声を大にして言いたい。けれど、今のこの身体でそんなことを言っても失笑をもらうだけなのは流石に私だって理解している。

 

「なので、私はプレイでそれを証明するのです。ブロッカーはご厚意通りもらいます、完封してやるので──」

「あーっ♪ 誰かと思ったら情けな〜いおねえちゃんだ〜♪」

 

 その声を聞いた瞬間、私はチームメイトから視線を外して周囲を素早く見渡す。

 そして私はすぐにそのメスガキを視界にとらえ、その名前を呼ぶ。

 

「グリム……!!」

「きゃー、こわーい♪ そんな興奮しないでぇ」

 

 くすくすと口元に手をやりつつ、一切たりとも怖いと思ってないその姿。

 私を三度も敗北に追いやったメスガキ、グリムアロエそのものだ。……プレイヤーネームは何故かアロエが外れてグリムのみになっているが。

 

「おねえちゃんは、少しは強くなったのかな〜?」

「はっ、当然(とーぜん)なのです! 今度こそ私が勝つのですよ!」

「うーん、それはちょっとむつかしいかなぁ?」

 

 そう言うとグリムはくるりとその身を翻す。

 そして挑発する様に腰を突き出し、人差し指を自らの唇に寄せて、私に向かってポーズを決めた。

 

「だっていくらおねえちゃんが強くなっても、私の方が強いもん♪」

 

 ……………………。

 落ち着いて……落ち着いて私……深呼吸、深呼吸……

 すー、はー……すー、はー……………………はー!!!????

 私の方が強いが!!???? 大人が子供に負けるわけないんだが!!?!!???

 

「……空いているのは、ボマーなのですよね?」

「え、あ、うん……プラチナちゃん?」

「ブロッカーは譲るのです。任せたのです」

 

 チームメイトに念のため空いているロールを確認してブロッカーからロールの変更をする。(あつら)え向きに空いていたロールはボマーだ。

 防衛側である時、基本的にブロッカーはボマーの、シューターはアタッカーの相手をするというのはもはや常識である。つまり逆にいえば、ボマーになればブロッカーが詰めてくることが多い、とも言い換えられる。

 つまりこの状況で上回れば……いや、たらればではない、上回るのだ。

 上回って、完膚なきまでに叩きのめす。他のバトルに負けても、このバトルにだけは負けてはいけない。

 

「今回こそ、完膚なきまでにやっつけてやるのです!」

「きゃ〜、かっこい〜♪ それじゃあおねえちゃんがあたしに勝てたら、たくさん誉めてあげるね〜♪」

『ボンバーバトル、スタートします!』

 

 待ち時間がゼロになり、アナウンスが響く。

 ここに来た時と同じように視界が白い光に染まっていく中、私は最後までグリムを睨みつけた。

 そのグリムは最後まで余裕そうな表情を崩す事はなく、そして視界が暗転する。

 

 ステージはパニックアイランド。波とカモメ、それからサメが飛び跳ねる音を聞きつつ、私は胸に手を当てて気持ちを落ち着ける。

 グリムはスキルに大回復スキルを採用しないことが多く、トリッキーな戦法を好んでいる。なのでその分ゲージを削られた時は立て直すまで時間がかかる。

 なので勝負は一瞬……私がクロと同じ、ギガボムをぶち込んで勝負を一気に決める……!

 

 マスCに上がった直後の1回、それから野良で偶然当たった2かいの敗北。

 その敗北の度に私は強くなったが、それとこれと話は別だ。

 今日こそ、今回こそ……

 目を閉じながらもそう決意をする私の耳に、アナウンスが届く。

 

『ゴー、ボンバー!!』

「わからせてやるのです……!」

 

 言いながら、まずはレベルを上げてスキルを解放するために私は動き出した。

 

 

 ●~*

 

 

「こっちも行き止まりだよ〜♪」

「むーっ!! それなら押し通るまでなのですっ!!」

 

 橋のギリギリのところでボムをブロックに変えたグリムに対し、私はスクリューボムを叩き込む。

 渡る前に既に置いていた自ボムとの誘爆が発生して自分にも爆風がかかるけれど、そのスタンは僅か1秒、問題ない。

 スクリューボムで切り開いた先には既にグリムがボムを置いて封鎖しているけれど、その誘爆でブロックを消すようにボムを配置、2回のスキルを使って築かれていた2重の壁はそれで剥がれる。

 

「あらら」

「追い抜いてやるのです!」

「いかせないよ」

 

 ボマーとブロッカーの最大速度は同速。なので同時に動くと追いつくことはできない。

 グリムは私の眼の前でハードブロックを挟み行き止まりを作るように再度ボムを配置、爆発する寸前にブロックに変えて更に遅延を計る。

 遅延系ブロッカーとしてお手本のようなムーブだ。破壊するためにボムを設置しながら舌を巻く。

 少しずつ戦線を押し上げていくが、最後の難関はやはりボトルネック。

 基本的に真ん中か出口に置いておけばそれだけで突破が出来なくなる。そしてその二つに置かれた上でくらい抜け前提で突っ込もうにも直前でブロックに変えられるとそこから更に二手遅れる。

 

「ほらほら、どうしたの〜? がんばれ、がんばれ♪」

「はー、今怒った今決めたのです! お前絶対サキュバスチアにしてやるのですっ!」

 

 サキュ……? と少し首を捻っているグリムはさておき。

 一先ずボムを置いてブロックを破壊しようと試みるが、二つ目に差し掛かる頃には既に向こうのスキルのリキャストが終わっている。

 自分の設置したボムが目の前でぽんっ、とブロックに変わる。

 

「は〜い、残念賞♪」

「むぅううううううううう!!!」

 

 ブロック越しであるのでその表情は見えないが、声からして意地の悪い表情をしていることはわかる。

 

「スクリューボムッ! なのです!」

 

 設置して数秒、一直線にまとめてブロックを消し飛ばす。

 爆風が消えると同時にボトルへ一直線。目の前でグリムがボムを設置して行く手が阻まれる。

 また爆発寸前にはブロックに変えられる。どうしたものか、と考えると同時。

 

「そこにいていいのかなぁ?」

 

 グリムが笑いながら、ボトルネックのど真ん中で足踏みしていた私の真横を駆け抜けていく。

 ……ボムを設置しながら。

 前後と足元、左右は壁の私に逃げ場はなく。

 

「んにっ!?」

 

 次の瞬間、私は衣装を破損させながら爆散した。

 爆散したとは言ってもすぐに消えるわけではなく、体力がなくなった後は移動やスキルの発動、ボムの設置ができずにリスポーンまでの数秒間はその場にとどまることになる。

 流れた撃破ログを見ながら歯噛みしてグリムを睨みつけると、ひらひらと消えゆく私に手を振ってきた。

 

「ばいば〜い♪」

 

 次の瞬間にはベース横のスタート地点に出現する。同時にシューターにやられたのか、今回の相棒であるアタッカーも出現した。

 アタッカーも私の姿を確認すると同時に、移動を開始しながら視点を私の顔から下に落とす。

 その視線を感知した私は当たらないと分かっていても裏拳気味に拳を真横に振るった。勿論すり抜けたが、目の前に拳が迫るというのは当たらないと分かっていても心臓に悪い。相手はビックリして遅まきながらも避けるような動作をした。

 

「なーに見ているのですか、見せ物ではないのです」

 

 ボンバーガールの時は衣装が破けた一枚絵が出たりするだけで特にSDキャラ上での異常はなかったが、今となっては別だ。

 撃破を重ねられる度に段々と衣装が破けていく。最大5段階まで破けるため、先程ので5回目の被撃破だった私は既に色々なところの肌が晒されている。ちなみに負けた場合には問答無用で剥がされる。

 ちなみに破ける部分は固定ではなく毎試合ランダムに破かれるため、画像合成されて殆ど裸に剥かれているプレイヤーもいるとかいないとか。

 

「いや……せっかくだからスクショ撮っておこうかなと」

「お前ぶっ飛ばすのですよ」

 

 バトル中多少は仕方がない。リアルと一緒の身体とはいえ仮にもVRで作り物の身体だしと認めている部分はいいにせよ、画像として残ってしまうというならは話が別だ。

 勿論仮にも全年齢対象であるので局部は絶対に見えないが、胸周囲の破損を手や腕で隠しておく。

 

「これで負けたら、お前本当(ほんとー)に覚悟しておくのですよ……」

「シューターもシューターで強いんだけど……まぁ頑張るけど」

 

 もう残り時間は僅か。アタックはあと2回あるかどうか。

 私のスキル2にはタワーを折った時を最後に温存されているギガンティックボムがある。

 残りゲージからみるに、これをうまく決められれば勝てる。……が、勝ち筋はできるだけ多い方がいい。

 

「というわけで、私は念のためリスポ開けに行くのです。別にシューターの弾を全て食らって落ちても構わないのですよ」

「うい、よろしく」

 

 アタッカーがシューターを翻弄してうまく弾切れにさせればそれはそれでよし。仮に即落ちしたとしても弾が切れて無防備な間を私が押し込めばいい。落ちるのが早ければリスポ地点から更にもう一度アタックできる。

 マップを見るにアタッカーはセオリー通りシューターの守っている方向へ向かい、スキルで無敵になってかシューターを追い越してベースへ直行しているのがわかった。

 シューターにヘルプでも求められたか、先程私とぶつかった橋とボトルネックで壁を作っていたのか忙しなく動いていたグリムは身を翻してベースへと入城していく。

 

「よーし、今なら無傷で突入できるのですよー!」

 

 多分私の方はラストアタック、グリムが態々作っていた壁を抜ける意味もない。

 シューターが守っていた方の橋を駆け抜ける。アタッカーが揺動しているようなので、こっちに気を配っている余裕はなさそうだ。

 息を潜めてこっそりベース側に近寄る、と同時。

 

「ウォールマジッって、ちょっとぉ〜!」

「どうかお許しください〜っ!」

 

 ポンッ、とボムがブロックに変わる音がしたと同時に、幾つもの爆発が重なる。

 おそらく想定してなかったことが起きたのだろうと突入すると、案の定敵二人がスタンしていて味方のアタッカーは体力ゲージがゼロ、帰還エフェクトが発生している。

 そんな中素早くベース内へと侵入した私は、ボムを置くべくベースの中心に向かう──わけではなく。

 向かう先は、スタンしているグリムだ。

 

「……!」

「お返し、なのです」

 

 壁際にいたグリムを足元を含めてL字にボムで囲う。この時相手の足元から置くのがミソだ。近ボムが3発分、計300ダメージ。

 相手のベース内なのでダメージは半分の150。それでも致死のダメージだ。アタッカーが頑張ってくれたのか、目算ではギリギリ達してるように見える。

 お互いに親指を立ててグッドと示しつつアタッカーが消えるのを見送り、満を辞して私は必殺のボムを召喚する。

 

「勝つのは私なのです! ギガンティックボム!」

 

 ギガンティックボム、通称ギガボムはスキルボムにしては珍しく周囲1マスしか攻撃範囲がない代わりにダメージは500、近ボム5回分の能力がある。ベース内での体力満タンブロッカーですら確殺できるボムで、クロさんもよく愛用している。

 そんなボムすらもグリムはウォールマジックでブロックへ変換できるが……先に倒してしまっていれば関係ない。

 勝った(わからせた)────!

 

「今のはヒヤッとしちゃった……♪」

 

 ぽんっ、と私が退避したと同時にギガボムはブロックへと変わる。

 唖然としながら真横を見ると、煤まみれのグリムが笑っていた。

 

「っ!」

 

 なんで落ちてないのか、その言葉を飲み込む。私もアタッカーも目測を誤った。残っているグリムの体力ゲージがそれを示している。

 いや、しかし。まだ間に合う、うまく近ボムを当て続ければ競り勝つこともできる……!

 そう思い、まずは目の前のソフトブロックを壊すためにスクリューボムを置いて。それと同時に、三本の矢が飛んできた。全てではないが、二本が私に突き刺さり──ダメージのエフェクトと同時に動きが非常に鈍重になる。

 速度のデバフ。仮に無敵になっていたとしても逃れられないスキル能力。

 

「やっ、やりましたぁっ!」

「ナイスだよっ」

 

 私はなんとかその場から離れようと試みるが、もはや速度デバフの入っている状態ではろくに離れることなど出来ずに自分の置いたスクリューボムの爆風に巻き込まれる。

 自分のボムであるのでダメージは受けないし、相手のベースに100ダメージは入ったにせよスタンは近ボム相当の3秒程。まぁ、2マスも離れられなかったので普通のボムでも同じではあったが。

 そして、勿論その隙を逃すグリムではなかった。

 

「いち、にの、さんっ、と」

 

 ブロッカーのボム上限である3つを使い、私がハードブロックで移動できない以外の三方を綺麗に囲う。

 スタンが解除されて、速度デバフもほぼ同時に解除されたが、私がそれから逃れられる術はなく。

 

「こっ、この……!」

 

 最後の抵抗に足元にボムを置く私を尻目に。

 グリムはまた挑発的に笑った。

 

「おねえちゃん、みっともな〜いっ♪」

 

 そして私は、当試合通算六度目の爆散をすることになった。

 

 

 ●~*

 

 

「ぐぬぬぬぬぬぬ…………!!」

 

 結果発表。チーム的には勿論敗北、仕事をうまく果たせなかった私がチーム内貢献度でも4位に納まることになってしまった。

 試合終了後は準備時と同じルーム空間に集まることになり、感想戦をするなり、リベンジのために同じ相手と組んだり戦ったりしてもいい。

 まぁしかし……敗北チームの衣装は最大まで破損しているものではあるが。

 

「いや、俺らはもうバトル中で最大までやられてたんだから関係なくない?」

「まだ勝負のわからないバトル中と、バトル後は違うのですっ!」

 

 それに、バトル中はまだ皆バトルに集中するのであまり他人の衣装を見てる余裕などないがバトル後はバッチリ見れる。浴びる視線も多いことは以前からこの身体で理解している。

 ……まぁ、敵チームは半分が女の子だから大したことではないが……

 

「というかなにお前達は敵に混ざって私を見てるのですかっ!? スクショ撮るななのですっ!」

「え、でもプラチナちゃんの敗北破損衣装って中々出回らないから貴重だし……資料として……」

「なんの資料なのですか!?」

 

 後で調べたらプレイヤーメイド衣装で有名な人だった。衣装もプレゼントされ、珍しく私が着れる普通の衣装になるのは別の話。

 とりあえず現時点で私から見て全方向が敵だった。どれもこれも、と私はその原因であるグリムを見やる。

 この空間に留まるのは個人の自由で、私もこんな姿を晒し続ける気は正直ない。ないのだが、このメスガキが残っている以上先に背を向けるわけにはいかなかった。

 それに、プレイを見直したらやはり私は間違ってなかったことがわかったのだ。一言言ってやらないと気が済まない。

 

「っ、グリムッ! 今回は実質私の勝ちだったのですっ! そっちのシューターが、パプルさんでさえなければっ!」

 

 グリムばかりに目が行って気が付かなかったが、相手のシューターはパプルさんだった。

 パプルさんのスキルは番えた後に素早く放たれる矢のスキルだ。気付いた時には飛んできているその速さもさながら、随一の特徴は味方や施設に当たった時は回復する能力にある。ボンバーバトル内では中々見ない、レアなスキルに分類されている。

 パプルさんは私がグリムをボムで囲んだのを見て、矢をグリムに放った。その結果グリムの体力が150を上回って生き残り、私のギガボムを変換することに繋がったようだ。

 

「あ、ありがとうございますぅ……えへへ」

「褒めてないのです! あ、いや、ナイスプレーだとは思いましたのですが!!」

 

 敵ながら天晴れと思うプレーは往々にしてある。ボムコンボだとか、ボイススキルモーションで電車を避けるだとか……今回も自分が使うことがあったら選択肢に入るな、と思うプレーだ。

 しかし、それは今回に限って! というのが本音である。

 今回だけは、絶対に負けてはいけなかったのにぃ……!

 

「グリムも、なんとか言ったらどうなのですか!」

「ん〜? そうだにゃあ……勝ちは勝ち、負けは負け。仮に局地的に負けてたとしても最終的に勝ってれば問題はなかったよね〜?」

「ぐっ……」

「あたしもそう。最後はおねえちゃんに上手くやられかけちゃったけど、チームとして上回ったんだからあたし達の勝ち、なんだよ?」

 

 手元で何かを操作しながら適当に言っているが、グリムの言う通りではある。

 反論……何か反論を……と必死に頭を絞っていると不意に画面操作をしていたグリムの顔がこちらを向いた。

 

「そ・う・い・え・ばぁ……おねえちゃん、さっきのバトル中、何か面白い事言ってたよね〜?」

「な……なんのことなのですか」

 

 にんまりと意地悪そうな表情を浮かべたグリムに、思わず私はたじろぐ。

 続けてグリムは手元を動かし、今自分が表示している画面をルーム内に公開した。ルーム内の巨大モニターにその衣装画面が映る。

 それは、赤を基調とした上がスリングショット水着に似た、下はスカートで、おまけとして紫系統のポンポンが付いている衣装で。つまるところ。

 

「あたしに勝ったら、サキュバスチアを着せる、とかなんとか」

「ッスー……」

 

 俗に言う、サキュバスチアコスチュームだった。思わず私はその公開された画面から目を逸らす。

 その場で思いついた言葉だったとはいえ、こんな露出度高い衣装が本当にあるとは思わなかった。それをいえば元々のボンガもそうなのだけれど。

 

「……そん、な、こと。言いましたー、のですかね〜……?」

「見たよ言ったよ聞きました♪ あたしみたいなちっちゃ〜い女の子にこんな衣装を着せようだなんて、おねえちゃんは本当におもしろ〜い♪」

 

 次はどうなるのか、とでも言うかのように私とグリムの会話に聞き耳を立てて静まり返っているルームの中。

 グリムはその顔に満面の笑み(メスガキスマイル)を湛え、続けて口を開く。

 

「そんなに面白いおねえちゃんに、この衣装を着せたらもっと面白いと思うんだ♪」

 

 そんな、とんでもないことを言ってくれた。

 それに対して私は即座に反論を返す。

 

「わっ、私は嫌なのですよ! 無理矢理にするのはダメなのですっ!!」

 

 元々グリアロといえばサキュチア、サキュチアといえばグリアロであったため、本当についつい口走ってしまっただけだ。そもそも無理矢理衣装を変更するのはマナー違反であるため、無理矢理にはするつもりはなかった。

 ……言葉で打ち負かしてわからせるつもりではあったが。認めれば合法だ。

 それを見抜いているのか、グリムは私をコンコンと追い詰める。

 

「あれあれ〜? あたしを負かせたら着せるつもりだったんだよね〜、おかしいね〜?」

「それはっ、その……その場のノリと勢い、なのです……」

「ノリと勢いで、あたしはこんなえっちな衣装を着させられるところだったんだぁ〜? じゃあ、あたしもおねえちゃんにノリと勢いで着せちゃお〜っ♪」

 

 くすくすと、グリムは笑いながら続ける。

 

「逃げたかったら逃げてもいいよ♪ でもそうしたら次からは、負け犬(ま・け・い・ぬ)……って呼んであげるね♪」

「っ……」

 

 実のところ、逃げること自体はそう難しいことではない。メニューからマイルームに飛ぶなり、次のバトルに参加するなりしてこのルームから移動すればいいのだ。

 きっと、サキュチアを着た私はネットに晒されるだろう、黒歴史となるだろう。そのことを考えればグリムに負け犬と呼ばれることぐらいどうってことはない。

 どうってことは、ない。私が周囲からこんな衣装を着る人間だと思われるなら、一プレイヤーからの呼び名如き些細なものなのだから。

 

「グリムが……」

「ん?」

「グリムが言ったのですよ……局地的に負けても、最終的に勝てばいいのですと……」

 

 表示されているサキュバスチア衣装を見る。

 ご丁寧に三面図まで掲載されていて、一見スカートの下になって見えない部分までしっかりと載っている。

 有体に言って……有体に言って、エッチだ。デザインした人も、着る人も気がしれない。これを着たらメスガキわからせ層からそういった目で見られるのは間違いない。

 

 だが、私は。

 どんなに他の人間から私自身がメスガキと思われようと、わからせ対象だと認定されようとも。

 メスガキに舐められることだけは、認められないのです(・・・)────!!

 

「今回は負けを認めてやるのですっ、着てやるのですよっ、アレを! だから私を負け犬なんて呼ぶことは絶対に許さないのですっ!!」

【メスガキ度が上がりました! 69%→75%】

【メスガキ度が75%になったため、一部のスキルが強化されました!】

 

 私はグリムにそう言い放ったのです──って!

 つ、遂になのです調が心の中まで侵食してきたのです!? なにやらまたスキルも強化されたみたいなのですが、それはそれ、これはこれ、なのです!

 というかスキル強化はきちんと提示してるのにこのデメリットはなんで掲示してないのですか! おかしいのですっ、景品表示法違反なのですっ!!

 

 いや、落ち着くのです……ちょっと、思考がメスガキに引っ張られている気がするのです……

 とりあえず、この口調に対して文句を言うのは後……今は何よりも、グリムに宣戦布告しておくことが最優先だ……なのです。

 私はグリムをキッ、と睨み、そして宣言する……のです。

 

「次こそは、絶対に負けない(わからせる)のです……!!」

 

 この口調の分まで、絶対に……!

 そんな気迫を込めたのがわかったからか、グリムもまた頷き返してきたのです。

 

「次はのーみそまでめちゃくちゃにしてあげる……♪」

 

 バチバチと、火花が散ったような感覚。

 次こそは、絶対にわからせるのです……そう決意する私をよそに。

 

「あ、それはそれとしてこのコスチュームは着ようね♪」

 

 グリムは私に衣装を着させるための投票開始ボタンを押した。

 

 

 ●~*

 

 

【朗報】メスガキプラチナちゃん、サキュバスになる【動画あり】:再生数152,240

 

『もっと腕を高く上げて、こうっ! ですよっ』

『こっ、こうなのですか……?』

『そうですっ、そのまま、がんばれっ、がんばれっ』

『が……がんばれっ、がんばれっ』

『もっと、語尾を艶かしくするといいと思うなぁ♪』

『な、艶かしく……? が、がんばれっ♡ がんば……ってお前! 何撮ってやがるのですか!?』




『また遊ぼうね、おにいちゃん♪』

※またしても続かない。
けれどアンケートはまた設置。
軽率にここすきしていけ?

うちの近くのボンガ筐体増えろ……増えて……
ついでに録画台もちょうだい……


22.07.11
私はどうすればいいのだ……
プラチナちゃん……お前……消えるのか…………?

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