メスガキをわからせたかった大人がメスガキになってしまっただけのお話   作:千智

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(わからせ度)薄め、(メスガキ度)濃いめ


白金円の休日

「……寒いのですね」

 

 言うほど、寒いわけではないのですが。

 しかし私の頬を撫でる寒風はやはり冬がすぐそこまで近づいていることを実感させるのです。

 ……まぁ、だからこそ私も外出できるわけなのですが。

 もぞもぞとマフラーから口を出し、ほう、と息を吐くのです。

 すると白い息が一瞬だけ形を作り、そして消えていくのでした。

 

「しかし……人多いのです」

 

 この世界、この姿になって以来初めて出る都会はやけに広く、また人混みが酷く感じるのです。

 すれ違う人の目が私の姿を追いかける……気がします。自意識過剰だと思いますのですが、その度に私はキャスケットを深く被り直すのです。

 

「全く……これでしち下らないパフォーマンスでもしたらぶっ飛ばすのです……」

 

 拡張現実(AR)で時計を意識すると視界に今の時間が表示されました。

 まだ時刻まで幾分か余裕があるのです。

 あまり見て回ってないこの世界、少しは見てみるのもいいかもしれないのです、と私は足を人混みの中へと向けたのです。

 

 

 ●~*

 

 

「『プリティー・ボンバーズ プレミアミニライブチケット』ぉ……?」

 

 そんな電子チケットが送られてきたのは、突然のことだったのです。

 家の中で麗かな日中の日向ぼっこをポカポカと謳歌していたところだったのですが、そんな中にぴこんと軽快な音を立てて私にそれが送られてきたのです。

 

「……なんなのですか、これは。売ればいいのですか?」

 

 プリボンといえば、小さな女の子から大きなお友達まで人気のあるユニットなのです。

 私も興味があるのか? は??? メスガキなんか好きなはずは全然ありませんのですが??????

 まぁそんな感じで人気はあるので売れば売れるとは思うのです。ただこういうのって、最近は大体シリアルナンバーが……あったのです。抜け目ないのです。

 

「んー、どうしよう、なのです」

 

 ARで表示された電子チケットをぴん、と弾くのです。一定の距離をふわふわと漂って、離れすぎるとパッと消えました。

 盗まれる心配もなく本当、便利なのです。呪いのようについて回ることを除けば。

 

「……別にいく必要はない、のですよね?」

 

 モモコより『来ないと絶許だかんね!』とのメッセージもありますけれど……いつも私に絶許しているモモコが言っても説得力ないのです。

 というわけで、当日はいつも通りボンバトをやるつもりだったのですが。

 

【大型アップデートのお知らせ】

【いつも『ボンバーバトル』をご利用頂きありがとうございます!】

【この度、『ボンバーバトル』は大型アップデートを行い、『ボンバーバトル レインボー』へと生まれ変わります!】

【つきましては以下の日程でボンバーバトルへのログインをすることはできません、ご了承ください──】

 

「……マジなのですか」

 

 大型アップデート自体は望むところなのです。スキルの上方下方修正や新バトル要素、衣装など心躍る情報は盛り沢山なのです。

 しかしながら問題はその日程で、見事なまでにプリボンのライブ日程に重なっていたのです。

 こうなってはライブをぶっちぎってなにをしていたのか、という話になるのです。

 ……あ〜、本当はその日もボンバトをする予定だったのですけどね〜、言い訳考えるのも面倒くさいのですし〜、アップデートで休みなら仕方がないのですよね〜?

 だから、仕方がなく行ってやるのです。感謝するといいのです。

 

 余りこの身体を晒したくはないので出不精、また外に出る時でもダボダボな服を着て人目を誤魔化している私ですが、他所行きの服がないわけでもないのです。まぁ、準備して届いた日以来一度も袖を通してないのですが。

 イメージとしてはパンツルックのアメリカンスクール生、的な。結った髪をキャスケットで隠しつつメガネでもすれば、魔法少女風衣装のプラチナとは印象も繋げづらいハズなのです。

 というか、そもそもとしてリアルと殆ど同じ姿のアバターでバトルするとかなんなのですか、馬鹿なのですか。

 

「ああ、もう割と気温も下がってきているのですね」

 

 当日の天気や気温を見ると、最大気温は15度程度。天気は晴れなのですが、それでも肌寒さは感じそうなのです。大体いつも厚手の服を着ているので気がつかなかったのです。

 日付もそう遠いわけではないですので、念のためすぐにでもコートやマフラーを頼んでおいた方がいいのですね。

 ……別にライブを楽しみになんてしてないのです。ただ、寒いのが嫌なだけなのです。

 そう思いながら私はネットショッピングのページを開いて良さげなものを物色し始めるのでした。

 

 

 ●~*

 

 

 女の子は買い物が長い、とはよく言うのです。かくいう私も、両親や姉妹の買い物に付き合った時は服の物色に1時間2時間は余裕でかかっていたのも覚えているのです。

 だからと言って、今の姿になった私が買い物に時間をかけるかといえばそんなことはなく。

 

「……飽きたのです」

 

 そもそも服や小物を物色してもこれからライブを見にいくというのに荷物になるだけなのです。

 公園でゆっくりするのもありですが微妙に寒いので却下。喫茶店でお茶を飲むのもありですが、そこまで時間が余っているわけでもない、微妙な時間帯なのです。

 

「となると、無難にゲーセンなのですね」

 

 カラオケなどでもいいのですが、ちょいとあの独特な雰囲気をひさびさに楽しむのもいいかもしれないのです。

 ちなみにカラオケやらゲーセンやらなにやらもVRで既に存在はしますが、やはり実際に身体を動かしたりするのとは別物のようで今でも廃れていないのです。

 そんなわけでゲーセンに足を向けた私なのですが、休日であるからか人でごった返していました。

 どのゲームも人が盛り沢山なのです。やることないのですか?

 

「う〜ん……よさそうなのないのですね……」

 

 クレーンゲーム、アーケード、メダル、シューティング、レトロ……など順繰りに回っていきますが、特にこれといって私がやりたくて空いている筐体はありませんでした。

 ちなみにボンバーガールもとい、ボンバーバトルは存在しなかったのです。残念なのです。

 

 そして私は最後に音ゲーエリアに来ました。勿論先客が多く、あちこちから聞き覚えのある音が聞こえてくるのです。

 そんな中で私の目を引いたのが、DJ風の機体の、確かビーマニ? でした。

 ただどこかの誰かがやっているだけなら私も気にはしないのですが、制服を着た女の子が凄い勢いで流れてくるノーツを捌いていたので思わず足を止めてしまったのです。

 私が一歩後ろで見ているのも気付かず、自分の世界に入っている彼女はその後もコンボを途切れさせることはなく無事に最後まで走り切りました。この世界に来る前に一度私もプレイした経験がありますが難易度が低いものでクタクタになっていたのでこのフルコンボはすごいのです……

 思わず拍手をしようとする私をよそに、その女の子はクールながらも通る声で呟きました。

 

「……こんなものですね」

(やった、フルコンできた! 今のあたし、すごくかっこいいいいい……!!)

 

 ……んん?

 目を瞬かせて首を振りながら、もう一度音ゲーをしていた女の子の頭上を見るのです。

 そこにはデフォルメされた女の子が、ゲームをプレイしている女の子のクールなテンションとは打って変わって全身で喜びを表現している(勿論、後ろ姿で)のが見えるのです。

 私は困惑しつつ周りを見渡すのですが、他の人は別に頭の上に何かが出ているとかそういうことはないのです。

 え、何なのですかこれは……?

 

「さて……この調子で行きましょう」

(次は何にしようかな? もう一段上のレベルとか挑戦してみようかな!?)

 

 念のためAR機能を一時的にoffにしてみますが、それが消えることはなく。

 つまりこれは個人で勝手に発生しているもののようなのですね? こういうのなんていうのでしたっけ……サトラレ? 本当にいるのですね、そういうのは……

 しかし……、なんというか……どこかで見たことあるような気がします。この後ろ姿だけではなく、その声にもどことなく既視感がある気がするのです。私は彼女を後方で見ながら考えるのです。

 というか、そもそもこの世界に私の知り合いなんてそう多くはありません。元々の世界の知り合いは存在しませんし、リアルでもVRでも関わったことのある人なんて非常に少ないのです。

 故にその答えには、比較的簡単に行きつきました。なんてことのない、私が一方的に知っているだけなのですから見たことあるのも同然なのです。

 二次元やそれを踏襲したVRアバターでなかったので辿り着くまで少し時間がかかりましたですが。

 

「ああ、グレイなのですね」

「え?」

「えっ?」

 

 ああそうだと手を打ったところで、その声が目と鼻の先から聞こえてきました。

 顔を上げると、声をかけようとしていたのか私に手を伸ばしかけていた片目が前髪に隠れた銀髪の少女……(暫定)グレイとバッチリ目が合うのです。

 視界に入るプレイ画面を見るにコンテニュー画面がカウントダウンされているところから、もしかして私をプレイ待ちだと思い話しかけてこようとしてきたのでしょうか。

 そんな彼女から出てきた声は、勿論順番を待っているかの確認ではなくて。

 

「……あなた誰ですか。どうしてあたしのこと知ってるんですか?」

(なんで!? どうしてあたしのこと知ってるの!?)

「……あー、えっと」

 

 詰め寄るようなグレイ……グレイさんから目を逸らすと、その副音声が目に映ります。

 あー、まぁそれはそう、なのです。

 仮にゲーム上でほぼ同じ見た目でプレイしていたとしても、リアル特定ほど怖いものはないのです。

 迂闊に口にした私が悪いのですが……どうせここだけの関係なのです。

 三十六計逃げるに如かず。

 

「……さらば、なのです」

「あっ、待ってっ!」

「っ!」

 

 くるりと踵を返したところの手をすかさず掴まれてしまい、思わずその手を振り払ってしまったのです。

 その弾かれた手が私の眼前を襲い、思わず目を瞑ってしまいます。

 軽い衝撃が顔を襲って、少し後退りしながら手で怪我などないか感触を確かめつつ薄く目を開けます。顔を触った手を見ましたが血などはついておらず、怪我はなかったようなのです。

 自分の手が弾かれた事でそれはそれで動揺しているグレイは私を捕まえようとせず、その手をまた伸ばしかけて空中で手持ちぶたさになっていました。

 

「あっ、ごめんなさい……逃げようとしたのでつ、い……?」

 

 ぱさりと、肩に何か乗ったような重さがかかります。

 虫かと思い払いますが、そのまま指の隙間に落ちていくような感触。見ると、鏡でよく見慣れたものが落ちていました。

 はた、と気がついて頭に手をやりますがそこに朝被せた帽子の感覚はなく、自らの髪の感触だけなのです。

 そういえば、眼鏡もないのです……先程の衝撃で眼鏡も帽子も弾かれたみたいなのです。結っていた髪も解けたようなのです。

 

「あなた、どこかで……」

「おっ、グレイ。そろそろ終わったかい? ……おや?」

「? どうかしたのでありますか?」

「あっ……いや、ちょっと……」

 

 ……増えたのです!?

 いや、正直なところなんで知ってるかなんて話しても良いですがおそらく信じてもらえない上に増えたら話も面倒臭いのです。

 素早く周囲を見渡すと、出口側の方向に丁度帽子が落ちていました。

 眼鏡は……グレイの近くなのです。仕方がない、諦めるのです……所詮伊達なのです。

 グレイが友人との説明に注意を引かれているうちに、退散するのです。

 

 

 ●~*

 

 

「失礼、なのですっ」

「あっ! 逃げるよ!?」

「待つでありますっ!」

「いいです、大丈夫です!」

 

 そう言って、彼女は今度こそ逃げ出していきました。

 それを見たウルシさんとアサギさんが追いかけようと身構えましたが、あたしは声を上げてそれを止めました。

 途中で弾いてしまった帽子を拾って、そのまま出口に向かって小さくなる背中を見送った後、二人はあたしのほうを向きます。

 

「良いのかい? 何をしたのかは知らないけど、今ならまだ追いつくよ?」

「逃げる輩は大体なにか後ろめたいことがあるのであります。グレイ殿が言うならこのアサギ、地の果てまで追いかける所存です」

「い、いえ……あたしも悪かったので、大丈夫ですから」

 

 急に名前で呼ばれちゃったからびっくりしちゃった……あの人もきっとびっくりしただろうし、悪いことしちゃったな。

 そんなことを思ってると二人があたしの上の方を向いていた。釣られて上を見るけれど、当然ながらそこにはなにもない。

 先輩方も同じようにしてる時があるけどなんなんだろう……? 流行ってるのかな?

 

「まぁ、そういうならいいよ。ところで終わったのかい?」

「ええ、大丈夫です」

 

 そう! そういえばクリアできたんだよね!!

 次はどの曲を目標にしていこうかなぁ、アレもいいけどアレもいいし……!!

 そんな私の様子を見て苦笑するウルシさん。

 

「とりあえずそろそろ行こうか。今日は元々買い物に来ただけだしね」

「そう……そうであります! グレイ殿、次の撮影の時に使えそうなものがありまして……!」

「そうなんですね……あっ、と」

 

 一歩踏み出そうとしてつま先にコツン、と何かが当たりました。

 それを見ると、先程の女の子が付けていた眼鏡でした。拾い上げてそのレンズ越しに世界を見たら、度が入ってないことがわかります。

 伊達眼鏡、でしょうか。おしゃれアイテムですね。

 

 そういえば、彼女の目に見覚えがあったんですよね……碧色の瞳、その瞳孔の中心に星が浮かんでいて……

 あたしのことも知っていたみたいですし、どこかで会ったことがあった、とか……?

 

「早くしないと置いていくよ〜!」

「あっ待ってください、すぐ行きますっ!」

 

 あたしはその眼鏡を割らないように注意しながら鞄へ入れて、二人の後を追いかけるのでした。

 

 

 ●~*

 

 

 私はゲーセンから逃げ出した後も時折後ろを振り返りながら、追いかけてきてないことを確認するのです。

 いや……見ず知らずの私を追いかけてくる程暇ではないと思うのですが。念のため、なのです。

 

「……はー、もう、なのです」

 

 びっくりなのです。眼鏡も置いてきてしまいましたし……必需品ではないので構いませんですが、変装アイテムが減るのは少し困りものなのです。

 言うまでもなく、私の見た目は特徴的なのです。様々な髪色が飛び交うこの世界、この日本でも基本的に外人と見做される(プラチナ)ブロンドの髪は目を引きますし、星型の瞳孔は非常に特徴的なのです。

 ……無論、VRアバターの私である『プラチナ』も同じ特徴を持つのです。簡単に結びつけられる状態にするとか本当に馬鹿なのですか? 私をこんな姿にした奴が誰なのかは未だ不明ではありますが、きっとバ神に違いないのです。

 

 それはさておき。

 本当なら帽子の中に再び髪を入れるため、結うのに鏡のある場所、トイレかどこかに寄りたいところですが……生憎そんなに時間もないのです。適当に帽子の中に詰めても良いですが、後で絡まって困るのは自分なのでそれもしたくはないのです。

 まぁ多分、ライブハウスもある程度暗い場所で行われるハズですので……壁の花にでもなっていればきっと誤魔化せるでしょう。

 そう思いながら私は帽子を深く被り直し、顔を少しだけ上げて。

 

「みゃっ……いたっ!」

「おっと」

 

 ビルの曲がり角で、影から飛び出してきた人と正面衝突したのです。

 体躯通りに軽い私はその人とぶつかった拍子に弾き飛ばされ、蹈鞴(たたら)を踏んで抵抗しながらも耐えきれず、尻もちをついてしまいました。

 きちんと被っていたお陰か今度こそ帽子は脱げませんでしたが、そのツバのせいで下手人の顔までが見えません。

 身体までは見えるので、足も長くスラッとしたモデル体型なのはよくわかるのです。

 そんな彼女は尻もちをついた私に上から声を投げかけてきます。

 

「すまないが急いでいてね。失礼させてもらうよ」

「は、はぁ? いや、待つので、っ!?」

 

 私はその立ち去ろうとする彼女を止めようと立ち上がろうとしますが、その瞬間足首に痛みが走り膝をついてしまいました。

 手でその足首を押さえながら見渡すと、その特徴的な金色と白が混じったポニーテールが人混みの中へと消えていくところだったのです。

 少しだけ痛みのあった足首を動かしますが、やはり痛みがあり私は顔を顰めました。

 おそらく先程の転ばないように抵抗したところで痛めてしまったのでしょう。

 

「こんちくしょう、なのです」

 

 痛めた足に気をつけつつ立ち上がり、先程の女性が出てきたビルの影に移ります。こちらも人通りは多いですが、大通りで様子を見るよりはマシなのです。

 そうしてちょっとした段差に腰を下ろし、ゆっくりと靴を脱ぐのです。

 ソックス越しに触れるだけでも熱を持っているのがわかり、どくんどくんと脈を打っているのが感じ取れます。

 

「っ、つつ……」

 

 手を滑らせつつ痛みのある場所を探りますが、指に少し力を入れただけで結構痛みがあるのです。

 ……はぁ、今日は厄日なのですね。こんなんじゃライブも楽しめなさそう……いや、元々楽しみにはしてないのですが! してないのですけど!! ……楽しめなさそう、なのです。

 折角、わざわざ都心まで出向いてきたと言うのに……はぁ。本当(ほんと)、最悪なのです。

 そう思いながら靴を履き直そうとしたところで、人影が私を覆うように差し込みました。

 

「しょうがないなー、もう」

 

 明らかに気怠そうな声色なのでしたが、その声の主はしゃがみ込んで私に目線を合わせたのです。

 紫を基調とした服を着ている彼女はそれが汚れるのも気にせずに。

 

「みしてみー」

 

 私に、手を差し伸べるのでした。

 

 

 ●~*

 

 

「水ある? 痛み止めは?」

「……飲み物はあるのです。薬はないのです」

「そだよね。じゃあこれ痛み止め……別にアレルギーとかない? 他に病気とか、のんでる薬とかは?」

「特に、ないのです」

「ん、じゃあおっけー」

 

 そう言って押し付けられたのは私でも知っている普通の痛み止めなのです。

 バッグから取り出したスポーツドリンクでそれを流し込むのをみた彼女は、一度頷いた後。

 

「触診するよー、痛かったら言ってねー」

 

 私の足に手を伸ばしました。

 固定するように左手で足首の少し上を支え、もう片方の手で少しずつ足首を可動させていくのです。

 やがて、私の足に電流が走ったような痛みがあり、思わずびくっ、と動いてしまいます。

 

「っつつ……」

「……ふむ。じゃあ、こっち向きは……」

「いっ……!」

「なるほど。じゃあここが良いかなー」

 

 私の反応を見ながら少し足の角度を調節すると、銀色の棒(帰宅後によく見たら定規だったのです)を取り出し、それを支えにしつつ手慣れた様子で包帯をくるくると巻いていくのです。

 ……外見年齢的にそうは見えないのですが……持ち歩いているものといい、医療関係者、なのでしょうか。

 

「上手、なのですね」

「まーね」

 

 彼女は特に何も言うことはなく、そのまま包帯を留め具で固定し、手を放すのです。

 固定してあるためか余計なズレで痛むこともなく、多少は歩けそうな感じがあるのです。

 

「はい、これでしゅーりょー。あくまで応急処置だから。骨まではいってないと思うけど、今日は家に帰って休んで、近くの先生にでも診てもらってー」

「あ、ありがとう、ございます……なのです。あの、ちなみに、これってどのくらい()ちますのですか?」

「保つって……あのねー、歩けばその分固定は少しずつだけどずれるし、怪我自体を治してるわけじゃないから痛み止めが効いてるうちに素直に帰った方がいいと思うよー」

 

 少し面倒臭そうにそう言った後に聞こえた『私が帰りたいぐらいなのに……』という呟きは聞かなかったことにしつつ。

 先程みたいにどうしても無理なら諦めもつく、つけられたのですが。

 今みたいに、軽くは動ける状態なら。

 

「と……友達、に。ライブに誘われてるのです……大事な、大事な用なのです……」

 

 ……私にとって、モモコやパインは当然わからせる対象ではあるのですが。

 そうでない状況なら、多少は交流してあげてもいい……そんな間柄だと、思っているのです。

 ま、まぁ? 勿論今日みたいにボンバーバトルができない、なんてそんな暇を持て余すような時の話なのですがっ!

 

「……大事な用、なら、しゃーないかー」

「……え?」

 

 言いながら治療をしてくれた彼女は立ち上がり、そのまま手を差し出してきます。

 思わずその手を握ると、彼女はゆっくりと私を立ち上がらせてくれた後、自らの頬に指を当てて笑顔(アイドルスマイル)を浮かべたのです。

 

「プルるんにおまかせるんっ♪」

 

 

 ●~*

 

 

「姉御ー、おまたー」

「遅いやっと来た! プルーン、あんた今何時だと思ってんの!?」

「ライブ開始15分前ですねぇ……まぁいつも通りメロさんが時間稼ぎのためにスタンバっていますし、いつもより早く来たことを喜びましょうにゃ」

 

 ……開け放たれた扉の向こうから聞き慣れた声が聞こえてくるのです。

 

「今日は私もちゃんと来ようとしてたんだから、それはちょっと心外……帰りたくなってきた」

「帰んなっ! ほら、時間ないんだからさっさとするっ!!」

「もー、怒んないでよー、今日はちゃんと理由あるんだからさー……入ってきていいよー」

 

 プルーンから声をかけられて、私は壁伝いに足を庇いながらその部屋……控室へと入っていくのです。

 そこにいたのはやはりと言うべきか、映像の中で何度も見た姿なのでした。

 

「はぁ? ……はぁ!?」

「あ、プラさん。こんにちはで〜す」

「こんにちはなのです、パイン。あと一応……初めましてなのです、モモコ」

 

 ゲーム上では何度も顔を合わせたことがあるのに初対面、というのも不思議な話なのですが。

 一応帽子を取って、目礼をするのです。

 

「ちょっ、おま……プルーン!? なんでバカチナなんて連れてきてんの!?」

「道端で足を挫いてて、今日の立ちライブはまともに見られなさそうだったから? チケットも持ってるしー、一応姉御達と知り合いだから控室(ここ)でライブ見てもらっててもよくなーい?」

「え、プラさん怪我したのかにゃ? くふふ、バカですねぇ〜?」

「……うっさいのです」

「おやおや〜? いつものキレがありませんねぇ〜?」

 

 あの人のせいではありますが、たしかに足を挫いたのは自分なのでパインの言葉も否定はできないのです……ぐぬぬ。

 チェシャ猫のようににたにたと笑っていたパインはそこで少しフリーズ気味のモモコに話を振りました。

 

「まぁパイにゃんはモモさんがいいなら構わないにゃ。元々出演者枠でチケットを送ったのはモモさんですし〜?」

「……パイン、あんたプルーン連れて先行ってなさいよ」

「……了解で〜すっ、じゃあプルさん、行っちゃいましょ〜!」

「え、プルるんまだ準備終わってない……」

「パイにゃんお手製の自動お着替え装置があるので問題ありませ〜ん」

「そんなのあったの? それじゃあ今度からギリギリで来ても問題なくなーい? …………なんかまた知らん人から説教されてる!?」

「まーた何言ってるにゃ、さっさと行きますよぉ。それじゃプラさん、また後でにゃ〜!」

 

 何やらよくわからないことを言い出したプルーンを他所にパインはその彼女を引き摺っていき、すれ違う時に軽く手をふって部屋を出ていくのです。

 今更ですが、私のことはリアルでもプラさんで固定なのですね……もしかして私の本名忘れているとかはないのですよね……?

 そう思いながら出ていった二人の方を見ていると、モモコが一つ大きなため息を吐いたのです。

 

「はぁ……あんた怪我したんだっけ? じゃあこっち来て椅子にでも座んなさいよね」

「……失礼、するのです」

 

 モモコが控室内のテーブルとその椅子を指差し、私を誘導します。

 正直なところ、立ちっぱなしは挫いてない足の方にも負担がかかるのでありがたいのです。お言葉に甘えて、ゆっくり移動しながら椅子に座ります。

 モモコはそんな私の様子を見て口をへの字に曲げながら一つ、軽く鼻息を吐きながら部屋に備え付けのテレビのリモコンに手をかけます。

 するとテレビにはまだ誰も立っていないステージが映し出され、暗い周囲ではガヤガヤとした話し声、コールの練習などが聞こえてくるのです。

 

「これで見れるわよ。ペンライトは? いる?」

「普通のペンライトならあるのです」

「あっそ。まぁ一応渡しとくわ」

 

 そう言いながら部屋の隅に置かれた段ボールからごそごそとモモコが取り出したのはトランプの柄が描かれた四色のペンライトなのです。

 一つずつライトがつくことを確認しながら、桃色、黄色、紫、緑と順に私の目の前のテーブルに並べていくのです。

 

「…………」

「な……なんなのですか。見せ物じゃないのですよ」

 

 そのペンライトを手に取って確認していたところ、モモコは私を覗き込むようにジッと見つめてくるのです。

 それに対して唇を尖らせると、モモコは杖……マジカルポテトマッシャーを手に取り身体を扉の方に向けたのです。

 

「べーつにー? 正直なところ、チビチナが本当に来ると思ってなかっただけー」

 

 じゃあ何で急にチケット寄越してきたのですか……

 それをそのまま言おうと口を開きかけたところでモモコはくるりと身体をこちらに向け、後ろ手を組みながらにんまりとした笑みを浮かべて言うのです。

 

「今日はあんたに、モモぴゅんがちゃんとプロってところを見せつけてやるんだから。しっかりと見なさいよねっ!」

 

 そう言って私の返事を聞く間も無く、モモコは控室を駆け足で出ていき。

 程なくしてテレビに映し出されたステージに四人が現れてライブが始まりを告げたのです。

 

 

 

 ……ライブについて、なのですか?

 まぁ……悪くはなかったのですよ、ええ。全然、悪くはなかったのです。




 プルーン回にしようと思ってたらよくわからん回になりました。
 あと悩みましたがプラチナちゃんはそのままプラチナちゃんで行くことにしました。むしろこっちが本家(?)

 ※次回は多分アクア回だろうけど続きません。
 一応新しいアンケートは設置。

 もっと近くの店の筐体増えろ……増えて……

メイン希望のキャラ

  • モモぴゅん
  • アクア様
  • グリアロちゃん
  • パイにゃん
  • プルるん
  • その他ブロッカー以外のキャラ
  • メロめろですの!
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