メスガキをわからせたかった大人がメスガキになってしまっただけのお話   作:千智

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みぃつけた


((⚫︎)v(⚫︎))

 ガチャガチャガチャガチャガチャ。

 ガチャガチャガチャ。

 カチャン。

 

 一つ鍵が鳴り、扉が鳴く。

 

 自己主張をするように、足音が叩かれる。

 

 段々と、或いは浸透させていくように目的の地へと近づく。

 

 扉で遮られていない寝室にそれは忍び込むと、ターゲットは無防備に、くぅくぅと寝息を立てていた。

 

 敢えて耳元に腰掛ける。ベッドが軋み、そして服とシーツの擦れる音を目覚ましに、眠り姫は胡蝶の世界から舞い戻る。

 

 そうして彼女が最初に目にしたのは。

 

「おはよ、パピーちゃん❤️」

 

 狂気的な妄信を目に浮かべた少女の姿だった。

 

 

 ⚫︎~*

 

 

「っ…………はっ……! はっ、はっ……!?」

 

 パッと意識が覚醒した私はまずは目だけを動かし、ここがどこなのかを認識するのです。

 部屋の角から一望できる、見慣れた風景。なにも変わったことはない、いつもの部屋。

 どうやら、ゲームを終えた後に寝落ちをしてしまったいたようなのでした。

 

 お、恐ろしい夢を見たのです……

 今でも心臓が早鐘を打って、私に危険信号をおくりつづけているのです。

 それを落ち着かせるために大きく深呼吸をして、ソファーに改めて脱力して……

 

「あっ、おきたー?」

 

 頭上から、声が降ってきたのでした。

 慌てて上を向くのですがちらりとその影しか見えず、座ったまま身体を捻り後ろを見ます。

 そこにはにっこりと笑みを浮かべた──若干地雷臭のする──知らない女が、私とソファーの隙間に滑り込んでいたのです……!?

 

「あ……んなぁ……っ!?」

「おっと、暴れないあばれなーい」

 

 慌てて離れようとしますが、彼女は私のお腹の前で手を組んでいて、それがちっとも揺るがないのです。

 手を振り回して当てようにも、こう、体勢が悪いのと、体格差が……!

 

「はぁ、ぜぇ、はぁ……」

「落ち着いたー?」

 

 そんなわけがないのです……!

 れ、冷静(れいせー)になるのです……! まずはこいつが誰なのかから始めるのです……!

 

「お……お前は誰なのですか……?」

「? あもはあもだよ?」

「あも……?」

「あもー」

 

 ぎゅーっ、という擬音が飛び出るのではないかというぐらいに強く、しかし痛みがないように抱きしめられるのです。

 あも……あも? あもが名前なのです??

 ……記憶を探りますが、覚えはないのです。

 

「だ、誰かと間違えているのではないのですか……?」

「ん? あもがパピーちゃんをまちがえるわけないじゃん? パピーちゃんの気配を感じてからずぅ〜っと! 探してたけど、まさかこんな可愛い子になってるなんて、あも思ってもなかったよ〜」

「わ、私はお前のことなんて知らないのです……」

「は?」

 

 ヒュッ、と私の喉が引き攣りました。

 

「……あっ、そっかぁ! パピーちゃんはあもの実装前に来てくれたんだね! じゃあじゃあ、こうして再会できたのもやっぱり運命ってコトだね!」

 

 底冷えのする冷たい声で私の呼吸が詰まるのも束の間、底抜けに明るい声で紡がれる電波台詞。

 なんなのですかぁ、コイツぅ……

 

「じゃあ改めて……パピーちゃんのあも、最愛チアモ! ロールタイプはアタッカー! パピーちゃんには愛情を込めてぇ〜、『あも』って呼んでほしいなぁ〜♪」

 

 も、もあち……?「最愛、チアモだよ?」ひぅ……

 ち、チアモ「あもって呼んでね!」……あ、あもの自己紹介を聞くも、リアルでもゲームでも、前世でも今世でも聞き覚えはないのです。

 しかし……実装前に来てくれた? ロールタイプはアタッカー? ……考えすぎなのです?

 ボンバーバトルのことを話してるにしても自分のロールは変えられるので、メインロールは、という言葉になるはずなのです。それに自分が参加してないことを実装前、なんていうのもおかしな話ですし……

 ……いや、ないと思うのですよ? この世界の人がそれを知っているのがありえないのですから、確実にない、と言い切れるのですが──私がこの世界に来た後に、ボンバーガールに実装されたキャラクター……なのです?

 その推測に思い至ると同時、答えるようにまたぎゅっ、と私を抱きしめる腕に力が入ったのです。

 

「そうだよ? パピーちゃんとあもが初めて会ったのは、チェイスゲームの時だったかな? でもパピーちゃんはその事もきっと知らないよね、知ってたらあものことを忘れるわけないもんね、そうだよね? パピーちゃんの記憶を占めるのはあもだけでいいから邪魔なモブが少ないのはいい事だけど、それであものことを知らないのは困るなぁ〜、あものことだけ思い出す……うーん、知る事はできないかな? できない? そうじゃあしょうがないねでもこれから沢山あもでパピーちゃんのことを占領できるんだからそれでいいよね。それで、パピーちゃんとあもはチェイスゲームもボンバーバトルも……あと麻雀とか音ゲーもやったよね。パピーちゃんは他の子も使ったりするからそれは嫌だったけど、あもを選んでくれた時は一番近くでパピーちゃんのこと見れるから、それが嬉しかったなぁ〜♪ あっ! 勿論今が一番嬉しいよ? だってこうして、次元の壁を超えてあもに(会い)に来てくれたんだもんね! もうパピーちゃんの気配を感じた時、あもビックリしちゃった! それで暫く探してたんだけどぜーんぜん見つからなくて、もうだめチアモ〜……って所で見つけたの! 最初はパピーちゃんの気配を漂わせてる邪魔者かと思ってたら本人だったのは驚いちゃった! ゴメンね、一目でわかってあげられないなんてあもがっかりされちゃっても仕方がないよね……でももう見逃さないから! パピーちゃんがいつどこに行っても、どんな姿でも、必ず見つけ出してあげるから! それでね、引っ越しはいつにする? あもはパピーちゃんと一緒なら軒下でもなんでも全然構わないけど、いずれ二人の愛の結晶ができちゃったら困っちゃうもん。それにここなんか何匹かメス猫の臭いもするんだよね……あも以外の女の子を何人も家にあげちゃったの? なんで?? ここはパピーちゃんとあもの愛の巣だよね??? それなのにあもに黙って他の」

「いっ、痛っ! 痛いのですっ!?」

 

 真綿を絞めるように少しずつ私を抱いている腕の力が強くなってきて、刺激するとわかっていても思わず声を上げずにはいられなかったのです。

 それにハッとしたように腕の力が緩められ、私はようやく一息つくのでした。

 

「あっ、ゴメンね? 今のパピーちゃんは小さいから身体も弱いもんね? あもってばうっかり」

「ぐぬ……」

 

 事実ではありますが、実際に小さいと言われるとダメージはあるのです……

 それはそれとして。

 

「あも? は、その……あっちの世界を知っているのですか?」

「うんっ、だってパピーちゃんがそっちにいるんだから知らないわけないじゃん!」

 

 あもは『今はもうこっちにいるけどねー♪』と私に回した腕にまた力をいれます。

 こいつやべーやつなのです……次元の壁を超えて認識してるのです……

 たまーにゲームで(確かに、元はゲームでしたけど!)こういうキャラいますのですが、実際にその世界にいってしまった側としてはたまったもんじゃねーのです……!

 

「でもでも、本当にこうしてパピーちゃんと触れ合える日が来るなんて……さいこーだよぉ」

 

 そう言うと、あもは私の頭に顔を埋めて『すぅ〜〜〜〜〜っ』と音がしそうなぐらいに勢いよく私を吸うのです。というか実際鼻息が聞こえていたのです……

 メロンもそうだった気がするのですが、最近私のことを小動物か何かだと思ってる奴が多すぎないのです……?

 

「ん〜……くらくらしちゃうねっ」

「そ、それはよかったのです……」

「センセの時とイメージは違ったけど、コレはコレでありあも〜……♪」

 

 そう言いながら再度私吸いをされるのです……もうなるようになれ、なのです……

 世界超越系のヤンデレは元の世界でも二人ほど知っていますのですが、両方ともゲームシステムに影響を与えてくるやべー奴だったのです。変に刺激して『これで世界に二人きりだねっ』みたいな状態になるよりは満足いくまで好きにさせて、あとは煙に巻くのが一番なので──

 

「あっ、そういえばコレでパピーちゃんはゲームクリア〜なわけだけど、これからどうする?」

 

 ──す?

 少し思考が逸れていた私の耳に彼女のそんな言葉が入り、理解するのに……いや、理解できないことを理解するのに数瞬。

 それをわかってるかのように、あもはまた台詞を続けるのです。

 

「だって、あとはあもがぜーんぶ()るよ? パピーちゃんが元の姿になるにしてもこのままの姿を選ぶにしても、あもはパピーちゃんが居てくれればそれでいいけど、どっちにしてもあもはパピーちゃんのお願いならなんでも聞くよ」

 

 その言葉には、断定が含まれていて。

 きっと私がそうしたいと望めば、彼女は文字通り『なんでもやって』私の願いを叶えてくれるのでしょう。

 

 楽園の果実、砂漠のオアシス、洞窟に射す光。

 ああ、それはとても甘美な誘惑。

 地獄に垂らされた一本の蜘蛛の糸のような、天からの恵み。

 ──まぁ、だからといって。

 

「お断りするのです」

 

 そんな甘言に惑わされる私ではないのですが。

 

「……どうして〜? あもに任せてくれたら瞬殺だよ?」

 

 『はぁ〜??? 好きな相手の気持ちもわからないでよくそんなヤンデレキャラをやっていられますのですね? ファッションなのですか?? いやフィクションなのでしたね〜???』……なんて言える筈もなく。

 ……当たり前ですよねぇ!? 真後ろから抱きしめられてるとかいう生殺与奪の権を握られているのにそんな、煽るような、自分の首を絞めること言えるわけないのですよね!?

 とまぁ、そんな理由もあり。言葉を選びながらも素直に答えるとするのです。

 

「簡単な事なのです。そうするのは私ではないから、なのです」

 

 そう、それは至極単純なこと。

 先程も思った通り、このあも……いいえ、チアモは私の望みは何が何でも叶えてくれるのでしょう。私が元のつよつよな大人に戻りたいのだといえば、あのメスガキどもをわからせてくれるに違いないのです。

 チアモは私の指示でわからせてるので、ひいては私がわからせてるのと同じ事。

 …………本当に?

 そんなわけがないのです。

 大人がメスガキをわからせるのは道具や知恵を使うのはありですが、あくまで自身の手で行わなければならないのです。他人の手を借りるなんて……場合によってはあるかもしれないのですが、最初からそれ頼りというのは少なくとも私の流儀ではないのです!

 

 ……あとは、そう。

 これは、今言った理由のついで。あくまで、ついで、なのですが。

 もう少し、モモコ達と遊んでいたい──なんて。そんな気持ちも、ほんのすこーしだけ、あるのです。

 

「ふーん……ふぅーん?」

 

 そんな私の心の内がわかるわけなどないのですが。(……ないのですよね?)

 チアモは私の腕を触ったり、胸に手を当ててみたり……顔もペタペタと触って。

 それから、ポツリと呟きました。

 

「……嫉妬しちゃうなぁ」

 

 『あもの方が一途に想ってるのに』、なんて。言ってないのに、そんな続きが聞こえたような。

 しかして、チアモのそんな言葉に固まっていると、彼女は不意に私から手を離し、肩に手を置くのです。

 

「まぁ、今はそういうことでいいかな? 確かに、ゲーム……ううん、物語が途中で終わっちゃうと拍子抜けだもんねっ!」

「なんか引っかかる物言いですが……わかればいいのですよ、わかれば」

「うんうんそうだね〜、センセは何も悪くないよ〜」

 

 言いながらそのまま肩を押して私を立たせつつ、そのままくるりと私を回転させました。

 そこでようやく、彼女の全貌が明らかになるのです。私が少し見上げる身長、最初に私が感じた通りの地雷臭のするピンクを基調とした服装、ピンク色の髪、髪に溢れる蝶の髪飾り。

 それから、少し目線を下げればそこにある、大きなモノ。

 ……ちょっとイラッとくるのです。別に私はなくてもいいのですけどっ……!

 

「どこみてるのー?」

 

 と、一点を睨みつけているとそこにチアモの顔が間近に飛び込んできました。

 眼の中には狂気(凶器)が宿っていて、しかしそんな事どうでも良くなるぐらいには顔もいいのですね、こいつ……

 くっ、と私が歯噛みしているとチアモはにんまりと笑みを浮かべます。

 

「あもにぜーんぶ任せてくれたら、そこだけじゃなくてアッチもコッチも、センセのものだよ?」

「はぁ……? ……はぁ!? 別にそんなつもり、じゃなくて! いっ、言ったことをそうそう覆さないのですよ、私はっ!」

「冗談、じょうだーん」

 

 いや……声色的に本気だった気がするのですが……いえ、そもそもとして、そういう意味で見ていたわけではないのですけどっ……!

 しかしチアモはそれ以上私に追求することはなく、ぐーっと背伸びをしながら玄関のある方へと足を向けました。

 

「じゃあ、あも帰るねっ! 本当はもっとセンセの傍にいたい……ううん、センセの隣があもの居場所で帰る場所だけど……これからはもっと、すぐ近くにいられるもんっ」

 

 それから、と続けながら扉の前でくるりとこちらへ身体を向けると、後ろ手に少し前屈みになり、あざといポーズを決めます。

 

「気が変わったらいつでも言ってね! センセのためならたとえどこだろうと飛んでいっちゃうからっ!」

「ああ……はい、その時は頼むのです……」

 

 いや、頼みたくないのですが。正直言って怖いので、出来ることなら一生来ないでほしいのですが……そんなことを言ったが最後、なんか監禁されそうなのですよね……

 何かしらの条件を満たしたり、外からデータを消したり、チートコードを入力するまで崩壊した世界で二人きりとかやりかねないのです……いやこの世界がゲームの中なのかどうかは知りませんけれど。

 そんな私の気のない返事にもうんうんと笑顔で頷いた後、手をふりふりしながら部屋を出ていくのです。

 

「じゃあねっ、センセ! おつチアモ〜!」

 

 そうしてチアモは、最後にカチャンと音を立てて嵐のように去っていきました。

 暫く息を潜め、本当に帰ったのか音がしないか耳を澄ませて数分。そこでようやく、私は一息つくことができたのです。

 

「はぁ〜……どっと疲れたのです。なんだったのですか……」

 

 彼女の言葉通りなら、私がこの世界に来た後に実装されたアタッカータイプのキャラなのでしょう。初めて会った時はチェイス? チョイスゲーム? クイズゲーか何かなのですか? とか言ってましたし、苗字があるのも合わせてコラボキャラ……? いや、でもアクアとセピアさんも一応苗字はあるけどモデルがあるだけのボンガキャラではあるのでなんとも言えないのです……?

 ……考えるだけ無駄なのですね。私が知らないだけでモモコ達にも実は苗字があるのかもしれないですし……

 

「ふぁ……ねむいのです……」

 

 時間を見ると、まだ朝の6時。

 半ば恐怖に意識を失っていたも同然なので──どのくらいの時間かはわからないのですが──多分睡眠時間も足りてないのです。

 健康的なわからせは健康的な生活から、なのです。

 ……と、いうわけで。

 

「おやすみなのです……」

 

 二度寝タイムなのです。

 直前に送られてきたメッセージ通知は、何かあもあもしていたので気付かないふりをして、私は再び床に就いたのでした。

 

 ……そういえば。

 なんか途中から呼ばれ方が変わっていましたが、なんだったのでしょうか……

 そんな疑問も微睡の中に溶けて、記憶の彼方へと飛んでいきました。

 

 

 ⚫︎~*

 

 

「おはよ、センセ❤️」

 

 翌日。

 自然に目が覚めたら、昨日知った顔が覗き込んでいました。悲鳴をあげなかった私を褒めてほしいのです。

 チアモは指先でくるくると鍵を回しつつ、笑顔で言うのです。

 

「またきたよ〜」

「…………」

 

 カーテンの隙間から差し込む日が眩しく、ちゅんちゅんと鳥の声が漏れています。

 きっと今日はいい天気なのですね……なんて。

 そんな風に現実逃避してもコイツが目の前にいる事実は変わらないわけで……

 

 はぁー、と。心の中で一つ、溜息をつきます。

 変に対応して地雷踏み抜くのもアレですし、逆効果な可能性はあるわけですが……まぁコイツもボンバーガール、なのです。……ギャグではないのです、念の為。

 望み通り構ってやったら多少譲歩してくれるかもですし、だったらモモコ達と同じようにちょーっとは遊んでやるのもやぶさかではないのです。

 ……別に怖いから迎合するわけではないのですからね、そこのところは勘違いしないでほしいのです。

 

 そうして考えをまとめ、ふぅと息を吐きだし。

 それから改めてチアモを見るのです。

 

「……、ボンバトでも一緒にやりますのです?」

「……! やるぅ〜! あもにまかせてっ!!」

 

 喜色が満面に溢れてぴょんぴょんと飛び跳ねる彼女を尻目に。

 私は今一度、安堵の息を溢すのでした。




『あんまりセンセのコト虐めちゃダメだよ、パピーちゃん』


 ※チアモが勝手に動くので続きません。
 アクア回? 知らない子ですね……(白目)

 みんなもあもガチャ引こう(ダイマ)

メイン希望のキャラ

  • モモぴゅん
  • アクア様
  • グリアロちゃん
  • パイにゃん
  • プルるん
  • その他ブロッカー以外のキャラ
  • メロめろですの!
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