何の為に剣を振るうか 作:虹眼の代替竜
「じゃあ俺はここで。イエロー寮の場所はPDAにも載っているから迷うことはない」
「お忙しい中ありがとうございました」
「ああ。次会う時は久しぶりにデュエルをしよう」
そう言うと、丸藤先輩は踵を返してどこかへ行ってしまった。
僕が断るのが分かってたから返事をする前に去ったのだろう。
「丸藤先輩とデュエル、か」
ギャラリーがいないなら、まあいいかな。
PDAの地図を頼りにイエロー寮にたどり着いた。
寮長の教師に挨拶すると部屋の鍵を渡された。荷物は既に部屋に運んであるとのことだ。
僕は、これからしばらく過ごすことになるイエロー寮の間取りや廊下を覚えながら当てがわれた部屋に向かった。
(そういえば寮って相部屋なのかな?)
ふとそんな心配が頭をよぎったが、今更考えても仕方ないことだ。
鍵の番号と同じ数字が書かれたドアのプレートを見つけ、鍵を開けて部屋に入った。
幸いなことに部屋には誰もおらず、生活感もなかったのでとりあえずは1人部屋なのだろう。他の新入生が入寮した後はどうなるか分からないけど。
「ふぅ、疲れた……」
〈──、────〉
「えっ? 今日はまだデュエルしてない? いやいや今日はもうやらないよ、相手もいないし」
〈────、────〉
「丸藤先輩? さっきの感じなら頼めばすぐやってくれそうだけどさぁ」
〈────!〉
「はぁ。まあどうせやるなら目立たない今のうちの方がいいか」
僕はPDAを操作して、登録してある丸藤先輩宛てにメッセージを送った。
【目立たない今のうちに丸藤先輩とデュエルしたいのですが、今から時間大丈夫ですか?】
送信して1分も経たないうちに返信が来た。女子高生並みのレスポンスの良さだな。
【問題ない。場所は俺が押さえておく。デュエルフィールドの場所が確定し次第追って連絡する】
あ、観客がいないことを条件に追加しておかないと。
その旨を追伸したら【了承】と返ってきた。これでよし。
5分後、丸藤先輩から対戦場所の情報が地図付きで送られてきた。
デッキ、デュエルディスクを持って僕は指定された場所へ向かった。
「──来たか」
地図を頼りになんとか迷わず指定されたデュエルフィールドにたどり着いた。
そこは要望通りに観客は誰もおらず、僕が入ってきた後は丸藤先輩によって出入り口がロックされた。
「最後に対戦したのは5年前、俺も君も小学生の頃か。今までの戦績では負け越しているが、俺もあの頃よりもずっと強くなった。もう
『デュエル!!』
霧遊 響也 LP:4000
vs
丸藤 亮 LP:4000
先攻をランダムに決めるデュエルディスクの機能は、僕の先攻を示した。
「僕の先攻、ドロー。僕は魔法カード《テラ・フォーミング》を発動。デッキからフィールド魔法1枚を手札に加える。僕が選ぶカードは、
《
「来たか、
「僕は手札に加えた《王の舞台》を発動。フィールドは、各々の種族を束ねる王達に相応しい舞台となる」
ソリッドビジョンにより変化した周囲の映像、その中心には雪の結晶のような六角形のモニュメントが現れた。
「更に僕は魔法カード《暗黒界の取引》を発動。その効果によりお互いのプレイヤーはデッキから1枚ドローし手札を1枚捨てる」
「それは以前は使っていなかったな。手札交換のカード……、いや、まさか!」
「《暗黒界の取引》の処理後にフィールド魔法《王の舞台》の効果発動。1ターンに1度、相手がデッキからカードを手札に加えた場合、デッキから『ジェネレイド』と名のつくモンスター1体を守備表示で特殊召喚できる。僕が呼び出すのは《
フィールドのモニュメントの一角が黄緑色に点灯すると、柔らかい日差しが降り注ぎ、その光の中から背中に蝶のような羽を持つ美しい女性が現れた。
光の王 マルデル
星9/光/植物族/ATK2400/DEF2400
「マルデルの効果発動! 召喚・特殊召喚に成功した場合、他の『ジェネレイド』と名のつくカードか植物族モンスターをデッキから手札に加える。僕は《
続々と入れ替わり、目的のカードを手中に収めていく。
「カードを2枚伏せて、ターンエンド」
霧遊 響也
LP:4000
手札:3枚
モンスター:光の王 マルデル(守)
魔法・罠:王の舞台(フィールド)、伏せ×2
好調な滑り出しの僕に対して、丸藤先輩は安心したように息をついた。
「ふっ、どうやら腕は衰えていないようだな。それでこそ倒す意味がある。俺のターン、ドロー!」
「この瞬間、《王の舞台》の効果発動。デッキから『ジェネレイド』と名のつくモンスター1体を守備表示で特殊召喚できる。現れろ《
そして《王の舞台》のもうひとつの効果が発動。相手ターンに自分が『ジェネレイド』と名のつくモンスターの特殊召喚に成功した場合、自分フィールドに《ジェネレイドトークン》を可能な限り攻撃表示で特殊召喚できる。
フィールドのモニュメントの、さっきとは別の一角が紫色に点灯し、揺らめく黒い霧が立ち込める。それが晴れると、2本の角と暗闇色のドレス、先端がドクロを模した杖を身につけた美女が現れた。
次いでトークンとしてモニュメントの色違いのものが3つ、フィールドに出てきた。
死の王 ヘル
星9/闇/アンデット族/ATK800/DEF2800
ジェネレイドトークン ×3
星4/光/天使族/ATK1500/DEF1500
「場を埋めるほどの凄まじい展開か。だがこの程度、恐れるほどではない。相手の場にモンスターが存在し、自分の場にモンスターが存在していない場合、このモンスターは手札から特殊召喚できる。来い《サイバー・ドラゴン》!」
丸藤先輩のフィールドに鋼鉄でできた竜が現れた。
サイバー・ドラゴン
星5/光/機械族/ATK2100/DEF1600
「《プロト・サイバー・ドラゴン》を召喚! このモンスターはフィールド上にいる限り『サイバー・ドラゴン』として扱う。そして魔法カード《融合》を発動! 場の『サイバー・ドラゴン』扱いのプロト・サイバーと手札の《サイバー・ドラゴン》で融合! 現れろ《サイバー・ツイン・ドラゴン》!」
サイバー・ツイン・ドラゴン
星8/光/機械族/ATK2800/DEF2100
「《サイバー・ツイン・ドラゴン》は2回攻撃が可能だ。トークンは殲滅させてもらう。バトルフェイズ!」
「バトルフェイズ開始時、《死の王 ヘル》の効果発動! この効果は相手ターンでも発動できる。自分フィールドの『ジェネレイド』と名のつくモンスターかアンデット族モンスター1体を生け贄に捧げ、そのモンスターと名前の異なる自分の墓地の『ジェネレイド』と名のつくモンスターかアンデット族モンスター1体を守備表示で特殊召喚できる。僕は《ジェネレイドトークン》1体を生け贄に捧げ、墓地の
《
鉄の王 ドヴェルグス
星9/地/機械族/ATK1500/DEF2500
「その後《鉄の王 ドヴェルグス》の効果を発動する。この効果は相手ターンでも発動できる。自分フィールドの『ジェネレイド』と名のつくモンスターか機械族モンスターを任意の数生け贄に捧げ、その数だけ生け贄に捧げたモンスターと名前の異なる『ジェネレイド』と名のつくモンスターか機械族モンスターを手札から守備表示で特殊召喚できる。僕は《ジェネレイドトークン》2体を生け贄に捧げ、手札から《
モニュメントには金と赤の2色が同時に点灯し、フィールドには黄金の大剣と巨大な火球が現れた。上空からふわりと舞い降り、大剣を引き抜いた翼を持つ騎士王。火球が形を変え、それが自身が纏う炎となる獣王。
剣の王 フローディ
星9/風/戦士族/ATK2500/DEF2000
炎の王 ナグルファー
星9/炎/獣戦士族/ATK3100/DEF200
「蘇生させた《鉄の王 ドヴェルグス》は《暗黒界の取引》で捨てていたのか。隙のない動きだ。そして壮観だな。フィールドに5体の
《サイバー・ツイン・ドラゴン》の片方の頭の口に光が収束していく。
「それはさせない。攻撃宣言時、《剣の王 フローディ》の効果発動! この効果は相手ターンでも発動できる。自分フィールドの『ジェネレイド』と名のつくモンスターか戦士族モンスターを任意の数生け贄に捧げ、その数だけフィールドのモンスターを対象に取り破壊できる。僕はフローディ自身を生け贄に捧げ《サイバー・ツイン・ドラゴン》を選択!」
「ならば手札から速攻魔法《融合解除》を発動! 破壊対象にされている《サイバー・ツイン・ドラゴン》を融合デッキに戻し、融合素材となったモンスターが1組墓地にそろっていればそれらを特殊召喚できる!」
「まだだ。リバースカード、オープン!
《
ソリッドビジョンの《融合解除》のテキストが『お互いのプレイヤーはそれぞれデッキから1枚ドローする』に書き換わった。
「これでフローディの効果対象である《サイバー・ツイン・ドラゴン》は融合デッキに戻らない。書き換わった《融合解除》の効果によりお互いドローした後、フローディの効果でサイバー・ツインを破壊! その後フローディの効果により相手は破壊された数だけドローできる」
「くっ、サイバー・ツインが……。フローディの効果により更にドロー。ならば《サイバー・ドラゴン》で《炎の王 ナグルファー》に攻撃! エヴォリューション・バースト!」
「ナグルファーは1ターンに1度、自分フィールドのカードが戦闘・効果で破壊される場合、『ジェネレイド』と名のつくモンスターか獣戦士族モンスターを代わりに破壊できる。ナグルファーの代わりにマルデルを破壊」
あらまあ、という感じでこちらに手を振りながらマルデルがスッと消えた。おそらく墓地に行く動作なのだろう。
「む、攻撃力が高いナグルファーだけでも破壊しようと思ったのだがな。メインフェイズ2、俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」
丸藤 亮
LP:4000
手札:1枚
モンスター:サイバー・ドラゴン(攻)
魔法・罠:伏せ×2
霧遊 響也
LP:4000
手札:1枚
モンスター:死の王 ヘル(守)、鉄の王 ドヴェルグス(守)、炎の王 ナグルファー(守)
魔法・罠:王の舞台(フィールド)、王の支配(永続罠)、伏せ×1
後編へ続く。
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