何の為に剣を振るうか   作:虹眼の代替竜

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#02 5年振りの対戦(前)

「じゃあ俺はここで。イエロー寮の場所はPDAにも載っているから迷うことはない」

 

「お忙しい中ありがとうございました」

 

「ああ。次会う時は久しぶりにデュエルをしよう」

 

 そう言うと、丸藤先輩は踵を返してどこかへ行ってしまった。

 僕が断るのが分かってたから返事をする前に去ったのだろう。

 

「丸藤先輩とデュエル、か」

 

 ギャラリーがいないなら、まあいいかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 PDAの地図を頼りにイエロー寮にたどり着いた。

 寮長の教師に挨拶すると部屋の鍵を渡された。荷物は既に部屋に運んであるとのことだ。

 僕は、これからしばらく過ごすことになるイエロー寮の間取りや廊下を覚えながら当てがわれた部屋に向かった。

 

(そういえば寮って相部屋なのかな?)

 

 ふとそんな心配が頭をよぎったが、今更考えても仕方ないことだ。

 鍵の番号と同じ数字が書かれたドアのプレートを見つけ、鍵を開けて部屋に入った。

 幸いなことに部屋には誰もおらず、生活感もなかったのでとりあえずは1人部屋なのだろう。他の新入生が入寮した後はどうなるか分からないけど。

 

「ふぅ、疲れた……」

 

〈──、────〉

 

「えっ? 今日はまだデュエルしてない? いやいや今日はもうやらないよ、相手もいないし」

 

〈────、────〉

 

 

「丸藤先輩? さっきの感じなら頼めばすぐやってくれそうだけどさぁ」

 

〈────!〉

 

「はぁ。まあどうせやるなら目立たない今のうちの方がいいか」

 

 僕はPDAを操作して、登録してある丸藤先輩宛てにメッセージを送った。

 

【目立たない今のうちに丸藤先輩とデュエルしたいのですが、今から時間大丈夫ですか?】

 

 送信して1分も経たないうちに返信が来た。女子高生並みのレスポンスの良さだな。

 

【問題ない。場所は俺が押さえておく。デュエルフィールドの場所が確定し次第追って連絡する】

 

 あ、観客がいないことを条件に追加しておかないと。

 その旨を追伸したら【了承】と返ってきた。これでよし。

 

 5分後、丸藤先輩から対戦場所の情報が地図付きで送られてきた。

 デッキ、デュエルディスクを持って僕は指定された場所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──来たか」

 

 地図を頼りになんとか迷わず指定されたデュエルフィールドにたどり着いた。

 そこは要望通りに観客は誰もおらず、僕が入ってきた後は丸藤先輩によって出入り口がロックされた。

 

「最後に対戦したのは5年前、俺も君も小学生の頃か。今までの戦績では負け越しているが、俺もあの頃よりもずっと強くなった。もうあの時(・・・)のようなことには、絶対にさせない。それを証明するために、俺は君に勝つ! 行くぞ、霧遊(きりゅう)!」

 

 

『デュエル!!』

 

霧遊 響也 LP:4000

  vs

 丸藤 亮 LP:4000

 

 

 先攻をランダムに決めるデュエルディスクの機能は、僕の先攻を示した。

 

「僕の先攻、ドロー。僕は魔法カード《テラ・フォーミング》を発動。デッキからフィールド魔法1枚を手札に加える。僕が選ぶカードは、

王の舞台(ジェネレイド・ステージ)》!」

 

「来たか、(ジェネレイド)の始動カード」

 

「僕は手札に加えた《王の舞台》を発動。フィールドは、各々の種族を束ねる王達に相応しい舞台となる」

 

 ソリッドビジョンにより変化した周囲の映像、その中心には雪の結晶のような六角形のモニュメントが現れた。

 

「更に僕は魔法カード《暗黒界の取引》を発動。その効果によりお互いのプレイヤーはデッキから1枚ドローし手札を1枚捨てる」

 

「それは以前は使っていなかったな。手札交換のカード……、いや、まさか!」

 

「《暗黒界の取引》の処理後にフィールド魔法《王の舞台》の効果発動。1ターンに1度、相手がデッキからカードを手札に加えた場合、デッキから『ジェネレイド』と名のつくモンスター1体を守備表示で特殊召喚できる。僕が呼び出すのは《(ひかり)(ジェネレイド)マルデル》!」

 

 フィールドのモニュメントの一角が黄緑色に点灯すると、柔らかい日差しが降り注ぎ、その光の中から背中に蝶のような羽を持つ美しい女性が現れた。

 

 

光の王 マルデル

星9/光/植物族/ATK2400/DEF2400

 

 

「マルデルの効果発動! 召喚・特殊召喚に成功した場合、他の『ジェネレイド』と名のつくカードか植物族モンスターをデッキから手札に加える。僕は《王の試練(ジェネレイド・クエスト)》を手札に加え、そのまま発動! 手札の『ジェネレイド』と名のつくモンスター《(こおり)(ジェネレイド)ニードヘッグ》を見せ、デッキから名前の異なる『ジェネレイド』魔法・罠を2枚手札に加える。僕は《王の支配(ジェネレイド・テリトリー)》と2枚目の《王の舞台》を選ぶ。その後見せたモンスターをデッキの一番下に戻す」

 

 続々と入れ替わり、目的のカードを手中に収めていく。

 

「カードを2枚伏せて、ターンエンド」

 

 

 

霧遊 響也

LP:4000

手札:3枚

モンスター:光の王 マルデル(守)

魔法・罠:王の舞台(フィールド)、伏せ×2

 

 

 

 好調な滑り出しの僕に対して、丸藤先輩は安心したように息をついた。

 

「ふっ、どうやら腕は衰えていないようだな。それでこそ倒す意味がある。俺のターン、ドロー!」

 

「この瞬間、《王の舞台》の効果発動。デッキから『ジェネレイド』と名のつくモンスター1体を守備表示で特殊召喚できる。現れろ《()(ジェネレイド)ヘル》!

そして《王の舞台》のもうひとつの効果が発動。相手ターンに自分が『ジェネレイド』と名のつくモンスターの特殊召喚に成功した場合、自分フィールドに《ジェネレイドトークン》を可能な限り攻撃表示で特殊召喚できる。()でよ、3体のジェネレイドトークン」

 

 フィールドのモニュメントの、さっきとは別の一角が紫色に点灯し、揺らめく黒い霧が立ち込める。それが晴れると、2本の角と暗闇色のドレス、先端がドクロを模した杖を身につけた美女が現れた。

 次いでトークンとしてモニュメントの色違いのものが3つ、フィールドに出てきた。

 

 

死の王 ヘル

星9/闇/アンデット族/ATK800/DEF2800

 

ジェネレイドトークン ×3

星4/光/天使族/ATK1500/DEF1500

 

 

「場を埋めるほどの凄まじい展開か。だがこの程度、恐れるほどではない。相手の場にモンスターが存在し、自分の場にモンスターが存在していない場合、このモンスターは手札から特殊召喚できる。来い《サイバー・ドラゴン》!」

 

 丸藤先輩のフィールドに鋼鉄でできた竜が現れた。

 

 

サイバー・ドラゴン

星5/光/機械族/ATK2100/DEF1600

 

 

「《プロト・サイバー・ドラゴン》を召喚! このモンスターはフィールド上にいる限り『サイバー・ドラゴン』として扱う。そして魔法カード《融合》を発動! 場の『サイバー・ドラゴン』扱いのプロト・サイバーと手札の《サイバー・ドラゴン》で融合! 現れろ《サイバー・ツイン・ドラゴン》!」

 

 

サイバー・ツイン・ドラゴン

星8/光/機械族/ATK2800/DEF2100

 

 

「《サイバー・ツイン・ドラゴン》は2回攻撃が可能だ。トークンは殲滅させてもらう。バトルフェイズ!」

 

「バトルフェイズ開始時、《死の王 ヘル》の効果発動! この効果は相手ターンでも発動できる。自分フィールドの『ジェネレイド』と名のつくモンスターかアンデット族モンスター1体を生け贄に捧げ、そのモンスターと名前の異なる自分の墓地の『ジェネレイド』と名のつくモンスターかアンデット族モンスター1体を守備表示で特殊召喚できる。僕は《ジェネレイドトークン》1体を生け贄に捧げ、墓地の

(くろがね)(ジェネレイド)ドヴェルグス》を特殊召喚!」

 

 三度(みたび)モニュメントの一角が今度は青白く点灯し、全身が鋼鉄の装甲で組まれた巨躯が出現した。その手には身体の装甲と同じ素材で作られた鉄槌が握られている。

 

 

鉄の王 ドヴェルグス

星9/地/機械族/ATK1500/DEF2500

 

 

「その後《鉄の王 ドヴェルグス》の効果を発動する。この効果は相手ターンでも発動できる。自分フィールドの『ジェネレイド』と名のつくモンスターか機械族モンスターを任意の数生け贄に捧げ、その数だけ生け贄に捧げたモンスターと名前の異なる『ジェネレイド』と名のつくモンスターか機械族モンスターを手札から守備表示で特殊召喚できる。僕は《ジェネレイドトークン》2体を生け贄に捧げ、手札から《(つるぎ)(ジェネレイド)フローディ》と《(ほのお)(ジェネレイド)ナグルファー》を特殊召喚!」

 

 モニュメントには金と赤の2色が同時に点灯し、フィールドには黄金の大剣と巨大な火球が現れた。上空からふわりと舞い降り、大剣を引き抜いた翼を持つ騎士王。火球が形を変え、それが自身が纏う炎となる獣王。

 

 

剣の王 フローディ

星9/風/戦士族/ATK2500/DEF2000

 

炎の王 ナグルファー

星9/炎/獣戦士族/ATK3100/DEF200

 

 

「蘇生させた《鉄の王 ドヴェルグス》は《暗黒界の取引》で捨てていたのか。隙のない動きだ。そして壮観だな。フィールドに5体の(ジェネレイド)が並び立っているとは。しかし攻撃はさせてもらう。《サイバー・ツイン・ドラゴン》で《炎の王 ナグルファー》を攻撃! エヴォリューション・ツインバースト第1打!」

 

 《サイバー・ツイン・ドラゴン》の片方の頭の口に光が収束していく。

 

「それはさせない。攻撃宣言時、《剣の王 フローディ》の効果発動! この効果は相手ターンでも発動できる。自分フィールドの『ジェネレイド』と名のつくモンスターか戦士族モンスターを任意の数生け贄に捧げ、その数だけフィールドのモンスターを対象に取り破壊できる。僕はフローディ自身を生け贄に捧げ《サイバー・ツイン・ドラゴン》を選択!」

 

「ならば手札から速攻魔法《融合解除》を発動! 破壊対象にされている《サイバー・ツイン・ドラゴン》を融合デッキに戻し、融合素材となったモンスターが1組墓地にそろっていればそれらを特殊召喚できる!」

 

「まだだ。リバースカード、オープン!

王の支配(ジェネレイド・テリトリー)》! 自分の『ジェネレイド』と名のつくカードの効果の発動にチェーンして相手が魔法・罠・モンスターの効果を発動した時、手札を1枚捨てて発動。その相手の効果は『お互いのプレイヤーはそれぞれデッキから1枚ドローする』に書き換わる!」

 

 ソリッドビジョンの《融合解除》のテキストが『お互いのプレイヤーはそれぞれデッキから1枚ドローする』に書き換わった。

 

「これでフローディの効果対象である《サイバー・ツイン・ドラゴン》は融合デッキに戻らない。書き換わった《融合解除》の効果によりお互いドローした後、フローディの効果でサイバー・ツインを破壊! その後フローディの効果により相手は破壊された数だけドローできる」

 

「くっ、サイバー・ツインが……。フローディの効果により更にドロー。ならば《サイバー・ドラゴン》で《炎の王 ナグルファー》に攻撃! エヴォリューション・バースト!」

 

「ナグルファーは1ターンに1度、自分フィールドのカードが戦闘・効果で破壊される場合、『ジェネレイド』と名のつくモンスターか獣戦士族モンスターを代わりに破壊できる。ナグルファーの代わりにマルデルを破壊」

 

 あらまあ、という感じでこちらに手を振りながらマルデルがスッと消えた。おそらく墓地に行く動作なのだろう。

 

「む、攻撃力が高いナグルファーだけでも破壊しようと思ったのだがな。メインフェイズ2、俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

 

 

丸藤 亮

LP:4000

手札:1枚

モンスター:サイバー・ドラゴン(攻)

魔法・罠:伏せ×2

 

 

霧遊 響也

LP:4000

手札:1枚

モンスター:死の王 ヘル(守)、鉄の王 ドヴェルグス(守)、炎の王 ナグルファー(守)

魔法・罠:王の舞台(フィールド)、王の支配(永続罠)、伏せ×1

 

 

 




後編へ続く。
とりあえずとこしえのじぇねれいどさんは休暇中です。

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