何の為に剣を振るうか   作:虹眼の代替竜

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そろそろ他作品キャラしっかり登場。
なぜこのチョイスなのかは個人的な好みなので文句は受け付けません。



#08 夕食とその後の明日香

「……ふう」

 

 大量展開する特性上、サイバー・ブレイダーの効果で封殺されないよう立ち回るのが地味に難しかった。

 一時でも場のモンスターが3体になれば『発動した効果を無効にする』という強力無比な効果が適用されてしまうため、常に2体以下か4体以上にしていた。

 

「対戦、ありがとうございました」

 

 初対面の人とのデュエルの場合、終了後のあいさつは忘れないように心掛けている。

 半ば無理やりだったとはいえ、今後もアカデミア内で関わる事になるだろうから心象は良いに越したことはない。

 

「ええ、こちらこそありがとう。確かな実力だと亮に聞いていたけど、想像以上だったわ」

 

 明日香さんはデュエルフィールドの対面側からこちらへ来て、僕に握手を求めてきた。

 

「……こちらも同じ感想です。想像以上の強さでした」

 

 少し躊躇し、しかししっかりと握手を返す。

 ……他人との一次的接触は苦手だな。

 

「さて、それじゃ購買にでも行きましょうか」

 

「何か買うんですか?」

 

「私たちの夕飯よ。新入生歓迎会はとっくに始まってるだろうし、無理に引き留めたお詫びも兼ねて私が奢るわ」

 

 デュエル中の態度やさっきの握手から分かっていたが、どうやら明日香さんは他の人が僕に抱くような妬みや嫌悪がないらしい。

 デュエルに勝って爽やかな気分で終われたのは、はたしていつ以来だっただろうか。

 

「ありがとうございます。ゴチになります」

 

「じゃあ行きましょ」

 

 僕らは連れ立って購買に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

「………」

 

 終了間際の購買にすべり込み、なんとか食料を手に入れられた。

 

「すごく、ドローパンです」

 

「………ごめんなさい」

 

 目の前に積まれた、一人では持ちきれないドローパンの山。

 トメさんが「どうせ売れ残りだから持ってっちゃって」とのことで、残りのドローパン全てをタダで譲ってくれた。

 さすがにドローパンだけでは味気ないので他のものも買おうとしたのだが、食品系はもう残っていなかった。

 

「幸い飲み物は買えましたし大丈夫ですよ。春のドローパン祭りですね」

 

 落ち込んでいる明日香さんが少しでも気にしなくてもいいように、意識して明るく茶化す。

 

「……ありがとう。よしっ、食べましょ!」

 

「はい、いただきます」

 

 そこからは中身がランダムなドローパンを思い思いに食べていった。

 ジャムやクリームなどオーソドックスなものから、おにぎりやギョーザといった変わり種まで様々だ。

 

「あっ、これ!」

 

「どうしました?」

 

「以前から食べたいと思ってた黄金のタマゴパンだったの!」

 

 なんでもこの黄金のタマゴパンは1日に作られる数が限定されていて、当たった者はすなわちドロー(りょく)がある、かも? とのことだ。

 それにしても、

 

「〜〜〜♪」

 

 姉御肌な感じかと思えば、食べたかったパンの中身でここまで機嫌良くなる子供っぽさもあって可愛らしいひとだな、と微笑ましくなった。

 

「ん?」

 

 そろそろお腹いっぱいになってきたな、という頃。

 ドローパンを小さくちぎりながら食べていると、その中身はカードだった。

 汚れたりしないようビニール包装されているそれを引っ張り出し、何のカードか確認する。

 

《荒野の女戦士》

 

 戦闘破壊されるとデッキから特定の条件に合うモンスターを特殊召喚する、といった効果を持つ通称『リクルーター』と呼ばれる類いのカード。

 このカードの場合は『攻撃力1500以下の地属性』という条件だ。

 使いやすいようにご丁寧に3枚セットで入っている。

 

「明日香さん、これ良かったら使ってください」

 

「これって、ドローパンから出たカード!? これもかなり低確率のはずよ。……あなたのパンに入ってたのだから、あなたが使うべきよ」

 

「残念ながら僕のデッキとは噛み合わない効果なので、明日香さんが使ってあげてください。その方がこのカードも喜ぶと思います」

 

 言ってから気づいた。

 カードの精霊が見えるから『カードが喜ぶ』と表現してしまったが、普通の人からすればおかしな言い方だ。

 変な人に思われたかなと冷や冷やしてると、

 

「このカードも喜ぶ……それ、良いわね」

 

 明日香さんは妙に納得した表情でその表現を肯定した。

 

「私が持っているカードで友人のデッキと相性の良いカードがあっても、何て言ってあげればいいのか思いつかなかったの。普通にあげようとしても『恐れ多い』とか言われて受け取ってもらえなかったから、今度からそう言って渡してみるわ」

 

 だから、と明日香さんは続ける。

 

「そのカードはありがたく頂くわ。その代わり、あなたのデッキと相性の良いカードがあったらちゃんと受け取ってもらうわよ? 響也くん♪」

 

 今日見た中で一番の笑顔を向けて、明日香さんは僕を名前で呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、おやすみなさい」

 

 ドローパンを食べ終わり、遅くならないうちに解散することにした。

 イエロー寮に戻っていく彼の背中を少しの間眺めてから、私も女子寮へと歩き出した。

 校舎から各寮までの道は明かりのない場所もあって少し不安になるが、先ほど彼にもらったカード──《荒野の女戦士》をポケット越しに触れると、その不安も和らいだ。

 

「あら、明日香じゃない」

 

 女子寮の明かりが見えてきて人工の光源に安心していると、不意に名前を呼ばれた。

 その声の主を見ると、長い髪をツインテールにした特徴的な髪型の女生徒がいた。

 

「雪乃、こんな所でどうしたの?」

 

 藤原雪乃。

 気分屋で本気を出すことは稀だけど、その実力はかなりのものである同級生。中等部からの友人のひとりだ。

 

「それはこちらのセリフなのだけれど。ちなみに私は夜風に当たりに来ただけよ」

 

「私は……野良デュエルの帰り、といったところかしら」

 

「へぇ、その様子だと勝ったのかしら?」

 

「いいえ、相手のライフを少しも削れず完敗だったわ」

 

「ふぅん、相手の殿方を大層気に入ったようね」

 

「なっ!?」

 

 なんで相手が男子で気に入ったって分かるの!?

 

「なんで分かったのか、って顔ね。まず相手が女子なら一緒に戻って来るでしょう。そして負けたのにスッキリした笑顔で、でも瞳の奥に闘志を燃やしていれば誰でもそう思うわよ」

 

 くぅ、その通りだから何も言えない。

 

「そんなに凄いぼうやがいるなら紹介してくれないかしら」

 

「それは……。ええ、分かったわ。機会があれば」

 

 数秒迷う。

 雪乃と響也を会わせても別に問題ないはずなのに、なぜか逡巡してしまった。

 

「──ふふっ、どうやら本当にアタリみたいね。楽しみにしてるわ。……どうせならあの人たち(・・・・・)にも紹介しようかしら」

 

「それは貴方に任せるわ」

 

「あら、私より明日香の方があの人たちと親しいと思ったのだけれど」

 

「それはそうなんだけど──」

 

「ああー!!」

 

 返事の途中で女子寮の方から大声が聞こえて言葉が遮られる。

 

「明日香ちゃんっ! 歓迎会にいなかったから心配したんだよ!!」

 

「……心配をかけてすみません、なのは先輩」

 

 私怒ってます、と全身で表現する様に腕組みしているけど、可愛らしすぎて全然威圧されない。

 明るい茶髪を雪乃よりもサイド寄りのツインテールにしていて、強い意志を感じる瞳の1学年上の先輩。高町なのはさんだ。

 

「なのは、アスカが困ってるよ。でも何事もなくてよかった。鮎川先生が心配してたから後で行った方がいいよ、アスカ」

 

「はい。ありがとうございます、フェイト先輩」

 

 なのは先輩を(たしな)めるのは、綺麗な長い金髪を背中に流している優しそうな雰囲気の、同じく1つ上の先輩。フェイト・テスタロッサさん。

 

「では私は鮎川先生の所へ向かうので失礼します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありゃ、行っちゃった。……私、明日香ちゃんに避けられてる気がするんだけど」

 

「そ、そんなことないよ。うん、ほんのちょっと他人行儀なだけだよ」

 

「それはこの場合同じ意味合いよ、フェイト先輩。明日香はなのは先輩のことを意識しちゃってるだけなの。ライバルとして、強者として、格上として、ね」

 

「それは嬉しいんだけど、普段はもっと仲良くしたいなぁ…」

 

「そういえば、ユキノたちは何を話していたの?」

 

「ああ、明日香が完敗したのに満足そうにしていたからそのお相手を紹介してもらおうとしてたのよ」

 

「「その話、詳しく」」

 

「……強さに貪欲なのは他人(明日香)のこと言えないわね、先輩方」

 

 




という事で、『魔法少女リリカルなのは』より高町なのは、フェイト・テスタロッサ参戦。
魔法設定などは無く、遊戯王世界の他人の空似です。パラレルです。
(アカデミアには)あと4人います。

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