何れ死ぬであろう私が鬼滅の世界を生き抜いた話。   作:蔓桔梗

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小噺
憐れな男に姉の形見は流石に貸せなかった噺


 

 

那田蜘蛛山編は胡蝶しのぶが数少ない活躍する場面のうちの一つ。

まあ、最大の見せ場(無限城編)と比べると影の活躍の部分が多いから活躍してるかって言われると首を捻るかもしれない。

 

だが、よくよく考えて見て欲しい。

この山でやることは大まかに分けて三つだ。

 

一つは負傷者ーー主に人面蜘蛛の毒の治療。

もう一つは姉蜘蛛の討伐。

そんでもって最後は主人公ズとご対面からの冨岡さんと鬼ごっこ。

 

そこまで戦闘はしてないけど冨岡さんよりやること多い。多分、主人公の次にやること多かったレベル。

あの場面からして姉蜘蛛と彼は距離が近かったのでそこまで苦労はしてないだろうが問題はその前だ。

しのぶさんは西の方からやって来た。

その道中で毒の処置をして…いっぱいある繭の調査をして…

つまりだ。移動距離、めっちゃ長い。

最後に涼しい顔で鬼ごっこするしのぶさんすっごいですー。

 

やることいっぱいだし、シビアな時間を求められる場面もある。

 

と、いうことで那田蜘蛛山RTAはっじまるよー!

 

隠の先導は妹に任せて先行して生存者いないだろうけど繭の調査。少しやったら合流したので一部の人に任せてさらに奥へ。

次に人面蜘蛛の解毒。異臭の中に長時間いるとかムリ。可及的速やかに処理して次々♪っと。

 

さてさて、今の進捗状況は分からないけどイイ感じのタイムでは??

 

次なる場所へ向けて駆けながら内心で自画自賛しているとヒュルンと良い布の動く音が微かに聞こえたので方向転換。

視界の先、木々の間に隠れながらも人間サイズの白い塊を発見。

自画自賛していたけど村田さんが捕まってしまっていたので予定調和だな。

 

「あたしの糸束はねぇ柔らかいけど硬いのよ?」

 

ツンツンとなんとかもがく繭を見て不敵に笑う姉蜘蛛。

悦に浸っているところ申し訳ないけど先がつかえているんだよね。

 

「蜘蛛の次は蚕、ね」

 

急ブレーキで減速。慣性を殺せばあら不思議。

あなたの後ろから這い寄る混沌。

…ただ単に、やってきた方向が姉蜘蛛とは正反対の方向だっただけなんだけどね。

 

今晩は。と話しかけると突如、現れたように見える私を呆然と見つめる。

その空白の時間、命取りだよ?まあ、鬼に素直に伝えようだなんて微塵も思わないけど。

 

「今日は月が綺麗ですね…取り敢えず、死ね

「ーーーっ!!」

 

居合抜きで頸を狙ったけど、本能が警鐘を鳴らしたのか運が良かったのか。ゴロゴロと地面を転がって回避されてしまった。

 

「外しちゃったか…ザンネン」

 

危険だと判断したのか逃げ腰になっているけど、逃す気は全くないね。

 

「蟲の呼吸 蝶の舞ーーー戯れ」

 

加速して擦れ違いざまに刺突を六連撃お見舞い。

 

気付いた時にはもう刺されて血が吹き出た後。

全く反応できなかった速度に驚いて頸に手をやる姉蜘蛛だけど突かれただけで切られてはいない。

 

「小柄で腕力ないから頸を切れないって思った?そんな足手纏い、増援で来るワケないでしょ」

 

私の刀を見て頸が切れないと確信したようで姉蜘蛛は攻撃しようと手を伸ばす。

だけどそれはもう手遅れ。

 

「人間は鬼と違ってか弱い存在なんだから手段なんて選んでられないのよ」

 

身体に異変が起こった姉蜘蛛は理解できない顔で踠き苦しむ。

その様子を横目に刀についた僅かな血を振り払って納刀する。

 

 

柔らかくて硬い糸束。それは内側からの話で外側はそうでもない。

繭の調査をした時に裂くコツは掴んでいたのであっさりと破って中身を引きずり出す。

 

「大丈夫そうね」

「ええ…鬼は」

「殺しました。毒を使ったからあとは腐るか日光で消滅するだけ」

 

悪・即・斬の勢いで姉蜘蛛を片付けたので当然のように村田さんは無事、繭から生還。

 

「道中、繭の中の惨状を見たけど溶けてなくて良かったわね。服は犠牲になったようだけど」

 

大丈夫だと分かっているけど一応、負傷していないか確認。うん、服だけ綺麗に溶けてる。

私の一言でやっと素っ裸だと気付いた村田さんは恥ずかしそうな声をあげてしゃがみこんだ。

 

さて、もう累くんは討伐済みだろうからお次は兄弟弟子の感動の再会のお邪魔虫をしに行かなくては。

 

「……はうぅ」

「………」

 

近くに隠がいるとは言え、性被害者みたいな村田さんをこのまま放置するのも可哀想だな。

何か羽織るものでもないものか…

 

辺りを見ても草木と鬼の死体だけ。

流石に死体から剥ぎ取った着物は嫌だろうしなあ…しかも死因、毒殺。さらにイヤ。

…仕方ない。私のを貸すか。

 

「………」

 

脱ぎかけた蝶模様の羽織を見る。

次に羽織の貸出先(村田さん)を見る。

 

「…………」

 

この羽織は姉の形見。

それをヒロイン的ポジションの村田さん(知ってるけど見ず知らずの男)に…?しかも素っ裸の。

 

ごめん、ムリ。

 

いや、村田さんは良い人だと知っているよ?

めちゃくちゃ良い人だと知ってるけど、大切な大切な姉さんの形見を素っ裸の男に渡すのは流石に…流石に、ね??

他、他は…詰め襟…?

でも、詰め襟は…大切な場所が隠せないしな…上半身だけ隠せても意味ないし、そういう意味では大体隠すことができる羽織が理想的。

だけど、羽織は…でもそれしか……行動を移しかけた手前、今更やめるわけにも…でも、羽織は…!

 

「くっ……」

 

姉さんだったら…姉さんだったら躊躇い無く羽織を肩にかけるわ…

だったら羽織を渡してあげるべき。姉さんだって許してくれる。そして医療従事者としても、人としてもそれが正解の行動…

 

「あの…無理をしなくても良いですよ…」

 

私の葛藤に村田さんは人来るまで草むらに隠れているんで大丈夫ですよと遠慮してくれるがここまで来てしまえばこれはもう私の良心的問題だ。

 

「ごめんなさい…羽織は、姉の形見なの…本当にごめんなさい…」

「形見は流石にそうですよねー」

「でも、現場を見てしまった手前…貴方に何もしないで見捨てるわけにも行かないわ」

「へ?」

 

いや、流石に形見はねえ?と同意してくれる村田さんには本当に感謝しかない。

 

「中途半端でとても申し訳ないけどこれを貸すわ」

 

真夜中の山にブラウスに羽織は肌寒いけど背に腹は変えられない。

それ以上の人が目の前にいるし。

せめて少しでもマシなように詰め襟を渡した。

やはり、無いよりも有った方が良かったようで村田さんはありがとうございますと感謝を告げて手を伸ばした。

 

 

さて、思いの外時間を取ってしまったがそろそろ彼らのところに行かなくては。

 

「あ。武器仕込んでいるから着る時は気をつけて」

「はい?」

 

まさか那田蜘蛛山RTA一番の難所がここだなんて…

 

 




これからもちょくちょく番外編投入していこうと思っています。
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