何れ死ぬであろう私が鬼滅の世界を生き抜いた話。 作:蔓桔梗
このままだと甘露寺さんが入隊直後に柱になったすごい人になってしまうと気づいてしまった
「だ、たすげでぇぇ…!」
「…そう言って何人喰ってきたんだか」
ヒュンと刀についた血を払いながらつい先ほど刺したばかりの鬼を見る。
鬼は不自然に血管を浮かばせ、苦しそうにのたうち回る。
藤の花の毒だ。
「あなたたちが悪いのよ。人を喰おうだなんて思わなければこんなことにならなかったのに…」
ああ、でももう聞こえていないか。
毒に全身侵されているもの。もう死んでる。
「うーん…調整は完璧なんだけど、戦いながら調合するのがなあ…要練習かなー」
お早うございます、今晩は。
鬼に効く毒を作ったちょーとすごい人です。
今、私は久しぶりの任務に励んでいます。
相棒はよくお使いに出す鎹鴉とこの間新調したばかりの日輪刀です。
そう、新調したのだ。
新調内容はご存知の通り、藤の花の毒を調合できるからくり仕掛け。
まさか今度はからくり仕掛けにするとは思っていなかったらしく、里長がちょっと頭を悩ませていた。
毎度毎度、変な注文してすみませんねー。でも、出来るって解っているからついついしちゃう。
おかげでお館様からもらった休暇期間のほとんどを鍛冶の里で過ごした。
違う、そうじゃない。ていう言葉が聞こえた気がしたけど気にしない。
私の住まいは蝶屋敷。
休暇をもらったとしても住まいに急患がやってくるんだから対応するのが当然。
それに比べるとあそこは急患もいないし、機能回復訓練を受ける者がいないので私の手持ち無沙汰度が高い。
何せ刀出来上がるまで待って試し振り→違和感持ったところを報告→更なる改良をしてもらう。という待ちの姿勢。ちなみにその間は、里内を自由に過ごす。
あれ?あっちにいた方が休暇になってない??
鍛錬は怠らなかったし、かと言ってそれだけだと時間が大量に余るので医学書とか持ち込んで読み込んでいたけど…
……うん、とても有意義な休暇だったね!!
色々あったけどこれで胡蝶しのぶ装備が出来上がった。
あとは調合するのに慣れればイイ感じ、だ。
毒も作ったし、刀も新調したし…あとは鬼を切っていけばその内、お声がかかるだろう。
なんの声って?そりゃあ、柱ですよ。
え?階級のこと全く気にしてなかったろって?
まあ、その時はね??
被検体を含めると結構な量殺しているが、それは藤襲山にいた鬼なので数に含まれていないだろう。
毒を使う前に切った鬼の数はそこそこだったし、これから練習ついでに殺していけば柱の就任条件である鬼50体討伐は達成されるだろう。
あとは階級だが、毒を作った報酬の代わりなのかいつの間にか階級が結構上がっていたのでこちらもその内満たすだろう。
柱は姉が死んでからすぐに新しい者が埋まったけど、
お館様が一年間、顔触れが変わっていなくて嬉しいって言ってた気持ちがわかった。
鬼の頸を切れない私が柱に相応しいかと問われれば、相応しくないと答えるだろう。
柱とは文字通り鬼殺隊を支える存在だ。
鬼を殺せる毒を作った人間とは言え、頸を切れない柱に疑問を抱く人が出てくるかもしれない。
でも、私は柱になる。
柱になれば十二鬼月と出会う確率が上がるし、使える権限が広がる。
そっちの方が
それにアイツを殺すために無限城に赴かなければならないのでどっちにしろ柱にならないといけない。
という事で今日も元気に毒をぶすぶす刺していきますよー。
今の私が鬼絶対殺すマンに見えているのが分かるが心情的にはそうだし、鬼殺隊に所属する人間の半数ぐらいは大なり小なり鬼に恨みを持つ人間だから気にしない、気にしない。
あ、禰豆子ちゃんと珠世さんは例外な。
禰豆子ちゃんは天使だし、珠世さんは鬼側から人間に治そうと努力してるもんね。
応援こそすれ排除する理由が見当たらない。
珠世さんと会えないかな〜と思っているが、鬼絶対殺すマンの前に珠世さんが出てくるはずもなく…。
本当にお館様ってどこで珠世さんと出会ったんだろう?
お館様も珠世さんも鬼舞辻無惨に狙われているからテリトリーから頻繁に出るわけにも行かないし…本当に謎。
そんな事を思っていると鎹鴉が伝言を携えてやって来た。
勿論、待ちに待った柱就任についての話だ。
いやー、案外早かったですねー。
もともと胡蝶しのぶも毒の功績が大きかったから柱になったのは分かっていたけど毒が完成した時点でなんの音沙汰もなかった。
最初は戸惑ったよ。増産よろしく。あ、階級も上げとくね!とされてそれだけ?って思っちゃたよ。
もしかして足りなかった?と思ったからしばらく毒殺行脚していったけど。
柱就任を正式に発表するのは柱合会議の場でらしく、私はお館様のお屋敷に招かれた。
勿論、柱になるので場所はしっかり教えてもらった。
まあ、感想としてはへ〜こんな場所にあるんだ〜ぐらいだけど。
あとは行くのに仲介を必要としないので行きやすいなー程度?
そもそも一般隊士がお招きされることなんてそうそう無いので知らなくても困ることはないけど。
紹介されるまで裏で待機なので暇を持て余した私は周りを観察する。
旧家と言われだけあって屋敷広い。
広すぎね?
蝶屋敷よりも広すぎて患者何人収容出来るかな?と無駄な思考するレベルでデカイ。
え?ここに産屋敷親子と女中が住んでるだけ?
すっごく持て余してそう。絶対誰も使ってない部屋いっぱいあるよ。
蝶屋敷簡易出張所作ってもまだ余裕あるだろコレ。
あ、ご息女たちも見たよ。
流石、五つ子。顔が似すぎて髪飾りがないと区別がつかない。そこに違和感なく溶け込んでいるご子息もご子息だったわ。
息をするかの如く女子の中に溶け込んでいた。
時代が大正ではなかったら大人になっても女装しているだろうなアレ。絶対似合う。
おっと、会議が始まりそうだ。観察もここまでか。
「また君たちに会えたことを嬉しく思うよ。今日は新しく柱になる者を紹介したいと思う」
鬼の頸を切れない私はきっと柱に相応しくない。
本人である私でさえそう思っているのだ。気に食わない者も星の数ほどいるだろう。
それでも、私は――――――――
「皆様、初めまして。
この度、柱の末席に加わる事と相成りました。蟲柱、胡蝶しのぶと申します。
若輩者故、ご迷惑をお掛けすることが多々あると思いますがどうぞ宜しくお願い致しますね?」
十二鬼月を、