何れ死ぬであろう私が鬼滅の世界を生き抜いた話。 作:蔓桔梗
「今日から、霞柱となる時透無一郎だ。少々、ぼんやりとしているが責任感が強い子だよ」
みんなで支えてやってくれと告げるお館様。
時透くんはぼうっと私たちを見ている。
…多分、私たちを見ているようで空を見ているんだろうな。
ついにやってきた時透くん。
彼がやってきたということは竈門家の惨劇が終わり、主人公が鱗滝さんの所で滅茶苦茶修行している時期だ。…だったはずだ。
全く持ってそんな話、聞いてないんだけどね。
義勇さんはホウレンソウをちゃんとした方がいいと思う。
主人公を助けようともしなかった私が言うことではないけど。
彼を見ると、時透推しの知り合いの事が思い浮かぶ。
私がこの世界に来て結構な時間が経つが、彼女は生きているのだろうか。
もちろん、メンタル的な意味で。
柱の踊ってみたなどを画策していた彼女と談笑していたことを昨日のように思い出す。
「…もしやるなら男振りソロパートを煉獄さんに踊らせたいですよね」
「柱で唯一お亡くなりになっていますもんね…なんで死んじゃったの…」
「あとはぎょーめーさん?に大旗を振らせたいです」
「やめてください。その姿が思い浮かぶじゃないですか…!」
あ、悲鳴嶋さんに旗振らせたくなってきた。考えるのやめよう。
「こんな奴が柱になって大丈夫なのか?」
お館様が去った後、音柱である宇髄さんが当然の疑問を口にした。
柱は隊の支えであり、責任がある立場だからぼんやりとしている子でも大丈夫だろうかってことだろうか?
それなら生活に支障が出るレベルのコミュ障な義勇さんだって柱をやっていけているのだから心配ないと私は思う。
「時透無一郎くん、私は蟲柱の胡蝶しのぶです。よろしくお願いしますね」
「………」
ヒクリと口が引きつる。
大丈夫だ、私。落ち着け、私。
無視されたわけではないから。多分ぼうっとして聞いてなかっただけだから。あと、時透くんは効率厨だから。
自分に言い聞かせていると遠目で時透くんの鎹鴉がザマアミロと言いたげな様子をみてしまった。
…………鴉って唐揚げにしたら美味しいのかしら?
ハッ!いけないいけない。思考が変な方向に向かってしまった。
あの鎹鴉は時透くんのモンペだから仕方ない。悪意100%だけど仕方ない、そういう存在なんだ。相手にしたら負け。
思考を戻そう。
彼は最年少な柱で、お館様命な子だ。あと効率厨。
最年少の柱ってすごいよね。才能に満ち溢れているよね、ちょっと辛辣だけど。
これだけ見ると生き残りそうな予感がするがここは
彼も死ぬのである。
無限城の決戦で死ぬのである。
確か…上弦の壱がおじいちゃん…?だったらしく…
孫に会えて嬉しいぞーとハッスルしたおじいちゃんにやられ、存在したらしいお兄さんの元に逝ったらしい。
正直言って設定てんこ盛りである。
そんな因縁対決聞いてない。主人公級じゃん。なに?カカシ先生ポジなのこの子??
時透推しではないが最年少には生き残って欲しいとは思っているんだけど、どうすれば良いのか分からない。
無限城で上弦の壱に会わないように頑張ってとしか言いようがない。それもおじいちゃんの嗅覚で見つかりそうだから無理そうだけど。
ときとーくん頑張ってー。超頑張ってー。
「ねえ、鬼の頸を切れないほど弱いのになんで柱をやっているの?」
ある日、たまたま会った時透くんに不思議そう聞かれた。
「そうね…多分、鬼に効く毒を作ったからだと思うけど…私もなんで柱になれたのか不思議に思っているわ」
それは私も常々思っていたことだ。
原作が
胡蝶しのぶがお館様に上弦の弐に特攻かけることを話していたのは知っている。
それで何か言われて怒っていた描写があったのは見たことがあるから。
多分、それを聞いたからお館様は胡蝶しのぶを柱にした。
だけど、私はお館様に何も喋っていない。上弦の弐を殺すために柱になったことも、自分がどんな存在であることかも。
何を考えているのか、何を知っているのか知らないけどお館様は私を柱にした。
十二鬼月と当たればすぐに死ぬであろう私を。
「でも、お館様が私を柱に任じた。ならばそれが答えよ」
だが、お館様が私を柱に任じたという事実があればそれで十分だ。
その事実さえあれば私の目的が果たせる。
彼の疑問にはちゃんと答えていないけれど、これで勘弁して欲しい。
時透くんはきっと柱の実力でもないのになんで柱になることを断らなかったのだろうと思うけど、お上が決めたんだからそうなんだよとしか言えない。
上司の命令を断れる部下がいると思いますか?
…時透くんならはいと答えそう…
これ以上はやめておいたほうがいいな。やぶ蛇になりそう。
「だからこれ以上、気にする必要はないわ。
どんな人物が柱になろうともいつかはいなくなるのだから」
柱に相応しい人物だろうと、柱に相応しくない人物だろうと関係ない。
柱であった胡蝶カナエも、煉獄杏寿郎も、胡蝶しのぶも、時透無一郎もーーーーーー
「それが、人より早いか遅いか。ただそれだけ」
ーーーーーーみんなみんな、死んでしまうのだから。