何れ死ぬであろう私が鬼滅の世界を生き抜いた話。   作:蔓桔梗

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何れ死ぬ私が期待しない話

鬼から身を守るための第一歩は藤の花を側に置くことだ。

 

鬼の弱点は日光、そして藤の花だからだ。

 

鬼殺隊の創設者である産屋敷は当然のことながら長く鬼殺隊と関わっている者の屋敷にはどこかに藤がある。

藤襲山然り、藤の花の家紋然り。柱となれば与えられる屋敷にも規模の差はあれど藤棚が置いてある。

 

産屋敷邸にある無限に続くのではと思えるほど長い藤棚の道の前で私は思う。

 

藤。ふじ、富士の山。竹取物語で不死の薬を焼いた山だと言われている不死の山。

藤、富士。転じて不死。ただの言葉遊びだが、藤の花はそう言う意味で古くから縁起の良い花としても知られている。あとは霊的な方では魔除けも兼ね備えていたはずだ。

 

不死を連想させ、縁起が良いとされる藤の花。それを嫌う、およそ不死に近い穢れたイキモノである鬼。

 

不死に近いのに藤を嫌う。なんと言う皮肉だろうか。

鬼が藤の花を嫌うのが鬼の祖たる鬼舞辻無惨が藤の花を嫌ったからだとすればそれはそれで笑えるが。

 

「胡蝶」

 

ふと思いついた考えに内心、笑っていると芯の通った声に呼ばれた。

 

振り返るとどこを見ているのか分からない目がこっちを向いている。確か、梟に例えられていたか。

装備も気合も十分といった雰囲気だ。

 

「あら、新しい任務でも入ったのですか?」

「ああ、向かわせた隊士がやられたらしい。一般大衆の犠牲も出始めているらしいから放ってはおけまい」

 

惚けた問いに煉獄さんはしっかりと答えてくれる。

柱合会議も終わったのに産屋敷邸に訪れる理由なんて少し考えただけでも分かるのに。

 

「十二鬼月、ですかね?」

 

恐らくなと煉獄さんは同意する。

そう、物語の流れから煉獄さんが相手をするのは下弦の壱だ。

 

「煉獄さんが行くのならば問題はないでしょうね」

 

下弦の壱だけならば問題はない。

下弦の壱と上弦の参との連戦。一般人と負傷者も庇いながら行うとなれば話は別だ。

 

「そういえばあの頭突きの少年を預かってどうするつもりだ?継子の枠はもう増やす気は無いのだろう?」

「那田蜘蛛山の負傷者は全員、ウチで引き取っているので。それだけです」

 

他意はないとニッコリと告げる。

本当は良い機会なので胡蝶しのぶと同じく託したが個人的な事情だし、わざわざ煉獄さんに教えることではない。

 

「もしかして、彼を継子にしたいのですか?」

「うむ…」

 

突然の継子の話に疑問に思ったので聞いてみるとその考えもあるようだ。

 

私が継子をもうとっていないことは柱たちの中では知られていることだ。

それ以前に彼の適正は水ではないので水の呼吸から派生した呼吸を使う私のもとで鍛えても意味はないので論外だが。

 

「彼とは短い時間しか関わっていませんが頑固者だけど根は真面目であるとは分かりますし、煉獄さんとは相性が良さそうなのでよろしいのでは?」

 

もともと無限列車編で煉獄さん自身そう言っていたし、継子にどうかと推しておこう。

煉獄さんの教えは師弟でないのに関わらず、かまぼこ隊に影響を与えているので実際に師弟になったらもっと強くなりそうだ。相性が良さすぎて累乗しそう。

 

「胡蝶もそう言うのなら継子にしてもいいな」

 

煉獄さんはうむ、いいかもしれないと頷いてハハハと笑う。

 

「…生きて帰ってきてくださいね」

 

そろそろ任務に行かなくてはと背を向けた煉獄さんに向けてそう呟く。

 

「ん?何か言ったか」

 

聞かせるつもりはなかったが音は届いていたようだ。

 

「いえ、お気をつけて」

 

以前にも考えた通り、私は誰かを庇いながら戦うことに絶望的に向いていない。

かと言って攻める側になっても十二鬼月の頸を刎ねることも出来ない。

私が加勢したところで意味はない。文字通り足手纏いだ。

 

予定通りそれとなく蜜璃ちゃんを向かわせるか。

 

◇◆◇

 

彼女を見つけるのは比較的簡単だ。

食欲が人一倍以上あるのだから食料が急激に消費されているところに行けばいい。

それに彼女の髪は桜餅色な上にゲスメガネによって格好がアレなので大層目立つのだ。

 

…今度、ゲスメガネの対処法を教えた方がいいかしら?

 

 

「今日は。甘露寺さん」

 

蜜璃ちゃんは茶屋で大好きな桜餅を食べて休憩していたみたいだ。

 

「しのぶちゃん!一緒に桜餅どう?」

 

幸せそうにもぐもぐと桜餅を食べていた蜜璃ちゃんは隣の席を軽く叩いてどうだと誘ってくる。

 

「じゃあお言葉に甘えて」

 

可愛いなと思いながらも隣に座ってお茶と桜餅を頼む。

彼女が幸せそうに食べるものだからそれに惹かれた人たちが茶屋に寄っていくので茶屋は大盛況だ。

柱といえども女の子。女の子は世間話に花を咲かせるものだ。キャッキャと花を咲かせながらそれとなく本題を話す。

 

「そういえばさっき、産屋敷邸で煉獄さんと会いましたよ」

「煉獄さんに?新しい任務でも入ったのかな…」

「ええ、そうみたいですよ。なんでも列車で起こる怪事件を調べるようで」

「列車かぁ…風景を見ながら長距離移動…いいなあ」

 

仕事でなければ楽しいですよねと同意する。

ふとゆっくりと自由気ままに旅をするのはこの世界にやってきてからしていないと気づく。今度、妹を連れてやってもいいかもしれない。

 

「そうそう、煉獄さんが向かう予定である列車では美味しいお弁当も売っているようですよ?」

「美味しいお弁当…!」

 

美味しい弁当と言うと蜜璃ちゃんはどんな弁当だろうと想像を膨らませる。

多分、よくある駅弁だと思うけど楽しそうだから言わないでおこう。

 

「もし、向かう方向が同じであれば一緒に食べたいものだと煉獄さんが言ってましたよ」

 

美味しいものと久しぶりの師との食事。それは大層魅力的なようでう〜んと悩んでいるようだ。

 

「仕事があるとはいえ、久々の師弟の時間も取れると思いますし、行ってみたらどうでしょうか?」

 

何に悩んでいるの〜?え、柱としての仕事?

そんなの一緒にやっちゃえばイイヨ。いいから煉獄さんのとこに行ってみなヨ!

 

キット良イ事、アルヨ!!

 

「うん!しのぶちゃん私、行ってみる!!」

 

行くと決めてくれたようで私も嬉しいです。

 

「詳しい場所は聞いていないですが…確か『無限列車に乗る』と言っていましたよ」

 

煉獄さんのもとに行くと決めた蜜璃ちゃんは場所を聞いてくるが曖昧に答えておいた。

 

だってそんな話、煉獄さんと一切してないし。

 

列車名さえ分かっていれば近くの駅に向かうだろうし、そこで煉獄さんと鉢合わせしてくれるだろう。

 

 

行ってくるねー!!と元気よく出発する蜜璃ちゃんに手を振って見送る。

 

賽は投げられた。

 

彼女の頑張りによっては煉獄さんは生還するだろう。

 

「……だけど、期待はしない方がいいんだろうなぁ…」

 

出来る限りの最善を尽くしてもどうにもならないことがあるのを身をもって知っているから。

 

◇◆◇

 

「カアァーーッ死亡!!死亡!!煉獄杏寿郎、死亡!!下弦の壱討伐後、上弦の参との戦闘の末、死亡!」

 

数日後、鎹鴉が伝令を知らせてきた。

 

十二鬼月の討伐情報だけだったらいいなと思っていたら、煉獄さんの訃報もセットでついてきた。

 

「……そうですか」

 

どうやら蜜璃ちゃんは間に合わなかったようだ。

 

優しい蜜璃ちゃんのことだ。きっと煉獄さんと会えなかったこと、後悔するんだろうな。

 

蜜璃ちゃんには悪いことしたなぁ…

そう思っても、彼女に何も言わないので私はとても悪い女だ。

 

 

 

 

 








―――――――――ほらね。
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