何れ死ぬであろう私が鬼滅の世界を生き抜いた話。   作:蔓桔梗

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オリ主(故人)注意報

今回は名前も出てこないし、回想のみだけど彼女の話はいずれする予定。
前もちょろっと出てきていたりする。
この小説の本筋にはあまり関わってないです。もう死んでるので。
ただ、こんな子もいたな、と。

この子を主人公とした小説を書くのも面白いかな〜と思っていたり、思ってなかったり。


必要とされる臆病者の噺

私の名前は神崎アオイ。

一応、鬼殺隊士だ。

 

最終選別を運良く生き残り、隊士になれたは良いが私はそれだけで恐れた。

 

ーーー人を喰い殺す鬼を

ーーー無惨に死んでいく人たちを見て殺されることを

 

私は、死ぬことを恐れ、戦いを放棄した腰抜けだ。臆病者だ。

 

そんな私が逃げ込んだのは蝶屋敷だった。

蝶屋敷は鬼に家族を殺され、身寄りがない女の子たちの居場所だった。

そして、花柱の妹である胡蝶しのぶさんが医学に精通していたので負傷した鬼殺隊士の診療所となった。

蝶屋敷に住まう女の子たちは負傷した彼らの世話やリハビリに付き合うことで鬼殺隊に貢献していった。

戦うことを放棄した臆病者にとってそこは逃げるのに絶好な理由だった。

 

屋敷の主である花柱であるカナエさんはそんな私を追い払うことなく、受け入れた。

カナエさんが亡くなり、しのぶさんが屋敷を管理することになっても。彼女が蟲柱になった後も。

 

私を追い出すこともなく、任務を入れられることもなく、私は負傷者の看護をしている。

 

◇◆◇

 

珍しい人が屋敷にやってきた。

その人はカナヲと同期で鬼になった妹を連れている。

妹を人間に戻すために鬼殺隊に入ったらしい。

 

竈門炭治郎。

 

彼は真っ直ぐで素直な人だ。

同じく同期の二人は機能回復訓練を途中で辞めたが彼だけは最後まで続けた。

その姿に触発されたのか(しのぶさんの煽てもある)彼らも訓練に復帰し、蝶屋敷にやってくる前よりも強くなったらしい。

 

継子であるカナヲと良い勝負をするようになった。

怪我の具合も良くなったし、そろそろ彼らは此処からいなくなるだろう。

 

負傷者の傷が癒え、完治することは良いことだ。

だけれども、何故だろう。

強い彼らが戦いに赴くことが羨ましくて、妬ましい。

 

「お礼は結構です。私は戦いから逃げた腰抜け、臆病者ですから」

 

新たな任務が来たらしく炭治郎さんは出発する旨とお礼を言ってきた。

礼を言う人は少なくはない。

 

私は戦うことから逃げ、安全圏でのうのうと生きている。

そして、その代わりと言わんばかりに彼らを治し、戦いに行かせているといっても過言ではない。

 

そんな私にお礼なんて言わないでほしい。

鬼と戦わなくても良いことに安堵していながら、戦う気なんてないくせに戦いに向かう強い彼らに嫉妬するそんな私に。

礼を言われる度に、彼らが屋敷を立つ後ろ姿を見る度に胸の底に澱が降り積もる。

 

「俺を手助けしてくれたアオイさんはもう俺の一部だからアオイさんの思いは俺が戦いの場に持っていくし」

 

そんなこと、言われたのは初めてだ。

鬼に大切な人を殺される人が少なくなれば良いと思った。その助けになればと私は鬼殺隊に入隊した。

だけど、その想いを果たすには私は弱かった。あまりにも弱すぎた。

 

なんてことのないように言った炭治郎さんの言葉に今まで溜まっていた澱が無くなった気がした。

彼の言葉に救われたのだと理解するのは難しくなかった。

 

◇◆◇

 

炎柱が何千人という人を一人も亡くさずに救い、上弦の鬼によって命を落とした。

その話と一緒に彼らがまた蝶屋敷に運ばれてきたからきっと彼らはその時、共にいたのだろう。

 

来た当初は意気消沈としていた彼らだったがすぐに復活して、また元気に任務に励んでいる。

 

強いなと改めて思う。

目の前で柱を喪ってなお立ち上がろうとは私だったら思えない。

それなのに彼らはそれを乗り越えてさらに強くなろうとしている。

 

ーーーーーーああ、羨ましいな…

 

羨んでいる暇はない。私しか出来ないことだってあるのだからしっかりしないとと浮かんだ考えを振り払っていると表が騒がしい。

 

「すみ、きよ、なほ。お客さん?」

 

患者ならば私にすぐ知らせるようにしているのでそうではないのだろう。

来訪予定の人はいなかったはずだと今日の予定を思い出しながら玄関に向かうと影がさす。

 

巨漢だ。見上げる首が痛いほど背が高い。

あまりの高さに呆けていたが確かこの人、音柱だ。

彼の奥さんが時々、しのぶさんを訪ねてきていたから見覚えがある。

 

「おっ丁度良い」

 

音柱は私の姿を見るとヒョイと担ぎあげる。

突然の出来事に固まっていると騒ぎを聞きつけたのかカナヲの姿がひっくり返って見えた。

 

「…継子は胡蝶の奴が面倒だからな」

 

カナヲも連れて行こうと手を伸ばしたが継子だと気づいたのか途中でやめた。

 

全くもって意味が分からないがそのまま流れに乗るわけにはいかないことは分かる。

 

「放してください!!私っ…」

 

柱と連れて行かれるという二つで戦いに連れて行かれると思うと途端に怖くなる。

支離滅裂な言葉しか出てこない。

 

「かっ…カナヲ!!」

 

イヤだ。とても怖い。行きたくない。連れて行かないで。

 

恐怖から目から涙が溢れる。

どうにか絞り出したのはカナヲの名前。

でも、彼女に助けを呼ぶのは間違っていると叫んでから気づいた。

 

カナヲは自分で物事を決められない。

全てがどうでも良いから、らしい。

そんな彼女は指示がなければ銅貨を投げて物事を決める。

 

ずんずんと遠のく蝶屋敷にそれでは間に合わないと理解するがそれでも今、私を助けてくれそうなのは彼女しかいない。

 

戦いに連れて行かれると分かれば嫌だと泣き叫ぶだなんて見っともない。

だけど、今まで戦いに逃げていたから当然の報いだと思ってしまう自分がいた。

 

なのに私は涙を流しながらカナヲの名前を叫ぶことしか出来ない。

 

 

がしっとカナヲが私を掴む。

銅貨を投げていないのに行動したことに驚く。

カナヲはそれで精一杯なようで音柱の言葉に何も言えない。

 

ふと、何時かの記憶が蘇る。

 

 

ーーーとても強いあなたが羨ましい。私は臆病者だから

 

ーーーいいえ、アオイちゃんの方がずっとずっと強いです。だから、アオイちゃんは臆病者ではないですよ

 

記憶の中の彼女は困ったようにたれ気味の眉をさらに下げた。

継子の証である萌黄色の蝶の髪飾りを撫でながら羨ましそうにそう言った。

 

彼女はしのぶさんの継子たちの中で異色を放っていた。

 

誰もが彼女のことを嗤い、面倒事は御免だと関わらないように蜘蛛を散らすように逃げる。

何故、継子にしようとしたのか分からないほど隊内での評判は良くなかった。

だけれども、継子の中で群を抜いて強かった彼女。

 

何が私の方が強いだ。

嫌なことから逃げて、いざ逃げれないとなると泣きながらみっともなく助けを呼ぶことしかできない。

そんな私の何処が強い。腰抜けだと嗤われるくらい弱いじゃないか。

 

「女の子に何してるんだ!!手を放せ!!」

 

炭治郎さんだ。

任務が終わったから寄りに来たんだろう。

 

彼は私が攫われそうになっていることを理解すると頭突きを喰らわせようとするが相手は音柱だ。女一人を抱えても当然のようにかわす。

 

「アオイさんを放せ、この人攫いめ!!」

「うるせぇ!!俺は任務で女の隊員がいるからコイツ連れて行くんだよ!!」

 

まさか屋根に登るとは思わなかった。急に変わった景色に頭がクラクラする。

 

「継子じゃねぇ奴は胡蝶の許可を取る必要もない!!」

「今日は、宇髄さん。蝶屋敷の者(ウチの子)に何か御用ですか??」

 

ぽんっと右肩を軽く叩いたしのぶさんは珍しく笑顔だった。

優しい声音。緩く弧を描く唇。細められた目。

それだけを見れば笑っていると思うだろう。だけれども、瞳だけは笑っていなかった。

 

さっきの言葉から、音柱はしのぶさんには何も言っていないのだろう。そして見つかれば面倒なことになることも自覚していた。

壊れかけの絡繰のようにギッギッと後ろを振り向くその姿が答えだ。

 

「ところで、誰の許可が必要ないんでしょうか?」

 

笑みを更に深めて疑問を口にしているだけなのに背筋が凍る。

絶対に怒っている。聞いただけなのにそう何だから問われた側は更にすごい圧がかかっているだろう。

 

「……任務で女の隊員が必要になった。連れて行っても良いか?」

「それは困りますね。()()()である彼女を喪うわけにはいけませんもの」

 

今、しのぶさんは何と言った?

後継者?継子はカナヲではないのか。

 

「後継者だぁ?コイツがか」

 

役に立たなそうなのにかととても痛い視線をもらうが私だって初耳だ。

 

「ええ、彼女は私の後継者です。なので彼女を連れて行くことは許可出来ません」

 

キッパリと告げるしのぶさんに分が悪いと感じたのか素直に返された。

 

「だが、女の隊員が必要なのは変わりねぇ。アテはあるのか」

「そうですねぇ…女ではないのですが、行く気満々な人たちはいるようですよ?」

 

ほら、あそこにと示された先には炭治郎さんだけではなくいつもの三人がいた。

 

「えっ」

「……ま、いっか。じゃあ一緒に来い」

 

一人だけまさかそうなるとは思っていなかったようで声をあげるがあっさりと引き下がった音柱に黙殺された。

 

「お気をつけて〜」

 

笑顔で見送るしのぶさんだが、「もう二度と来んな」という副音声がついているような気がするのは気のせいだろうか。

 

「あの、しのぶさん…私が後継者ってどういうことですか?」

「あら、言ってなかったかしら。そのままの意味だけど」

 

しのぶさんは解っていると思ったんだけれどと私の疑問に是と答える。

 

「カナヲが継子ですよね?」

「そうよ、カナヲは次の柱候補。そしてアオイは蝶屋敷の次の管理責任者」

 

私の再度の確認に言葉が足りないことに気づいたのかしのぶさんは言葉を付け足す。

 

「全部、カナヲじゃないんですか」

 

『継子』は柱の直弟子で次の柱候補だ。引退した柱の後を継ぐことが多い。

だから私は花柱から蟲柱に受け継がれたようにカナヲが柱になったら継ぐものだと思っていたのだ。

 

その言葉にしのぶさんはため息をついてちらりとカナヲを見る。

 

「指示待ち人間に医療の最前線を任せる気はないわ。一瞬の判断で命は零れ落ちるのか決まるのだから当然よ」

 

カナヲには厳しいことを言うけれど…と前置きされた言葉の続きに驚きを隠せない。

だってそのことについてしのぶさんは何も言わなかったから。現場にだって連れて行っていたのにまさかそんなことを考えているなんて思っていなかった。

 

「でも、私は戦いから逃げた腰抜けで…臆病者ですよ」

「そんなの関係ない。そもそもそんな気がなかったらあなたに蝶屋敷を任せていないわよ」

 

弱々しい反論は返す刃で切り捨てられた。

確かに今思えば、留守の間など蝶屋敷をよく任された。

てっきり、年長だからだと思っていたがどうやら違うらしい。

そのことに疑問を思っていなかったからしのぶさんは解っていると誤解していたらしい。

 

それにさっきの言葉は言い訳にもならない。

カナヲが継子になる前の蟲柱の継子(彼女)はほとんどの隊員から嫌われるほどの問題児だった。

問題児だと知っている上でしのぶさんは彼女を継子にしているのだ。問題児を継子にするのも臆病者を後継者にするのもしのぶさんの中では一緒なものだ。

 

「あなたは自分のことを腰抜けとか臆病者だと言うけれど、本当の腰抜けなら当の昔にいなくなっているわ。逃げずにここで多くの人の救い、傷を治してきた。それは紛れもない事実で、誇るべきことよ」

 

私は臆病者だ。怖いから、死にたくないから、戦いから逃げた。

なのに未練がましく蝶屋敷で看護をしている。

 

 

 

「胸を張りなさい。誇りなさい。

この私(蟲柱)があなたが必要だと言っているのだから誰が何と言おうと私の後継者よ」

 

真っ直ぐに私を射抜くその眼差しに私は、ずっと蝶屋敷(此処)にいても良いんだと今まで抱えてきた憑物が落ちたような気持ちになった。

 

 

 




〜大正コソコソ噂話〜
蝶屋敷の後継者がアオイであることは継子の間では当然の認識でした。
明言はされていなかったがしのなりさんの教えている内容や態度で察し。
カナヲちゃんも薄ら気づいていたと思うので気づいてないのはアオイちゃんだけ。



しのなりさんは全てを一人に継がせることはしないです。
いろいろな意味でダメだと判断した人には必要最低限しか教えない人なので。
別に無理に一人に継がせなくても良いじゃね?人には向き不向きあるし。と各分野にそれぞれ別の後継者を作っています。
一番死亡率が高いのは勿論、継子です。鬼殺の最前線なので当然ですね。

・最後に簡潔しのなりさん視点
嫌な予感がしたので用事を超特急で終わらせて戻ってきた。
ドンピシャやん。さすが私、マジファインプレー。
誰の許可を得て私の可愛い後継者を連れて行こうとしてんの?アァン??
どんな理由だろうがウチの子に手を出したのは許さないからな。もう二度とウチに来んな。
あと、誘拐しようとしたことに対して謝れ。流せたと思うなよ。(<◉>Д<◉>)
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