何れ死ぬであろう私が鬼滅の世界を生き抜いた話。 作:蔓桔梗
登場人物は敵サイドだろうが味方サイドだろうがぽこぽこお亡くなりになるの。
今週も誰かの推しや推しがお亡くなりになるの。阿鼻叫喚ですね。
「弟さんの目を潰そうとしたらしいですね」
「テメェ…何の面下げてここに来た」
柱合裁判で薄々分かっていたことだが、不死川さんと彼は相性が悪い。
どちらも長男なのに…いや、長男だからこそ相入れないのかもしれない。
上から正式にお叱り+接触禁止令が出たと耳にした私は気晴らしに出ることにした。
勿論、行き先は風柱の不死川さんの屋敷だ。
アポイントは取っていないので冨岡さんではないが
半殺しか皆殺しか。(勿論、餅のつき具合のことだよ)迷った末に半々にすることにした。
食べなかったら私が食べればいいいだけだし。
柱稽古で人がひっきりなしに来ているので戸を叩いても反応なし。
困った私は不可抗力だと断って屋敷に上がる。様子を見ると稽古中だったようで。
これは反応しなくて当然だと思った私は台所に行ってお茶の用意をする。
お八つ時には休息を入れるだろうし、何よりおはぎのお供にお茶は必須じゃないか。
此処が先日の喧嘩で被害があった場所かと時間を潰し、休息が入ったのを察知した私はお盆におはぎとお茶を乗せてひょっこり今日は。
冒頭に戻るのである。
不死川さんはグルグルと唸って私を威嚇する。
先日の緊急柱合会議での毒舌で私のことがはっきりと嫌いになったようだ。
アレはお館様が悪いんだけどなあ…
許すつもりはないので弁明する気は一切ないけど。
私って意外と根に持つタイプなのだ。
知ってた?それもそうだろね。
ちなみに
手塩をかけて育てた可愛い可愛いうちの子をよくも拐おうとしてくれたなあ?
「様子をのぞきにきました。柱稽古は順調ですか?」
これ差し入れですとお盆を差し出すとじっと見つめるので要らないなら
おはぎ大好きマンは嫌いな人物からのおはぎを受け取らないという選択肢はなかったようだ。
あれ…?でも不思議だな。冨岡さんからのおはぎは絶対に受け取らない気がする…
「それで、弟さんの目を潰そうとしたと聞いたのですが本当ですか?」
「…俺に弟はいねぇ」
改めてお話をしようとするが弟なんざいないと容疑者は容疑を否認しており…
でも、ぶっちゃけムリなお話なんですねー
意外と似ているんですよ、この兄弟。
目はそっくりだし、力で解決しようとするところも、目的を達成するために手段を選ばなかったりするところも。
あと不死川というクッソ珍しい苗字を名乗っておきながら親族じゃないですとかバカですか?
全国に10人くらいしかいないのに?白を切るのにも無理があるってもんですよ。
「ふーん、そうですか。
そういえばカナヲには最終選別でかなた様を殴った同期がいるとかいないとか。
ですが、そんな同期も立派な男の子。今は思春期に入られたようで女の子とまともに会話できないとか」
「御息女を、殴った?あの野郎…!」
「まるで、叱らなければならないご兄弟がいるようですねえ…
誰がとは全くもって言っていない話だが、
弟はいないと言っていた口の根も乾かない内の見事な掌返しだ。
煽るように指摘するとすごい顔で睨まれた調子に乗った。反省反省。
「でも、分かりますよ。その気持ち」
「はぁ?テメエに何が分かるーー」
「愛しているのでしょう?家族を」
突然の同意に激昂しかけた不死川さんだったが、被せるように放った言葉に沈黙する。
その様が何よりも語っている。
「大切な、大切な、愛する家族ですもの。
ーーー私も同じ気持ちです。
「…………」
告げる言葉は彼の中にストンと落ちたのか無言でお茶を啜った。
その姿を横目に湯呑みを撫でる。
…茶柱ないかなー?
おねーさんシリアス嫌いだからなー茶柱で場を和ませて欲しい。切実に。
「死んでほしくないから、幸せに生きてほしいからーーーー
「目を潰そうなんて狂気の沙汰。だが、死ぬよりはマシ。そんな思考だったのでしょう?」
もし、私が不死川さんの立ち位置だったのなら。
もし、私が不死川さんのような人だったのなら。
恨んでくれて良い。家族じゃないと嫌われたって良い。
私はきっと、あの子を再起不能にしただろう。
「だからこそ仲直りはした方が良いですよ」
「はぁ??」
私はこの先に
もしかしたらそれは起きないことなのかもしれない。
「
だけど、ここは
「人間は何れ死にます。それが人によって早いか遅いかだけ。兄だからと言って、弟よりも早く死ぬ保証は無い。逆もまた然り。
その時に、貴方は後悔しませんか?
もっと兄弟らしい記憶が欲しかったと悔やみませんか?」
「……………」
湯呑みに視線を落とす不死川さんには普段のキレッキレッなヤンキーらしさが見当たらない。
しかし…普段から知的ヤンキーなところを見せればいいものをと思うのは私だけですか?そうですか。
「それに、彼の気持ちも少し分かりますから」
どういう事だと首を傾げる不死川さんに意外と知らなかったんだとクスリと笑う。
「私はカナヲの姉ではありますが、その前に
姉であり、妹であった私はどちらの気持ちも分かる。
「上が『死んでほしくない』『幸せに生きてほしい』そう思っていると同時に下も思っているんです。幸せに生きてほしいだなんて…大切な家族が欠けているのに幸せになれるはずないんですよ」
「とても頑張っている背中を見ていたから。どんなに傷ついても踏ん張っている姿を見ているから。憧れるのはやめられない。自分もとその背中を追いかけるんです」
兄を傷つけた言の葉を謝りたくて彼はここに来た。
その想いの奥底には憧れがあったのかもしれない。同じ立ち位置で互いを守りたいと思っていたのかもしれない。
だから彼は鬼を喰らいこの世界にやって来た。
「だからこそ仲直りはするべきです。貴方が後悔しないように。弟さんが後悔しないように」
誰も喪っていない人がこの世界に足を踏み入れる事は殆どない。それはつまりーーー
「貴方も知っていると思いますが、喪ってから後悔するのは遅いです。愛しているのならば尚更」
散々言いたいことを言った私は不死川邸を辞した。
あれからおはぎにも手をつけなくなった不死川さんは何を思っているのだろうか。
静かな屋敷を見上げてずっとずっと底に溜め込んでいた言葉を吐き出す。
「人のこと、言えないんだけどね」
私はとても愚かな姉だ。
私はとてもバカな妹だ。
ーーーー幸せに生きてほしいだなんて…大切な家族が欠けているのに幸せになれるはずないんですよ。
理解していても、思っていても、行いを正そうとしないのだから。
二番目に書きたくて書き上げた小噺さん。
一番目は最初の村田パイセンの小ネタ。
これらと鬼滅学園書きたくて小噺編を作ろうと思い立ちました。