「……っ痛っ」
「すみません、でも我慢して下さいね」
俺はマル──いや、黒子に傷の手当てを受けている。
「まぁ慣れなきゃいかん事だからな……」
「管理人はよくやったと思いますよ。初めて認知フィルター無しでアブノーマリティに遭遇して、ここまでやったんですから。しかもHEクラスの」
黒子の手が止まった。
「そうか。……ふう、もう終わりか」
「クリーニングプロセスを消去したとはいえ、相手はアブノーマリティなので気をつけて下さいね!」
「ああ」
『あなたのお供、ヘルパーロボットだよ!』
……ああ。
ドアを開け、足元を見ると白くて丸い物体が二足歩行している。
そいつは俺を見上げて来て、真っ赤な二つの目とにっこりとした笑顔を向ける。
これだけ見れば、何と可愛らしいことか。
「こんな所に……余程管理人の事が気に入ったのでしょうか?」後ろから黒子が覗いて来た。
「そうみたいだな」
「……だとしたらマンションの部屋に住まわせてあげるのはいかがでしょうか?あの時よりも自由で良い生活が送れると思いますよ!」
俺は奴らが“収容”されていた時の事を思い出した。
窮屈で殺風景な部屋で一人押し込められる。──もっとも、複数体で構成された奴もいるが。
気晴らしに外に出たら“収容違反”として“鎮圧”される。
……俺はこんな状況で、奴らに同情したのかもしれない。
「『オールアラウンドヘルパー』を住人として入居させる。手続きの類は?」
「こちらで実施しておきます。──ですが今後の事を考えて役所が必要かもしれませんね」
「……そうだな」やることは山積みのようだ。俺は落胆した。
しかし内心、以前よりも視界が広くなり様々な事に頭が回るようになった彼女に成長を感じていた。
マンション一階、101号室。
長年使われなかった空き部屋は最低限住人が住めるだけの応急処置をされ、記念すべき一人目の住人が入居した。
「ここがお前の部屋だ」一人の男がドアを開けて、住人を案内する。
一方の住人──オールアラウンドヘルパーは見慣れない景色に辺りを見渡す。
『ピピッ──台所を発見。解析を開始します』
気に入ったか否かは不明──そもそも機械なのだからそういった感覚は無いだろうが──だが、早速備え付けの設備を調べ始めた住人を見、男は退場した。
男は島を散策し始めた。
見上げれば青い空、緑の大地、美しい海。
“過去”と完全な決別をした彼に、憎悪の感情は微塵も浮かばなかった。
何の因果かは不明だが、ここに来る事が出来て良かった。
多少命の危険は付きまとうだろうが、とても楽しい生活を送る事ができそうだ。
トモコレの世界って、どんな建物でも「ポンッ!」で建つとかいうオーバーテクノロジーがあるから成り立ってるんだよなぁ……