「ガルパンはいいぞ」ただその一言に尽きる   作:琴介

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・友人の身内は話の種

 ……おお、私達の知らないみぽりんの顔が出てくる出てくる!

 西住・みほと逸見・エリカが、楽しそうに話している。そんな二人の姿に、特に我らが隊長の話し相手に対して沙織はちょっと嫉妬した。

 相手は黒森峰の副隊長でみほの旧知でもあり、話が盛り上がっているのは当然と言えば当然なのだが、

 

:こい恋『疎外感がすごいよー……』

:戦車女『完全にお二人だけの世界に入ってますね!』

:冷や水『傍から見たら横で沙織が一人寂しく揚げ棒芋を摘んでる姿が痛々しいな』

:いすゞ『まるでファストフード店で食事をしていたら周りをカップルに囲まれたフリー女性のようですね』

:こい恋『棘だらけだよ華! フリーは今だけなの! いつか絶対に囲む側になるんだから……!』

:戦車女『というかやけに具体的な例ですけど、五十鈴殿の実体験でしょうか』

:こい恋『そ、そうだよ! 華は周りとか気にせずバーガー頬張ってる姿しか想像できないんだけど……!』

:いすゞ『いえ(わたくし)ではなく、前に見かけた窓際の席に座っていた方のことで。……そういえばあの方、どことなく沙織さんに似ていらしたような?』

:冷や水『沙織、お前……』

:こい恋『違うよ!? というか私、最近バーガー食べに行ってないし! あっ、何だか言ってたら食べたくなってきた! バーガー!』

:いすゞ『今日の対戦相手はサンダースでしたものね』

:戦車女『あ、仲居の方に確認してみたんですが、バーガー風で構わないのであれば特別に作ってくれるそうですよ!』

:いすゞ『まあ!』

:通 操『反応が早い……!』

 

 だが自分も華に続いて、中身とする具材を選んで注文表を持った仲居へと伝える。え、パンじゃなくて焼いて固めたごはんでも挟める? じゃあそっちで納豆のかき揚を、などとやっていたらふと気が付いた。

 ……あれ? 心なしか皆の座る位置が離れてない……?

 みほの合流後からと比較して、途中でアイスの注文に動いた麻子はともかくとしても他二人の位置が若干遠い。カバさんチーム寄りというかそんな感じの距離で、

 

:こい恋『私だけ置いてけぼりじゃん! 何で皆離れてるの!? 麻子も戻ってきなさいよ!』

 

 すると彼女達が言葉を揃えて、こう言った。

 

:装操狙『だってオアツゥ――イ――』

:こい恋『手で扇がないでよ! こっちまでアツくなるじゃんもう……!』

 

 今の一瞬で空気の温度が上がったと感じたのはきっと気のせい。とはいえ、自分達の世界観を広げ始めた二人を横に居座ったままは落ち着かず、

 ……アー、誰か座布団ごと運んでくれないかな――。 

 

:冷や水『無理だろう』

:こい恋『私が重いって言いたいの!? というか私、今の声に出てた!?』

:冷や水『顔に書いてあったぞ。あと私は単に〝人が座ったままの座布団〟を運べるような力持ちはこの場にいない、という意味合いで言ったんだがな』

:いすゞ『つまり自覚はあったのですね』

:こい恋『華――!!』

:戦車女『と、とりあえず武部殿も私達の方へ合流してはどうでしょうか! ね!? ではそういう事で、今からこっち、卓のスペース空けますから……!』

 

 

  ~~

 

 

「まったくもう……」

 

 と沙織は息を吐く。

 優花里が空けたスペースに相棒の揚げ棒芋が盛られた皿と共に移動して、

 

「みぽりんが逸見さんとの話に夢中で相手をしてくれません! ――ハイ麻子さん、どうしたらいいでしょうか!」

「いつもみたく話に入っていけばいいだろう」

「……流石にあの世界に入って行く勇気は有りません」

「まあお相手があの逸見殿ですからね、無理もありませんよ。西住殿が大洗に来てからは疎遠になっていたと聞きましたし」

 

 それに、と優花里が揚げ棒芋を摘んで言う。

 

「同じく疎遠だった西住流家元やお姉さんも来ているそうなので、私達が入り込む隙は無いかもしれませんね」

「みぽりんのお母さんとお姉さんかー、どんな人だろうーねー」

 

 自分の想像力では聞いた話を基にした〝友人の怖い身内〟というレベル。だが嬉々として彼女達の説明を始めた装填手曰く、二人がどれだけ凄いかと言えば、

 

「ティーガーとマウスの編隊相手に単騎で勝ち抜くレベルですよ!」

 

 御免、その例えがイマイチ伝わらない。

 勉強不足かなー、と己は通信手としてのやることリストに戦車について調べるよう追記しつつ、

 ……でもやっぱり、みぽりんの家族って凄い人なんだねー。

 それだけは説明者のテンションで理解できる。加えて、以前に特別講師としてやって来た女性自衛官の反応を思い返しても納得だ。しかし、

 

「……大丈夫かなあ」

「何がです?」

「んー、華なら解るかもだけど、みぽりんの家がそういう〝家〟なら、私達の戦車の乗り方って、怒られたりしないかなあ、って」

「……そうですね。それは確かに」

 

 と華が食事の手を止めた。彼女は数瞬考えるそぶりを見せ、

 

「もしそうなってしまったら、私達がみほさんの代わりにお叱りを受けましょう。あの方が戦車に乗っているのは、私達が理由でもありますから」

 

 聞いて、沙織は一瞬固まった。

 

「……華って、たまに凄く男らしいよね」

「そうでしょうか」

「うん、何というか性別が違ったら一撃だったんじゃないかって領域」

 

 そうですか、そうなんです、とやり取りが続く辺り華ってば自覚して無いなあ。

 ただ、彼女の言う通りではあるので、

 

「もしみぽりんが怒られるようなら、私達が代わりに怒られよう! 怖いけど!」

「西住さんの家族が怖いのは確定か」

「だって! ゆかりんが!」

「私のせいですか!? 私はただ西住流のお二方について説明しただけで」

「あ、お母さんとお姉ちゃんは優花里さんが言うほど怖くはないよ? ただ表情に出すのが苦手っていうか」

 

 と、いきなり横から声がした。

 華と麻子が揚げ棒芋にマヨソースを付けながら振り向いた先。スペースの空いた自分の隣に姿がある。

 何故か柑橘と葡萄の炭酸が入った瓶を両手に持っているのは、

 

「みぽりんだ……!?」

 

 

   ~~

 

 

 うわあ、と通信手が座りながらもよろけて狙撃手に抱き着いたのをエリカは見た。

 ……何だか既視感が凄いわ……。

 再度当事者にならなくて良かったと心底そう思う。だがやられた方はかなりの不意打ちだったようで、

 

「みぽりんってばいつからそこに居たのよ!?」

 

 との問いに、みほが両の手で揚げ棒芋をエア摘みして、こう返した。

 

「〝もしみぽりんが怒られるようなら、私達が代わりに怒られよう! 怖いけど!〟」

「待って! 私そんなポーズ決めてないわよ!?」

「いやしてただろう。こう、両手に一本ずつ持って」

「してましたね」

「ええ、まるで二刀流のように」

 

 と、今の言葉が琴線に触れたらしい一部が盛り上がりを見せたが賑やかなのはいい事だと思う。

 だが通信手の問いに対してみほの返しは間違っておらず、何を思ったのか炭酸飲料入りの瓶を二本両手に持って近づいたのは実際にそのタイミングだった。

 しかし、

 ……話の内容はもっと前から聞こえてたのよね。

 何故かと言えば単純に彼女達の声が小さくなかった事。特に西住流家元や、隊長に関する説明が始まった辺りから声のボリュームが上がっていたのだ。

 そしてさらには、それらを耳にしたみほが、

 

「優花里さん惜しい! 私の中等部の入学式でお母さんが真顔だったのは直前に駄菓子の酸っぱいヤツを引き当てたからで、それを表情に出さないよう我慢を――」

 

 一体どこが惜しいのかとか諸々含めて説明して頂きたいものだ。というかその駄菓子どっから出てきたのよ……?

 

「ああうん! みつるくんが!」

「アイツだったか――」 

 

 などいうやり取りの末に今の現状へと至っている。

 まあ何であれ、状況としてはみほが大洗女子の友人達へ合流して己は手すきとなってしまったわけだが、

 ……何だろう。自分以外の友人と話しているみほ見てると、こう……。

 アー、みっともない嫉妬心……! と適当に結論付けてその辺りに放り捨てておく。

 そして、ここからは一人で食事の時間だろうかと、そんな気持ちに切り替えながらも卓に並んだ料理を皿に取り分けていると、

 

「あ、エリカさん! 追加で小鍋物を頼みますけどエリカさんは何にしますか! この〝煮込まれハンバーグのチーズ落とし〟ですか……!?」

「……そうね。じゃあそれを頂こうかしら」

 

 どうやら一人の時間は貰えないらしい。が、他校生徒の中で一人ポツンと料理に箸を伸ばすよりはマシか。とりあえず皿に取るサラダの量を増量して、そしてみほ達の輪へと移動。

 お邪魔します、と軽く会釈をすれば、みほの友人達は手の平を見せて迎えてくれる。

 初対面でもあるし、再度の挨拶としてはこの辺りが妥当で、いわゆる友人の友人は他人という言葉を実感だ。これはつまり、

 ……みほが居ないと話にならないわね。主に私が。

 状況的には完全アウェーでどうしたものだろう。こういった他校の生徒と交流する場においての話し合いでは、互いの学園艦における特徴や日常生活での違いを話題の種とするのが定番であり、中でも戦車道履修者ならば、

 

「最近は照準と砲弾の飛びがイマイチでさー」

「花粉症の季節だもんねえ」

 

 と、そんな感じでとりあえずの話題が上がって「なら一丁、練習戦でもやっか!」となるまでが一種のパターン。しかし、

 ……大洗って、初心者集団なのよねー……。

 パターン云々以前の問題だ。まず、共有できるような戦車に関する話題が少ない。恐らく通じるのは、車種や集団での動き方といった基礎知識的なところ。

 若干一名においては気にせず会話ができそうな気配はあるが、それはそれで周りを無視しているようなので却下だ。

 ……うわ、私って自分で思ってる以上に人付き合いが苦手――。

 このままではみほが注文を終えるまで無言の時間が続いてマズいような気もするが別にそれでもいいのではなかろうか。

 ……そうよね。

 無理にこちらから話を振る必要はないもの。ここは大人しく取ってきたサラダを食しながらみほが戻るのを待てばいい。極論、口に食べ物を入れておけば人は話しかけ難いのも事実で、まずは様子見として根野菜の細切れからいくかと箸を手にし、

 

「あ」

 

 と聞こえた声は確か通信手のものだったか。彼女はこちらを手招きして、

 ……何かしら。

 思い近寄れば通信手は言う。やや小さく落とした声で、

 

「逸見さんに質問! ――みぽりんの御家族は怖い方ですか!?」

 

 まだそこを気にしているのか……。

 

 

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