ヒーローを目指す事に挫折した普通科の少女の話   作:アステカのキャスター

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僕アカに最近ハマったのでちょくちょく書いていきます。
良かったらコメントや評価よろしくお願いします。


少女、不良に絡まれる。

 事の始まりは一つのニュース。

 

 中国にて発光する赤子の誕生というSFじみたニュースが世界中に流れたその日を境に世界は一変した。

 

 世界総人口の約八割が何らかの特異体質、「個性」を発現するようになった現代。

 

 個性の発現に伴い圧倒的に増加した犯罪件数、それに対抗するように生まれた職業は『ヒーロー』。

 

 まるで漫画のようにド派手に、かっこよく、エレガントに犯罪者を打ち倒すヒーローは瞬く間に脚光を浴び、なんと国から正式に公的職務として定められた。

 

 もはやヒーローはテレビの中の架空の存在ではなく、ごく一般的な職業となったのだ。

 

 ヒーローが職業となった今、そのヒーローを養成する環境も整えられている。

 

 

 

 全国の学校等に『ヒーロー科』といった子供たちをヒーローへと育成する科ができたのがいい例である。

 

 そのヒーロー科の中でも特に有名かつ難関で人気があるのが『雄英高校』と呼ばれる高校である。

 

 倍率は毎年300を超えるその高校の卒業者はNo1ヒーロー「オールマイト」をはじめ、プロヒーローの中でも屈指の実力を持つ者ばかりである。

 

 そんな超絶的な人気を誇る雄英高校の受験者人数は他の高校とは一線を凌駕している。

 

 そして今年も、多くの受験生達が自分の抱く『夢』へと向かっていくために雄英高校の狭き門をくぐろうとしのぎを削っていた。

 

 

 けれど、この話はヒーローへ向けての話ではない。

 

 

 夢を諦めて挫折してしまった。

 

 

 雄英高校の普通科のとある少女を

 

 

 

 ハッピーエンドにしたいが為の物語である。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

まさか雄英付近でこんなテンプレが起きるなんて。だって雄英といえば、プロヒーローが教師をしていて、こんなコンビニにだって先生がいる可能性は高いのに。

 

 

孤児院達の為に買ってきたビニール袋の中のアイスが溶けてしまう。早く帰りたい。でも、少女の願いもむなしく、彼らにはどいてくれる気なんて一切ない。

 

 

「君、雄英生だよね?」

 

 

制服を見ればわかることなのに、いちいち問いかけてくる。こんな場所でチンピラまがいのことをしている時点で察してはいた。

 

二対一、路地の奥で追い詰められて、逃げ場なんてない。助けを呼ぶことも少女にはできない。出来なかった。

 

こういう時、少女は自分を恨む。

 

大声で叫べたら。せめて反論できれば。けれど怖くて声が出ない。

 

 

「黙ってないで何か言いなよ」

「もしかしてびびってる? 雄英生が?」

 

 

げらげら、不快な笑い声が響く。

 

 

「なあ嬢ちゃん、俺たち暇なんだよねー」

「ガッコー終わったなら一緒に遊ぼうよ」

 

 

ふるふると、首を振って応じた。

 

しかし、不良達は少女の制服を無理矢理掴む。怯えた様子で「ひっ」と情けない声を出すが、それ以上に自分に伸びた手が想像以上の恐怖だった。体は震え、満足に動かない。

 

 

「へぇ、断れると思……」

 

「何やってんの?」

 

 

少女がどうにか切り抜ける方法を考えていたら、男たちの後ろから声がかかった。金髪で顔が整った雄英の制服。しかもあれはヒーロー科だ。

 

 

「女の子に絡んで脅すなんて漢らしくねえ」

 

 

その横に並び立つ、赤い髪の男の子。同じヒーロー科の制服を着ていた。

唐突に現れた2人に一瞬脅くチンピラも、それが雄英、しかもおそらく私と同じ1年生の気づくと、少しだけ余裕を取り戻したようだ。

少女は黙っているしかできない。残念ながら。

 

「んだガキンチョ、雄英入った程度でヒーロー気取りかよ」

 

「んなことねーけどさ、こんなとこ気づいたら声かけるしかなくね? な、切島」

 

「おう。オッサンたちも早く帰った方がいいんじゃねーの? もう少しでセンセーくるし」

 

 

センセー、という単語に、男たちは露骨に慌て始める。

 

何度か少女を振り返り、最後には悔しそうに走り去って行った。

 

少女はほっと胸を撫で下ろし、切島と呼ばれた赤い髪の男の子が、快活に笑った。

 

 

「まぁ嘘なんだけどな」

 

「なぁなぁ、君、だいじょーぶ? 家まで送ってあげよっか?」

 

「おい上鳴、それじゃさっきの奴らの同じだぞ、お前」

 

「いやオレは純粋な親切心なんだって!」

 

 

金髪の男の子は上鳴、という名前らしい。

たださっきの不良と同じに見えてしまって出された手に怯えて引き下がる。不安で春なのに首に巻いた水色のマフラーを掴んで少し震える。

 

 

「お、おい。大丈夫か?」

 

「おい上鳴、ビビらせてんじゃねぇか」

 

「すいませんでした!」

 

 

上鳴が謝ると、少女は頭を下げてその場から走り去っていった。

怖かったのか震えていた少女は少しだけ泣いていたように見えた切島が居た。それに気づかずにただ呆然と見ていた上鳴。

 

 

「あっ、行っちゃった」

 

「上鳴、お前なぁ」

 

「いや普通に対応してただけじゃん!?」

 

「普通と言う言葉を辞書で引いてこい」

 

 

辛辣な返答をする切島にギャン泣きする上鳴。

まあ対応の仕方がさっきの不良と同じだったせいだろう。因果応報と言う奴だ。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

怖かった。

 

 

怖くて身体が動かなかった。

 

 

もし、不良達があのまま少女を連れ去っていたら、少女はもしかしたら()()()()()()()()()()()()()()()()()()。逃げようと思えば逃げる事が出来たはずなのに、伸びた手は少女の悲惨な過去を連想させた。

 

 

「……お母さん」

 

 

少女は首に巻いたマフラーを掴んで少しだけ泣いていた。

買ってきたアイスは溶けて、袋の中で外に溢れていた。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

夜空(よぞら)美遊(みゆ)

 

 

コレが少女の名前だった。

 

 

夜空は才能に溢れていた。

個性も、勉強も、運動も5歳の頃から一般人を逸脱していた。学ぶスピードも理解する速さも夜空はすぐに考えついてしまう。

 

 

夜空は母親が大好きだった。

優しくて褒めてくれて、叱る時は叱ってくれる夜空の自慢のお母さんだった。他界してしまった父親の代わりに夜空を育ててくれた優しい母親だった。

 

 

夜空はヒーローに憧れていた。

オールマイトのようなカッコいいヒーローになって、いつかは平和の象徴と呼ばれるくらいの優しいヒーローになりたいと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし

 

 

 

夢溢れる少女の人生は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日を境に完全に崩壊した

 

 

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