ヒーローを目指す事に挫折した普通科の少女の話 作:アステカのキャスター
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C組の教室━━
「いやぁ最高だったぜ!入学式!」
「ガイダンスとかも楽しかったわね」
「けど校長先生の祝辞と話、すげぇ長かった…」
「校長先生の話が長いのは全国共通だけど、雄英でも同じみたいね~」
C組の生徒たちは体育館での入学式の様子を振り返りながら雑談していた。心操は夜空の近くに寄って疑問に思った事を口にする。
「そういえば、A組は居なかったよな」
「……外で個性把握テストやってたらしいよ」
「……マジかよ」
「マジ」
「……自由な校風が売りなのは知ってたが、初日からやるのかよ」
さすが雄英、ヒーロー科については全力で困難をぶつけて乗り越えさせる。ヒーローに必要なのは、あらゆる状況を乗り越え、人を救えるかにあるからだ。だが流石に初日からやると知った心操は苦笑いしていた。
「帰り……何か食べていかないか?奢るから」
「ん。マックで……」
「了解。あの時のこと教えて欲しかったし」
夜空は個性で
付き合わせている夜空も人形のようだが少しだけ笑っていた。
☆☆☆☆☆
入学から少し経った後、朝の雄英の正門前には、オールマイトが雄英教師に着任した事を知って、多くのマスコミや報道関係者たちでごった返していた。
そんな会話をしていると、報道陣が自分へと矛先を向けてきた。
「すいません、インタビュー良いですか?」
「え……えっと……」
マスコミの人達は怯えていた自分に気にもせず、普通に質問を投げかけてきた。
「オールマイトの授業はどんな感じですか!」
「"平和の象徴"が教壇に立っているという事で、様子など聞かせて!」
「一体どんな事を学んでいるのかを教えてください!」
知りたいが故に狂気になりかけている。出されてくるマイクや人の波、夜空は人と関わりをあまり持たないタイプだ。それは事情があるのだが、あまりの数の多さにトラウマが蘇り身体が震え始めて、気持ち悪くなってきた。
逃げようにもさっきのマスコミの人達が侵入したせいで正門は雄英バリアで閉じてしまっている。個性を敷地外で使うのは論外だが、夜空は震えた子猫のように、その場から動けなくなっていた。
「っ…………」
怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い。
あの時みたいで気持ち悪い。吐きそうだ。
いや……、誰か助け–––––––––
「ッ………!」
「俺だ夜空。大丈夫か?」
すると、誰かが動けなくなった自分の腕を優しく掴んで、背中を摩ってくれている。
過呼吸になりかけて意識が朦朧としていたらしい。あからさまに動揺していたのを見つけてくれていたらしい。
「心…操くん」
「ゆっくり呼吸しろ。大丈夫だ」
自分と同じ、登校中の心操くんがそこにいた。
「オールマイトの授業はどんな感じですか!」
「"平和の象徴"が教壇に立っているという事で、様子など聞かせて!」
「一体どんな事を学んでいるのかを教えてください!」
「俺達普通科なんでお引き取りください」
その一言でマスコミは自分達から別の生徒へ矛先を変えたらしい。雲の子を散らすようにマスコミは別の場所に向かっていった。『洗脳』は使っていないようだ。
心操くんは私を連れて、木陰の方に移動した。
「ありがとう…心操くん」
「気にすんな。事情が事情だ。トラウマは?」
「少し……おさまった」
「そうか……」
通称『雄英バリアー』という鉄壁のセキュリティがあり、学生証や通行許可IDを持っていない者をシャットアウトする仕組みになっていた。登校してきた生徒たちは質問に驚いたり困惑したり、逆に喜んでいたりする者もいるが、さすがに通れない上にマスコミが邪魔している。
心操は雄英に電話をかけた。敷地外で個性の使用は禁止だ。ワープゲートを使える夜空もワープゲートを繋げた瞬間、警報装置が鳴るだろう。通行許可IDを持っていてもワープゲート系は即そうなる。
「もしもし、C組の心操です。正門前の報道陣にセキュリティ踏んじゃった人がいて、正門が閉じました。雄英って裏口とかありましたか」
「...ちょっと待ってろ、今マイクが正門に向かってる。そのうちバリアーは解けるはずだ。まだ時間に余裕があるからゆっくり来い。」
「了解です。」
心操は夜空を見たが、冷や汗と過呼吸はだいぶ治ったように見えるが、未だに身体は震えている。
「ゆっくり来ていいらしいから、少し休め」
「心操くん…先行っててもいいよ」
「馬鹿、今のお前残して行けるか。お節介はヒーローの役割だ。落ち着くまで待ってやるから」
心操は
夜空の過去は悲惨なもので、死にたいと思えるくらいのものだ。あの過去に関連するものに怯えて震えてしまう。震えてしまえば思考は止まり満足に個性も使えなくなる。
トラウマは一生消えないかもしれないが、夜空にとってこれは罰のようなものだ。だから、一生抱えて生きていくのだ。
「……ありがとう」
もう一度お礼を言う。
それでも手を取ってくれる人が居るから、夜空は今もこうして生きているのだ。
☆☆☆☆☆
心操と夜空も雑談をしていたが、担任のミッドナイトが入って来たので直ぐ様自分たちの席へと戻っていった。教卓にミッドナイトが立つと程なくしてHRが始まった。
「先生。今日は何をやるのですか?」
「あぁ。まず、君たちにやってもらう事は……」
生徒の質問にミッドナイトが応えた。その言葉の続きが何なのか気になったC組生徒は、小テストでもあるのかと身構えた。だが、彼女の口から出たのは意外な言葉だった。
「学級委員を決めてもらうわ!」
「「「「「学校っぽいのキタァァアアアァ!!!!!」」」」」
学級委員を決めるという事を聞いて、たちまち教室内は歓喜の声で沸き上がった。そして立候補する者が続々と現れた。
夜空は我関せずと本を読みながら欠伸をしていた。学級委員など興味ないのだろう。心操自身もいつかヒーロー科に上がるなら学級委員の肩書は必要なくなると思い手をあげなかった。
「やらないの?…委員長」
「ヒーロー科に上がったら必要なくなるだろ。験担ぎだ」
「……ふふ」
本気の彼をみて思わず笑ってしまった。やっぱり彼が羨ましい。真っ直ぐに自分の夢を目指せるのだから……
自分には持ってない。そう言った志が胸を締め付けるのはもう慣れた。けれど、憧れてた頃の自分を捨てないといけない。自分はそういう人間だから……
「まあお前も向いてそうだけどな」
「それは…無いよ」
夜空は強めに否定する。
誰かの上に立つなんて、私には出来ないのだから。