ヒーローを目指す事に挫折した普通科の少女の話   作:アステカのキャスター

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少女、個性を使う。

 午後━━━

 

 C組は総合学習で担任のミッドナイトだった。ミッドナイト話によると、A組は救助訓練を行う為にウソの災害事故ルーム(USJ)という施設へ向かっていったという。

 

 夜空もこの時ばかりは退屈していたので()()()()()()()()()()()()()をしていた。

 

 

「(…………建物以外の周囲の座標も掌握出来るようになってきた)」

 

 

 周りを掌握し、支配下に置き、状況を立体的に、3次元的に把握し、今居る座標から他の座標を見渡していた。あくまで分かる事は顔までは認識できないが、人の数や場所の形とか言った所だが、それだけでも規格外とも言えるだろう。

 

 

「(何だろう……物凄い嫌な予感がする)」

 

 

 普段通りに授業を受けて暫く経過したあと、廊下があわただしくなってきた。夜空が個性で調べると、同じ形をした人間が複数廊下を走り回っていた。

 

 同じ形の人間が複数いる事に一瞬、訳が分からなかったが、考えている内に勢いよくC組の扉が開いた。

 

 

 ガラッ!! 

 

 

「ミッドナイト! 大変ダ!」

 

「エクトプラズム! こっちは今授業中よ、一体どうしたのよ?」

 

「アァ、実ハナ……」

 

 

 勢いよくC組の扉を開けて入って来たのは、個性『分身』で数学担当のプロヒーロー教師・エクトプラズムだった。彼の慌てぶりを見て察したらのか、ミッドナイトも引き締めて話を聞いた。

 

 

「A組ノ飯田クンガ単身、ココニ走ッテ戻ッテ来タンダ。話ヲ聞イテミレバ……USJニ、ヴィランガ襲撃シテキタトノ事ダ! ココニ残ッテル我々教師陣ニ救助ヲ求メテ来タノダ。早ク行カネバ、イレイザー達ノクラスガ危ナイ……!」

 

 C組『『『『えぇ!?』』』』

 

「なっ!? ヴィラン……!? 学校に侵入してきたって言うの!? これは悠長としていられないわね。分かったわ! 私も救助に向かうからC組の生徒は待機してて!!」

 

 

 エクトプラズムから告げられた衝撃の事態……A組が救助訓練を行う場所であるUSJで、ヴィランによる襲撃を受けたという事だった。これを聞いてC組内も騒然とした。

 

 

「夜空、個性で把握できるか?」

 

「……やってみる」

 

 

 夜空は掌握する空間をさらに広げた。ここから大体20キロくらいなら、ある程度は把握出来る。夜空はUSJの中を掌握し、内部にいる人間を探り始めた。

 

 生徒くらいの身長が3人、1人は人質にとられている。他の災害ゾーンは生徒たちが交戦中。1人が巨大な形をした等身大の人間が細い人間を押さえつけている。そして、その近くにモヤみたいな形の人間とそれを眺める人間が1人ずつ、それを隠れて遠くから見ている生徒の身長が3人。

 

 

「──────ッ!!」

 

 

 これは不味い。

 13号先生みたいな形の人がやられているし、押さえつけられているのは多分、先生か生徒のどちらかだ。シルエットから見ても腕が折れて、重症だ。

 

 傍観していた人間が押さえつけているのを見ていた3人の生徒にに襲いかかっていた。シルエットから個性までは分からないが、遠くから感知している私でも嫌な予感がする。

 

 

「夜空……大丈夫か?」

 

「ダメ……このままじゃダメ!」

 

「––––––ッ! それだけヤバいのか……襲ってる(ヴィラン)は……!」

 

 

 夜空がそれ程言うのだ。

 死人が出てもおかしくないと言う事でもある。ただ、C組はヒーロー科のように戦う訓練はされていない。こういう時、何も出来ない自分が恨めしく思う。

 

 あまりにも無力で、何も出来ない……

 

 しかしそれを見た夜空は心操の袖を引っ張って話し出した。

 

 

「心操くん……ついて来て」

 

「……はっ?」

 

 

 夜空は心操を強めに引っ張る。

 確かに夜空なら先生達をワープゲートで送り出せるだろうが、自分が行く必要なんて全くない。それに行った所で何が出来るのだろう。『洗脳』しか取り柄がない自分に……

 

 

「ッ……、いや……今待機しないと。それに俺は何も……」

 

「私なら……先生を早く送り出せる。もし、()()したら心操くんが止めて……」

 

「いや……でも……」

 

「お願い……心操くん……! 私はヒーローじゃないけど……誰かが私の近くで死んでいくのを見たくない……!」

 

「っ!!」

 

 

 夜空は必死に懇願した。

 夜空は()()()()()()()()()()()()()()()。例え関わりがなくとも、目の前で死なれるのは耐えるものがある。夜空はヒーローでは無いが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ようなものなのだ。

 

「っっ!! 行くぞ!」

 

「……うん!」

 

 

 夜空は教師が集まっていた校長室に駆け足で向かった。

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

「根津校長! 状況は!!」

 

「今必死に先生達をかき集めてる! あと1分したらバスで超特急で向かうよ!」

 

「ここからUSJまで僕のエンジンでも10分はかかりました!! バスで飛ばしても同じくらい! クソッ! (ヴィラン)め! まさか雄英に侵入してくるなんて……!」

 

 

 A組の生徒である飯田はエンジンを使って超特急で雄英に戻って来た。途中でオールマイトが駆け付けてくれていたが、(ヴィラン)の狙いこそオールマイトだ。つまり(ヴィラン)はオールマイトを殺すナニカを持っていると言う事だ。

 

 集まっていた先生が校長室からバスに向かおうとした時、2人の生徒が校長室の扉を勢いよく開けた。

 

 

「「先生!」」

 

 

 夜空と心操が駆け込んで来た。

 

 

「なっ!? 心操くんと夜空さん! 君達教室で待機って言ったじゃない!」

 

「話が……あります!」

 

「こんな時に!? 今構っている時間は……!」

 

「夜空の個性なら、USJに一瞬で行けます! だから来ました!」

 

「えっ……!?」

 

 

 心操と夜空が言ったことに集まった先生達は驚愕していた。

 ヒーロー科とは違って普通科の個性は重視していない。普通科は大半雄英ヒーロー科から落ちた生徒が大半なのだ。ロボを破壊できない個性や試験に不向きな個性が多い事からあまり確認していなかったのだ。

 

 

「一瞬で行ける……? 夜空さん転移系の個性なの?」

 

「私のは……空間系個性で、空間を掌握した範囲に自由にワープゲートを作れたりします」

 

「夜空さん、空間を掌握と言ったよね? 一体どこまで掌握しているんだい?」

 

「……20キロくらいなら」

 

「ナニッ!?」

 

 

 そんな強力な個性を持っているならなんでヒーロー科に入らなかったのか疑問に思う事があるが、今は気にしている暇はない。

 

 夜空は掌握したUSJの状況を話し始めた。

 

 

「それと……山みたいなゾーンに生徒が人質にとられてます。2人手をあげて……抵抗してない」

 

「それは俺が撃ち抜く。校長、特例ですが2人を連れていきましょう。今は人質の生徒の安否が最優先でしょう」

 

「しかし……」

 

 

 プロがこれだけ居て生徒に頼るのはどうだろうか。

 ましてや普通科、ヒーローを学んでいない少年少女の力を借りるのはプロとして正しい判断なのか。

 

 すると夜空は少し震えながらも口を開く。

 

 

「私は……手を届かせるけど……見捨てるなんて出来ないです……」

 

 

 夜空だから、夜空だからこそ知っている。

 過去の過ちも、届いてしまう手を引っ込めてしまう弱いを理由に見て見ぬフリをするのも、夜空には辛いのだ。

 

 

「知っていて殺されたら……見殺しだから……!」

 

 

 その目はまるで、知ってしまっているかのような目だ。

 ヒーローは全てを救えない。救えないことを日夜後悔しているのと同じ、救えない事を見て見ぬようにする辛さを知ってしまっているかのようだった。

 

 

「っ! 分かったよ! ただし、現場ではプロの後ろに居ること! いいね?」

 

「「はい!」」

 

 

 夜空は左手を突き出すと、そこから金色の波紋が広がり出した。

 ミッドナイトが試しに入ってみるとそこにはUSJの入り口が見えていた。

 

 

「す、凄い! 一瞬でUSJまでこの場所を繋げるなんて……!」

 

「凄い個性じゃない! 確かにUSJだわ!」

 

「続いていくよ!」

 

 

 金色の波紋に飛び込む先生達、その後ろから飯田と普通科の2人は着いて行った。

 

 今気にする事ではないが、飯田にはどこか既視感があった。形は違えど、金色の波紋は()()()()()()()()()()()()()()と個性が似ているのだ。

 

 だが、今はそれよりも生徒の安全を考え、金色の波紋に飛び込んだ。

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

 

 さっきまでの優勢が嘘のように、窮地に追い詰められてしまった死柄木は首元を掻き毟る手を早くして、これからどうしようかと考えを巡らせる。

 

 

「はぁ、いきなりピンチだな……どうしよっか」

 

「大人しく投降する、ってのはどうだい?」

 

「冗談。脳無、あの爆発小僧をやれ」

 

 

 凍りついた半身を砕きながら、脳無はその体を起こして見せる。

 パキパキと崩れ落ちていく黒い体。しかし、次の瞬間驚くような光景が広がった。なんと、脳無の体が再生しているのだ。

 

 

「なんだと!? ショック吸収の個性じゃないのか!?」

「別にそれだけとは言ってないだろう。これは超再生だ……脳無はおまえの100%にも耐えられるように改造された、超高性能サンドバッグ人間さ」

 

 

 またもや手の敵が個性のタネを明かす。そして続けて脳無に指示する。

 

 

「まずは出入り口の奪還だ。行け、脳無」

 

 

 そう言われた途端、脳無は目にもとまらぬ速さで黒い敵を押さえつけている爆豪の下へ走り出す。その動きに反応出来たのはこの場ではオールマイトのみ。オールマイトが爆豪を守ろうと動こうとしたとき、

 

 

「……ッ!?」

 

 

 左脇腹に痛みが走る。さっき脳無に捕まれたときの傷が広がったのだ。その痛みに気を取られ動き出すのが一瞬遅れたオールマイト。

 

 

「(まずい……!! 間に合わない……!!)」

 

 

 高く振りかぶられた脳無の右腕はそのまま爆豪に振り下ろされた。

 

 

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

 

「かっちゃん!? よけたの!? すごい!」

「違ぇよ。黙れカス」

 

 緑谷が驚いたように聞いてくるのに対し、罵倒を混ぜながら返す。

 

 

「(何も……見えなかった……)」

 

 

 今一体何が起きた? 自分は脳無の拳が振り下ろされるまで何も知覚出来なかった。なのに今こうして自分は生きている。オールマイトが助けてくれたのかと思ったが、オールマイトも先ほどの位置から動いていない。

 

 しかし、眼前で拳を振り下ろされた瞬間に脳無が消えた。

 

 代わりに眼前に現れたのは金色の波紋のようなものがあった。

 

 

「黒霧、お前か?」

 

「い、いえ! 私ではありません!」

 

 

 黒霧でもない。では一体誰が……? 

 

 直後、銃声が響く。スナイプ先生の撃った弾が死柄木の手に当たり、声をあげた。そして山岳ゾーンでも同じ様な声が聞こえたのでそちらも撃ったのだろう。

 

 

「ぐっああ……! 脳無!!」

 

 

 脳無が死柄木の前に出て銃弾を食らうが、無傷。

 銃弾が飛んで来た方向を見ると、オールマイトは不適に笑う。

 

 

「……来たか! しかも予想より大分早く!!」

 

 

 入り口を見る。

 生徒は安堵の涙を流していた。

 

 

「ごめんよみんな。遅くなったね。すぐ動けるものを、掻き集めてきた」

 

 

 校長先生の声が響く。

 そして、戻って呼んできたであろう、学級委員長。

 

 

「1-Aクラス委員長、飯田天哉! ただいま戻りました!」

 

 

 飯田くんの声。

 そして、その後ろには雄英が誇るプロヒーローたちと生徒2名がいた。

 

 

「……チッ、脳無! 黒霧を抑えてる奴を狙え!」

 

 

 黒霧を抑えた爆豪に再び攻撃し始めるが、爆豪の前には金色の波紋が浮かび上がり、攻撃した脳無の横に出ていた金色の波紋から脳無の攻撃が飛び出していた。

 

 

「チッ、さっきから何なんだよあのゲート!」

「アレは、夜空さんの力?」

 

 

 首を縦に振り、両手を突き出して集中している夜空。

 入り口から広場の遠い距離にワープゲートを出すのは久しぶりで、更には自分より早い脳無が()()()()()()()()()()()ワープゲートを繋げているのだ。

 

「(アレは恐らく後ろにいる普通科の少女の力か! あとはあの脳無とやらだが、時間はもうほとんど残っていない。力の衰えは思ったよりも早い)」

 

 

 オールマイトの気迫が上がり始める。

 それは覚悟だ。覚悟を持ったヒーローの力がオールマイトを奮い立たせているのだ。

 

 

「(しかし、やらねばなるまい。なぜなら私は! 平和の象徴なのだから!)」

 

 

 そこからは激しい戦闘が始まった。

 1発1発がどちらも大きくて、風圧が今まで以上に凄かった。

 その強風に抑えていた爆豪は黒霧を離してしまうほど荒れ狂う。や死柄木は近づけない。スナイプ先生もこの荒れ狂う暴風に正確な射撃が出来ないが、オールマイトには必要ない。何故ならば……

 

 

「君の個性がショック無効ではなく吸収ならば、限度があるんじゃないのか?」

 

 

 だんだんダメージが入るようになってきた。

 衝撃に耐えきれなくなって、後ろに後退している。

 

「私対策!? 私の100%を耐えるなら、さらに上からねじ伏せよう!」

 

 

 血を吐きながら、無闇矢鱈に打ち込むのではなく、1発1発が、100%以上の拳をぶつけている。それはまるで自然災害のように、人間が太刀打ちできないような力を持っている。

 

 

「ヒーローとは、常にピンチをぶち壊していくもの」

 

 

 空中から脳無を地面に落とす。

 結構な高さからの落下だから速度もついて、威力が高い。地盤が吹っ飛び、ダメージが入り始めた脳無はふらつき始めた。その瞬間に既にオールマイトは脳無の懐にいた。

 

 

「ヴィランよ、こんな言葉を、知ってるか!」

 

 

 その一撃は力の結晶、あらゆる悪を打ちのめす正義の聖火。

 その全てが拳一点に凝縮される。ダメージが通用する脳無にはこれを防ぐ術などない。

 

 

「さらに向こうへ! Plus ultra!!」

 

 

 その声のタイミングで放った一撃で、脳無はUSJの屋根を突き破って飛んでいった。

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

 相澤先生は無事。だけど大分やられて痛々しい。13号先生は起きてはいるが、まだあまり動ける状態ではなさそうだ。

 

 マイク先生が大声で雑魚敵を動けなくする。エクトプラズム先生が分身を出して応戦する。

 

 

「手分けして、生徒達の保護を!」

「はい!」

 

 オールマイトが交戦しているのを見て、夜空は脳無の攻撃の受け流しをやめて空間から生徒の位置を割り出し、二十程のワープゲートを繋げ始める。

 

 

「先生、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「ナイスタイミングよ! 夜空さん!」

 

 

 階段下で爆発音が響き、そこら辺にいた雑魚敵は一網打尽だった。

 ワープゲートを通り過ぎたエクトプラズム先生達が残った敵を倒し、ワープゲートを潜り抜けると、広場を合わせて20人の生徒がいた。

 

 

「生徒は全員無事ね! ありがとう夜空さん!」

 

 

 ミッドナイトが夜空を褒める。

 オールマイトに脳無が吹き飛ばされ、生徒全員が入り口付近にいる事を見た死柄木はワープゲートが使える生徒を睨み付けるが、事態は一気にスピードよく倒されていく。

 

 

「クソがぁ……ゲームオーバーだ。帰って出直すか。黒ぎr」

 

 

 死柄木がワープ敵の方を向いた時、スナイプ先生の撃った弾の餌食になった。全身に何発も撃たれたが、途中からはワープ敵が死柄木を守り、銃弾を逃れていた。

 

 

「この距離で、捕獲可能な奴は……」

「僕だ!」

「死柄木弔! ぐっ、これは、13号!!」

 

 

 13号先生がブラックホールでワープ敵を捕まえようとするが、黒霧の方が少し早かった。

 

 

「今回は失敗だったけど、今度は殺すぞ! 平和の象徴、オールマイト!!」

 

 

 強い憎悪から睨み付けた死柄木は捨て台詞を残して、ワープゲートで別の場所に逃げていった。

 




夜空(よぞら) 美遊(みゆ)

個性 空間領域

夜空を起点とした空間を自分の領域にして、空間と言った力を支配する。例えるならA地点からB地点までの空間を置き換える事でワープゲートを作ったり、支配した空間領域内の構造を立体的に感知したりする事が出来る。
テレポートも出来るし、実際は触れないでものを転移させたり出来るのだが、夜空はトラウマのせいかそれを人に使わないでいる。
本来なら空間にワープゲートを出すとき多大な演算能力を求められ、常人なら発狂するが夜空は大した副作用は無いが、計算をミスるとワープゲートの大きさとかが変わったり座標がズレたりする。

他にも色々出来るが、それはまた後日。
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