俺と北上と時々龍田   作:ノッティ

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第3話

「取り敢えず道中色々ありましたが、工廠に到着することができました」

 

「そだねー、ショックで真っ白に燃え尽きてた提督を引きずってこなければ、もっと早く着けたのにねー」

 

「メンタル弱くてすいませんでした」

 

 

鎮守府の工廠にたどり着くなり、そんな会話を繰り広げる北上と提督。工廠からは、鉄を叩く甲高い音や、重油の鼻につく匂い、まさに工廠といった雰囲気が見てとれる。提督はそんな工廠を見ながら、ほー、と感心したように声を上げた。

 

 

「そういや、工廠の中にちゃんと入るのって初めてかも」

 

「まぁ、今の今まで何の開発や建造もしてこなかったからねー。私とはちょっと出会い方特殊だったしね」

 

「そう考えると懐かしいな、あれから数えると……だいたい一年くらいか?」

 

「正確には十一か月と十日だよ。出会って一年の記念の日は何か用意しといてね」

 

「言われんでも考えてるわ。具体的には何も決まってないけど」

 

「全く提督は見た目通りの甲斐性なしだね」

 

「おい、見た目通りってなんだ」

 

「だって、何か貧乏くさい顔してるし……」

 

「お前、この一年そんな風に思ってたのか!!」

 

 

会話を交わしながらも二人は歩を進める。工廠の中は機材や資材でごった返していたが、建造スペースだけはしっかりと整頓されていた。えらく規模のでかい機材の向こう側では妖精たちが忙しなく動き回っているのが見える。案の条建造の様子は見せてはくれないようだ。これ以上は立ち入り禁止とばかりに二匹の妖精が提督と北上を通せんぼしている。

 

「ココデマツ! ココデマツ!」

 

「ダメ、ゼッタイ! ダメ、ゼッタイ!」

 

 

彼女達にそう言われては仕方ない。二人はそこらに転がっている資材や機材の上に適当に腰掛けた。

 

 

「後、どれくらいだ?」

 

「十分ぐらいだと思うよ。妖精達そう言ってたし」

 

「そうか……どんな奴がくるんだろうな?」

 

「さぁ? 駆逐艦じゃなけりゃ何でもいいよ」

 

 

北上は興味がないとでも言いたげに、何故かそこらに転がっていたペンギンのぬいぐるみを弄りまわしながらそう言った。

 

 

「……何でそんなに駆逐艦を嫌がる」

 

「うーん、何でだったかな? 明確な理由はあった気がするんだけど、詳しくは思い出せないや」

 

「まだ、完全には戻らないか? 記憶は」

 

 

提督のその言葉に北上は困ったように微笑む。

 

「そうなんだよねー。自分が何者で、どんな仕事をしてきたかってのと、提督に会ってからの事は思い出せるんだけど、細かいところまではちょっとね。どんな知り合いが居たのかとか、正確に言えば思い出みたいなものはからっきしだよ」

 

 

北上の言葉に提督は気まずそうに視線を逸らす。北上はこの鎮守府で建造された艦娘ではない。様々な経緯があって、提督と出会い、今でこそこの鎮守府の最初の艦娘として彼につき従ってはいるが、以前はどうやら他の鎮守府で艦隊の一翼を担う艦娘として働いていたようである。

 

いまいちパッとしない言い方であるのは、彼女の記憶には所々欠落が見られるからだ。もちろん記憶の欠落は何かと不便な事もあったが、北上自身は大した問題ではないと認識している。何せ彼女にとっては目の前にいる提督が全てと言っても過言ではないからだ。彼が戦えと言えば戦うし、抱かせろと言われればこの身を捧げる覚悟もあるし、死ねと言われれば躊躇なく死んでみせる。北上にとって提督はそこまでする価値のある人物なのである。元来天邪鬼な彼女は、それを面と向かって言うことは決してないが、彼に付き従い、生きていくことが今の彼女にとっての全てである。

 

そんな彼女だからこそ、過去の自分に何があったにせよ思う所は少ない。逆に彼女としては記憶を失ったことも含めて今の現状を幸運とさえ感じている。過去の自分に起こった事がもしもなければ彼と出会うことは二度となかったかもしれないのだから。

 

 

「もう、そんな思いつめた顔しないでよ。私は別に何とも思ってないからさー。提督がそんな顔すると私まで気が滅入っちゃうじゃん」

 

「……そう、だな。俺が一人で考えたって仕方ないよな」

 

「そうそう。もし、何かあっても二人で、ね」

 

二人はそう言って、笑いあう。そこには何時ものお互いを思いあう二人の姿が目には見えずとも確かにあった。

 

「ところで話は変わるけどさ」

 

「おう、なんだよ」

 

「出会って一年目の記念日のプランを聞かせてよ。具体的には決まってなくても何か考えてあるんでしょ?」

 

「誰が言ってやるか。サプライズだサプライズ」

 

「それを言ってる時点でサプライズ感はこれっぽちも感じないだろうけどね」

 

「まぁ、お楽しみだ。きっと満足のいく一日にしてやるよ」

 

「うん、期待してる」

 

そう言う北上の笑顔に提督は言いようのない幸福感を感じた。彼女がこんな風に笑ってくれるのなら事故的に就いたこの仕事も悪くはないと。

 

 

 

 

 

「デキタ、デキタ」

 

「アタラシイナカマダヨ」

 

 

 

二人の会話が一区切りついたその時、妖精たちが一斉に騒ぎ始める。どうやら新たな艦娘の建造が終わったらしい。

 

 

「さて、どんなやつが来るのか……何かめっちゃ緊張してきた」

 

「いやいや、こんなことで緊張してどうすんのさ」

 

「だって、いくら艦娘とはいえ女の子だよ? そこそこな年の俺としてはやっぱり第一印象とか色々気にする訳よ。どうしよここはやっぱり提督らしく威厳ある感じでいった方がいいのだろうか?」

 

「すぐに化けの皮はがれるからやめときなよ。ってか、私がはがす」

 

「取り繕う事すら許されないのか俺は!!」

 

 

コツリと、その時音がした。建造スペースから誰かが近づく音がする。

 

 

機材の扉がゆっくりと開き、中から紫の髪の少女がゆっくりとこちらに歩み寄る。頭に天使の輪のような電探装置を付けた彼女は二人に微笑んで名を名乗った。

 

 

「はじめまして~、天龍型軽巡洋艦二番艦の龍田だよ~。よろしくね提督さん」

 

 

そう言って、ふんわりと龍田は微笑み一礼した。二人きりの鎮守府に新たな仲間が増えた瞬間だった。




と言う訳で龍田さん登場+ちょっとシリアス的なお話でした。提督と北上の過去については話の中で追々書いていくとして、次回は龍田さん主役的なお話になるかと思います。

プロットとかない状態で勢いのまま書いてるものですから、色々辻褄が合わないところとか出てくるかもですが、大目に見てほしいなと思ったり……思わなかったり。

龍田さんの頭の輪っかに関しては勝手に電探の類だと書きましたが、ホントのところは分かりません。ミリタリーの知識とかないとやっぱり艦これ二次って難しいと感じた今日この頃です、はい。
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