日本外人部隊 作:揚物
パーパルディア皇国 皇国監査軍東洋艦隊
提督ポクトアールは、東の海を睨んでいた。空は快晴、海上ではあるが、比較的乾いた風が気持ち良い。
現在地、フェン王国から西に約100km
「!?」
水平線に何かが見える。
「艦影と思われるもの発見!こちらに接近してきます」
「!?大きいな・・・フェン王国のものとは思えない・・・。」
小山ほどの物体が海上を動いている。船?と思われるが、常識から考えると規格外の大きさだ。
「総員、戦闘配備!!!」
城のように大きい灰色の船は、急速に接近してきた。
「!!!ま・・まさか、我が方の船速を凌駕している!?」
「こちら日本外人部隊 海洋艦隊 イージス巡洋艦 天龍。 現在帰国の為航行中、我々に攻撃の意図はない。 繰り返す…」
耳に響くほどの大音量で伝えられる。
「提督、どういたしますか?」
第3外務局局長カイオスの命は、フェン王国への各国武官の前での懲罰的攻撃により、文明圏外の蛮族に恐怖を植え付けることである。
妨害の可能性となる軍は全て排除するよう命ぜられている。
灰色の巨大船は、パーパルディア皇国の同盟国の船では無い事は確実であり、民間船でないことも、確実であった。
しかし日本とは聞いた覚えがある。最近国交が開かれた国であり、前最高司令官のソラテス様が手出し無用ときつく言っていた。
「日本とは国交がある国だ。 攻撃はせずに…」
しかしポクトアールの命令を待たず、日本船とすれ違おうと船団の先頭を走っていた戦列艦が勝手に攻撃を開始してしまい、砲撃音が鳴り響く。
「ばか者! 誰が攻撃命令を出した! 即座に止めさせろ!」
幸い当たることはなかったが、これは外交問題になりかねない。
「日本の船加速、魔導砲の射程権外に離脱していきます」
デカイ癖に凄まじい加速、信じられない速さで敵の巨大船は我が方から逃げていく。
「速い!なんだ!あの船は!?」
ポクトアールは、彼の中での常識を超えた速さと大きさを持つ船を見て感嘆の声をあげる。
船は距離をとり、約3.5km離れて並走をはじめ、船の艦前方に設置された二門の巨大砲が動き始める。
「いかん! すぐに魔信で敵意がない事を伝えろ!!」
「敵艦発砲!!!!」
艦隊最前列を航行していた戦列艦パオスの主要マスト下部が吹き飛ぶ。
マストはガラガラと音をたて、傾斜し、他のマストを巻き込みながら、倒れる。
「戦列艦パオス、マストが折れ航行不能!!!」
「なんだ!?発砲の後にマストが折れただと!?ま・・・まさか!!??」
航行不能となった戦列艦パオスをそこに置き、他の艦が向かっていく。
海上に再度嫌な音が鳴り響き、次々とマストが破壊されていく。
正確無比な射撃により、約半数の船のマストを破壊され、日本の船は再度遠ざかり視界から消えていった。
「・・・我が方を沈める気はなく、先制攻撃を行った報復と言ったところか」
ポクトアールは意を決する。
「・・・撤収だ!味方の艦を曳航し、引き上げる。今作戦は・・・失敗だ!」
漂流する味方船を放置して行く訳にはいかず、この状況下であれば、攻撃を加えようとすれば我が方すべてが航行不能となるのは目に見える。
攻撃の方法から、我が方を殺傷するのが目的ではないと思われ、ポクトアールは決断した。
今回の戦闘報告・・・報告書を提出しても、恐らく誰も信じないだろう。
パーパルディアの艦隊では、重傷者はいたものの、死者は出ておらず、世界の歴史上唯一死者を出さずに勝敗を決した海戦となった。