日本外人部隊 作:揚物
中央暦1639年1月24日午前8時――――
パーパルディア皇国 皇国軍東部竜騎士訓練地
その日も普段と変わらず快晴な空が広がっていた。ワイバーンと呼ばれる飛龍を操り、竜騎士隊は飛行訓練に当たっていた。
「なんだ!あれは」
自分達以外にいるはずの無い空に、何かが見える。ここは偉大なるパーパルディア皇国の地、味方のワイバーン以外に考えられない。
粒のように見えた飛行物体は、どんどんこちらに進んで来た。それが近づくにつれ、味方のワイバーンでは無いことを確信する。
「なっ、大きい!」
彼は、すぐに通信用魔法具を用いて司令部に報告する。
「我、未確認騎を確認、現在地・・・・」
通信中に未確認騎とすれ違う。恐ろしいほどまでに早い。
即座に反転し、愛騎を羽ばたかせる。風圧が重くのしかかり、飛ばされそうになる。一気に距離を詰める・・・つもりだったが、全く追いつけない。
「くっ、だめだ追いつけん! 司令部!!司令部!!!!我、飛行騎を確認しようとするも、速度が違いすぎる。どんどん離されていく。飛行騎は本土内陸に向け進行、繰り返す。本土内陸に向け進行した!」
報告を受けた司令部では、蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。
ワイバーンでも追いつけない未確認騎がよりによって、パーパルディア皇国の本土に見も知らぬ飛行騎が侵入するなど、皇国軍の名折れ、担当防衛部隊の責任者は首が飛ぶほどの問題だ。
「飛龍隊は全騎発進セヨ、未確認騎が接近中、発見次第撃墜セヨ、繰り返す発見次第撃墜セヨ」
滑走路から、どんどん訓練兵ではなく正規の竜騎士、ワイバーンロード部隊が発進する。その数200騎、全力出撃である。かれらは透き通るような青い空に向かい、舞い上がっていった。
しかし舞い上がった直後の頭上、その遥か上空を高速で未確認騎が通過していった。未確認騎をその射程にとらえる事無く、置いていかれてしまう。
「我、未確認騎を発見するも、未確認騎は超高々度で進行した。繰り返す」
ワイバーンロードでも追いつけない正体不明の物。飛龍の上昇限度を超えて飛行していく恐るべき物、それがまもなくエストシラント皇国上空に現れる。
全てのワイバーンロードが緊急出撃し、500騎もの竜騎士が空を舞い、これから向ってくる未確認騎に備えるが、竜騎士部隊長は余りの高度の高さを飛行する未確認騎に唖然とし、ワイバーンロードでは迎撃が不可能と判断し上層部に報告していた。
物体は何度も上空を旋回。奇妙異な物体、大きくて白い機体、羽ばたかない翼、翼と胴体に赤い丸が描かれている。
明らかな領空侵犯、しかし、飛龍は何かをするわけでもなく、東方向へ飛び去った。
中央暦1639年1月25日午前
パーパルディア皇国軍はいつも以上に緊張に包まれていた。昨日飛竜隊の防空網をあっさり越えた大型の未確認騎が、皇国首都を旋回した件だ。どこに所属しているか分からない、正体不明の存在から偵察を受けたことで軍は厳戒態勢にある。すでに失態を犯した東部ワイバーン部隊長の首は飛び、これ以上の失態は皇国軍に所属する全ての仕官の命に関わる。
昨日、正体不明の物体が空から進入し、首都上空を旋回して去っていったとの報告が上がっている。ワイバーンロードが全く追いつけないほどの高速、高空を侵攻してきたという。
国籍は全く不明、機体に赤い丸が書いてあったとの事であったが、赤い丸だけの国旗を持つ国など、この世界には存在しない。
軍の首脳部が頭を抱えているその時、軍部の若手幹部が息を切らして入り、皇国防衛軍陸将のメイガは耳打ちした。
メイガの許可を受け若手幹部が報告を始める。要約すると、下記の内容になる。
本日朝、本土東側海上に、巨大な船が現れた。
海軍により、臨検を行ったところ、日本という国の特使がおり、敵対の意思は無い旨伝えてきた。
捜査を行ったところ、下記の事項が判明した。なお、発言は本人の申し立てである。
・日本という国は、この地に転移してきた。
・国交樹立を考え、会談を行いたい。
本来ならばこのような連中は叩き返すのだが、その船は帆船ではなくムーの動力船のようであった。
突拍子もない話、誰もが信じられない思いではあるが、第二列強であるムーの動力船であるのなら、ムー国の保護国である可能性がある。
国ごと転移などは、神話には登場することなどどうでもよく、ムーの保護国である可能性が重視され、一旦エストシラント港に移動させ、文明国担当である第二外務局へ対応させる事となる。