日本外人部隊 作:揚物
中央暦1639年1月30日―――
エストシラント港に到着した日本の艦隊に皇国軍は戦々恐々としていた。
偵察機によって得た文明レベルから推測し、日本は歴史の経験から砲艦外交が必要と判断、未確認の国家に対して大使を派遣する事から安全性を危惧し、日本外人部隊 海洋艦隊ごと派遣が行われていた。
パーパルディア皇国の船に誘導されるも、水深が浅いため少し離れた沖合いに船を停泊。第二外務部の小型の船で接舷してきた。
「こっ、こちらの船でお送りいたします。 上陸する方々どうぞこちらへ」
船の姿を見た一般職員は恐怖に怯えながら、外交官の粟村以下数名が乗り移り港に降り立った。
「お待ちしてました。 日本の方々ですね。 私が第二外務局の課長をしております レンスと申します」
第二外務局の課長は日本の面々に違和感を覚えていた。装飾こそないものの、ムーのように整えられた服装、本当にただの文明国なのだろうか。
「外交官 粟村です。 この度は国交開設に向けた機会を設けていただき感謝いたします」
外務局の課長は部下達を連れ港を訪れていたのだが、青ざめ震えていた。外二ではなく外一でなければ荷が重い。一人の部下に急ぎ外一のエルト部長に伝えるよう走らせ、なんとか笑顔を作り上げる。
「本日の午後から会談を予定しております。 それまでの間は第二外務局でお待ち頂けるよう準備しております」
「ありがとうございます。 護衛を付けたいのですが宜しいでしょうか」
「えっ、えぇ 3名まで構いませんよ」
合図を送ると、3つの大きな人影が艦から飛び立ち、海上を飛翔し港に降り立った。
日本外人部隊 機甲師団 機動対戦車中隊 主力機 12式装甲歩行戦闘車であった。
「お待たせいたしました。 それでは向いましょう」
空を飛んできた鋼鉄のゴーレムに驚き、何人かの部下や兵士達は腰を抜かしてしまっていた。
「如何なさいましたか?」
「しっ……しつれいしました。 どうぞこちらへ」
部下達に命じ、第二外務局ではなく第一外務局案件だと分かる限りの情報を伝え、取り急ぎ準備を行う。
正午過ぎ、第一外務部
急遽呼び出されたレミールは不機嫌に報告を聞いていた。
エルト局長からムーが深く関与する可能性がある国である事が伝えられ、第二列強の保護国に准ずるするとし、列強を相手にするのと同じ対応をするとの事だ。気に入らぬレミールであったが、外二の職員が大慌てで撮った魔写にうつる鋼鉄の艦、様子を見ると一応の態度を軟化させた。
応接室に入ってきた日本の者達、一応の礼節は出来てはいるが、レミールは気に食わなかった。見慣れない服装、些かムーのものには似ているが、装飾がなく貧相なものだ。
「本日は貴国との国交交渉のご挨拶として、参りました。 こちらはご挨拶として、我が国の科学力で作り上げられた品々をお持ちいたしました。 どうかお納めください」
すでに贈与品がテーブルの上に並べられ、外一の職員達が合成繊維やビニール製の布を検分していく。
今回の会談は突如としたものであったため、日本について情報もなく、現在ムー大使に対して関わりがある国かどうか問い合わせと、軍の技術陣に対して艦船から国力の推測を急がせている。
ムーに関わる文明国と仮定し、パーパルディア皇国の国力を全面に押し出し交渉に出るも、慣れているのか飄々とかわされ、この時点で随分と交渉に慣れていることがわかる。
機嫌が悪くなっていくレミールの気配に第一のエルト部長は冷や汗を流していた。
あの艦隊群が港に停泊している以上、この外交に来た男を害する行為をすれば危険である。
そして護衛としてつれている飛翔する鋼鉄のゴーレム、あんなものが皇都で暴れられたらただでは済まない。
「ご会談中失礼致します」
調べさせていた事がある程度まとまったようだ。耳打ちされ情報が伝えられる。
「ムー国大使から日本とは関わりがないと連絡が来ました。 しかし海軍技術陣からはムー最新鋭艦と同等程度と情報が入っております」
「そうですか。 ご苦労」
日本側の説明には納得しかねる点は多々あるものの、海軍において交戦が不可能であるならば、これだけで第五列強レイフォルに准ずる対応をする必要性がある。それにムー国に裏があって関わりがないといっている可能性が高い。
日本側の説明が一通り終わる。
「馬鹿馬鹿しい。 国ごと転移させる魔法など」
「静かにしなさい」
エルトは部下を黙らせる。転移していようがしていまいが、この際大したことではない。ムー国最新鋭艦と同等と情報が出ただけで充分過ぎる。
「一旦休憩と致します。 情報が多いのでこちらとしても一度話し合いが必要です」
「当方がまとめ切れず大変申し訳御座いません」
一旦仕切りなおしをさせ、今の情報を第一の全員、そしてレミール様に報告しなくてはいけない。
退室した日本の外交官を待合室に移動させ、得た情報を元に会議に入るがすぐに怒鳴り声があがった。
「我が国の戦列艦を越えるだと! その様な事があるものか!」
「奴らは文明圏外の蛮族のはずですが」
第一外務局員からも声が上がるが、私とて納得できる内容ではない。
「海軍からの速報です。 詳細には現在も調べていると思われますが」
「ではなにか? 今まで気付かなかった国が列強に迫る力を持っているというのか!?」
「表立ってムーが認めていないだけかもしれません」
「くそ、ムーの奴ら一体何を考えている!」
ヒステリックになりかけているレミールも、ムー国が裏で兵器を輸出しているのなら、手出しが危険な事位は理解していた。
「一度使節団と言うのを送っては如何でしょうか」
「蛮族の国に我らが人員を送るというのか!」
「シランと二ソールに奴らの化けの皮を剥いでこさせよ。 ムーに無関係な国であるならルディアス陛下に懲罰を行うよう進言する」
レミールも機嫌が悪いが相手が相手であるため、まだ手を下すことは控えている。
第二列強であるムーに属する可能性が非常に高い以上、幾ら機嫌が悪かろうと手出しをすることは出来ない。第四列強たるパーパルディア皇国が総力を挙げて戦いを挑んだとしても、第二列強たるムーに勝つのは至難の技だからだ。
何よりもあの鋼鉄のゴーレム、あれだけの魔法を使える国家を相手にことを構えるのは適切ではない。
「もし暗に伏せられているなら彼らだけでは荷が重いかと。 私とシランで赴こうと思いますが、宜しいでしょうか」
会議は少々荒れてしまったが、必要なのはムーの関与を探る事。情報収集に優れる人員を使節団として送ることに決まる。
休憩を終え、国交交渉が開始された。
「日本側の言い分については理解いたしました。しかし我がパーパルディア皇国としては、信じ難い説明と言わざるを得ない」
日本の者達の表情が良くないが、それはこちらとて同じ事。
「そちらのいう使節団として10名ほど行かせる」
今回の交渉はこれで終わりとなった。