日本外人部隊 作:揚物
魔物たちの断末魔が聞こえ、次から次へと倒れて、あふれ出た緑色の血が大地を染める。
弾は、前方のゴブリンだけではなく、その後ろを走っていた者達をも貫通する。
魔物は溢れんばかりの量なので次から次へと侵攻してくるが、雨のごとき量の銃弾に倒れ、屍が積みあがっていく。
しかし魔物達の量があまりにも多く、倒してはいるのだが、死体が積みあがりすぎて壁となり、その向こう側の射撃への妨げとなってきていた。
「84だ! 84を使って吹き飛ばせ!!」
84mm無反動砲によって死体の山を吹き飛ばし、再び射線が開けるがそれでも長くは持たない。連射がさほど利かず、再装填にも少々時間の要するレバーアクション式ライフルとポンプ式ショットガンでは、徐々に距離を詰められてしまう。
「次の射撃地点に移動!」
イーネは12式の左腕に装着されている12.7mm重機銃を掃射、接近しようとしていた魔物たちを吹き飛ばし、一時的に戦線を押し上げる。
迅速に50mほど下がり、再び射撃を開始する。限られた武装で何が出来るのかを考えた結果、遅滞戦術を取りながらその数を減らし、もっとも火力のあるイーネが12式で陣地後退を援護する。
高威力の銃弾が連続して発射され、谷の入口付近までなぎ倒された。
二度目の陣地後退を行った後、馬に乗った黒い騎士が魔物の群れを突っ切り迫ってきていた。
「漆黒の騎士が出てきたぞ!」
「ライフルでは弾かれる可能性がある! 散弾銃装備の第一から第三分隊までは漆黒の騎士に火力を集中!」
どこまでやれるのか、それを見るために日本外人部隊は手も口を出していない。必要性があれば戦線に加わるのだが、今のところその必要性はない。
「なかなかやりますね」
「武器の特性もよく理解している。 塹壕の使い方もまぁ及第点か」
第三外人部隊の兵士達は時折飛んでくる投擲された槍や矢から逃れ、怪我人もまだ出てはいない。
次の陣地まで下がったところで、谷の出口に付近に巨大な生物の姿が見える。
「イーネ総隊長! ゴルアウスらしき姿を確認しました!!」
12式装甲歩行戦闘車もそれなりに大きいのだが、その大きさは四脚の10式装甲歩行戦闘車に匹敵する。
ゴルアウスと思われる魔獣の頭部が光る。
「全員伏せろ!
砲弾のような魔法の塊が土壁にぶつかり、飛び散った土嚢や土塊によって、塹壕に伏せていた兵士達の体のいくらかが埋まってしまうが、それでも犠牲者は居なかったようだ。
日本外人部隊も状況を確認していた。
「ゴルアウスらしき魔獣を確認した。 まずは10式が攻撃を行う」
10式装甲歩行戦闘車が車体をロック、砲塔に装備されている低反動140mm滑腔砲の照準を、ゆっくりと谷を抜けてくるゴルアウスに合わせ発砲した。
魔力が篭っていないため、大した攻撃ではないと脅威を低く見たゴルアウスは、体を貫かれ衝撃で千切れ飛んでいく。
日本外人部隊の90式戦車改をブリキ缶と嘲笑していた、第三次大戦で最高の威力を誇ったドイツ製の140mm砲は、装甲歩行兵器に置いても比類なき強さを誇っていた。
「予想以下だったか。 しかし第三外人部隊も良く踏ん張る」
「武装に関しては充分といったところでしょうか」
「狙撃銃の許可をしてもいいかもしれんな。 おや?」
いままで果敢に攻めてきていた魔物が敗走していく。
「魔物の生態はたしか、もっとも強いものが倒れた時、逃げ出すはずだったが、これで終わりのようだな」
状況を確認している中、ゴルアウスの上に乗っていた人影が白い布を掲げている。
「あれは、白旗か?」
旧世界共通の降伏手段に疑問を思いながらも一旦攻撃をやめ、白旗を揚げこちらに向ってくる一団を迎えた。
筆頭と思われる者は額に角を持ち、恐らく鬼だと思われる
降伏してきた敵軍の知将バハーラの説明は要約すると下記のとおりであった。
〇 ある日、訳あって、アニュンリール皇国のダクシルドと呼ばれる者によって、額に魔族制御の宝玉を埋め込まれ、本当に必要な記憶を消された。そして操られていた。
よって、鬼族は他種族や魔族とは関係が無いため、エスペラント王国を攻める理由が無いという。ゴルアウスを倒されたとき、破片で宝玉が壊れダクシルドの制御を離れる事ができた。
問題はここからだった。
〇 ダクシルドによって自分の種族以外を無差別に殺す祟り鬼神が解き放たれ、600体もこちらに向っている。
〇 祟り鬼神はゴルアウスより大きく、素早く防御力も力も魔力も大きい。
〇 エスペラント王国は、古の魔法帝国復活の為のビーコンが埋まっている。それをダクシルドは狙っている。
〇 我々は操られたとしても、迷惑をかけた贖罪として、祟り鬼神と戦う。
バハーラは立ち上がり、漆黒の騎士たちに指示をしていく。
今回の戦いを生き延びた約70名の漆黒の騎士たちは、エスペラント王国を背にして谷に向かい、隊列を組む。
「話の筋は一応通っているか。 念のため第三外人部隊は監視をするように」
「さて、我々の仕事のようだ。 機動対戦車中隊 第601中隊 全機戦闘体制! 本隊に航空支援の連絡を入れろ!!」
「敵の数は600! 空爆から逃れた敵を仕留めるのが仕事となる!!」
2時間後ー、
「来たぞーーっ!」
城壁の上で監視していた者が、遠くの方から出る土煙を確認する。
谷の間に土煙があがり、それが徐々に近づいて来る。その量は増え続ける。
エスペラント王国の騎士達は恐怖に怯えている。
「空爆が来るぞ! 各員塹壕の中に伏せろ!」
F-35Cによる空爆が開始され、谷の大地が盛り上がり、雷鳴の轟きと共に広範囲が消滅、上空へ土を運ぶ。
連続した噴火のように、あまりにも広範囲の爆発が発生した。
数度に渡って飛来したそれは、大地を焼き尽くし、 先ほど侵攻の土煙が上がっていた付近は数度の爆風に見舞われる。
「北西方向から、祟り鬼神と思われる者3体出現」
谷を通過せずに来たであろう祟り鬼神3体が、北西方向の目視範囲に現れる。
「さて、残りは我々の仕事だ。 3機は迎撃に、残る5機は谷の空爆でまだ活きているものを仕留める」
フォルクスパンター3機は加速、陣地を一気に離れると先頭を走る祟り鬼神に、両腕に直接接続されているGAU-8A 30mmガトリング砲二門を掃射。
貫通こそしないものの血が噴出し倒れる。確かに体は強固のようだが、どこまでいっても生物の範囲であることにかわりはないようだ。280kmもの速度が出るわけでもなく、短時間とはいえ飛行する事も出来ない。
こちらに対して危険性を認識した残り2体の祟り鬼神が大口を開き、何かを魔法を使うと判断しフォルクスパンターが跳躍すると、跳躍前に居た場所の地面が抉れ吹き飛ぶ。威力も速度も確かにゴルアウスよりも高いらしい。
飛行体勢のまま30mmガトリング砲を狙いを定めるが、高速で走りだし射線から外れる。
150kmは出ているだろうか、しかし高速で動いている最中は魔法に意識を向けることもできないらしく攻撃をしてこない。
空中にあるフォルクスパンターからKEM連総ランチャーが放たれ、誘導ミサイルによって残る2体の祟り鬼神も体を四散させ戦いは終わった。