日本外人部隊   作:揚物

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奇人変人で天才

 翌日、退院することになるとサフィーネがイーネを迎えに来ていた。

 案内された場所には、非常用バックと武器が置かれていた。

 レバーアクション式ライフル MODEL 94 Carbine スコープも壊れていない。儀仗用の剣、非常用バッグ、SIG SAUER P320、どれも大丈夫。すべてを身に着けなおす。

 王宮科学院が話を聞きたいということで、馬車に乗り自らが落下したという場所に向かうこととなった。

 馬車に便乗し、いくつかの城壁を超えた先は町ではなく農地が広がっていた。

 そのずっと先には12式の姿が見えるのだけれど、周囲には人だかりがある。

 

「あそこにいる人たちは?」

 

 イーネが疑問に思ってサフィーネに尋ねる。

 

「王宮科学院と憲兵署のものだよ。 君が乗っていたあれについて話が聞きたいらしいんだ」

 

「あれは、説明は最低限出来るとは思いますが……」

 

 イーネも使う側であって構造はさっぱりわからない。

 むしろ今背負っているレバーアクション式ライフルの構造や原理も、雑学程度には習っているものの、詳細となるとさっぱりであった。

 

「それで十分だよ。 まぁちょっと癖がある人が訪ねるとおもうけど」

 

 イーネ達は到着して馬車から降りる。

 遠目に見ても12式装甲歩行戦闘車も特に壊れている様子もないけれど、周りにいる人たちの中に、以前剣を向けようとした者たちが居た。

 

「あれでも憲兵署の者だ。 我慢してくれないか」

 

 サフィーネがそっとイーネに伝えると、イーネは少しため息をつきながら頷いた。

 

「イーネ、こちらが王宮科学院のセイ様だ」

 

 老け方からしておそらく年上だとはおもうのだけれど、少々猫背で細身なので戦士にはおもえない。

 

「王宮科学院の技監、セイ・ザメンホフだ。 よろしく、異国の軍人君」

 

「クワ・トイネ公国 防衛騎士団団長そして第三文明圏外人部隊 総隊長 イーネ・コルメス です」

 

「それで話を聞きたいのだが、これは君の国が作ったものかい?」

 

「いいえ、これは日本という国で作られ、第三外人部隊に供与されているものです」

 

「そうか……、しかしすごいな! 何がどうなっているのかさっぱりだよ! 残留魔力もまったく検出しないし、まったくもって構造を理解できないよ!」

 

 悪い人ではないようだが、興奮気味に話すセイという人物に少し引いてしまう。

 

「わかってもらえたと思うけれど、こういう人だが悪い人ではないよ……」

 

「確かに、わかりました」

 

 12式を見上げながら興奮しているセイに気づかれないよう、サフィーネがイーネに耳打ちした。

 少し落ち着いたのか、呼吸を整え直してこちらを向いた。

 

「ところで、他にも教えてほしいものがあるんだ」

 

 セイは布がかけられている大きな物体をから、布を取り払った。

 引きずってこられたのか、少し土にまみれているけれど、それは小型の物資コンテナ。布だと思っていたのは、どうやらパラシュートだったようだ。

 

「おそらく君に関わるものだと思うのだけれど、開け方わかるかい?」

 

「えぇ、確かに私と共に投下されたものです。 開け方もわかります」

 

「そうか! おねがいしていいかな!!」

 

 近づこうとすると、騎士が剣を抜いた。

 

「勝手な行動をとるな!」

 

 確かジャスティードと言っていた男だけど、どうもこちらに突っかかってくる。

 女だからと騎士団では多くの男から嫉妬や嫌がらせを受けてきた、このような男を相手にしていても仕方ない。

 

「ジャスティード! セイ様に言われて開けるのです! なぜ邪魔をするのですか!!」

 

 サフィーネに言われ、ジャスティードが剣を引くのを確認したのち、コンテナを開ける。

 中には実戦試験する為に、コンテナに積み込まれていた、パーカッション式リボルバー、コルトM1851、使い方のマニュアルも一緒に入れられている。

 あとは食料と不整地だった場合の4輪バギーが入っていた。

 中身を取り出し、用意されていた小さなテーブルの上に一式だけ広げて置く。

 

「これは、小型だが我が国で作ったマスケット銃によく似ている。 いや、小型化され、さらに洗練されてる」

 

 技監のセイは銃に触りながら、口に出しつつ少し見ただけで大まかな構造を理解していく。

 正直イーネは何をいっているのかさっぱりであった。

 

「ここが球をいれるところで、ここに火薬とすると、着火はこちらを利用しているのか。 だとすると、一度装填すれば……、実に素晴らしい!」

 

 興奮している技監セイを呆れた様子で見ながら、イーネはコンテナの中に収められている物が、騎士や兵士によって外に運び出されていくのを黙ってみていた。

 少し遠目に見ても壊れている物はないようで、組み立て式通信機も無事なようでほっと一安心した。

 通信機についてどう説明したものかと考えていると、馬に乗った騎士がこちらに向かってきた。

 かなり焦っているのか、馬は限界まで走らされているようだ。

 

「サフィーネ様! 騎士ジャスティード! 魔物の襲撃です!!」

 

 怯むジャスティードとはことなり、サフィーネは即座に走り出した。

 

「南門防衛騎士隊遊撃隊第5小隊! 出撃状態をーー」

 

 魔法通信で連絡を取りながら南門へと走っていく。

 イーネも援護をするべきと考え、兵士達によってコンテナから運び出されていたバギーに向かって走ると、騎士ジャスティードは先回りし剣に手をかけた。

 

「貴様! 勝手な行動をするな!!」

 

 騎士ジャスティードはイーネに剣を向けるが、今度はイーネも容赦することなどなく、儀仗用の剣を抜き放ち、ジャスティードの剣を叩き飛ばすとその首に当てる。

 一秒にも満たない高速の技術に、ジャスティードは身動き一つとれず、唖然としながらその場に立ち尽くした。

 

「私の邪魔をするな!」

 

 どの国でも女性の騎士は軽んじられる。

 イーネは公爵令嬢であるために得た名ばかりの団長と言われるのが悔しく、努力し続けたイーネの剣術や弓術は達人の域に達している。

 その為結婚適齢期を少々過ぎかけてしまっているものの、その実力をクワ・トイネ公国で認めない騎士は誰一人としていない。

 イーネは邪魔なジャスティードを蹴り飛ばすと、4輪バギーに飛び乗りサフィーネの後をおいかけた。

 

 トーパ王国近隣の森で最低限の実戦テストを行った結果では、オークであればレバーアクションライフルで十分な効果は認められた。

 少なくとも魔物という生物ならば倒せるはず。

 イーネはバギーを走らせ南門へと急いだ。

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