日本外人部隊 作:揚物
飛行機に驚き、兵士たちが遠巻きに見ている中、外交官と物資の到着により、呼ばれていたイーネもまた、持ち込んでくれた礼服に着替え王城へ向かった。
要塞のような美しい城の入り口に馬車が止まり、中から降りると一目見ようと集まっていた貴族たちの声が聞こえてきた。
「あれが黒騎士を倒したものか」
「貧相な服装だ。 どこの区域の者だ」
「どんな野蛮な魔法で倒したのやら」
イーネは時代に合った服装ではあるが、日本外人部隊の外交官はスーツを着用しているため、絢爛豪華な服を着ている周囲からしてみればかなり浮いている。
それを悪く言う者達に、イーネは小さくため息をついた。
王の間に案内され
「第三文明圏外人部隊 総隊長 イーネ・コルメスと申します」
クワ・トイネ公国式ではあるが、貴族の礼節に従いイーネは挨拶を行う。
公爵令嬢であるイーネの洗礼された動きに、貴族や王族は驚く。
「日本外人部隊 外交担当官 内妹と申します」
外人部隊の中佐であり外交官である内妹もまた、この状況に臆することなく丁寧に挨拶を行う。
「この度は、我々の落ち度によって、貴国にご迷惑をかけたことを謝罪いたします。 また救助していただけたことに感謝をいたします」
「よい。 そのおかげもあり、我々にとって倒すことが困難であった漆黒の騎士、それを討伐することができた。 これもまた運命であろう」
「ご寛大な考え、感謝を致します」
「漆黒の騎士を倒したという武器、なんというものか」
「MODEL 94 Carbine及びSIG SAUER P320と申します」
「実に興味深い。 余にも触らせてくれぬか」
「大変申し訳ありません。 外人部隊の装備は全て、国家の供与品であり、一時的でも所属しない者へ渡す事を禁じております」
外交官である内妹がイーネの代わりにこたえるが、国王という立場の存在に対して、断りを入れることに王の間に居る貴族は驚きの表情を浮かべる。
「そうか、それは残念だが国の供与品であるなら、この場で許可は得られぬだろう」
王は残念だと表情に浮かべるが、すぐ気持ちを整え直し話を続ける。
「外の国があることを言ってもすぐには信じないであろう。 その為に三つ頼みたいことがある。 西方に魔物達の町があり、その数をどんどん増やしている。 狙いはこの国だろうが、総兵力が余りにも多く、戦力比を分析した結果では、王国の8割が失われ、多くの民の命が失われると結果が出た」
王の間にいる貴族たちの表情が暗い。
「魔王軍にもこの場所がバレるのも時間の問題だろう。 もはやこの国は安全とは言えぬ」
「魔王軍ですか。 すでにトーパ王国にて討伐が完了しており、現在残党軍の排除が進んでいます。 おそらく別の軍でしょう」
「なっ、それはどういうことだ!?」
「魔王はすでに討伐し、残党軍も現在排除が進んでいます。 長くかからずトーパ王国まで、魔物の討伐も終わるでしょう」
外交官である内妹の話に唖然としている。
その為討伐した期日と魔物の動きが変わった期日を宰相とすり合わせると、やはり魔王討伐とほぼ同時期に、魔物の撤退方向の変化と軍事教練が一致していた。
「では、我々が対処いたしましょう」
「よいのか? そち達には理由もあるまい」
「魔物が居ては、魔帝遺跡の発掘に問題が出ます。 ですが、魔物討伐後、王国西方面に外人部隊の基地建設の許可を頂きたく願います」
日本外人部隊にとって、飛行可能な基地がグラメウス大陸にある事が望ましい。
残念ながらトーパ王国周辺には適切な立地がなく、建設する最適な場所を探していたのだが、水も豊富であり王国西側はなかなか良い場所であった。
「しかし、そのような事、許可できるわけが」
宰相は許可しかねるという表情をしている。
「失礼ですが、王国の危機でありながら、このようなやり取りを必要とするのは、国家運営として如何かと存じますが」
「しかし、宰相の言うことも一理あるのだ。 貴殿らの国家と力を知っているのはまだわずかであり、周知するにも国外に国家がある事をなかなか理解できまい」
「では、私と銃の的当てをしてはいかがでしょう。 貴族や軍の者が集まれば、一度に周知と彼らの技術を理解できるかと」
ザビルの言葉に何か裏を感じるものの、それで済むなら親善として行えばよいとかんがえられる。
「イーネさんが良いでしょう。 外人部隊の兵装では、理解するのも難しいでしょうから」
アサルトライフルを理解できるとは思えず、比較的単純なレバーアクション式ライフルで充分だと判断された。
大まかな話し合いが外交官と宰相の間で行われ、
サフィーネは王城の前で待っており、
「この国の防衛に手を貸してくれると、不利な戦いに感謝をしてもしたりない」
「いえ、大丈夫だと思います。 日本外人部隊は、とても強いですから。 それに私も結構できるんですよ」
笑顔で答えるイーネに、サフィーネは笑顔で答える。
仮設駐屯地 訓練場
部隊展開のために割り当てられた西方農業地区、C-2やオスプレイによって物資が運び込まれ、仮設であるものの最低限の設備はそろいつつある。
「ではイーネさん。 久しぶりに訓練をしましょうか」
400m先に水が入ったペットボトルが置かれる。
「スコープの調整に一発、弾道のブレに1発、以上で当ててください」
イーネは射撃位置に着くと
「あれに当てるなんて無理としか思えないのだけれど」
サフィーネはイーネの横で400m先のペットボトルを眺めている。
「このライフルなら、これが当然の訓練距離なんです。 許可が下りればサフィーネさんにも試射してほしいのですけれど、なかなかその許可も下りなくて」
「簡単に許可が下りないことは仕方ないよ。 それよりイーネ頑張って」
イーネは呼吸を整え、狙いを定めゆっくりとトリガーを引く。
弾丸はペットボトル右40cmを抜けてしまう。
「本当に届くんだね」
渡された望遠鏡でペットボトルのすぐ後ろに置かれている弾止めに穴が開いているのを、サフィーネは確認して驚いている。
イーネは静かにスコープを調整、再度射撃位置に付き、呼吸を整えトリガーを引く。
ペットボトルのすぐ右横を抜ける。
「風でぶれて……」
再びレバーを動かし薬莢を排出、呼吸を整え再びトリガーを引く。
ぎりぎりペットボトルの端に当たり中身がこぼれる。
「当たったじゃないか! 銃とは凄いものだな!」
「えぇ、でもぎりぎりです。 日本外人部隊の方達なら、二発目には確実に当てていると思います」
「そんなに違うの……。 しかし銃を我々も使う事ができれば、魔物の脅威に対して抵抗できるのだけれど」
サフィーネが望んでも、日本の武器輸出は非常に厳しい。
これだけはどうしようもないことだった。