日本外人部隊 作:揚物
『では……はじめぃ!!』
イーネは支給されているレバーアクション式ライフル MODEL 94 Carbineのスコープを調整し、的に向かって構える。
ザビルはイーネが火薬を入れていない事に気付く。
「これは……相手にならないな。」
ザビルがつぶやいた時、会場に乾いた音が鳴り響く。
Carbine 30-30弾は空気を裂き、安定して飛行し、標的の皿を叩き割り、遥か先の地面に落下、小さな煙を上げた。
「2人ともすごいな。」
「しかし、ザビル様の方が、発射炎が多く、威力も高そうだ。」
「お!?次は100m先だぞ!」
100m先に皿が出る。ザビルは緊張の面持ちで銃を構える。
一時的に呼吸を止め、銃のブレを極限まで少なくし、引き金を引く際のブレも起こらないよう細心の注意を払ってゆっくりと指を絞り、射撃を行った。
「ちっ……!!」
ザビルの銃弾は的を外れる。しかし、1分以内に撃破すれば点数は入るため、彼は迅速に銃身を掃除し、次弾を装填、落ち着きをもって構え、射撃する。
弾は皿の右端に当たり、破壊する事に成功した。
その光景を見て王はつぶやく。
「銃士ザビル……さすが天才だな。凡人であれば、あの大きさの皿、そして距離であれば10発に1発当てる程度がやっとだろう。
たったの2発で命中させるとは……。さて、異国の兵はどうかな?」
王の眺める前で、イーネと名乗る兵が構え、射撃する。
軽快で大きく、そして乾いた音がした後、たったの1発で皿が破壊される。相変わらず発射炎は少なく、銃への給弾作業は無い。
銃士ザビルは焦りの表情を浮かべる。
『次は200m先です!』
司会は簡単に言うが、はっきり言って的は点にしか見えない。いくら正確に狙いをつけようが、球形弾の空気のブレだけで外してしまう可能性が高い。
ザビルは射撃線に付く。
「ぐっ!やはり小さいな。」
200mともなれば、僅かな手振れでも……1mmのズレで着弾地点は大きく外れる。
銃のブレを抑制するため彼は息を止め、ゆっくりと引き金を引いていく。
命中せず……ザビルはすぐさま次弾を装填して構え、そして撃つ。
2発目 3発目も外し、射撃開始から1分が経過したため、時間切れ、命中無しの判定が出る。
『おおっと!さすがの天才も距離200mは難しかったようです』
観客から長い溜息が溢れる。
「そんな……ザビル様が外すなんて……。」
「いくらザビル様でも無理よ、あの的点にしか見えないもの。」
人々は様々な感想を述べる。
「しかしさすがザビル、3発もの連射をやってみれるとは」
イーネの出番となり、射撃線に付き、1撃で的に当て粉砕した。
『おおっと!!信じられません!!銃士ザビルが負けてしまいましたぁっ!!!』
場がどよめく……。
競技を続ける中、的は300m先となり、1つではなく7つもの的が同時に現れる。
『勝負はつきましたが、続けますか!?』
仕方ないとイーネは手を上げ、続ける意思を表す。
片膝をついて弾を込めなおし、スコープを調整しゆっくりと構える。
軽快な発砲音が連続してこだまし、見事に7つすべてを叩き割った。
常識を遥かに超える銃の性能に、銃士ザビルは固まる。
場がざわつくが、王が手をあげたため、場が静まる。
王は会場に向け、話始める。
「銃士ザビル・アルーゴニーゴ、外人部隊の総隊長 イーネ・コルメス。2人の競技、誠に見事であった。 たぐいまれなる才覚を発揮し、互いに素晴らしい検討を見せてくれた。このエスペラント・ザメホフ、そなたらに惜しみない称賛を送りたい」
二人を称える拍手が巻き起こる。
「さて……、今日この場に集った王国臣民たちよ」
突然すぎる歴史を覆す王の発表に、場は静まり返る。王は続けた。
「クワ・トイネ公国! クイラ王国! アルタラス王国! パーパルディア皇国! その連合軍が今この国に向かっている!」
大騒ぎになっては困るとして、意図して日本の名は伏せてエスペラント王国には伝えられていた。
「まさか……まさか……。」
場のざわつきは最高潮に達する。王は続ける。
「もうお気づきの方も多いだろう。これは……我が国に伝わる救いの預言に酷似している。私は民が平穏な暮らしを取り戻せるよう、総力を挙げて国を導く事をここに誓う!」
王の演説は終了した。
数日後、ようやく魔王残党軍の討伐が完了し、第三文明圏外人部隊がエスペラント王国に到着した。
「まずは奪われている鉱山区画の奪還を行います。 作戦は一週間後、作戦行動は第三文明圏外人部隊で対応しますが、それまでに基礎訓練を行います」
旧来の戦術ではなく、フリントロック式マスケット銃を有効に使える方法、戦術面の立て直しとなる。