日本外人部隊 作:揚物
漆黒の騎士の協力を得ながら順調に侵攻が進んでいる中、魔物の軍勢による防衛網が張られていた。
しかし単純に時間稼ぎなのか、数が多いだけで黒騎士もおらずオークキングだけが確認できる。
標的逃亡の可能性が考えられ
「あと少しで到着します」
魔物の軍勢を討伐しながら、漆黒の騎士の誘導を受けている中、突如火山が噴火を起こした。
非常事態であるが、所定の場所まで強行突入し、翼が生えた人間たちを捕える事に成功。主犯格と思われたのだが、事情を聴く暇もなく火山から巨大な生き物が姿を現した。
三つ首を持つ巨大な姿に対応の方法が分からず、一旦帰還しようとしたのだが、大きく開いた口周辺が光り輝き、山の一部が消し飛ぶ光景が広がった。
放置しておけばエスペラント王国に危険が迫るとして、急遽501及び502に対象生物の駆除命令が下った。
501と502対戦車機動中隊は二手に分かれ、低反動105mm滑腔砲を巨大な獣に撃ち込む。
巨体の割に動きは速いのだが、さすがに砲弾を回避できるほどではないらしく、体に何発も食らったことで動きが鈍る。
しかし動きが止まる事はなかったのだが、口部が光り輝き始めると動きが止まる。
ハイマックスⅡの低反動120mm滑腔砲を頭部に向け撃ち放つ。
再生力は高くとも耐久性は皆無らしく、低反動120mm滑腔砲によって頭部が弾け飛ぶが、木の枝が伸びるように組織が増殖し、数分で元に戻ってしまう。
「再生……能力を確認、低反動120mm滑腔砲では不足。 でいいのだろうか」
流石の状況に歴戦のパイロットも困惑し、報告にも疑問がついてしまう。
「メキシコサラマンダーと同じだと仮定するなら、脳や心臓の一部も再生できる。 3個の脳みそがあるなら、頭部をほぼ同時に破壊しないと死なないはずだ」
エスペラント王国周辺の魔物を調べるために、同行していた生物学に詳しい隊員が状況を確認し、上層部に伝えた内容が即座に現場隊員に伝えられる。
命令が伝えられると同時に601中隊が正面からGAU-8A 30mmガトリング砲を連射しながら接近、引き付けられた3個の口部が光ると同時に、502中隊に所属するハイマックスが跳躍、3個の頭部を誘導式ATMで頭部を破壊、続いて501中隊に所属するハイマックスⅡが跳躍し、首から胴体をATMとロケット弾によって破砕する。
注意深く状況を制止するが、再生する様子もなく噴火した火山に落ちていった。
無事に魔物の排除及び主犯格の捕縛に成功、エスペラント王国への引き渡しも考えられたが、処刑する可能性が考えられたため、情報の聞き取りを行うため日本側が預かる事とした。
エスペラント王国 王城
市民たちは一列に並び、衛兵たちはラッパの音を鳴らす。2階や3階の窓からは紙吹雪が舞い、人々は沸き立つ。
王城の迎賓の間において、戦勝の宴が催されていた。
参加者は自衛隊幹部や外交官数名が混じっているのだが、特に女騎士であるイーネは凄いもてようであり、多くの男達が近付こうとほとんど身動きを取れないほど囲まれていた。
預言書に従い、導きの戦士を伴侶として国を繁栄に導く伝承があるため、名誉と権力、そして家の繁栄を考え貴族たちが言い寄っているのだ。
しかし伴侶とはつまり一緒に連れ立つ者であり、結婚相手というわけではない。
「……離れなさい!」
さすがのイーネも気分を害し、礼を逸する行為の数々に声を荒げた。
男たちを押しのけ、その場を離れると日本の外交官達がいる場所を通り抜け、そのまま部屋の壁際に歩いて行った。
ドレスを着て参加していたサフィーネは壁の花となり静かにしていた。時折寄ってくる男を断っていたのだが、そこにイーネは貴族の男たちを振り切り訪れる。
「貴族の相手は大変でしょう」
苦笑しながらサフィーネはイーネの方を向く。
「まったくね。 戦いもせずにおべっかばかり、外人部隊の面々を見習ってほしいわ」
イーネからしてみれば、第三外人部隊に所属する貴族の子や一般人のほうが、みな努力と訓練をしているだけ好意的に見る事ができた。
それより501や502中隊に所属し、責任者であり戦闘にも参加する隊長の方々に好意を持っていた。
「これは、我が国に保管されている、過去世界を救った太陽神の魔写です」
丁重に魔板を取り出し、席に広げる。中には見覚えのある戦艦の写真がカラーで写っていた。
「これは我が国に残る国宝です。鮮明な魔写で写した太陽神の使いが使用した鋼鉄の神船です。彼らの放つ「カンホウ」と呼ばれる超大規模広域爆裂魔法はあまりにも威力が高く、魔軍を消し去ったと言われています。」
「……これが過去にあなた方を救ったのですか?」
「はい、我が国に神話として残る歴史です。」
日本国の各人は、見覚えのあるその写真を見て、確信を得ていた。
彼らの前には、カラーで旭日旗までもが鮮明に映る、歴史上世界最大の戦艦の写真があった。
「……やはりか」
WWⅡ時代の将校から一人、異世界に行き戦ったといっていた100歳近い老人が居た。
家族はボケ老人の戯言と片付けていたが、異世界転移後情報部が聞きつけ、長い時間をかけて出来うる限りの情報を得ていた。
写真に写っていたのは、当時建造されていなかったはずの 改大和型戦艦 紀伊 である。
後日、日本国政府は、エスペラント王国と国交を結び、また鬼人族の国とも国交開設に向けて交渉を開始する事となる。
また、鬼人族からの願いであるアニュンリール皇国に幽閉されている鬼姫について語られ、その国家の正体がはっきりした。
ラヴァーナル帝国の末裔であり復活を目論んでいる非常に危険な国家であると。
幸いダクシルドの捕縛にも成功し、現在”丁寧”かつ”丁重に”日本外人部隊が情報の聞き取りを行っている。
日本 首相官邸
「アニュンリール皇国がラヴァナール帝国に属する国家とは」
「技術程度が読めないのが難しいところです。 しかし衛星写真で見る限り、神聖ミリシアル帝国と同じ、もしくは一歩進んだ文明程度に見えます」
「SR-71は飛ばせないのか?」
「補修部品がありません。 あれは元々米軍によって保管されていたものですので……。 ハンドメイドで足りない部品を作るとなると半年以上かかるかと」
「それでもかまわん。 鮮明な画像と情報が欲しい。 低空で飛ばして出来る限り情報を集めるのだ」
「鬼人族からの依頼でもある鬼姫の奪還もどうにかしませんと」
「我々に潜入に向いた特殊部隊は居ない。 どうしたものか」
「まず外交圧力で穏便に鬼姫を引き取りましょう」
「僕の星に付きましては、来年度中に破壊が可能かと」
しなければならない案件が増え続け、皆頭を抱えている。
「……やはりAFTAのようにはいかん。 核がなければ手に負えない事態もありえる」
「大陸間弾道弾の開発だけはすぐに進めましょう。 国民への周知がありますが、開発に時間が掛かりますので」
「……そうだな。 国民への公表と開発を急ごう。 我々は家畜ではなく、人として生きる権利があるのだから」
数日後、国民にラヴァーナル帝国の最新情報が発表され、ICBM(MIRV)の開発が開始された。
防衛省
「胃が痛いな」
報告された情報から、第三外人部隊への武器供給は上手くいき、第三文明圏に戦力を割く必要がなくなったのだが、新たに判明したアニュンリール皇国との戦争にも備えなくてはならなくなった。
国家の方針として多額の予算が付いてはいるが、避ける事の出来ない戦争の準備は精神的負担となっていた。
「海洋艦隊は第三まで、機甲師団も航空旅団も三個師団まで、育成から開発に量産と終わりが見えない」
「時間が掛かる案件ばかりです。 グラ・バルカス帝国との戦争は早急に終わらせなくてはなりませんね」
「ミリシアルとムーに期待するしかありません。 最悪技術協力も考えましょう」
以上で寄り道が完了しました。
それでは海戦に戻ります。