日本外人部隊 作:揚物
繁栄を象徴したかのような、豪華絢爛であり、極めてデザイン性、そして威厳を考慮して作られた帝国文化館、日本外務省の阿部と日本外人部隊中佐の内妹は、同帝国文化館内の国際会議場に足を運んでいた。
今回の先進11ヵ国会議は、数日に及び、最初に外交担当の実務者級の会議が行われる。
そこで話を詰めた後に、後半で外務大臣級の会議と意思決定をもって、会議は終了する。
「これより、先進11ヵ国会議を開催します。」
帝国文化会館国際会議場で、会議の開始を始めるアナウンスが流れる。
先進11ヵ国会議、世界の行く末を決める会議(この付近の国が認知している世界)として、ほとんどの国が注目する会議である。
会議は1週間に及ぶ予定となっている。
同会議は参加しただけで、大変な誉であり、常時参加国は、1ヵ国を除き列強と呼ばれていた。
日本国は、本会議に参加はしているが、毎年参加が決定している訳ではなく、本会議で日本国とグラ・バルカス帝国が常時参加国として承認される予定である。
パーパルディア皇国が国力を落とし、レイフォルが国として消滅したため、常時参加国は現在のところ、
○魔法文明国 神聖ミリシアル帝国(中央世界)
○竜人の国 エモール王国(中央世界)
○科学文明国 ムー(第2文明圏)
の3ヵ国のみである。
今回の先進11ヵ国参加国は、
○神聖ミリシアル帝国(中央世界)
○エモール王国 (中央世界)
○ムー (第2文明圏)
○グラ・バルカス帝国(文明圏外、第2文明圏西側)
○日本国 (文明圏外、第3文明圏東側)
○トルキア王国 (中央世界)
○アガルタ法国 (中央世界)
○マギカライヒ共同体(第2文明圏)
○ニグラート連合 (第2文明圏)
○パーパルディア皇国(第3文明圏)
○アニュンリール皇国(文明圏外、南方世界)
となっていた。
力のある国のみが集められ、開催される世界会議の開催に、会場の空気も張り詰める。
阿部は、会議場を見渡す。
人間以外の存在も、会議場には代表として来ており、異世界に来たのだとつくづく実感させられる。
エモール王国の使者が手をあげ、議長が指名し、発言権を得る。
同国は、竜人の治める国であり、国家の人口がたったの100万人であるにも関わらず、列強に名を連ねる強国である。
エモール王国の使者は、立ち上がる。
同人は身長が2mほどもあり、頭からは角が2本生え、目も髪も赤い。
「エモール王国のモーリアウルである。今回は、皆に伝える事がある。重要な事であるため、心して聞くがよい。」
場が静まる。
「先日、空間の占いを実施した。」
エモール王国の、国家の総力をかけて行う空間の占いは、その的中率が90%代後半にも及び、各国の代表はかれの発言に聞き入る。
「その結果だが……古の魔法帝国、ラヴァーナル帝国が近いうちに復活するとの結果が出た。」
会場がざわつく。
「時期や、場所は、空間の位相に歪みが生じており、判然としないが、我らの計算だと、今から4年から17年までの間にこの世界の何処かに出現するだろう。
奴らに、どれほど抗する事が出来るのか、伝承がどれほど本当なのかは不明だが、奴らの遺跡の高度さが、その文明レベルの規格外の高さを物語っている。
各国は、いらぬ争いをする事なく、軍事力の強化を行い、世界で協力して古の魔法帝国、ラヴァーナル帝国復活に、準備をするべきである。」
会場はざわつき、様々な国の大使がうなずく。
そんな中、笑い始める20代後半の女性が一人。
「くっくっくっ……ハーっはっはっは!!!」
会場参加者の多くが、非難的な目で彼女をみる。
「いやいや、失礼、私はグラ・バルカス帝国外務省、東部方面異界担当課長のシエリアという。
魔帝だか何だか知らんが、過去の遺物を恐れるとは、その現地人のレベルに唖然としている所だ。
そもそも、占いなぞ、そんなものを国際会議で発言する神経が私には理解が出来ないよ。
しかも、この世界の列強と呼ばれる国が、この発言。
我が国にあっさりと滅ぼされたレイフォルも、弱かったが、列強と言われていたらしい。
世界会議……か。レベルの低さがしれるな。」
「新参者が何をいうか!この礼を知らぬ愚か者め!!」
エモール王国と同盟国、トルキア王国の使者がグラ・バルカス帝国のシエリアを罵る。
会議は紛糾し、議長が場を鎮める。
「馬鹿らしい会議だ。 どこも理性的ではない」
阿部は、外人部隊 中佐の内妹に話かける。
「前世界では、AFTAとAPCの会議でもありえない進行状況です。 どうやら文明国家と言ってもまだまだ発展が足りないのでしょう。 エルトさん、会議とは常にこのようなもので?」
前回出席したレミールとエルトも、このように荒れた会議を見るのははじめてらしく、驚きの様子だった。
「いえ、通常は粛々と進められており、このような事になる事などありませんでした」
日本国の2人は冷めた目で会議を静観する。
場が静まり、ムーが手をあげ、発言権を得る。
「我が国、ムーは、先進11ヵ国会議において、グラ・バルカス帝国に関する非難声明を発し、同国に対する懲罰のため、2年以上の交易制限を発議いたします。
理由としましては、第2文明圏イルネティア王国、王都キルクルスに対する大規模侵攻です。
国家間同士の戦争ではあるが、このところ、彼らは、やりすぎだ。
このまま彼らを許すと、世界秩序を破壊する可能性があります。」
神聖ミリシアル帝国も手を挙げる。
「確かに、グラ・バルカス帝国は、世界秩序を乱しすぎている。
このまま第2文明圏国家を侵攻し続けていると、我が神聖ミリシアル帝国も介入せざるを得なくなる。
我が国は、ムーの提案に賛成するとともに、グラ・バルカス帝国に関し、第2文明圏の大陸から即時撤退を求める。」
誰もが認める世界最強の国の介入、それを聞いただけで、すべての国が震えあがり、剣を治める事がほとんどだった。
全員の視線がグラ・バルカス帝国の美しき外交官シエリアに向けられる。
彼女はゆっくりと発言する。
「一つ、最初に伝えておこう。
我が国は、今回、会議に参加し、意見を言いに来たのではない。
この地域の有力国が一同に会するこの機会に、通告しに来たのだ。
グラ・バルカス帝国 帝王グラルークスの名において、貴様らに宣言する。
我らに従え。
我が国に忠誠を誓った者には、永遠の繁栄が約束されるだろう。
ただし、従わぬ者には、我らは容赦せぬ。
沈黙は反抗とみなす。
まずは尋ねよう。今、この場で我が国に忠誠を誓う国はあるか?」
あまりにも突然の、あまりにも非常識な発言に、会場は非難の嵐が吹き荒れる。
場は騒然とし、怒号が飛び交う。
机が叩き割られるような大きな音に会場は静まり返った。
「ここは国家間の代表となる者が会議をする場所なのでしょう。 理知的に、そして発言をしたいのなら議長である神聖ミリシアル帝国に許可を取るべきでしょう」
怒りの篭った阿部の言葉に場が静まり返る。
内妹は挙手をし発現を求める。
「議長、発言をしたいのですがお許し願えますか」
「許可いたしましょう」
内妹は机の前に立つ。
「グラ・バルカス帝国の外交官シエリアと言いましたね。 あなた方は私共と同じく科学文明が発達していると聞いていましたが、まさか魔法や古代文明を調べられない程度の低文明だとは知りませんでした」
「貴様、我が帝国を侮辱するのか!」
「えぇ、調べる事さえできない文明と先ほどの発言ではっきり分かりました。 残されていた技術を分析すればどの程度の力があるか、理解できなかったのでしょう?」
事実グラ・バルカス帝国は連戦連勝で魔法を侮り、古の文明についてもろくに分析していなかった。
日本はクワ・トイネやクイラ、そしてカルアミーク国等の伝承や遺跡から技術を分析し、充分脅威となる存在と認識していた。
何よりも核に類する兵器を容易く使用したという情報だけでも充分であった。
「さて、それでは先ほどの発言についでですが、世界に対する宣戦布告、つまり我が国に対して宣戦布告したと受け取って間違いありませんね?」
「そうだ。 従属を誓わぬのならば、我が国の力を知った上で従うがいい」
「やはりその程度の国家ですか。 スパイ共から聞き出したとおり愚かな国家ですね」
内妹は冷めた目でグラ・バルカス帝国の外交官を見た後深くため息を吐いた。
「……なに?」
「あぁ、失礼。 ロウリアやパーパルディアに潜んでましたのでね。 捕まえて少々撫でた所、あなたの国がどのようなものなのか詳細に話してくれました。 グラ・バルカス帝国が会議に出席するという事で、用済みの死体を冷凍して持ってきていますのでご希望でしたらお返ししますよ? まぁ、余り人の形を留めていませんが。 そこの方、申し訳ありませんがこれをグラ・バルカス帝国の外交官へ」
小さな封筒を取り出すとミシリアル帝国の会議補助官に手渡す。
卓上のほぼ反対側に座るグラ・バルカス帝国に渡るとすぐに中が開かれた。
「なっ!」
写真を見たシエリアは口元を押さえ青ざめる。
写真には厳しい拷問を受け、辛うじて頭部だけが判別できるグラ・バルカス帝国人と思われる人間の姿が写っていた。
「お嬢さんは乗ってきた船でお帰りなさい。 外交官であるあなたが居なければ、あのような小船即座に潰してしまうところですが、外交官が乗ってきた以上その様な事はできませんからね」
グラ・バルカス帝国の使者は、先進11ヵ国会議途中で退室した。
使者は港からも去り、その日の先進11ヵ国会議は終了した。
開催日数、残り6日。