日本外人部隊   作:揚物

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同時刻・・・カルトアルパス港

 グラ・バルカス帝国の艦艇や航空機が向っているという報が入り、世界会議参加国による連合艦隊を結成し迎え撃つこととなった。

 グラ・バルカス帝国の航空機約150機、それに対してワイバーンなどを含めた連合側は400を超えるだろう。

 しかし神聖ミリシアル帝国とムー国の戦闘機が迎撃に出ているが、状況は非常に芳しくなく、ワイバーンなどまるで相手にされていない。

 日本外人部隊 旗艦戦艦 日高見 は艦隊最後尾で状況を見守っていた。

 

「ほぼ一方的な状況です」

 

 ワイバーンが相手にならないのは理解していたが、ミ帝とムーの航空機も不利なのか徐々にその数を減らしている。

 

「電磁加速砲と艦対艦誘導弾の使用はできん。 他国に知られると不味い。  艦対空誘導弾も識別がない以上、数が減るまでは使用不可能。 フレシェット砲弾を装填し接近してくる敵機にはCIWSで対応せよ。 シーRAMの使用も禁止する」

 

「味方の航空機によって阻害されるとは、なんともな」

 

「識別信号もしくは無線機につきましては、ミリシアル及びムーには提供した方がいいかもしれません」

 

 制空戦を抜けた敵機のうち2機、日高見へと向ってきている。

 

「敵航空機接近! 高度から爆撃機と推測! 2機が向ってきます!」

 

「焦らずCIWSで対応せよ」

 

「CIWS起動します」

 

 14基搭載されているCIWSが起動。

 CIWSの砲身が上空を向き敵機を捕らえる。

 上空から急降下爆撃を行おうとしていた敵機に着弾、一機は火達磨にもう一機はばらばらになりながら海面に落下していった。

 

「敵機撃墜。 なお敵機の一部はカルトアルパス港に向っている模様」

 

「やれやれ、民間人を狙うとはお行儀が悪い」

 

「いかがなさいますか?」

 

「味方や民間人を巻き込まずに、フレシェット砲弾を使用する。 座標と照準を合わせ」

 

 艦の前後に配置されている50口径56cm3連装砲塔が旋回をはじめ、飛行予測ポイントに砲口が向けられる。

 

「フレシェット砲弾による砲撃を開始せよ」

 

 56センチフレシェット砲弾

 1インチの子弾 2万発を内蔵し危害半径は400mにも及ぶ。本来はワイバーンや対地攻撃用として開発された。

 相手が零戦程度の強度と速度であるならば、対空用としても残酷なまでに効果を発揮した。

 指向性を持って円錐状に射出された子弾は装甲を貫通し、編隊飛行をしていた20機に蜂の巣のような穴を穿ち、戦闘機ごとパイロットを惨殺。爆発しながら海上に墜落していった。

 だが三式弾のように花火と言われるような散布界ではなく、有効射程があり過ぎるため、世界連合のワイバーンや航空機を巻き込まないため簡単に撃つわけにはいかない。

 

「敵航空編隊 撃墜成功。 残存する機数なし」

 

「連合国艦艇、航空攻撃によって損害甚大」

 

「連合国航空隊撤退。 敵航空機 64 こちらに向ってきます」

 

 淡々と報告が上がり冷静に対処していく。

 しかし苦戦していたとはいえ航空支援がない状態は、技術的アドバンテージを隠した状態のまま戦うのは厳しい。

 

「対空砲撃を開始いたします」

 

 56センチの轟音が連続して発せられ、交互撃ち方によってフレシェット砲弾の面迎撃に、グラ・バルカス帝国の航空機は編隊ごと消え去っていく。

 それでもなお散開し低空で向ってくる敵機にCIWSが稼動、機械に容赦など存在せず設定距離を割った敵機を撃墜していく。

 

 

 

 他国の水兵は何が起きているのか判断できず、手も足も出なかったグラ・バルカス帝国の航空機が火達磨となって落ちていくさまを唖然としながらみていた。

 

 

 

「敵航空機 撤退していきます」

 

 撤退と言っても、すでに残る敵機の数は4まで減っており、壊滅的損害と言ったほうがいい。

 

「海峡にGAが向っているようです」

 

 レーダー観測員から報告が上がり、沖田大佐は困ったような表情を浮かべた。

 

「まさか大和モドキに対して、日高見で挑むとは思いませんでしたな」

 

「その通りだ。 しかし困った。 アレにはおそらく外交官が乗っている。 沈めるわけにはいかんぞ」

 

「では、引き続きフレシェット砲弾を使用し、構造物を破壊してはいかがでしょうか。 それでもダメなら演習弾を撃ち込みましょう。 質量だけはありますから、ある程度の効果は見込めるかと」

 

「それで退いてくれれば良いが、仕方あるまい」

 

「それでは、レーダー及び無線妨害を開始いたします」

 

 副長の進言に従い仕留めぬよう攻撃を限定する方針をとった。

 

 

 有視界距離に入ると同時にグレードアトラスターの砲煙があがる。

 レーダーには砲弾の飛翔方向が表示されている。

 

「グレードアトラスターより砲撃を確認。 標的はミリシアルの艦艇」

 

 一分ほどしてミリシアルの艦艇が爆炎を上げ沈んでいく。

 初弾で命中させたようだ。

 

「ミリシアル艦艇轟沈」

 

「ムー戦艦、副砲により損傷した模様」

 

 列強の名をおいて前線に出ていた艦艇が撃沈されていく。

 航空機相手にも苦戦していたが、グレードアトラスター相手ではもはや的でしかないようだ。

 

「敵艦に対して砲撃を開始する。 交互撃ち方用意」

 

 重厚な50口径56cm3連装砲塔2基が旋回を始める。

 

「照準よし」

 

「交互撃ち方始め」

 

 フレシェット砲弾が40秒後グレードアトラスターが到達するだろう地点に向け砲撃が開始された。

 

 

 

 グレードアトラスターの艦橋では、日高見の砲煙を確認。

 

「砲煙確認!」

 

「来るぞ! 取り舵一杯!!」

 

 数十秒後設定位置で砲弾は拡散、1インチのダーツ状の子弾は雨となって降り注ぎ、グレードアトラスターの艦の装甲を激しく叩く。

 フレシェット砲弾の子弾は観測や機銃要員を、甲板要員を尽くなぎ払う。胴体や腕を貫かれ、血を吹き出しながら倒れていく。

 

「被害報告!」

 

 激しく艦を叩く音が終わり、部下に報告を求める。

 急ぎ各部から情報が挙げられる。

 

「高射砲破損! 機銃要員にも被害多数!」

 

「観測所要員に死傷者多数!」

 

「他国の艦は相手にせず、あの艦に攻撃を集中する! 主砲砲撃始め!」

 

「各砲 砲撃始め!!」

 

 

 

 日高見ではレーダーに砲弾の飛翔方向が映し出されている。

 

「砲撃来ます。 我が艦に対して挟叉なし」

 

「第一戦速 操舵そのまま」

 

 日高見から150mほど離れたところに大きな水柱が上がる

 

「第一第二砲塔 演習弾を装填」

 

「演習弾装填……よし」

 

「一斉射 撃てぇい!!

 

 合計6門の56cm砲弾が、2トンを超える鉄塊がGA目掛け撃ちだされた。

 

 

 

 グレードアトラスターは砲煙を確認し回避行動を取るが、56cm演習砲弾はグレードアトラスターの装甲を食い破り艦内に着弾した。

 激しい衝撃と振動が艦を襲い、体を艦内にぶつけラクスタルは腕を押さえながら立ち上がる。

 

「じょっ、状況報告せよ!」

 

「バイタルパートに着弾あり! 不発弾の為損傷は甲板及び一部区画のみ!」

 

「第二艦橋観測所 大破!」

 

 艦長のラクスタルや副長が艦橋から見下ろすと、ほぼ真下に大きな穴が開いている。

 巨大過ぎる砲弾はGAの装甲などいとも簡単に食い破って見せた。これが不発弾かつ強固なバイタルパートだからこそ大破は免れたが、船首や艦尾であるならば丸ごと抉り取られていただろう。

 

「残念だが、一対一では勝負にならん」

 

 グレードアトラスターをはるかに超える主砲、常軌を逸している対空能力、対するには一個艦隊が必要だろう。このまま戦ったところで勝ち目は無い。

 

「撤退する。 グレードアトラスターを沈められてはグラ・バルカス帝国の戦意への影響が大き過ぎる」

 

 

 

 沖田大佐はグレードアトラスターが海峡から離れていくのを眺め、大きく息を吐いた。

 

「追撃なさいますか」

 

「人命救助が優先だ。 救命ボートを降ろし、漂流者救助を急げ」

 

 本来なら仕留めることは出来た。だが、外交官が搭乗しているだろうGAには無事帰還してもらわなくてはならない。

 今は人命救助を理由に、追撃も行わず見逃すしかない。

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