日本外人部隊 作:揚物
カルトアルパス港
連合艦隊の救助者が溢れかえる中、曳航されてきた3隻のグラ・バルカス帝国の艦船、そして損害を被っている第零式魔導艦隊に港は騒ぎになった。
それでも敵の船を鹵獲したという事実に沸き立ち、歓声と共に入港した。
鹵獲したグラ・バルカス帝国の戦艦1 重巡洋艦1 空母1について会議が行われていた。
日本としてはグラ・バルカス帝国の技術力の分析さえ済ませれば不要なものであり、長門と同等と思われる戦艦も、度重なる改修が行われた現在の長門と比べて多くの点で劣っている。いまさら得たところで、改造して運用する価値など無かった。
何よりもわざわざ機関の入れ替えから排気塔の撤去、自動装填装置にFCSへ対応など多岐にわたり、何段階もわけて行われてきた改修が簡単に終わるものではない。
分析が終われば外交を有利に進めるためのカードでしかなかった。
「我々としてはグラ・バルカス帝国の技術分析さえ済ませれば、神聖ミリシアル帝国もしくはムー国に譲渡を予定しております」
譲渡と言う言葉はミリシアルを立てての言葉だが、反対するものは居らず、10カ国の中で神聖ミリシアル帝国・ムー国・日本国の三国で話が進められていた。
「まずは重巡洋艦に付きまして、神聖ミリシアル帝国及びムー国との共同分析を提案いたします。 これは科学によって作られているグラ・バルカス帝国の艦船を調べるのにムーの力が必要だからです」
神聖ミリシアル帝国側としては余り良い顔はしていないのだが、科学と魔法の両方を理解しているムーが居れば、解析が進むのは確かである。
「空母は損傷が著しいため、安全を確保するための処置が必要です。 艦載機も損傷しておりますが、解析は可能です」
本来は戦闘機と爆撃機を1機ずつ無事なものを確保しているのだが、これについては伏せられている。一機しかないため争いの種になっては困るためだ。
「艦載機についても共同分析が良いかと思われます。 以上ですが、何かありますでしょうか」
ミリシアルの担当官は挙手をして話はじめる。
「第零式魔導艦隊が主体となって交戦している。 我々が先に戦艦を分析する権利があると考えるのだが?」
「それでは空母一切については権利を放棄するという事で宜しいでしょうか?」
戦艦と重巡洋艦については確かに共に交戦したが、空母については日本外人部隊単独の功績となる。
「むっ……」
追い返すきっかけを作ったのが日本であることを、第零式魔導艦隊の司令官から話が来ており、鹵獲作業や救助活動など、日本が神聖ミリシアル帝国を立てている事はよく分かっていた。
「元より科学文明のみで作られているものです。 まず初めに重巡洋艦を切り刻むなりして解析方法を得る事が大事かと提案いたします。 その後、得た解析技術で戦艦や空母を調べる事が重要かと」
「まぁ いいでしょう。 航空機については三国それぞれ回収してよいのですね?」
「状態は様々ですが、数はありますので自由に回収して問題ないかと考えますが、ムー国としてはそれで宜しいでしょうか?」
ムーの担当官もまた納得した様子だ。
「我々としてもそれで問題ありません。 場所はカルトアルパス港にある船渠で?」
「航空機は各国で持ち帰るべきだろう。 解析用の船渠に関しては神聖ミリシアル帝国が提供しよう」
その他話し合いが進められ、一時的に3隻は神聖ミリシアル帝国の船渠で保管されることとなった。
第2文明圏列強ムー 中央軍事司令部 とある部屋
ムーの技術士官マイラスは、上司と2人で話をしていた。
「では、君は、我が国の誇る最新鋭戦艦ラ・カサミの修理は日本国に任せるべきだ、そう言いたいのかね?」
「はい、今回、グラ・バルカス帝国は日本国に対しても明確に宣戦を布告しました。それが原因とも思えますが、幸運な事に日本国経由でも、限定的な技術支援の話は来ています。」
「確かに、日本国の技術は高いのだろう。しかし、機械文明列強を誇るこのムーが、最新鋭艦を同盟国とはいえ、他国に公開する事の危険性くらい、君にも解るだろう。」
「はい、解ります。しかし、11カ国会議の写真も御覧になられたと思いますが、あの巨大戦艦を建造できる技術があります。あの技術で蘇る新生ラ・カサミは我が国の発展に大きく寄与します。
少なくとも、このまま国内で修理するよりは、はるかに有用です。」
「……解った。検討しよう。」
「それと、艦上戦闘機マリンも、日本国の部品を応用するだけで、エンジン出力が上昇する事が判明しました。」
「なんだと!?」
「過給機というシステムを使えば、簡単に出力を向上させる事ができます。 構造解析をしないと条件をつけられましたが、日本から提案された事ですので購入は可能です。
これで、マリンのエンジン出力と、実用上昇限度が劇的に上がります。 もちろん速度向上による機体強化も必要ですが」
日本 防衛省
「ようやく疾風の生産が出来たか」
「はい。 月産10機で生産しております」
民間の工科大学や旧兵器研究会がスケールモデルにおいて、充分過ぎるほど分析及び解析を行っていた。
好事家の分析力は時として軍を困らせる事があるのだが、今回は有効活用し、情報を得て半年もかからず機体の生産を開始していた。
何よりも疾風は60年前まで稼動していた実機が、静態保管されている。分解解析し精密図面に起こし直すのはそれほど難しいことではない。
材質も製造技術も当時とは比べ物にならないうえに、飛行試験をせずともスーパーコンピューター上で強度等の確認は簡単だ。
「チタンやカーボン等を使用し、最新技術で製造した改良機は810kmを記録しています。 輸出に向け生産性を優先しユニット化したもの、もちろん標準的な材質のため僅かに形状を変更していますが、最高速度680kmに達しています」
もちろん正規の生産工場を用意できるわけもなく、民間工場で分割して生産し、それを航空基地で組み立てている。
「ふむ。 ダイダル平原基地にムーの軍人や技術者を招いて、売却を打診してみよう」
日本にとって、ムー国はグラ・バルカス帝国と戦う上で、防衛ラインであり自らの戦力を消耗させない良い友好国。そしてムー国は平和及び融和主義であり、何よりも都合が良かった。
グラ・バルカス帝国と拮抗させ、日本外人部隊が急所を穿つ。
そして弱った所をムーが攻め入ってくれれば、戦力や物資の消耗は最低限ですむ。
人道主義を一切無視し、グラ・バルカス帝国本土に空爆を行うのも考えてはいたが、ムー国が居る為廃案となった。