日本外人部隊   作:揚物

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技術交流

  クワ・トイネ 外人部隊 ダイダル平原基地 技術交流研究所

 飛行場では第一次バイパス調整の行われたアルファ3の飛行試験が行われていた。

 

「おぉぉぉ!」

 

 完全な調整ではないのだが、600kmまで最高速度が上昇していた。それでもミリシアルの技術者やパイロットは驚き、飛行しているアルファ3を見上げていた。

 

「アンタレスは解析した結果 550kmまで出ます。 もう少し調整を進めましょう。 皆さんは機体強度に集中してください」

 

 現状のままでもまだ速度を上げても、機体は耐えられるだろう。

 

「あちらの疾風M1は680kmまで出ますので、そこまでは急ぎ引き上げましょう」

 

 視線の先には、アルファ3 3機と模擬空中戦を繰り広げている疾風の姿があった。

 

 

 ムーに限定的かつ条件付ながら戦闘機と技術を売却すると話をしたところ、遠方ながら多くの人員や物資が輸送されてきた。

 

 工作技術者は何とか交換用部品を製造しようと日々苦心している。日本からもちろん輸出はするのだが、最悪現場で即応しなければならない。

 運んできた工作機械の精度が足りなければ、工作機械を改造する部品を作り、曲り角が正しくなければ当て板まで拵え、一つ一つ部品を作り疾風M2を製作しようと昼夜を問わず作業を続けられている。

 今は日本で疾風M1 輸出モデルをユニット生産しているが、いずれはムー国内において疾風M2 自国生産モデルを作らなければ成らない。

 

 整備員も整備に四苦八苦していた。マリンとは異なる金属製の構造、構造も複雑で今までの経験が役に立たず、一から指導を受けていた。

 

 パイロットもまた、厳しい訓練を受け心を圧し折られながら技能を磨いていた。

 日本のレシプロ機曲芸パイロットの第一人者であり、元航空自衛隊パイロットによって操縦される複座化した疾風は、ミリシアルやムーのパイロットを手玉に取り、軽々と撃墜判定を叩きだす。

 口で言うよりも、目と耳、そして体感を持って戦闘機動を叩き込んでいくスタイルに、複座搭乗したパイロットは体験したこともない機動によって体に掛かるG、そして体の負担に航空機を降りると嘔吐する者は多かった。

 

 もっとも酷い目に合っているのは航空技術者達であった。

 いままで考えた事もなかった理論や技術に目を白黒させながら学び、目に隈を作りながら必死に計算機を叩き、手や服を汚しながら古い方法である粘土モデルを作り、風洞試験を行っては血走った目で肉抜きや形状変更などを行っている。

 無駄を省き、理想ではなく現実的理論と結果に基づいて航空機を作る。その為に航空技術者の教育、もちろんWWⅡ前期までの範囲ではあるが限定的に技術情報が公開されていた。

 ミリシアルの航空技術者は700kmに対応するアルファ3の改良モデルを、ムーの航空技術者はレシプロ単翼機のモデルを、当初はライバル同士であったミリシアルとムーの技術者は、連日の作業に競ったり争う余裕などなく、時には風呂で眠って溺れ、時には疲れ果て机に突っ伏して眠るなど、日に日に疲労していくお互いを見ては、疲れた笑いを浮かべながら作業に当たっていた。

 相手よりはまだ自分達はましだと。

 

 一方で既存のマリンについても大規模な改修が行われていた。これはあくまでムーの力によってグラ・バルカス帝国に抵抗できるように見せるためどうしてもマリンの強化が必要であったためだ。

 レシプロ複葉機であるため限界は低いものの、地球では大戦や曲芸飛行によって徹底し、それこそ重箱の隅をつつくような改善が行われた。つまり情報やデータは腐るほどある。

 速度向上と大幅な運動性の向上を主眼とし、ムーの工作技術で可能な事が徹底して行われた。

 主設計及び考案者は駐日イギリス大使館職員、斬新かつ特異的な英国面が取り込まれた。

 1.エンジン部を除き全面高強度の合成繊維張り化

 2.過給機の追加

 3.エンジンの調整

 4.プロペラピッチの最適化

 5.NACAカウリングの採用

 6.コックピット及び車輪に風防の追加

 7.単座化

 8.翼の形状最適化

 等、構造や形状についてのノウハウは一切明かさず、この形状と構造で製造するようムーに伝え、1kgでも軽く、1kmでも早くするために、贅肉を削ぎ落とし骨の形状まで変える処置が行われた。

 元々複葉機としてマリンは中々優れていたため、ムーの素材と工作精度の限界と相まって最高高度の上昇と最高速度453kmが限界であった。一方で運動性と旋回性、そして操縦性は著しく向上し、それこそレシプロ航空機乗りからしてみれば、変態的性能を持つ機となった。

 日本が供給するのは合成繊維と過給機のみであり、ムー国の既存のラインでも小規模の手直しで生産できる利点が大きい。

 

 

 二ヶ月も経った頃には、形状とバイパス比率が最適化されつつあるミリシアルの試作アルファ3プラスは安定して710kmに達し、一つの目標を達した航空技術者達は感動と、積みあがっていた疲労によってそのまま倒れて眠ってしまった。

 この日より数日後、ミリシアルの技術者は改良されたアルファ3プラス型と共に帰国した。

 ムーもまた、材質的問題もありオリジナルより低速の640kmながら、疾風M2モデルの飛行試験も成功し、組み立てた技術者達は喜びと疲れからその場に座り込んでしまっていた。

 

「正直我々もあぁなりそうです」

 

 製造責任者と共に、航空技術責任者は担架で運ばれていくミリシアルの航空技術者を眺める。

 

「それも……そうだな。全員3日間ほど休みを取ろう」




図書館でちゃんと調べたつもりでも、自分の知識不足をコメ欄を見ているととても感じます。
今回の疾風とマリンについては、皆様の知識のおかげでございます。
(;,゚Д゚)
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