日本外人部隊   作:揚物

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バルチスタ沖海戦 中

世界連合艦隊

 けたたましくサイレンが鳴り響く、ムーの開発した機械式サイレンの音が静かな海上にこだました。

 各国の艦隊は空に注意を向け、ムーの誇る空母5隻からは次々と戦闘機が発艦し、ニグラート連合の竜母4隻からはワイバーンロード竜騎士隊が発艦していく。

 各国の艦隊がそれぞれ独自の技術をもって対空戦闘の準備を行っていく。

 

「対空戦闘準備完了!!」

 

 ムー国艦隊旗艦ラ・エルドも戦闘配備が完了する。

 

「忘れるな! 各機関砲は分担されたグリッドに面射撃を行う!! 決して必要以上に追尾しようとするな!!! 面での攻撃を徹底して行え!!!!」

 

 戦艦ラ・エルドに新たに設置された多数の20mm機関砲には人員が配置され、緊張した面持ちで上空を眺める。

 

 

 

世界連合艦隊 神聖ミリシアル帝国地方隊 旗艦 ブロンズ型魔導戦艦セインテル

 

 艦橋に緊迫した戦況報告が響き渡る。

 

「ニグラート連合竜騎士団、全滅!!」

 

「現在第2文明圏連合竜騎士団170が敵編隊に接近中、しかし到達まで約15分!!」

 

 海上に鳴り響く微かな重低音、目を双眼鏡に当て、空を見た。

 前部にムーの飛行機のようなプロペラが付き、ミリシアル帝国のような低翼を採用している。

 美しくもある見慣れない航空機が目に飛び込んで来た。

 

「来たか!!対空戦闘用意!!」

 

 艦長の命により、迅速的確に対空戦闘の準備が行われていく。

 魔導戦艦セインテルの対空砲の砲口に粒子が吸い込まれていく。

 火器は上空を向き、やがて艦隊上空に進入してきたグラ・バルカス帝国の航空機を照準機に捕らえた。

 帝国の急降下爆撃機は高度4000mから急降下を開始、何らかの攻撃をしようとしているのだろう。

 降下を開始した急降下爆撃機、その音はドップラー効果により高音に至る。

 

「対空魔光砲発射!!!」

 

 砲口に粒子が吸い込まれた後、爆音と共に光弾が空へと向かった。

 空へと打ち上げられる連続した光弾、一見凄まじいまでの攻撃が空へと向けられているように見える。

 しかし、近接信管も無く、手動で行われる照準ではいくら連射しているとはいえ、攻撃はもどかしいほどに当たらない。

 最初に急降下してきた敵が機銃掃射の後、爆弾を投下した。

 

 

 

 15分後・・・、

 ムー機動部隊 旗艦 戦艦ラ・エルド

 空を我が物顔で飛び回る敵機。

 ムーや神聖ミリシアル帝国艦から打ち上げられる対空兵器はほとんど敵を捕らえる事が出来ず、逆に艦内には悲壮感溢れる報告がなされつづけていた。

 

「マギカライヒ共同体、旗艦バルテルマ、轟沈!!」

 

「トルキア王国戦列艦隊、ヘルマ、ぺクノス、ジェイアード、轟沈!!」

 

「中央ギリスエイラ公国魔導戦列艦、ナーノ、ピルコ、ミーリル轟沈!!」

 

 増え続ける被害、海上の各所で炎に包まれる友軍、青い海の上で発生し続ける赤い炎はそこにいる兵たちの心に恐怖を植え付けた。

 ムーの艦隊はなんとかマリンプラスの直掩隊が防いでいるが、状況は芳しくない。少しずつ被害が増えていっている。

 ムーの準備した対空兵器は、13機を撃墜する事はできたが、数十機が乱舞するこの戦場において、戦果は決して大きくはない。

 日本の言う対空機銃のブロック別けは確かに効果的ではあったが、元の射程と連射性能から限界があった。

 多くの者達が高空から急降下してくる敵に注意を向けた。

 

「低空に敵機!機数4、空母トウエンに向かっています!!!」

 

 レイダーの背中に汗が噴き出す。

 日本国から提供された資料に書かれていた魚雷という兵器。水中を進み、船の喫水線下を攻撃、爆圧の逃げにくい水中で爆発するため、船体に多大な被害をもたらすおそるべき兵器。

 

「奴を空母に近づけるな!! 全火力を集中してでも奴を落とせ!! 空母トウエンには回避行動を取らせろ!!」

 

 レイダーの指令の後、ムーの対空火砲が水平を向く。

 流星雨の如き光弾の嵐が吹き荒れ、海上には的を外れた弾丸が着弾し、飛沫を上げる。

 そして1機の航空機が被弾し墜落するも、残る3機は何かを投下し離脱を開始した。

 

「海を良く見ろ!!水中を駆ける攻撃が来るぞ!!!」

 

 魚雷投下ポイントから空母トウエンに向かって白い雷跡が伸びる。

 

「回避しろ! 水雷防御網も降ろせ!!!」

 

 空母トウエンはゆっくりと旋回している。しかし焦っている彼から見るその光景は、もどかしいほどにゆっくりとしたものに見えた。

 そして鎖で出来た水雷防御網が降ろされる。これも日本から得られた知識であり、どこまで役に立つかは分からない不明瞭なものであったが、構造が簡易であるため出来うる限りの事として急遽搭載していた。

 最初の1撃が空母を前方かすめ、数秒して2本目も空母の後方を抜ける。

 

「よし!」

 

 2発を回避したことにより、僅かな希望が生まれた次の瞬間、トウエンが震えた。

 轟音と共に1本の水柱が出現する。

 グラ・バルカス帝国の雷撃機から放たれた魚雷は空母トウエンの水雷防御網に引っかかり爆発、艦は一瞬大きく振動した後少し傾く。

 

「トウエンから通信、浸水を認める。 なれど修理は可能」

 

「なんとか耐えたか。 だが水雷防御網は二度は使えん」

 

 世界連合艦隊を混乱に落としいれたグラ・バルカス帝国空母機動部隊の第1次攻撃隊は、一通りの攻撃を終え帰投。

 第二文明圏連合竜騎士団が現場空域に到着した頃には、すでに敵の姿は無かった。

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