日本外人部隊   作:揚物

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ムー国 首都防衛

 グラ・バルカス帝国の艦隊イシュタムはムーの首都オタハイト及び工業都市マイカルを攻撃するため、艦隊を半分にわけ攻撃に向っていた。

 

 首都防衛・・・・・・

 

 ラ・カサミ改と共に海洋艦隊の戦艦 長門 榛名、巡洋艦 天龍 龍田は、国王ラ・ムーとの謁見を控える皇太子を乗せ首都オタハイト港に向っていた。

 陛下は国事や体調のために国を離れるわけには行かないものの、遥か昔からの友好国であるムー国 国王と皇太子が謁見を行い、友好を深めようとの考えであった。

 

 首都港に到着すると、盛大な歓待を持って迎えられ、輸送艦からは贈答品となる品々が降ろされる。

 皇太子は笑顔でムー国民の歓待に答え、王城に向かう車両に乗りこんでいった。

 

 

 

 ムー国首都港について翌日、想定していた事態のひとつが発生した。

 

「五代中佐、司令部から連絡が入った。 ムーに向けグラ・バルカス帝国の艦隊が向っているそうだ。 現在皇太子がムー国 国王と会談中のため、何があろうと撃退せねばならん」

 

 皇太子を決して傷付けるわけにはいかない。

 

「こちらに日高見が入ればよかったのですが、全力を尽くします。 沖田大佐もご武運を」

 

 急ぎ出航の準備が始められていく中、ムー国艦隊は次々と出航していく。

 

「首都防衛艦隊 および ラ・カサミ改出航するようです」

 

「我々も迎撃に向う。 命令系統は別となるが、やや側面をつく形となるよう航路をとるように」

 

 ムー国艦隊だけに無理をさせるわけにはいかないが、改良された性能を見る良い機会でもある。

 港から離れ、大よその会敵海域まであと2時間ほどとなった。

 

「ラ・カサミと通信を」

 

 ラ・カサミの艦長ミニラルと話し合いが行われ、首都防衛隊を前に出さないよう進言する。

 

「では、首都防衛隊では相手にならないと?」

 

「航空機相手にも損害を被るだけでしょう。 ラ・カサミ一隻の方が被害を抑えられます。 我々が側面を突くまで時間を稼いでもらい、その後攻撃をして頂ければ最低限で済むでしょう」

 

「ふ~む。 確かに被害を抑えたいとは思うのだが、ムー国の首都防衛の任を預かるものとして」

 

 ミニラルやムーの首都オタハイト防衛隊は、作戦にまで干渉して欲しくはなかった。

 

「お気持ちは理解しております。 ですが戦力を失っては元も子もありません。 何よりもラ・カサミ級の簡易改修案が進んでいる中、元と成る艦船や兵士が減っては改修が施せません」

 

 ラ・カサミは例外的に大規模な近代化改修が施されているが、他のラ・カサミ級についても一部の改修が予定されている。

 砲塔とスクリューの交換、通信システムの換装、レーダーとソナーに爆雷の搭載。少なくともこの改修でムー国近海の防衛は充分と試算されている。

 そして神聖ミリシアル帝国によって切り刻まれ解析の行われた、グラ・バルカスの戦艦と空母。その運用人員も確保せねばならない。それらの艦は、現在修復と改修が行われている。改修といっても、商用大型船の機関に換装するだけであるのだが、あと半年はかかると予想されている。造船業界は過密スケジュールで大変な状態となっていた。

 

「何よりも、航空機の迎撃だけであるならば、ラ・カサミだけで充分です」

 

 

 

 

 日本の進言を受け、首都防衛艦隊はラ・カサミ改から後方20kmを航行することとなった。

 ラ・カサミ改のレーダー士官が敵航空機を確認。

 

「敵航空機確認! その数70!」

 

「対空攻撃用意! 全兵装の使用を許可する!!」

 

 全ての性能はもちろん落とされてる。それでも模擬訓練では驚異的性能を発揮していた。

 次々と射出される93式近距離艦対空誘導弾、アンタレスは何とか逃れようとしているが、追尾する誘導弾は外れる事無く航空機を撃ち落していく。

 乗組員の僅かな操作ミスにより、誘導弾の攻撃をかいくぐったアンタレスが数機接近してくるも、4基のCIWSによって即座に叩き落される。

 

 

 首都防衛隊は性能が飛躍的に向上したラ・カサミに驚き、日本艦隊の進言どおり20kmほど離れた場所で状況をみていた。

 的になることしか出来ないだろう苛烈な戦いに加わる事もできず。

 

 

 敵航空機が逃げ帰り始めたとき、レーダーが敵艦隊を捉えた。

 

「敵艦隊確認、我らより北西120km地点」

 

「やつらに通信をせよ <航空機は手も足も出ず逃げ帰った。 貴官らも撤退したまえ。 我々は弱者への蹂躙や虐殺を好まない> とな」

 

 返信もなく、その代わりに残っていたのだろう爆撃機と雷撃機が迫ってくるが、今度は僅かなミスもなく全てが艦対空誘導弾によって海面に落ちていく。

 敵艦隊がいる方向に向かう事5分、水平線に敵艦隊の姿が視界に入った。

 

「主砲照準合わせ!」

 

 最大射程37km、再装填速度20秒、FCSによって35.6cm砲の照準が自動で合う。

 敵駆逐艦の距離が30kmを割る。

 

「適正距離です!」

 

「撃てぇい!!」

 

 撃ち出された35.6cm砲弾は先頭の駆逐艦に至近弾となった。艦橋よりも高い水柱が上がる。僅かながら照準がずれていたようだ。

 自動で修正され砲身が予測される地点に向け、20秒後再装填の終わった主砲から砲弾が打ち出される。

 先頭を航行する駆逐艦に直撃し、巨大な火柱が上がると爆発轟沈していく。

 最大射程ではさすがに飛翔距離と時間の長さから命中率は下がるが、30kmを割れば確実に命中させる事が可能であった。

 

「「「おぉぉぉ!」」」

 

 艦橋では初めて敵艦を沈めたことに驚きと喜びの声が上がるが、ミニラルは敵艦隊を睨みつけたままだ。

 

「次! 敵先頭の重巡洋艦に照準合わせ!!」

 

 まだ敵は多くいる。全ての力を奪うまで一瞬の油断さえできない。

 敵艦隊から砲煙が上がりレーダー士官が叫ぶ。

 

「敵砲撃! この針路では交叉します!!」

 

「取り舵一杯!」

 

 航行方向を変更したラ・カサミから離れた場所に艦橋よりも高い水柱が上がる。

 

「20kmを割り次第魚雷の攻撃に移る! 主砲は敵艦隊先頭の艦に対して砲撃を続行せよ!!」

 

 訓練を受けても砲術屋として艦長にまでなった癖は抜けなかった。それ故にどうしても主力として主砲での攻撃を優先してしまっていた。

 

 

 

 ラ・カサミは複数の艦を相手に善戦している。

 

「あれが新しいラ・カサミか」

 

 首都防衛隊に所属するラ・ゲージの艦長ムレスは、手も出せない苛烈な戦いにただ祈ることしか出来なかった。

 

 

 

 

 主砲弾が6発敵戦艦に当たるものの、それほど効果があるようにはみえず、一方でこちらは一発でも当たれば致命傷になる不利に焦りが出始めていた。

 

「魚雷発射用意! 四発とも戦艦に照準! 次弾は重巡洋艦二隻に2発ずつだ!」

 

 日本からレクチャーを受け理解はしているが、なじみがなくどうしても信頼を置けていなかった。

 艦首からまず4発の魚雷が戦艦に、そして再装填の時間を置いて2発ずつが重巡洋艦に向け発射された。

 

 報復とばかりに8門の主砲が一斉射された。

 

「ダメです! 回避し切れません!!」

 

 レーダー士官の悲鳴のような報告が上がる。

 

「全員衝撃に備えろ!」

 

 ラ・カサミが激しくゆれ、ミニラルはイスから振り落とされ、艦内に体をぶつけながらも立ち上がる。

 

「状況報告!」

 

「第一砲塔破損! 攻撃不可能!」

 

 試製とはいえ充分な装甲を設けているが、さすがに同口径主砲弾の直撃に無傷とはいかない。

 

「魚雷到達まであと10秒!」

 

 ラ・カサミによるムー国初の雷撃がグラ・バルカス帝国の戦艦に迫る。

 

「3・2・1 交差!」

 

 4つの巨大な水柱が戦艦の横に上がり、一瞬浮き上がったと思った直後真っ二つに折れ沈んでいく。

 

「次、重巡洋艦まで30秒!」

 

「回避行動を継続! これ以上艦に傷付けさせるな!!」

 

 後は時間が解決してくれる。

 砲撃によっていくつもの水柱が上がる中、30秒後、二隻の重巡洋艦から水柱が上がり、戦艦と同じように二つに折れ沈んでいく。

 ラ・カサミ改一隻で敵艦隊は戦闘力を喪失。辛うじて駆逐艦はまだ戦えるようだが、首都オタハイト防衛艦隊でも充分殲滅できる。

 

 

 

 長門の艦橋で五代中佐はレーダーで戦況を確認していたが、優勢であることから余計な手出しであると考え、状況を静観していた。

 

 

 

 この日 ムー国 首都オタハイト防衛艦隊は、ラ・カサミ改の小破のみでグラ・バルカス帝国艦隊を殲滅した。




夜にはあと2~3話もアップできる状態に仕上げます。
もう少々お待ちを。
(,,゚Д゚)ノ
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