日本外人部隊   作:揚物

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ムー国 マイカル防衛

マイカル防衛・・・・・

 

 余りの巨体に首都では寄港できないということで、戦艦 日高見、そして護衛である巡洋艦 浜風と叢雲はマイカル港沖合に待機していた。

 航空母艦 かが は現在大規模な改装中で半年以上は運用が出来ない。また同時進行でAFTAの技術協力を得て改いずも型航空母艦の建造も進んでいるが、これもあと3年はかかる見通しとなっている。運用を開始するには4年から5年はかかるだろう。

 その為、今回マイカルに向かっているグラ・バルカス帝国艦隊を殲滅する事になっている。鹵獲の必要はない。確実な殲滅である。

 

「さて、相手の動きを止めるために日高見が囮になる」

 

「大佐、鹵獲するつもりですか?」

 

 意図を読んだ副長が沖田大佐の考えを予想。

 

「可能であるならば一隻は欲しい所だ」

 

「しかし、すでにグラ・バルカス帝国の艦艇情報は充分かと思われますが」

 

「艦はムーへの会談を行った追加の贈答品とすればよい。 グラ・バルカス帝国の最新情報が欲しい」

 

 相手の通信を傍受しようにも情報量は限られ、諜報員を送り込むには姿が違いすぎる。外人部隊は情報を強く欲していた。

 佐官クラスを捕らえ情報を得るのは大きな力となる。

 

「浜風 叢雲は側面に展開、航空戦開始と同時に通信妨害を優先、今回 日高見は全兵装の実戦テストを行う」

 

 実戦での運用テストでは、訓練とは違う欠点が見えてくる。

 

「グラ・バルカス帝国の艦艇に通信を繋いでくれ。 座標 方位 陣形 艦数をつけて通信にでろとな」

 

「はっ!」

 

 数分して通信が繋がる。

「私はグラ・アルカス帝国本国艦隊、 イシュタム本体艦隊指令メイナードだ。 先ほど呼びかけをかけた者よ。 所属と名前を述べよ」

 

「私は日本国 外人部隊 第一海洋艦隊 総司令官 沖田大佐。 そして艦隊旗艦 戦艦 日高見の艦長。 そちらの艦隊はすでに捕捉している。 撤退せよ、さもなければ 戦艦 日高見 が相手になろう」

 

「単艦で我々イシュタムに挑むとはお笑いですねぇ。 愚かなのですかねぇ」

 

「何も知らなくてよい。 知らないままで海に沈めばよい」

 

「なんだと!?」

 

「我々は平和を愛し、日本を守る。 平和を乱すなら、我々は暴力発生装置として、貴官らを グラ・バルカス帝国を世界から排除する」

 

「グラ・バルカス帝国を愚弄するか! お前達が生きていれば生き地獄を与えてやろう!!」

 

 通信が切られる。

 普段は表情を変えず、たんたんと任務をこなしている沖田大佐の目が鋭くなる。

 

「全兵装の使用を許可する。 各員戦闘に備えよ」

 

 レーダーには75機もの航空機の光点が写る。

 

「航空機確認。 総数は75」

 

「艦対空誘導弾によって10機を残し迎撃せよ。 10機はシーRAMのテストとする」

 

 256発も搭載されているVLSシステムから、65発の艦対空誘導弾が射出され、空中に白い線を引きながら上がっていく。

 艦に搭載された誘導システムに不備もなく、アンタレスやシリウス爆撃機は次々と爆発四散し海面に落ちていく。

 

「想定距離到達、シーRAM起動します」

 

 システムが起動、備え付けられている迎撃ミサイルが自動で発射され、10機抜けてきたグラ・バルカス帝国の航空機は逃げる暇もなく爆発し海面に沈んでいった。

 残りは通信妨害で何が起きているかも理解できていないだろう艦隊のみとなった。

 

「敵艦隊への攻撃を開始する。 電磁加速砲発射用意」

 

「電磁加速砲。 機構への充電開始いたします」

 

 大型のバッテリーだけでは瞬間出力が足りず、超伝導フライホイールに蓄電される。

 5秒に1発、最大連射6発、その後2分の再充電と冷却が必要、それが現状の技術的限界である。

 現在急ピッチで最新型の陸上試験が行われているが、搭載可能な段階に達するまであと何年かかるか。

 

「充電完了」

 

「標的は空母以外の全艦」

 

 第二砲塔位置に備えられている 60口径38cm電磁加速砲 が標的に向けられる。

 

「標的ロック 完了」

 

「撃て」

 

 空気を切り裂く甲高い音をたて、弾体は標的に向っていく。

 

 

 

 突如轟音が鳴り響き、グラ・バルカス帝国の駆逐艦が沈んでいく。

 

「なっ、何が起きている!?」

 

 再び耳を塞ぐ甲高い音が響いたと思った直後、鉄同士がぶつかる轟音が響き、すぐ横を航行していた重巡洋艦の側面に穴が開いている。

 視界に入ったのは、何かが艦の装甲を打ち砕き、突入した反対側である喫水線上部に大きな穴を穿っているという事実だ。

 それが何であるかは分からないが、砲弾だとしたら、重巡洋艦とはいえその装甲をまるで紙のように貫通している。もし戦艦だとしてもとんでもない損傷を負う事になるだろう。

 なによりもまだ180kmは離れている。砲撃が届く事も異常でありながら、それが正確に艦を狙えるとなるともはや戦いになどならない。

 

「ほっ、本国に連絡を!! 情報を送らなければ、帝国の艦隊が大損害を受けることになる!!」

 

 再び轟音が鳴り響き、重巡洋艦が沈んでいく。

 

「だめです! 通信できません!」

 

 通信士から悲鳴のような声が上がり、メイナードは青ざめるが、日本外人部隊は情報を送らせるつもりなど全くない。

 手も足も出ないまま、轟音が鳴り響くたびに艦船だけが沈んでいった。

 

 

 

 日高見のCICで、沖田は静かに状況を確認していた。

 

「残るは敵空母のみです」

 

「通信妨害を継続。 鹵獲作業に移る。 抵抗するようなら射殺も許可する」

 

 佐官以上であれば重要な情報を知っている可能性がある。それ以外の生死は問わなかった。

 

 

 マイカル沖、グラ・バルカス帝国艦隊は、鹵獲された空母一隻を残し壊滅した。

 一切の情報を送られることなく、日高見の実戦テストは終了。

 艦橋に居た者は全て捕えられ、日本外人部隊によって尋問が行われる。

 それ以外の捕虜についてはムー国で取り扱われ、空母はムー国に贈与された。

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