日本外人部隊   作:揚物

81 / 99
キールセキ防衛線

 キールセキ外 西部防衛陣地

 第三外人部隊によって建造され、用意された速乾性コンクリートや岩石に土嚢などを使用し、急ぎ設営された防衛陣地にはムーの戦力が集まっている。

 ホクゴウ司令や第三外人部隊の隊長たちがあつまり、連日会議が行われ来るべき作戦を練っていた。

 

 

 そんな中、本格進行前の偵察としてアンタレス5機の偵察部隊がキールセキに向っていた。

 

「また撃墜ポイントが上がってきた」

 

「はは、適当に仕留めて偵察を終わらせるぞ」

 

「今回のエースは俺がもらうぜ」

 

 余裕を見せるグラ・バルカス帝国のパイロットと異なり、国民を守る為盾になってでも戦う覚悟を持つムー国パイロットの空戦が始まる。

 

 

 視界に入ったのは見たこともない単翼の戦闘機。

 

「複葉機じゃないぞ!」

 

「ミリシアルってところの戦闘機か!?」

 

「なに!?」

 

 余裕を持って照準を合わせようとしたが、思いも寄らぬ速度で高度を上げ、追跡しようと操縦桿を引くが離されるだけだ。

 

「くそ! アンタレスが追いつけない!」

 

 550kmが最高速度と推測されるアンタレスに対し、それを上回るよう680kmと最新技術で基礎構造にも改良が施されている疾風M1とでは旋回性能も速度も違う。

 最大高度を迎え、高度を下げるために機首を下げたとき敵機に背後につかれてしまう。

 

「これについてこれるわけがない!」

 

 アンタレスのパイロットは限界速度で降下するが、それさえも完全に追尾し3機が被弾し落下していく。

 

「くそ! 3機喰われた!!」

 

 操縦桿を引き、重力に耐えながら機首を上げ、先ほど横を通り抜けた敵機に照準を合わせる。

 

「落ちろ!!」

 

 トリガーを引こうとしたとき、敵機は135度バンクし下方向に落下していく。

 

「はっ、失速墜落しがやったか」

 

 そんな状況からムー国の戦闘機は下方宙返りし、体勢を整え直してみせた。地面まで近いため僅かなミスが死に直結する状況で並みの技術ではない。

 

「そんな!?」

 

 彼が驚いている最中に残りの1機も撃墜され、当人ももう1機の機銃を受けて火達磨となり墜落していった。

 偵察部隊のアンタレス5機はムー国の疾風M1・3機によって、5分と保たず全機撃墜された。

 

 空洞山脈を越えた先では制空権はなんとか保持できている。

 疾風M1とM2がグラ・バルカス帝国占領領域内で墜落し、解析される危険性を日本側が伝えたため、ムー国軍陸上勢力圏でしか運用が出来なかった。

 

 

 偵察機が来たことで厳戒態勢となり、防衛陣地は近くの航空基地から防空を依頼、砲兵も各地点配置につく。

 3式中戦車の射程は若干グラ・バルカス帝国の戦車を上回っているものの、それでも製造されたばかりの分を合わせてもたった15両、100両を超える相手には不利でしかない。

 

「きたぞぉ!」

 

 監視員の望遠鏡の先にはあきれ返るほど大量の戦車や車両の数が見える。

 

「全員覚悟を決めろ! 我々がムー国を守るのだ!」

 

 ホクゴウ司令の言葉にムー国の兵士は覚悟を決める。

 

「命を惜しみなさい! 無理な攻撃をせず敵の攻撃集中点を認め陣地移動を迅速に! 相手の間隙を突きなさい!」

 

 明日には日本外人部隊が到着する。それまで持たせれば、確実に生き残る事も敵部隊を壊滅させる事もできる。そのことが数で劣る第三外人部隊の士気を持たせていた。

 

「敵航空隊と我ら航空隊の航空戦開始! 防空は任せ我々は敵車両および戦車に注力せよ!!」

 

 上空ではグラ・バルカス帝国のアンタレス制空機50機と爆撃機60機との激しい空戦が始まる。爆撃機を一機でも逃がせば防衛陣地やキールセキが甚大な被害を被る。

 ありったけの疾風M1とM2を駆り出していた。

 

「敵戦車確認! 砲撃を開始せよ!!」

 

 3式中戦車の砲撃が開始され、グラ・バルカス帝国との陸上戦が始まった。

 

 グラ・バルカス帝国の戦車と同等と思われるチハの最大射程は仰角砲撃でも装甲貫通はおよそ800mが限界だが、砲撃するだけなら1300mくらいはなんとかなってしまう。

 ムー国が生産した三式中戦車も貫通力は上回るが射程距離はほとんど変わらず、第三外人部隊の84式無反動砲の射程は600mであり不利は否めない。

 低速で走りながらグラ・バルカス帝国の戦車が砲撃を開始、砲弾が防衛陣地の最前面の分厚い土壁や防壁にぶつかり激しい音を立てる。

 

「正面部隊は塹壕から出るな! やられるぞ!!」

 

 グラ・バルカス帝国戦車の砲撃によって死傷者が出始め、コンクリートの防壁が崩されてしまう。

 

「装甲ブルドーザーには砕けた防壁を塞がせろ! 急げ!!」

 

 飛び散ったコンクリート片や土を盛り上げ、穴の開いた防壁を埋め戻す。その作業の間にも戦車の砲弾がドーザーブレードに当たるが、分厚く改造の施された鉄板を貫く事は無い。

 

「被弾頻度が低い防壁に移動!」

 

「敵戦車に向け砲撃を続けろ!」

 

 いまだ慣れていないのか、ムー国の戦車が行う砲撃は狙いが甘く装填も遅い。敵はほとんど損害を受けずに侵攻してくる。このままでは押し切られてしまう。

 もっとも突出した戦車の距離が600mを切った時、10台の戦車の砲塔が吹き飛ぶ。前線に伏せていた第三外人部隊の兵士が84式無反動砲を発射していた。

 お返しとばかりに攻撃地点周辺に砲撃が集中するが、第三外人部隊は攻撃と同時に移動しており損害は無い。しかし土嚢と土壁が吹き飛ばされ防衛陣地が破壊されてしまう。

 急ぎ装甲ブルドーザーによって土壁が整え直されるも、初めてエンジンを壊され装甲ブルドーザーが止まってしまう。

 

 

 戦闘が始まり30分、

 前線陣地の2割が破壊され、ムー国兵士にもかなり怪我人が出始めている。お互いに最大距離で砲撃を行っていることから命中精度が低く、消耗戦に入っていた。何人も胴体や頭部を撃ち抜かれ、グラ・バルカスもムー国も犠牲者が出始めている。

 バリスティックシールドは小銃弾も防ぐため、確認しながらでもそれほど犠牲者の数は多くないが、腕を撃たれた者は少なくない。

 

「制空権を得ました! 航空支援来ます!!」

 

 必死の攻防によってグラ・バルカス帝国の航空機は全て撃墜され、制空権が得られたことでキールセキ航空基地からマリンプラスが急ぎ向ってきていた。

 さすがのムーも爆弾の大量生産はバルクルス基地向けで余裕はなかった。だからこそ、残酷な武器だが生産しやすいものが考えられ、日本外人部隊から提案された。

 モロトフカクテル、巨大な火炎瓶の投下であった。

 制空権を得たムー国マリンプラス部隊から、次々とガソリンがたっぷり込められたドラム缶を投下、地面にぶつかり弾けると同時に括りつけられていた発火装置が点火、爆発を巻き起こし歩兵を焼き殺していく。

 範囲は広くもないし爆発力も余りないが、それでも人を殺傷するという意味では充分である。歩兵だけではなく戦車や車両が火に飲まれていく。

 しかし、数を頼みに火が上がっていない所から次々と前進してくる。

 

「私が前に出ます! 全員一旦下がりなさい!」

 

 イーネは一人、12式装甲歩行戦闘車に乗り込み、苛烈な砲撃戦が行われている前線に飛び出した。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。