日本外人部隊 作:揚物
日本とも外交官レベルでは交流が成され、少なくとも表向きは敵対はしていなかった。
しかし先日、ムー国の資産が全て凍結という名の没収がなされ、ムー国民は全て強制退去となった。
それだけではなく外交旗を掲げたグラ・バルカス帝国の艦船が今までムー国が使用していた港を使用し、荷卸や近代的な改修が行われている。
これは世界10カ国に属する全ての文明に対する明確な裏切り行為であった。
神聖ミリシアル帝国やムー国と話し合いの末、正当な宣戦布告をミリシアルおよびムーにしてもらい、背後から攻撃を受けないよう支援を行ってもらう。
また、第三文明圏平和維持軍を投入し、また賛同するフィルアデス大陸の他国家によって西部と南部の封鎖を行う。幸いマオ王国ともダイダル平原外交交流都市によって外交が行われ、友好的であるため北側の封鎖は容易い。陸海空を完全に封鎖し、グラ・バルカス帝国の一件が片付くまで一切なにもさせない。
判決を下すのは日本ではなく、列強一位たるミリシアル、そして被害を被ったムーなのだ。
これ以上基地建設を進行させてはまずいとし、輸送船団への攻撃を行う事となった。
すでに正式にミリシアルとムーにより宣戦布告が成されており、グラ・バルカス帝国の艦船が外交旗を立てていたとしても、リーム王国行きであるならば撃沈してもなんら問題はない。
この行為も前世界の一種の戦時条約に類する行為の一環としたが、本来ミリシアルは宣戦布告をした国に協力するものならば、確認など取らず排除してしまうのだが。
「グラ・バルカス帝国の駆逐艦20隻、輸送艦60隻を確認しました」
フィルアデス大陸 東海域を航行する艦隊を衛星が確認、試験航行中のラ・カサミ改及びラ・エルド改が向っていた。
敵艦隊に空母は存在しない。注意すべきは潜水艦のみであり、駆逐艦などものの数ではない。今回はラ・エルド改の訓練をかねている。
武装はかなり削られた簡易改修案によって
35.6cm 単装砲1基
CIWS 2基
M/50 375mm対潜ロケット砲
93式近距離艦対空誘導弾発射機8連装3基
ラ・カサミ改と共通しているのは主砲・自動装填装置・CIWS・FCS・レーダー・ソナー・機関となる。
性能がラ・カサミ改より劣ると艦長のレイダーは少し嘆いていたが、それでも同じ電子制御され空調の効いた立派な艦橋は気に入っていた。
「こちらラ・カサミ艦長 ミニラル」
「こちらラ・エルド艦長 レイダー」
「訓練どおりにやればよい。 レクチャーどおりにやれば問題はない。 焦らないように」
「わかっています。 我々の力をグラ・バルカス帝国にみせてやりましょう」
「よし、それでは警告を行い、攻撃準備を開始せよ」
ミニラルの言葉に従い、二隻の戦艦は横に並び航路を進む。
「艦長 通信可能です」
通信士の話にミニラルはマイクを手に取る。
「こちらはムー国艦隊、グラ・バルカス帝国艦隊に告ぐ、降伏せよ。 さもなければ攻撃を開始する」
返答こそないものの、レーダーには航路を変更しこちらに向ってくる20隻の艦艇の姿が映っている。
「砲撃を準備せよ。 グラ・バルカス帝国の駆逐艦は魚雷を使う。 使用前に撃沈するのだ」
5分ほどするとグラ・バルカス帝国の駆逐艦隊が単縦陣によって接近してくる事が視界に入り、適正射程である35kmを割る。
「砲撃開始!」
35.6cm 単装砲による砲撃が始まる。FCSによる正確な攻撃は外れる事無く駆逐艦に直撃、一発ごとに爆発炎上し海中に沈んでいく。
「やったぞ!」
ラ・エルドのレイダー艦長は実戦初砲撃による敵艦の撃沈に艦橋は沸き立つ。
「砲撃を継続」
ラ・エルドがそんな中、ミニラルは喜ぶ事無く冷静に判断しようと心がけ、命令を下す。
「敵艦魚雷を投下!」
ソナー仕官によって状況が逐次確認され報告が上がる。
「航路に一発近似する可能性があります!」
グラ・バルカス帝国の駆逐艦の攻撃でもっとも恐ろしい存在。30kmも離れているからこそ、余裕を持って対処できるが、これが5kmを割ってしまえば脅威となる。
「回避航路に進路を変更、砲撃優先度を変更、前衛駆逐艦に狙いを」
ミニラルは日本外人部隊に習い、焦る気持ちを落ち着かせ、高揚する気分を押さえ込み、頭の芯を凍りつかせ判断を下す。それが艦と部下の安全に繋がる。
結局グラ・バルカス帝国の駆逐艦は一隻たりとも降伏する事無く壊滅。海上には生き残ったグラ・バルカス帝国の兵士が漂流していた。
「漂流しているものは救助せよ。 救助時に抵抗するようなら銃で脅してやれ。 ラ・エルドには残った補給艦隊を威圧し、ダイダル平原基地に誘導するよう伝達せよ」
「はっ、了解いたしました!」
戦争ゆえに物資は幾らあっても多すぎるという事はない。
監視衛星によってグラ・バルカス帝国の艦船は一隻残らず撃沈か拿捕し、リーム王国に到達させることはなかった。