日本外人部隊   作:揚物

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対グラ・バルカス艦隊 壱

 

 偵察衛星によって大規模艦隊の出航が確認され、全ての艦隊が出航し迎撃に向った。

 ムー国からはラ・カサミ改とラ・エルド改のみ参戦。

 

「味方としても恐ろしい物だな。 あれは」

 

 ミニラルはラ・カサミ改の艦橋から、日本の艦隊を眺めていた。

 

「まったくです。 このラ・カサミですら小型艦に思えます」

 

「あれだけの戦艦を作れる技術を早くムー国も手に入れなければ」

 

「今回の任務は後方支援ということですが」

 

「これも我々が不甲斐無い為だ。仕方あるまい」

 

 今回の戦闘において、日本側は救助の余力がないため、ムー国海軍は改造自動車運搬船を護衛する事になっている。700台もの自動車を収容できる船であれば、捕虜を大量に収納できるために選ばれた。中には雑魚寝のベッドや衣料品などが積まれていた。

 内部の警戒などは訓練中のムー国兵士が行う事になっている。

 

 

 神聖ミリシアル帝国 第零式魔導艦隊

 日本外人部隊海洋第一艦隊だけでは弾薬が不足してしまう。その為設立したばかりの海洋第二艦隊を派遣したのだが、一世代前のイージス巡洋艦ばかりであり、最悪の事態を想定し第零式魔導艦隊の支援が必要であった。

 言ってしまえば、大量の敵艦隊が来た場合、海洋第二艦隊が迎撃体勢をとるまでの時間を稼いでもらうためだ。もちろんその様な事態に陥らないように対策はとるが、念を入れておいて悪いことはない。

 そして、巡洋艦クラスや航行不能となった敵艦の鹵獲もしくは拿捕である。使い道がない旧式艦とはいえ、解体すれば大量の鉄材くらいにはなる。

 

 

 

 先陣230隻、まずはこれを短時間で、かつこちらの手の内を知られずに殲滅しなければならない。

 前もって進行ルートとなると目されていたロデニウス大陸南部海域には、人工衛星からの通信を受信するため、発見されにくいよう塗装された小型ブイが無数に設置されていた。

 ここから警告無線通信を24時間ランダムに送りつけ、正確な位置の特定をさせず、精神的に休ませずに疲弊させ冷静な判断力を奪う。

 

「「「降伏せよ。 さもなければ殲滅する。 繰り返す 降伏せよ。 さもなければ殲滅する」」」

 

 続いて半日程度離れた場所を航行する210隻に海域に設置されているブイから降伏勧告の通信が送られ、数秒ごとにブイを切り替え場所と総数を誤認させる。

 案の定敵が潜んでいるのではないかと偵察機を飛ばし、第二陣は航行速度が落ちたことで先陣と離れていく。

 

 一時間経過したところで再び1分間ランダム通信を行う。

 

「「「我々の位置も掴めまい。 繰り返す 降伏せよ。 さもなければ殲滅する」」」

 

 降伏する事などないのは分かっている。ただ挑発しつつ精神的に休憩を挟ませない行為、グラ・バルカス帝国軍人のプライドの高さからして、挑発すれば必死で周囲を探すと読んでいたのだが、案の定速力を落とし、四方に航空機や駆逐艦を送り出して探索をしている様子が偵察衛星に写っていた。

 この状況で先陣艦隊に無線妨害を行い攻撃を仕掛ければ、終了まで気付かれる事はないだろう。

 そして作戦開始時刻となり、日本外人部隊 海洋第一第二艦隊による攻撃が始まる。

 

「作戦開始時刻となった。 無線妨害およびレーダー妨害を開始。 続いて敵空母に艦対艦誘導弾を設定、飛行甲板の確実な破壊を目的とする」

 

 全艦のイージスシステムに連動し、3隻の戦艦を除く全ての誘導弾の標的が設定されていく。

 

「設定完了」

 

「航空部隊より通信。 所定ポイントに到達、いつでも攻撃可能」

 

 沖田大佐はこれから起きる一方的な大量殺戮によって死に行く敵兵に黙祷を捧げ、ゆっくりと目を開いた。

 

「攻撃開始。 敵艦隊を殲滅せよ」

 

 日本外人部隊に所属する全ての艦船から艦対艦誘導弾が順次射出され、白煙を上げて空中に上がっていった。

 

「続いてF-2編隊による空対艦誘導弾による攻撃が始まります」

 

 

 

 グラ・バルカス帝国第二先遣艦隊では、レーダーが謎の現象により使用不能となり、機器の再チェックが行われていた。どうしようもないため原因不明であると、報告を上げようと思った直後に空母の甲板が爆発した。

 

「何が起こった!?」

 

 第二先遣艦隊 司令官アウロネスは旗艦クウェーサの艦橋から状況が理解できずにいた。

 巨大輪形陣の内部、それも旗艦のすぐ近くを航行していた全ての空母の甲板が爆発、航行速度を急激に落としていく。

 

「空母艦隊、全艦甲板をやられ発着艦不可能!!」

 

 本格侵攻を前にあっては成らない報告が上がった。これでは本土攻撃どころか制空圏を完全に奪われたことになる。

 そして命令を下す暇もなく次々と駆逐艦が爆発轟沈していく。

 眼の良い観測員が一人だけ何が起きているか気付き、艦橋に報告を上げる。

 

「敵ロケットと思われる物体が駆逐艦に向っていきます!」

 

 報告が上がった直後、駆逐艦が爆発し沈んでいく。

 

「くそっ、高速ロケットを遠方から撃ち込んでいるというのか!?」

 

 状況を大まかに判断できたところで対処の仕様がない。すでに遠方を攻撃出来る空母艦隊は甲板を破壊され発着艦が完全に不可能なのだから。

 

「全艦に対空迎撃を行うよう伝えろ!」

 

 命令は忠実に実行されるも、当てもなく撃ったところで、水面近くの低空を高速で飛行し、近距離でポップアップするように高度を上げて攻撃をする艦対艦誘導弾にあたるわけもない。

 

「最大速力で取り舵! 高速ロケットの着弾地点から離れろ!!」

 

 司令官のアウロネスは相手の攻撃手段が精密な長距離高速ロケットと判断し、船速を上げ航路を変更する事で逃れようと試みる。

 だが、外れる事無く艦対艦誘導弾の着弾は続き、第一波である艦対艦誘導弾による攻撃が終ると、数分の間をおいて空対艦誘導弾による第二波が襲い掛かる。

 

 

 

 

 1時間にもわたる艦対艦誘導弾の波状攻撃の末、グラ・バルカス帝国の先陣を切っていた艦隊は一隻残らず海に沈んだ。

 

「敵艦隊残存なし」

 

「これより、ムー国艦隊は敵艦隊が居た位置まで進行する。 救助者についてはムー国艦隊に一任し、我々と第零式魔導艦隊は第二陣迎撃に向う」

 

 沖田大佐はイスに背を預けると帽子を目深く被る。

 

「第二艦隊は補給のために後退します」

 

 第一艦隊から離れ、第二艦隊が帰還していく。艦対艦誘導弾を撃ち切ったために補給に戻るのだ。

 

「第二陣との交戦時には夜が来る。 休めるものは交代で休ませるように。

 無能でなければ第二の艦隊から偵察機が来るだろう。 撃墜し気付かれないように注意を怠るな」

 

 第二陣とは夜間戦闘となる。極めて優位を確保できるのだが、一方で先の戦闘でイージス巡洋艦に搭載している艦対艦誘導弾は撃ち切ったため、すぐに後退し補給作業に移る。

 第一艦隊のイージス巡洋艦は敵潜水艦に備え、距離を取った形でソナーによる警戒を続ける。

 第二陣には航空攻撃と戦艦日高見・長門・榛名・航空母艦かがによる攻撃を行う。まずは航空攻撃によって敵空母を仕留め、ついで駆逐艦を全滅させる。残存する戦艦及び巡洋艦は、射程と航行速度の優位性で戦艦3隻と航空母艦で対応しなければならない。

 その間に帰還した航空機部隊は休息・メンテナンス・補給が行われる。

 本隊990隻を相手にするには万全の体制で戦わなくてはならない。その為に三隻の戦艦は疲弊と損傷を覚悟していた。

 夕焼けが周囲を覆い始め、夜が近いことを伝えている。

 

「敵偵察機と思われる航空機を確認、艦対空誘導弾 発射」

 

 白煙を上げて撃ち出された艦対空誘導弾は正確に偵察機を破壊し、海中に没した。

 予想通り通信及びレーダーを妨害しているために直接確認のためだろう。

 夕闇に全てが覆われたころ、未帰還の偵察機が向った方角から、飛行速度から推定して今頃何かがあった事を理解していることだろう。

 

「神は我々に幸をくれたようだ」

 

 一面の曇り空であり星一つ見えない暗闇が海上を覆っている。この状況ではグラ・バルカス帝国はその力を存分に発揮できないだろう。

 

「攻撃を開始する」

 

 グラ・バルカス帝国第二陣とたった4隻の外人部隊艦隊及び航空部隊の戦が始まる。

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